大企業だけでなく、中小企業や零細企業でも、利益を上げるためにはしっかりした戦略が必要です。
ブルーオーシャン戦略は様々な経営戦略が提唱されている中でも注目を集めています。
ブルーオーシャン戦略で大成功を収めた事例は多く、それらは利益を手にしただけでなく、一目置かれる存在となった企業ばかりです。
今回はブルーオーシャン戦略の成功事例から、成功の秘訣を探ってみましょう。
目次
ブルーオーシャン戦略の意味
ブルーオーシャン戦略とは、INSEAD(欧州経営大学院)の教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュの二人によって提唱されました。
2人の書籍の中では、ブルーオーシャンとレッドオーシャンという表現が出てきます。
レッドオーシャンとは、魚が少ない海で多数のサメが獲物を争い、血で染まった海のイメージです。
それに対しブルーオーシャンには獲物となる魚がいっぱいいるのに、捕食者であるサメが一匹しかいない状況を表しています。
つまり、ブルーオーシャン戦略とは顧客ニーズはあるけれど参入している企業がいない市場を見つけ、一番乗りを目指すということです。
そうすることにより、利益を独り占めできるだけでなく、確固とした立場を手に入れる可能性を秘めています。
ブルーオーシャン戦略が注目されている背景
企業は既存事業を継続するにしても、新事業を立ち上げるにしても、競合企業がひしめき合う市場で戦うことは避けられません。
そのため、いくらよいサービスを販売していたとしても、顧客を獲得することは難しく、価格競争を余儀なくされるのが現状です。
それゆえ多くの企業が自社サービスを競合他社と差別化するために努力し、利益を上げられる状況を作ろうと日々模索しています。
サービスや商品の差別化を図るために注目されているのが、低コストで高い効果を得ることができるブルーオーシャン戦略なのです。
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ブルーオーシャン戦略の国内成功事例
わたしたちが生活する日本でも、競合がひしめきあう市場で多くの企業が戦っています。
その中で利益を上げるのに、ブルーオーシャン戦略は効果的です。
実際、日本でもブルーオーシャン戦略で成功した企業がたくさんあります。
どのような企業がブルーオーシャン戦略を成功させているのか、その事例をみてましょう。
キュービーネット株式会社 | QBハウス
QBハウスは10分1000円の散髪という新しい市場を開拓した企業です。
一般的な理容室のサービスで必要がないと思われるものをなくし、早くて安い散髪という市場を掘り起こすことに成功しました。
従来、理容師1人が1時間かけて1人を散髪し、3000円から4000円ほどの売り上げを得ていました。
QBハウスは1時間で6人の散髪をすることで売り上げを6000円へとアップさせたのです。
実際、一般的な理容室でもカットにかけている時間は10分ほどです。
QBハウスと大差がなく、顧客は理容師との会話や長い拘束時間から解放されるため、高い満足度を獲得し続けています。
株式会社ZOZO | ZOZOTOWN
ZOZOTOWNもブルーオーシャン戦略で成功した例の1つです。
一般的なECモールのように、どんな商品でも扱うのではなく、ファッションに特化したサービスを提供しています。
しかし、元来ネットショップとファッションとの相性はあまりよいものではありませんでした。
買ってみたものの、届いた服のサイズが全然合わないことがあるからです。
また、メーカーや国によって同じサイズ表記でも実際のサイズに差があり、顧客の服選びを悩ませる原因となっていました。
そのため、試着ができないネットショップでは服や靴は購入しないという人も少なくありません。
そこでZOZOTOWNが開発したのが、ZOZOSUITやZOZOMATです。
ネットショップでファッションアイテムを購入することを躊躇する人たちの悩みを解決し、ほかのECモールとの差別化に成功しました。
また、WEARというファッションアプリで参考にできるコーディネートを公開しています。
それを見て、ほしいと思った商品のページに、顧客がすぐにたどり着けるようにもしました。
ZOZOTOWNは、在庫を抱えないでよい体制も構築しています。
倉庫は所有していますが、それはあくまでも効率的な物流を実現するためのものです。
倉庫にある商品はZOZOTOWNの在庫ではなくメーカの在庫で、それを管理しているにすぎません。
これによりコストダウンも実現に成功しています。
東進ハイスクール
進学予備校の東進ハイスクールも、ブルーオーシャン戦略で成功した企業の1つです。
進学予備校といえば、カリスマ講師が大教室で講義を行うのが一般的でした。
このようなビジネスモデルを維持するため、大勢の生徒を集めることができる都会に校舎を開校しています。
そのため、現役高校生や地方在住の浪人生にはサービスを届けることができませんでした。
しかし、東進ハイスクールは衛星やDVDを用いることで、現役高校生や地方にいる浪人生も顧客にすることに成功したのです。
任天堂株式会社
ブルーオーシャン戦略をあてはめて成功した事例としてとても有名なのが任天堂株式会社です。
任天堂は、今や家庭用ゲーム機で他社の追随を許さないほどの成功を手に入れています。
それまで、SonyやMicrosoftなども家庭用ゲーム機を販売しており、市場はレッドオーシャンの状態でした。
そこで、任天堂はブルーオーシャン戦略をあてはめた新しい家庭用ゲーム機の開発に乗り出したのです。
そして、発売されたのがWiiでした。Wiiが大成功した大きな理由は、小さな子供や大人がみんなで楽しめるゲーム機にしたことです。
今までの家庭用ゲーム機は、若い世代の人が1人で楽しむものでした。
そのため、小さな子供や大人、またみんなでワイワイ楽しみたい人には向いていなかったのです。
任天堂はそこに着目し、高画質など最先端の技術は削り、直感的な操作ができるようWiiリモコンを付け加えました。
そうすることで、同じゲーム機でも競合他社がいない市場を掘り起こすことに成功したのです。
星野リゾート
最後にご紹介するのは、高級温泉旅館や温泉リゾートの運営をしている星野リゾートです。
星野リゾートの競合他社は、海外のホテル運営会社です。
都会の大規模ホテルは、オーナーと運営会社が別ということがよくあります。
海外のホテル運営会社は、200-300室以上の大規模でラグジュアリーな施設を好む傾向があります。
そのため、地方の温泉旅館には参入してきませんでした。
しかし、温泉旅館は所有したいが、運営も行うのは避けたいという投資家が一定数います。
星野リゾートはその市場に目をつけ、成功を手にすることができました。
しかし、星野リゾートが努力なしに成功を手にしたというわけではありません。
コストを抑え旅館運営から利益を得るため、専門職に特化した人材採用ではなく、マルチタスクで働けるスタッフの育成を行いました。
それにより、コストを抑えつつ顧客である旅館所有者のニーズにこたえるサービスを提供しています。
そして、高級温泉リゾートといえば星野リゾートという確固たる立場も手に入れたのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ブルーオーシャン戦略の海外成功事例
ブルーオーシャン戦略を採用して成功しているのは、日本の企業だけではありません。
有名な海外企業の成功事例を2つ紹介します。
サウスウエスト航空
1つ目はサウスウエスト航空です。
サウスウエスト航空は、アメリカの航空会社で、世界で初めてのローコストキャリアの航空会社です。
当時のアメリカでは、中距離の地方への移動したい場合、長距離バスを利用するしか方法がありませんでした。
そのような長距離バスの市場に、航空会社であるサウスウエスト航空が目をつけたのです。
しかし、飛行機での移動を長距離バスと同価格帯で行うことは簡単なことではありません。
そのため、サウスウエスト航空が行ったのが機内設備やサービスの簡素化、機内食や広い座席の削減です。
パイロットや整備士の教育費をカットするため、いろいろな機種の飛行機を使うのをやめ、搭乗券もなくしました。
このように、あるものをなくしたり減らしたりしてコストカットを行ったのです。
さらに、客室乗務員が機内清掃を行うことで、着陸から次の離陸までの時間を短縮し機体の回転率アップにつなげました。
これにより短時間で地方都市へ移動するという顧客ニーズにこたえるサービスを提供することができるようになったのです。
イエローテイル
オーストラリアのワイン、イエローテイルもブルーオーシャン戦略で成功した例です。
イエローテイルは、それまでワインに求められていた熟成や等級表記をなくしました
さらに、コクや味わいの深さ、種類などを減らし、気軽に楽しめるワインを世に送り出したのです。
アメリカ国内で発売したところ、広告を使わなかったにもかかわらず、瞬く間に予定数を上回る1200万本の販売に成功しました。
販売数を伸ばした理由の1つが、ワインは飲みたいけれど、高くて難しいと感じている若者がいたことです。
等級やうんちくなど関係なく楽しく気軽に飲めるワインとして、イエローテイルは受け入れられました。
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ブルーオーシャン戦略のメリット
事例で紹介したように、ブルーオーシャン戦略に成功することで、企業は大きな利益を獲得するこができます。
成功によって得られるメリットはどのようなものはあるのか具体的にみてみましょう。
低コスト・高単価でのビジネス
ブルーオーシャン戦略のメリットの1つが、低コストで高単価なビジネスにつなげられることです。
ブルーオーシャン戦略を使うために、何か高価な投資が必要なわけではありません。
大切なのは、顧客ニーズはあるが競合企業がいない市場を見つけることです。
そのためには、よく考え調査する必要があるでしょう。
もちろん、簡単に見つけることができず時間がかかる可能性もあります。
しかし、ブルー・オーシャンを見つけるために必要なのは考え調査することですから、コストがどんどんかかるということはありません。
また、いったんブルー・オーシャンを見つければ、競合がいないので価格競争を行う必要がなくなります。
つまり、十分に利益を得られる高単価なビジネスを展開することができるのです。
シェア獲得
既存事業の中でシェアを伸ばすのは非常に大変なことです。
強い企業がいたり、企業努力といった名目で値下げ交渉に応じなければならなかったりします。
しかし、競合企業も同じことをしてくるため、そう簡単にシェアは拡大できません。
ブルーオーシャン戦略とは、新たな顧客ニーズを掘り起こしたり、見つけたりすることです。
つまり、参入した時点では自社しかそのサービスを提供していません。
先行者利益としてシェアを一気に獲得することができるのです。
ブルーオーシャン戦略のデメリットと対策
メリットがあればデメリットもあり、ブルーオーシャン戦略にもデメリットがあります。
デメリットに対しては、きっちりと対策を打つことが大切です。続いてはデメリットとその対策を解説します。
模倣されるリスク
ブルーオーシャンを見つけたとしても、成功を見た他社がすぐに参入してくることでしょう。
利益が得られる市場を、どの企業も探しているため、他社が見つけたブルーオーシャンを見逃してくれるわけがありません。
では、後から参入してくる競合企業が模倣できないようにするため、どんな対策がとれるでしょうか。
それは独自のノウハウや仕組み作りです。
一番に市場に参入するからこその苦労も多くありますが、そこで見つけたノウハウや仕組みは大きな武器になります。
簡単に模倣されてしまわないよう、成功のために必要なノウハウや仕組みを大切にすることが大切です。
高度なマーケティングスキルが必要
顧客ニーズがあって競合他社がいない市場を見つけるのは簡単なことではありません。
極力失敗せずにブルー・オーシャンを見つけるために必要なのが、マーケティングスキルです。
サウスウエスト航空の事例にあるように、既存の市場だけではなく、代替産業までも研究することも求められます。
幅広い視野を持って市場を観察し、研究する必要があるでしょう。
また、ブルー・オーシャンを見つけたとしても、販売まで結び付けられなければ利益を得ることはできません。
そのためにも、マーケティングスキルが必要となります。
企業によってはマーケティングスキルが足りなかったり、失敗したとき建て直すための資金力がないという場合もあるでしょう。
その場合は前もってマーケティングスキルを磨いておくことが必要です。
事前の入念な計画を
ブルーオーシャン戦略を成功させるには、思い付きの事業展開ではなく入念な計画が必要です。
なぜなら、ブルー・オーシャンを見つけたと思っても、実際にはブルー・オーシャンではない可能性もあるかもしれません。
例えば、特別な許可や資格を得ている企業しか参入できない分野の事業で、簡単には参入できない市場だということもあるでしょう。
また、ブルオーシャン戦略を採用したものの、顧客ニーズが思った以上に少なく失敗してしまうこともあり得ます。
そうなれば事業を建て直したり、また会社の経営自体を建て直す必要があるでしょう。
しかし、資金力の限られている企業の場合、建て直すことが難しいかもしれません。
こういった問題を避けるためにも、事前の計画は欠かせません。
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ブルーオーシャン戦略に有用なフレームワーク・ツール
では、ブルーオーシャン戦略を成功させるために役に立つフレームワーク・ツールにはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は2つ紹介します。
アクション・マトリクス
1つは、アクション・マトリクスです。
アクション・マトリクスには、4つの分野があります。
- 取り除く
- 減らす
- 増やす
- 付け加える
コストを抑えるために、既存事業では当たり前とされている要素で、取り除いたり、少し減らしたりできるものを考えます。
QBハウスの事例でいうと、マッサージや洗髪などを取り除きました。
それだけでなく、待ち時間や散髪にかかるトータル時間を減らしています。
一方で消毒の徹底などにより衛生基準を高め、切った髪の毛を吸い取るシステムを付け加えています。
このようにして、コストダウンすると同時に顧客ニーズにこたえることができるサービスを創出したのです。
戦略キャンパス
ブルーオーシャン戦略を成功させるために利用できるもう1つのツールは、戦略キャンパスです。
これは、顧客ニーズを数値化し、それをグラフにすることです。
例えばイエローテイルは、既存のワインに対する顧客ニーズを数値化しました。
その結果、熟成や味の深みなどは数値が高かったですが、選びやすさや気軽に飲めるという要素は含まれていませんでした。
戦略キャンパスを見て、取り除いたり、減らしたり、反対に増やしたり、付け加えたりできる要素を考えることができるのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ブルーオーシャンを見つけ出す「バリューイノベーション」
バリューイノベーションを追求すれば、あなたもブルー・オーシャンを見つけ出すことできるのです。
バリューイノベーションとは、既存サービスから要素を取り除いたり減らしたりし、他社のサービスにはない価値を提供する戦略です。
つまり、取り除いたり減らしたりしてもよい要素を見つけ、削減することでコストダウンにつなげます。
また、既存サービスにはない要素を増やしたり付け加えたりすることで、他社のサービスと差別化できるのです。
ブルーオーシャン戦略を駆使して成果を出すなら
ブルーオーシャン戦略は、今日始めて、明日結果が出るというようなものではありません。
しかし、日ごろからブルーオーシャン戦略を駆使することで、きっと自社だけの市場を見つけることができるはずです。
世界で唯一無二の商品やサービスを提供できるようになるのです。
しかし、ブルーオーシャンを見つけることは簡単にできることではありません。
どのように戦略を練れば良いのか迷っているなら、ぜひデジマクラスに相談してみてください。
デジマクラスではマーケティング戦略に関する相談も受けているので、ぜひご検討ください。
まとめ
ブルーオーシャン戦略とは、競合他社がいないが顧客ニーズがある市場を見つけたり、掘り起こして一番乗りすることです。
アクション・マトリクスと戦略キャンパスを用いて、コストダウンと既存サービスとの差別化を図るようにしましょう。
利益が上がるようになるまでに積み上げた努力が、ノウハウや事業を推進するための仕組みという形で蓄えられます。
それによって後発企業の追随を許さないサービスの構築へと導いてくれるでしょう。