企業経営や店舗運営するにあたって商品の効率的な売上管理、ならびに在庫管理は必須事項です。
別名「重点分析」とも呼ばれ、在庫管理に役立つ手法であるABC分析。
商品の指標(金額や売上など)の中で重視する評価ポイントを決定し、優先順位を付けることによって、商品をランク分けする手法です。
マーケティング強化として有益なだけでなく、今後の事業戦略や経営や売上高にもかかわる重要な指標となります。
基本のデータ分析手法となりますので、身に着けておいて決して損のないフレームワークです。
今回はABC分析全体の概要から、活用の仕方まで詳しくご紹介していきます。
目次
ABC分析の方法を解説
ABC分析の方法は、以下の順番でおこなわれます。
- 各数値データ群の累積比率を算出
- 3つのクラス(A・B・C)の割合指定
- 各データをA・B・Cにグループ分け
- グループ分けを元にパレート図を作成
パレート図のように視覚化的に分かりやすくすることは分析において重要なポイントです。
ABC分析の目的
さて、ABC分析の目的はどういったところにあるのでしょうか?冒頭でも少し触れましたが、もう少し詳しく掘り下げていきましょう。
ABC分析の目的は大きく2つあります。
在庫管理の見直し
一つ目の目的としては、現在行われている在庫管理の見直しができる点にあります。
売れ筋商品は分かっていても商品種類が多い場合、効率性の低下や適切性のチェックが怠慢になり、在庫管理の煩雑さは不可避の課題です。
ABC分析を活用することによって、現状行っている在庫管理状況を見直しや改善点が見えてきます。
この分析フレームワークの目的であり、メリットといえるでしょう。
事業の効率化
そして次の段階として事業の効率化がこの分析の大きな目的の1つです。
自社商品やサービスの在庫管理をおこない、売上を効率化して企業の経営力を高める狙いがあります。
当然ですが、企業として利益を最大化していくための方法の1つとして、利益率の良い商品に対して力を入れていく必要があります。
ABC分析を使った商品のグループ分けによって、実際に利益を生む商品を見極める判断が出来るので、事業の効率化に貢献できるでしょう。
ABC分析と「パレートの法則」の関係性
ABC分析のフレームワークの根底には、パレートの法則があるといわれています。
経済学者のパレートが理論ですが、経済学だけでなく一般社会や自然現象にも活用されています。
パレートの法則は、「商品の売上の8割は、全商品のうちの2割の品目が生み出す」という考え方です。
いわゆる、少数(2割)によって大半のものは左右され影響されることを提言しているもので、ABC分析と深くかかわっています。
パレートの法則は、売上の累積比率の70%未満の商品、いわゆる利益を生み出す商品に注力する理論です。
パレートの法則の考え方とほぼ同様と考えて良いでしょう。
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ABC分析の方法
先ほど分析の方法の概要を軽く説明しましたが、もう少し深堀りしてみていきましょう。
必要なデータの収集
ABC分析を行うためにはデータを集める事から始めます。今回紹介の事例では、店舗の売上と仮定して、売上のデータを揃えることにしましょう。
売上データは販売管理システムやPOSデータなどで管理しているデータが有用でしょう。
売上でABC分析を行う場合は、売上が多い順に並べ替えをしたデータを準備しておくと分析がスムーズに進みます。
売上構成比の算出
前段で売上金額の大きい順に並べ替えたデータを使い、今度はそれぞれの売上構成比を算出します。
売上構成比というのは、期間中の全体売上に対して対象商品はどのくらいの割合であったか示す値です。
つまり、該当商品の売上を全体の売上で割れば、売上構成比が算出できます。
実際にABC分析では使用しませんが、売上の構成を知り、現状を知る情報としては有益でしょう。
累計構成比の算出
次は実際に、グループ分けで使用する累計構成比を算出します。まずは累計額の計算です。売上の多い順に並べたデータをそれぞれ累計します。
商品の売上を多い順に並べた時に、
- a商品:100,000円
- b商品:80,000円
- c商品:60,000円
の場合、それぞれの累計額は「aの累計=a」「bの累計=a+b」「cの累計=b+c」なので、
- aの累計:100,000円
- b商品の累計:180,000円
- c商品の累計:240,000円
累計額が出たら、後は比率の計算だけです。全部の商品の累計額、つまり最後の合計でそれぞれの累計額で割ります。それが累計構成比なのです。
A・B・Cグループへの分類
累計構成比が算出できれば次はグループ分けです。各商品の累計構成比を見て、数値が大きいものから並べ替えを行います。
並べ替えの一般的な基準は以下の通りです。
- Aグループ:累積構成比が70%未満の商品
- Bグループ:累積構成比が70%~90%の商品
- Cグループ:累積構成比が90%~100%の商品
パレート図の作成
累積構成比を元にA・B・Cのグループ分けを行った次は、視覚的に分かりやすくするために図表にしてみましょう。
横軸は商品項目、縦軸(左)は売上金額で縦軸(右)は累積構成比にするとパレート図の完成です。
さらに分かりやすくするために、前段でグループ分けした商品を色分けすると良いでしょう。
例えばAグループ商品を赤色、Bグループ商品を青色、Cグループ商品を黄色にすると一目瞭然です。
自分だけでなく人にも伝わりやすい図表になります。
ABC分析を行うメリット
ここまでの手順はいかがでしたでしょうか?少し概念が難しく、手順が多いと感じる方もいるかもしれません。
しかし、ABC分析は基本であると同時に非常に重要なメリットがあります。
現状を可視化できる
ABC分析を行うことの一番のメリットは、在庫管理の現状を可視化できるところです。
何事もネクストステップのアクションをするには、現状分析であるのは言わずもがなです。
今の状態を把握することができることがメリットの1つになるでしょう。
コストの見直しに活かせる
ABC分析を通してグループ分けをして、どの商品に注力するか見えてくると、自社にとって利益が見込める商材の見極めが可能になります。
その上で、より利益率の向上が図れることから、今まで余分にかかっていたコストの見直しが可能となります。
これが二つ目の大きなメリットです。
ABC分析の活用方法
ABC分析について、手法・メリットなどこれまで説明してきましたが、実際にどのように活用方法があるのでしょうか。
活用ケース1:在庫優先順位の決定
店舗経営などで、抱えている在庫に対して、本来持つべき在庫かそうでないかそれを判断する基準の1つとして活かせるのがABC分析です。
不要な在庫と欠品を防止することに有用でしょう。
活用ケース2:商品配置の入れ替え
店舗内レイアウトは顧客の購買行動に大きく関わってくるので、どこにどの商品を配置するのは重要な要素です。
しかし、注力商品を知らなければその施策もできません。
ABC分析によって、注力商品を知ることができれば、配置入れ替え施策への検討も可能になるでしょう。
活用ケース3:顧客売上の管理
BtoC、BtoBどちらのケースにも当てはまりますが、顧客ごとに売上管理するときにも活用可能です。
例えば、期毎にABC分析を用いて比較することによって、顧客のグループ間の変化が見てとれます。
ある顧客が以前はBグループにいたがAグループへ上がった場合、より注力するべきというのが見て取れるでしょう。
ABC分析ができるツール
実際ABC分析を業務に活かすとしたらどのようにおこなうのが効率的でしょうか。
ABC分析はこれまで見てきた通り、基本的な分析手法になります。
エクセルやGoogleスプレッドシートなどの表計算をおこなえるソフトならば十分算出できるものです。
しかし、在庫管理する対象商品が多いケースや多角的な分析や期毎の結果を比較する場合は担当者の負担は多大なものになることでしょう。
そういったときに便利なのがツールです。
作業量負担の軽減だけでなく、視覚的な表現の多様化や多角的で複雑な分析も簡単におこなうことができるので、検討してみても良いでしょう。
Googleアナリティクス
実はSEM(Search Engine Marketing)の分野でもABC分析は有用です。
選定キーワードや広告グループによって成果は大きく変化し、それをチューニングするのがマーケティング担当の命題ともいえるでしょう。
しかし、広告をはじめた序盤ではそのチューニングも難しいです。
ある程度データが溜まった段階で、Googleアナリティクスのデータを活用しながら分析をおこなうと良いでしょう。
キーワードや広告グループを前述の通りA・B・Cグループに分けてより効率の良いワード・グループの選定を行います。
効率の良いものは入札強化や予算配分を強める施策、逆に効率の悪いものは他のワードに差し替え・停止の施策を投じることが可能です。
active core
こちらのツールは、ECサイトのデータ分析で効果的なツールです。
特徴としては、データ分析から施策や効果検証を一気通貫してできる点と、データDBを個別に構築・蓄積し可視化できるポテンシャルが高い点です。
そういった点はマーケティングをする上で工数削減に大きく貢献するでしょう。
データDMP(ツール内独自の呼称)に蓄積された顧客情報から、ABC分析に必要なデータを自由にレポート作成できるのも特徴です、
分析業務の負担軽減、それゆえの経営判断に対して時間を有効活用できます。
Customer Rings
株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供のCustomer RingsはEC通販ほかBtoC向けCRMツールです。
顧客情報のマーケティングツールと定義してしまえば端的ですが、昨今注目が集まってきている顧客体験(CX)に注力したツールとなっています。
分析ツールはRFM分析、LTV分析など鉄板の分析から約20種類のテンプレートが準備されています。
その中で当然ABC分析のテンプレートもあるので、簡単にマーケティングに活用することが可能です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ABC分析を行う際の注意点
ここまでABC分析の良い面を中心に見てきましたが、商売の基礎ともいえるABC分析には、実は注意すべき点があります。
商品の一過性の需要に注意する
分析する商品によっては、一過性のものがあります。
前述の期毎に分析基準を区切った場合に、データの内容や分析結果を見誤るケースがあるので注意が必要です。
【流行商品・話題商品】
例えば、有名スタイリストがテレビなどである商品を取り上げたり、はたまた有名YouTuberなどがたまたま商品を愛用しているケースです。
そういった状況は、商品の売上瞬間風速が高まることが往々にしてあります。
過去期間の分析ではCグループ分類に属していても、一時的にAグループにあるならば、在庫不足を防ぐために発注に気を配ることが必要になります。
また、その風潮がおさまった時に元々の売上額に戻ることも十分にあり得ますので、要注意です。
【割引商品】
例えば、2週間だけ割引にしていた商品があった場合も同様の注意が必要です。
割引期間は在庫切れを起こさないように注力し、期間経過後は余剰在庫にならないように調整しましょう。
【シーズン商品】
たとえば、ダウンジャケットは冬の売れ筋商品でしょう。しかし、夏には全く売上には貢献しないことは容易に想像できます。
ここまで分かりやすい商品ではなかったとしても、シーズン商品は一時的な売上増加・売上低下も考えられるので、配慮が必要です。
一過性の商品でも、定番化することも十分あり得る現象ですので、注意深くデータを比較してみましょう。
ABC分析を行うときに重要なのは、まずは「期間全体を通して分析してみること」です。
その上で、一過性の商品を分析するという2段階の算出と分析をおこなうことがオススメです。
ECサイトではCグループも重要
いわゆる、『ロングテール理論』です。ECサイトであらゆるものが購入できる時代です。
Amazonや楽天をはじめ、個人でもBASEなどを活用すれば簡単にオンラインで商品を販売することが可能です。
昔の主流であった店頭販売であれば、在庫圧迫の問題も、インターネット販売では在庫のためのコストは軽減します。
そういったインターネット販売の場合に重要なのはCグループに属する商品群です。
「痒い所に手が届く商品」を取り扱っている店舗の評価が高く、継続的な顧客の確保につながる場合も少なからずあります。
ABC分析で困った時は?
さて、ABC分析で困るケースというのはどんな時でしょうか?
エクセルがうまく使えない
ABC分析で使用するエクセルなどの表計算ソフトの技術はそこまで高度なものではありません。
とはいえ、PCスキルには当然個人差があり、どれが容易でどれが難解かは一概には断定できません。
しかし、ABC分析をおこなうのであれば、基本的なエクセルスキルは身につけておくべきでしょう。
累積構成比と売上構成比の違いが分からない
前段の話の通り、確かにここは少々ややこしい部分です。売上構成比はあくまでも「全体の売上に対する該当商品の売上割合」です。
それに対して、「累積構成比」というのは算出するのに2ステップあります。まず売上の高い順にならべたデータを上から累積していくのです。
その累積した金額が全体の累積に対してどのくらいの割合を占めているかという意義になります。
まとめ
さて、今回解説してきたABC分析はいかがでしたでしょうか。
ABC分析というのは基礎的でありながら、在庫管理だけでなく企業全体の経営への活用にも有用なのがお分かりいただけたでしょうか。
しかし、ABC分析はどんな病気にも効く薬ではありません。
ABC分析は、在庫管理の適正化をおこなうことによって自社商品ならびにサービスの効率化を行い、それによって売上の改善を目指します。
きちんとおこなえば店舗や企業の経営力を向上させてくれる手段です。
それでも、ABC分析も数多ある分析方法のうちの1つに過ぎないのを忘れないでください。
あらゆす手段、ツールを自社にとって一番何が効率的であるか見極めて検討する事が何よりも大事です。
それは、A社で有益であってもB社ではそうでもないかもしれません。今日の社会情勢は目まぐるしく変わります。
状況に応じて手段を変化させていく柔軟な姿勢が分析の精度や経営の質も高め、結果的に在庫管理・顧客管理を改善してくれるでしょう。
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