多くの企業で業務改善や業務効率化についての問題は、ぜひ着手したいと考えられているのではないでしょうか。
しかし、実務をこなしながら改善を行うというのは容易なことではありません。
今回は業務改善のフレームワークとして注目されている「ECRSの原則」について解説していきます。
用語の意味や実際の活用方法などについて詳しくご紹介しますので、業務改善に悩んでいる方などはぜひ参考にしてみてください。
目次
「ECRSの原則」は業務改善に役立つフレームワーク
ECRSは以下の単語の頭文字を取った業務改善を行うためのフレームワークです。
- Eliminate(排除)
- Combine(結合)
- Rearrange(再配置)
- Simplify(単純化)
ECRSの原則は、この単語の語順通りに進めていくと効率的に業務の改善が行えます。
主な流れとしては、まずEliminateで業務の工程を見直し無駄な作業がないかの精査が必要です。
次に、Combineで別々に分けていた作業をまとめて行えないかなどを検討します。
そして、Rearrangeでは作業工程の順序変更や担当の変更によって効率化できないか精査が行われるのです。
最後に、Simplifyでツールなどの導入で簡単に行う方法がないか検討されます。
改善を行う順序としては、作業内容、作業工程、作業全体というように小さな規模から精査を行うことが重要です。
そうすることで、小さな改善点の可能性も見逃さずさまざまなパターンを考えることができます。
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業務改善が求められるようになった背景
業務改善が求められるようになった背景について解説していきます。
働き方改革の推進
企業の業務内容についての見直しが積極的に実施されるようになったことの大きな理由として「働き方改革」が挙げられるでしょう。
働き方改革は政府主導で行われている政策で、長時間労働などの労働環境における問題を積極的に解決させようとする動きです。
これまでは長時間休みなく働くことが美徳であると、どこの企業でも当然のように考えられていました。
しかし、それにより過労死などの社会問題を生んでしまい、政府主導で労働環境の見直しについて真剣に取り組むようになったのです。
残業や有給休暇などの制度がそれまであいまいだった企業にも、しっかりと法令順守を徹底するようになっています。
そのため、企業は従業員の労働時間の削減をしなければならないケースが増えこのような業務改善の手法が必要となりました。
労働者不足
働き方改革とは別に近年になって多くの企業が抱える課題として、労働者不足の問題があります。
少子高齢化が進むことで、どの業界でも労働者の確保が深刻な問題となっているのです。
これも相対的に考えると労働時間の削減が必要となるため、働き方改革同様に業務改善が求められるようになりました。
企業によっては、機械化を進めることで従業員にかかる負担を軽減する方法もとられています。
しかし、必要機器の導入などには大きなコストがかかるため、まずは小さなことでも改善点がないか考えることが重要でしょう。
・少子高齢化などで労働者不足の問題もあり、労働時間を削減せざるを得なくなった
「ECRSの原則」の4原則とその特徴
ECRSの4つの原則のそれぞれの特徴について解説していきましょう。
Eliminate:排除
Eliminateは最初に考える排除の視点で、その作業や工程をやめられないか精査します。
作業工程の中で当然のように行われていることでも、なんのために行っているか見直してみると省略できることもあるでしょう。
例えば、作業の有効性を感じないことでも長年の慣習として続けられていたようなこともあると思います。
また、念のために行っていたような二重チェックの工程なども排除して問題ないかどうか精査する対象となるでしょう。
Combine:結合
次にCombineは作業の結合の視点であり、別々に分けられた工程を1つにまとめられないか精査します。
同じ種類の作業であっても、他の仕事の兼ね合いなどで複数部署で分業している場合などが対象です。
それまで分業したほうが効率的であると考えられていたことでも、1つにまとめると結果的に効果が良くなることもあるでしょう。
固定概念に捉われず広い視野で業務を見直し、少しでも効率化できる方法を考えることが重要です。
Rearrange:交換
Rearrangeは交換の視点で、工程の順序を入れ替えたり他部署に作業を移管したりして効率化を図ります。
作業量は同じでも工程の順序を入れ替えることで、全体の作業効率が上がることもあるのです。
なぜその順序で作業を行っているか、なぜその部署が作業を担当しているかそれぞれの意味を考えて作業を配置していきます。
工程を入れ替えるだけでも無駄な作業が無くなりスムーズに行えるようになることも十分可能です。
前後の作業の関係性を考慮して作業順序を見直すと新たな発見が生まれることもあるでしょう。
Simplify:簡素化
Simplifyは最終的に検討する簡素化の視点です。
これまでの視点で工程を見直した上で、さらに業務を効率化できる手法を模索します。
具体的には新しいツールやシステムを導入することなどが一般的でしょう。
それまで人の手で行われていたことを、システム導入によって機械化することで手間を省いていきます。
ただし、ツールやシステムの導入にかかるコストは安くはありません。
そのため、ここまでの工程で効率化できるポイントがないか十分精査してから導入を検討したほうが良いでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
業務改善で得られる効果は?
ECRSの原則を使うと、具体的にどのような変化がもたらされるのでしょうか。
業務改善で得られる効果について解説していきます。
生産性を向上できる
ECRSの原則を使いそれまでの業務の工程などを見直し改善できれば、生産性を向上させることができます。
それまでかかっていた時間を短縮できれば、その分他の作業に充てることができるでしょう。
また、作業をスムーズに行うことができれば従業員のストレス軽減にもつながる場合があります。
そうすることで結果的に全体の作業効率が改善され、生産性向上へとつながっていくでしょう。
労働環境を改善できる
効率化が進み全体の作業能率が上がると、従業員の作業時間を軽減することができます。
すべて手作業で行っていたようなことをシステムやツール導入で機械化できれば、従業員の負担は軽くなるでしょう。
時間的な問題以外にも、効率の悪い労働環境というのはストレートに従業員の不満につながってしまいます。
また、全体効率ばかりを優先させてしまうと特定の部署や担当者に大きな負担がかかってしまうこともあるでしょう。
改善を進める際には、効率以外の要素も考慮し企業全体としてメリットのある方法を考えることが重要です。
・作業効率が上がれば労働環境改善にもつながる
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業務改善に取り組まないデメリットは?
多くの企業にとってそれまでの業務を見直し改善を行うことは大きなメリットがあるでしょう。
しかし、すべての企業が業務改善に対して積極的であるとは限りません。
改善が進まない背景にはいろいろと考えられます。
例えば、改善するためにはツール導入が必要だと考え、その費用負担を懸念して改善が進まないことなどがあるでしょう。
また、長年行っている慣例を廃止すると一定層から反発されることを危惧して改善に踏み切れないケースもあります。
そのような環境が常態化すると、改善を目指す意識が薄れ環境が悪くても諦めてしまう雰囲気が企業全体に広がる可能性もあるのです。
そうなってしまうと生産性は低下し、労働環境に不満を持つ従業員も増えてしまいます。
ツール導入など大きな変化を起こさなくても、工程順序を変えるようなささいな工夫でも生産性が向上することはあるのです。
常に改善意欲が湧くような環境を構築させ、従業員を促していくことが重要となります。
業務改善に「ECRSの原則」を活用するメリット
業務改善にECRSの原則を活用する具体的なメリットについて解説していきましょう。
生産現場で用いられてきたフレームワーク
ECRSの原則は、主に生産管理の現場で広く活用されてきたフレームワークです。
改善の対象となる業務プロセスをピックアップして、それぞれの工程を精査していきます。
生産工程の中で無くすことができるものがないか、結合できるものがないかといった視点で順序立てて改善案を見出していくのです。
作業についての考え方というよりも、現場の実務に直結する改善策を打ち出すことが多いので改善の効果を実感しやすいでしょう。
その効果の高さから、今では生産現場以外にも応用されるフレームワークとなっています。
作業効率アップに役立つ
ECRSの原則が企業に浸透していくと、全体の作業効率アップに役立ちます。
改善というと、大規模な変化を伴うようなイメージもありますが必ずしも大がかりなこととは限りません。
ECRSの原則では、まずは小さな視点で改善点を探していき段々と改善の規模を広げていきます。
つまり個人単位で行うレベルのことでも十分改善はできるのです。
それぞれが常に効率化を目指すような視点を持っていると、企業全体として作業効率アップにつながっていくでしょう。
「ECRSの原則」を活用して業務改善する際のポイント
ECRSの原則を実際に現場で活用するにはどういった点を意識すればよいのでしょうか。
業務改善を行う際のポイントについて解説していきます。
業務改善の目的を明確にする
ECRSの原則は効果的なフレームワークですが、目的が漠然としているとその効果を引き出せない可能性があります。
まずは業務改善の目的を明確にして、どういった指針を持って進めるか決めておくことが重要です。
例えば、コスト削減を目標とすることや労働時間の削減を目的にすることでは同じ改善を行うのでも内容が大きく変わるでしょう。
目的を最初に明確に提示しておかないと、たとえ改善が進められていても本来の目的から逸れてしまう可能性も出てしまいます。
ただやみくもに工数を減らしてしまうと、かえって非効率になってしまうこともあるのです。
どういった目的のもとに改善を行うかを全員が共有できる状態であることが重要となります。
QCDを意識して考える
製造業の基本となる概念で「QCD」があります。
これは「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」の3つの要素をつなげた言葉です。
良い製品を生産する上でこの3つの条件は重要な要素となります。
高い品質の製品を低いコストで生産し、早い納期で納めることが良い製品の条件といえるでしょう。
また、「QCD」は「DCQ」のように異なる語順で使われることはありません。
これは3つの要素の中でも一番重要視されるのが「Quality(品質)」であるからです。
ECRSを用いた業務改善でも、さまざまな要素を両立して改善することが難しい場合もあります。
その場合ではQCDを意識し、製品の品質を最優先に考えて改善を行ったほうが良いでしょう。
コストの低さや生産工程の少なさばかりを重視して改善を行ってしまい、価値の低い製品を開発しないよう注意しなければなりません。
・QCDを意識して改善を行い、中でも重要視するのは品質
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
業務改善する際の注意点は?
業務改善を進める際の注意点についてご紹介します。
現場の意見を聞く
ECRSの原則を用いた業務改善は、主に現場の業務に直結する改善を行います。
そのため、現場の意見を聞くことは非常に重要な要素の1つです。
実際に業務を行っている従業員が、日頃どういった点に不都合を感じており改善を求めているか十分にヒアリングを行います。
企業全体の業務改善を進めるのは基本的に管理職の仕事になりますが、実務を行うのは現場の従業員が中心です。
トップダウンで改善を進めても、現場が効率化を実感できなければ意味がありません。
現場の意見をすり合わせながら改善を進めていくのが理想でしょう。
その場しのぎの業務改善にしない
業務改善の失敗例として、目的が「改善すること」になってしまう場合があります。
現状よりも少しでも向上を目指し業務改善に取り組んでも「変えること」を目的にしてしまうと本来の目的を達成できません。
例えば、業務改善を行うために無理やり作業工数を削減してしまうと結果的に作業が遅れてしまうこともあります。
本来の目的は作業の効率化であり、業務改善はその手段に過ぎないのです。
その場しのぎの無理な改善を行ってしまうと、不都合が生まれ結果的には元の方法に戻さなければならないこともあります。
業務改善を行う際には、継続して行える改善策であるかどうかという視点も必要でしょう。
「ECRSの原則」をどう活かすか悩んだら?
ECRSの原則は業務改善を行う上で有効なフレームワークです。
うまく活用できれば作業効率を上げ生産性を向上させたり従業員の労働環境を改善させたりすることができます。
しかし、改善目的が漠然としているとその場しのぎの業務改善となり十分に効果を実感できないことも少なくありません。
ECRSの原則をどう活かすか悩んだら、ぜひデジマクラスにご相談ください。
デジマクラスは豊富なノウハウがあり、業務改善を成功に導くための悩みに合わせたアドバイスが行えます。
客観的視点で改善のポイントを指摘することで、自社では思いつかなかった新たな改善策を提案できる可能性もあるでしょう。
また、導入前の従業員へのヒアリングや事前準備の進め方などについても実際の成功事例をもとにご説明します。
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まとめ
近年では少子高齢化に伴う労働人口の減少により、業務の効率化はどの職種の企業であっても至上命題となっています。
効率化と一口にいっても、ただやみくもに作業工程を減らしてしまっては逆効果となってしまうこともあるでしょう。
そこで、ECRSの原則のフレームワークをうまく活用できれば小さな改善点も見逃さず効率良く改善を進めることができます。
しかし、初めてECRSの原則を導入した場合などではどこから着手すればよいのか不明点も多いでしょう。
業務改善について悩みがあれば、ぜひデジマクラスにご相談ください。
プロのコンサルティングに相談し不明点を解消した上で、効果的な業務改善を行っていきましょう。