会社を設立する際に社会保険の手続きが必要になります。
しかし、保険の種類も多くて分かりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、社会保険の手続きで必要な書類と届出する各機関について解説いたします。
是非お役立てください。
目次
会社を設立すると社会保険の手続きは必ず必要
会社を設立した際には、社会保険に加入することが義務づけられています。
これは、健康保険法の健康保険法第3条、厚生年金保険法第9条などにより定められているためです。
しかし起業者本人は加入できないが、従業員を雇う場合に必要になる手続きもありますのでご注意ください。
会社設立直後は慌ただしく忙しい時期ではありますが、社会保険の加入手続きは忘れずに確認して実施しましょう。
加入すべき社会保険
それでは、加入すべき社会保険の種類はどのようなものがあるのでしょうか。
この項目では以下の手続きが必要な社会保険について解説していきます。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 労災保険
- 雇用保険
健康保険
健康保険とは、病気やケガで医療機関にかかった際に給付が受けられる制度です。
療養の給付として、病気やケガの治療費は自己負担額が原則3割で済む仕組みや、出産時にも手当が給付されます。
他にも加入している健康保険組合によってさまざまな給付が受けられるのが特徴です。
日本では国民皆保険制度を採用しており、国民全員が公平に医療を受けるために何かしらの健康保険に加入する必要があります。
事業主の場合には国民健康保険にしか加入できませんが、法人化すれば他の健康保険に加入するこも可能です。
厚生年金保険
厚生年金保険とは、一般の会社などで働く人が加入する公的年金の制度です。
また公的年金には他にも、20歳以上60歳未満の人すべてが加入する国民年金保険があります。
起業する場合、国民年金のみに加入する若しくは、法人化することで厚生年金に加入可能です。
厚生年金保険に加入すれば国民年金に上乗せされるため、国民年金のみ加入している人よりも多く年金を受給できます。
その保険料は会社と従業員が折半で支払う仕組みであるため、節税になるといえるでしょう。
労災保険
労災保険とは、雇用されている人が仕事中や通勤途中にケガや死亡してしまった場合に給付金が出る制度です。
労働者やその遺族の生活を守るための社会保険で、正式には労働者災害補償保険といいます。
労災と認定されれば医療費の自己負担はありませんし、休業時の手当は健康保険よりも手厚いものとなっています。
この労災保険に関しては、起業者自身は労働保険の被保険者には該当しません。
しかし、1人でも従業員を雇う場合には事業所として労働保険に加入する必要がありますので注意しましょう。
ここでいう従業員とは、パートタイマーやアルバイトといった正社員ではない場合も当てはまります。
そしてこの保険料は、事業主が全額負担します。
雇用保険
雇用保険とは、失業した際に次の仕事に就くまでに一定の給付金を受けられる社会保険です。
さらには就職に役立つ知識や技術を得られる職業訓練を受けられます。
また、育児や介護が理由で休職する際の手当も雇用保険から出されます。
この雇用保険についても起業者自身は被保険者に該当しないため、加入したくてもできません。
そして、こちらも1人でも従業員を雇う場合には事業所として加入する必要があります。
ただし、労災保険と違って週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上雇用される従業員が対象となります。
ひとり社長でも加入が必要
ひとり社長で従業員を雇っていない場合には、社会保険の加入は必要ないと勘違いしがちです。
しかし、ひとり社長でもそうでなくても社会保険の種類によっては加入する義務があります。
未加入は罰になる?
社会保険の加入状況の調査は年金事務所が行っています。
社会保険に未加入でいると、会社がある地域の管轄年金事務所より連絡が来る仕組みです。
この時点で加入すれば、大きな問題には発展しないでしょう。
しかし、それでも加入し忘れてしまった場合には正式な警告文書が届きます。
それでも放置してしまうと、立入検査が行われて強制的に加入という形になり、罰則が与えられる可能性があります。
加入義務の例外
社会保険は加入義務があると何度も述べてきましたが、例外があります。
たとえば従業員を雇っていない会社かつ、役員報酬が0円の場合には社会保険に加入する義務はありません。
逆にいえば、役員報酬が月額12,000円に届かない場合には、社会保険の加入を断られる場合があります。
その場合には、国民健康保険と国民年金に加入することができます。
社会保険に未加入でいると加入要請や警告文書が届き、それらを無視すると多額の保険料を請求される可能性があります。
手続き方法
社会保険にはいくつかの種類がありますが、その手続き方法をご説明します。
窓口への提出
健康保険及び、厚生年金の加入手続きの書類は会社の所在地を所轄している年金事務所に届出ましょう。
直接窓口に提出する若しくは、郵送で提出する方法もあります。
従業員を雇ったときに加入する雇用保険の申請書類は、会社の所在地を管轄する公共職業安定所が窓口です。
労災保険も従業員を雇ったときに加入が必要ですが、こちらは会社の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。
インターネットでの提出
社会保険の手続きは、それぞれ直接窓口に届けずともオンラインで申請が可能となっています。
しかし、事前に手続きが必要な場合がありますので、余裕を持って管轄窓口に電話などで確認しましょう。
電子申請が可能になれば、あとは24時間いつでも申請が可能になり、混みあっている窓口に並ばずに済みます。
また、何か所も窓口を回る必要がなくなり時間・交通費・手間が削減でき、ペーパーレス化によってコストも削減できます。
そのためインターネットでの申請をおすすめします。
健康保険・厚生年金
それでは社会保険の種類別に必要書類やその期日をご説明します。
まずは、健康保険・厚生年金についてです。
必要書類
必要書類は大きく3種類あります。
1つ目は「健康保険・厚生年金保険新規適用届」です。
法人が常時従業員を使用する場合、健康保険および厚生年金保険の加入が義務化されています。
健康保険・厚生年金保険新規適用届は、健康保険・厚生年金に加入する際に提出が必要な書類です。
この適用届は会社の登記簿謄本の原本の添付が必要で、登記簿謄本は適用届の提出日の90日以内に発行されたものを使用します。
尚、新規適用届は日本年金機構のホームページでダウンロードが可能です。
2つ目は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」です。
これは、従業員とその被扶養者が健康保険と厚生年金保険に加入する際に必要な届けになります。
そのため役員だけではなく被保険者となる人全員分の提出が必要です。
基本的には添付書類が不要となりますが、60歳以上の再雇用者の場合には添付書類が必要となる場合があります。
こちらの申請書も、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
3つ目は、「健康保険被扶養者(異動)届」です。
これは、被保険者となる人に扶養家族がいる場合に必要で、戸籍謄本または住民票の添付が求められます。
また、扶養者の年間所得が130万円未満の場合、課税証明書等の所得が分かる書類の添付も必要です。
こちらの申請書も、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
期日
健康保険・厚生年金の必要書類の期日は、会社設立から5日以内に会社の所在地を所轄する年金事務所に届出ましょう。
これは、社会保険を適用する事業所を新しく開設したことを届出るためです。
労災保険
次に労災保険についてご説明します。
必要書類
起業時の労災保険の手続きに必要な書類は2種類あります。
まず1つ目は「保険関係成立届」です。
これは、労働保険の適用事業所が従業員の労働保険加入義務を履行するために必要な届出です。
この届出には以下の添付書類が必要となります。
- 会社の登記謄本原本
- 労務者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 事業所の住所が分かる書類(記載事項証明書や公共料金請求書等)
- 労働条件通知書(パートやアルバイトの場合)
- 就業規則届(従業員が10人以上の場合)
2つ目は、「労働保険概算保険料申告書」です。
労働保険料は、前払い制になっているため、その年度の見込賃金総額を算出する必要があります。
この労働保険概算保険料申告書にはその見込の賃金総額を記入し、労災保険料率によって保険料を求めます。
保険料の求め方は、労災保険対象従業員の賃金総額×労災保険料率という計算式です。
期日
保険関係成立届は、従業員を雇用した日の翌日から10日以内が期日になります。
労働保険概算保険料申告書は、従業員を雇用した日の翌日から50日以内が期日です。
保険関係成立後に労働保険番号が発行されますので、発行され次第すぐに提出しましょう。
雇用保険
続いては雇用保険についてご説明します。
必要書類
起業時の雇用保険の手続きに必要な書類は2種類あります。
1つ目は、「雇用保険適用事務所設置届」です。
従業員を1人でも雇用した場合には雇用保険の適用が義務付けられています。
その義務を果たすために適用を受ける必要があり、そのための届出になります。
届出の際には、労災保険の保険関係成立届の提出が必要です。
また、さらに以下の確認書類の提示が必要となる場合があります。
- 会社の謄本
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 被保険者証
- 営業許可証
この届出の申請書はハローワークインターネットサービスでダウンロードすることができます。
2つ目は、「雇用保険被保険者資格取得届」です。
この届出は、雇用保険に加入する際に公共職業安定所に提出する書類になります。
また、賃金台帳や労働者名簿といった実際に働いていることが確認できる書類の提出を求められる場合があります。
手続きが済むと、雇用保険被保険者証と雇用保険資格取得等確認通知書が交付される流れです。
この届出もハローワークインターネットサービスでダウンロードすることができます。
期日
雇用保険適用事務所設置届、雇用保険被保険者資格取得届のどちらも、従業員の雇用日の翌日から10日以内に届出ます。
従業員を雇う場合には速やかに準備しましょう。
他にも添付書類が必要な場合もある
前項で社会保険の申請時に必要書類と添付書類をご紹介しましたが、他にも添付書類や書類提示を求められるケースがあります。
年齢や加入パターンは人それぞれであるため、人によって提出書類が異なってくるのです。
また、会社の設立ケースや管轄地域よって異なるケースもあるでしょう。
二度手間を防ぐためにも、事前に提出窓口へ確認することをおすすめいたします。
個人個人で提出が必要な書類に違いが出る可能性があるため、事前に添付書類が必要か否かの確認は怠らずに行いましょう。
ベンチャー(スタートアップ)企業で学ぶのも一つの手
未経験の分野の場合や初めての会社を起す場合には、いきなり起業しても知識面で不利であるといえます。
誰でも成功するとはいえませんし、成功への道のりは非常に険しいものとなるでしょう。
未経験の分野ではなくても、大企業に勤めていると経営に携わる機会がないのが事実です。
そのような懸念があれば、まずはベンチャー企業やスタートアップ企業で経験を積むという手段があります。
ベンチャー企業やスタートアップ企業は少数精鋭であることが多く、経営に携わる機会も多々あります。
そこで経営のノウハウを学ぶことが可能です。
もし起業を考えているのであれば、まずは経営の経験が積めるベンチャー企業への転職に挑戦してみてはいかがでしょうか。
デジマクラスでも相談を受け付けているのでお気軽にご連絡下さい。
まとめ
起業するにあたり、義務となるのが社会保険の加入です。
その社会保険の中でも自分自身が加入するものと、従業員が加入するものとがあることを覚えておきましょう。
さらには、保険の種類によって提出の締め切りや窓口が違い、起業ケースごとに必要添付書類が異なる可能性もあります。
提出漏れが起きないよう、事前準備を怠らないようにしましょう。
また、起業にはさまざまなリスクが伴います。失敗しないためには、そのリスクを一つ一つ確認することが大切です。
知識が乏しい状態ではリスクの発見や対策が甘くなり、起業失敗の可能性も高くなります。
それを解決するには、会社を立ち上げる前に経営の経験を積むことのできるベンチャー企業に転職するという方法があります。
少しでも不安がある場合や、転職を希望する場合には是非お気軽にデジマクラスへご相談ください。