カスタマージャーニーマップはマーケティング戦略を練る上で非常に重要なものです。
それはBtoCの企業だけでなく、BtoBの企業においても同様です。
BtoBの場合のカスタマージャーニーマップでは、BtoCとはまた違った要素や視点が必要となります。
今回はBtoBカスタマージャーニーマップ特有の要素や事例を解説します。
目次
カスタマージャーニーの概要
カスタマージャーニーとは、顧客が商品を購入するまでの過程のことです。
近年はITの進化に伴い、購入する前でも商品に関する様々な情報が手に入るようになりました。
さらに、気に入れば店舗に行かなくてもネットなどを通しての購入も可能です。
これにより、企業側としては、顧客の購入までの過程が多様化し、マーケティングがしにくくなっている現状があります。
しかし、その一方で顧客情報を取得しやすい、分析できる量の増加・質の向上が可能となりました。
顧客がどのような行動をとり、購入したのか、より購入してもらえるための施策を立てるにおいてカスタマージャーニーは必要不可欠です。
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BtoBのカスタマージャーニー設定で可能になること
BtoBは企業間取引という意味があり、その名の通り、顧客に向けて集客をするのではなく企業に向けてのアプローチになります。
BtoCは、企業が顧客に対して商品やサービスを提供することを指します。
BtoBとBtoCではターゲットがそもそも違うのです。
BtoBカスタマージャーニーを設定することにより可能になることを解説します。
顧客の解像度を高める
ビジネスにおいて、まずは顧客の姿をより正確にする必要があります。
BtoBの場合、取引を考えている企業は何を求めているのかを把握することが大切です。
どんな顧客がいて、どのように商売を展開していきたいのかを、明確にイメージができるような情報収集が必要となります。
顧客アンケートや、購買データの分析など、顧客の感情や悩みに近いものであるほど、企業にとって必要な情報です。
これらにより明確に顧客のイメージができた場合は解像度がしっかりと高まっています。
解像度をとことん高めていけば企業がなにを求めているかを把握することができペルソナ設定がより正確なものになるでしょう。
顧客目線のマーケティング戦略作成
顧客のことを考え抜き、極端な場合その立場に立ってしまうくらい入り込むことが必要となっています。
BtoCは顧客一人の感情で購買が可能となりますが、BtoBの場合は合理的です。
この商品を入れることによって得られるメリットは何なのかを慎重に探っています。
また継続的に取引を続けていきたいか、継続的な取引にあたってサポート体制は整っているかなどを考えています。
またBtoCとは違い、購買にあたり何人もが関わってくることが多いでしょう。
そのため、複数の人のペルソナを理解して、それぞれに合ったペルソナを設定することが重要となります。
マーケティングチーム内の意識共有
マーケティングをするにあたってチームの中での情報や意識を共有することは非常に大切です。
特に、顧客目線やペルソナの共有をし、顧客の行動に対する理解や共通の認識を深めていく必要があります。
これにより施策を検討・実行する際にスムーズに動くことが可能になるほか、認識のずれによるトラブル回避にもつながります。
だれか一人が作成すると偏ったものになりがちです。
顧客への理解を深めた複数人で取り組むことにより、様々な視点を取り入れた精度の高いカスタマージャーニーを作成するできます。
カスタマージャーニー設定手順におけるBtoB特有の要素
BtoBの取引相手である企業は導入にあたり、複数の人が関わります。
またBtoBの場合、自分の購買ではなく企業へのメリットをもとにペルソナが設定されています。
カスタマージャーニー設定にあたり、まずはその企業への理解を深めることが重要です。
それでは具体的に設定手順におけるBtoB特有の要素を解説します。
ファーモグラフィックスの作成
まずBtoBではターゲットとしている企業の情報を集めます。この企業の情報をファーモグラフィックスと呼びます。
ファーモグラフィックスを作成するにあたり、まずは以下のような項目に注目して分析しましょう。
自社の取引上位20%の企業の事業形態
- 会社規模
- 商品
- 抱えている課題
- 購入意思決定の際のキーマンとなる人物
- 購買にあたって関与している人
これらの項目に分けて作成することが重要となります。
顧客関係者リストの作成
顧客の人間関係も購入にあたり重要な影響を及ぼすことから、顧客の関係者のリスト作成も重要です。
BtoBの場合は、購入にあたり何名もが関わっているほか、企業へのメリットを考えてペルソナを設定しています。
この場合はまず一人キーパーソンを設定します。
キーパーソンとしては、一番近い人物(例えば、一度取引の際に会話をしたことがある人)を設定するといいでしょう。
一度かかわったことのある人を設定することにより、あったことのない人よりもペルソナを設定しやすくなります。
次にこのキーパーソンを取り巻く、周りの人間関係をこれまでで得られた情報を活かしながら作成しましょう。
例え正確には作れないとしても、作成しておくことはキーパーソンのペルソナを理解するうえでかなり重要になります。
顧客関係者の抱える悩みの個別想定
顧客ごとに悩みは違うため、それぞれの顧客目線になって悩みを想定します。
ファーモグラフィックスで作成した企業が抱えている課題を想定して、課題解決のために求めているものを理解することが必要です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
BtoBカスタマージャーニー設定から活用までの流れ
続いては、実際にBtoBカスタマージャーニーを設定するにあたっての流れを順に説明します。
ゴール・ペルソナ設定
カスタマージャーニーにおいてペルソナとゴールはとても重要です。
ゴールの内容がカスタマージャーニーを決め、ペルソナをもとに作成されるからです。
まず最終的な目標(ゴール)を設定します。
BtoBの場合は契約・継続的に契約・問い合わせをもらうなど、それぞれのニーズにあったゴールを設定しましょう。
次にキーパーソンのペルソナを設定することが大切になります。
年齢や性別・役職・ライフスタイル・家庭環境・性格など、できる限り細かくあげて、人物像を設定していくことが必要です。
設定出来たらキーパーソンのペルソナに売り込んでいき、キーパーソンを味方につけます。
先述した通り、BtoCと違い、BtoBの場合は何人かが関与します。
味方となったキーパーソンが、宣伝部隊となってほかの人物を説得しやすいように情報を与えることが必要です。
また、キーパーソンがほかの人物に何を質問されても答えられるようにしておくことがマーケティングの際には非常に大切です。
それらを踏まえてペルソナを設定することで購入への導線を作ることが可能となります。
顧客の行動の洗い出しと分析
顧客のペルソナを理解したら、次は行動を洗い出してより深く分析します。
この際、顧客視点になったつもりで行動を予想することがポイントです。
個人の場合、購入する前に家族に相談してから買う人もいれば、自分でいくつかのサイトを見て決めている人もいます。
企業がアクションを起こす際に取ると思われる行動、またその時の感情を思いつく限り洗い出しましょう。
洗い出すことができたら、顧客の行動や感情をもとに、課題・施策にマッチしてないものや、足りないものを分析します。
それによって企業が求めているものにより近づいていくことが重要です。
有名なマーケターでも、顧客の実際の生活を体験します。
そのくらいなりきって行動を洗い出すとともに、いろいろな角度から分析しましょう。
顧客接点と自社の活動の明確化
続いて、顧客接点を見つけていきます。
どのタイミングで顧客に接点を持つか行動を起こすかを決めておきましょう。
また顧客接点が見つかった際に適切なアプローチができるよう、自社の顧客への活動内容も明確にしておくことが大切です。
俯瞰・検討でアイデアやコンテンツを追加・整理
顧客になりきりペルソナを設定して、精度の高い状態で分析するなど、かなり大変なものに感じるかもしれません。
しかし、一度考え過ぎずに、シンプルなものを作ってみることが大切です。
作っている最中や完成したあと見直す中で気づきがありより精度の高いものが作成できます。
また、顧客接点までが明確になったら、違う視点でカスタマージャーニーを見直すことが大切です。
全体を俯瞰しながらマーケティングチーム内で常に共有し、現時点で何が足りないかを整理しましょう。
また、発見できれば新たなアイデアを検討すること、必要に応じて随時コンテンツを追加していくなど柔軟な対応が必要となります。
カスタマージャーニーのBtoB事例
続いては実際にBtoBカスタマージャーニーを上手に用いている事例を紹介します。
日経BPコンサルティング
日経BPコンサルティングのサイト上では、情報収集・検討・購買などを一度に体験できるようになっています。
さらに継続的取引を可能とするため、ニーズや課題に合わせて解決策を提示しています。
BtoBカスタマージャーニーをサイト内で十分に活かしている例だといえるでしょう。
パソナグループ
パソナグループは淡路島プロジェクトや地域創生事業、観光や文化の事業、グローバルなど、様々な事業を行っています。
その中で、きちんと提携した旅行会社にとってのメリットが作られています。
自社との取引も継続的にできているBtoBカスタマージャーニーをうまく活用している好例といえるでしょう。
リコー
リコーもサイト上でBtoBカスタマージャーニーマップの例を実際に出している企業です。
これにより、BtoBカスタマージャーニーを導入したい企業をターゲットにしています。
サービス導入までのマップと、継続取引をするためのマップを設定し、それぞれにあったサービスの提供をしているのです。
これにより、企業はリコーにBtoBカスタマージャーニーを頼む際の不安などが事前に取り除かれています。
BtoBカスタマージャーニーは効果検証と見直しを
これなら顧客に刺さるはずと思って作成しても、実際に購入を決めるのは顧客です。
いくら考えて作成してきたカスタマージャーニーでも当然効果がなければ意味がありません。
効果の検証をすること、また検証結果による見直しを何度も行うことが大切です。
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BtoBカスタマージャーニーの注意点
BtoBカスタマージャーニーの場合、気を付けるべき点は自社の希望や作成者の妄想、業界による決めつけを行わないことです。
あくまで企業ごとによってペルソナが違うことを理解し、データや情報などの事実をもとに判断しましょう。
そしてもう一つは現代の世の中の変化の中で、顧客のペルソナや課題なども目まぐるしく変化していきます。
そのため頑張って作ったカスタマージャーニーも時代が変わる度に作り直さなければならなくなります。
BtoBは継続的な契約を求めている場合も多いことから、必要ならば、すぐに新しく作成するつもりでいることが大切です。
くれぐれも一度作って放置したままにしないようにしましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
カスタマージャーニーマップで顧客の視点に立ったBtoB戦略を
カスタマージャーニーマップは、これまでのプロセスや行動をデータ化して明確にしたものです。
つまり相手の企業のマーケティングチームを同じ方向に動かす役割もあります。
企業に満足してもらうためにも、BtoBカスタマージャーニーマップが出来上がったら何度も見返すことが重要です。
本当に顧客目線になっているか、勝手な希望が入っていないか、購買までの導線ができているかなどを確認しましょう。
その際は必ずチームで見てそれぞれの視点から確認すると良いです。
また気づきがあれば反映して改善をすることを意識して今後の戦略を立てましょう。
BtoBマーケティング戦略で悩んだら
悩んだ場合はまず一旦ペルソナなどの考え方をやめて、とにかく顧客になりきってみることが重要です。
比較的思い浮かべやすいことから、入っていくことで徐々に相手のペルソナが理解できるようになります。
難しく考えずに作成して様々な意見を取り入れながら作成する方が結果的に早く作成できます。
とはいえ、実際にペルソナを理解しようとしてもうまくいかないこともあるでしょう。
その場合はコンサルタントに相談してみてください。
マーケティングの専門家であるコンサルタントに相談することで、ペルソナへの理解を深めるコツを知ることができるでしょう。
それによって自社だけで検討するよりも効率的にカスタマージャーニーマップの作成が可能になります。
それを活用してのマーケティング戦略も相談することも可能です。
もしBtoBマーケティングに悩んでいるならば一度コンサルタントに相談してみましょう。
マーケティング戦略の事例はこちら
まとめ
BtoBカスタマージャーニーマップは顧客の心理がわかるようになる、マーケティング戦略を考える上で重要なものです。
今後BtoCになっても自分の職種が全く違うものになってもサービスや商品を売ることが可能になります。
変化の速い現代社会においてカスタマージャーニーマップは必要不可欠です。
これからの時代に即したマーケティングを行うためにも、カスタマージャーニーマップを作成して活用していきましょう。