ユーザーのニーズや行動把握に役立つ顧客分析は、ビジネスにおいて重要な取り組みです。
効率的に顧客分析を行うのに役立つフレームワークには、どのような種類があるのでしょうか?
この記事では顧客分析を実施する際に便利なフレームワーク4つと、それぞれの特徴を解説しています。
フレームワークを用いるメリットやデメリット・顧客分析の基本となる項目も押さえておきましょう。
目次
顧客分析の目的
企業が売り上げの向上を図るにはユーザーのニーズや属性を把握して、効果的な宣伝を打つ必要があります。
販売戦略を立てるうえで顧客のニーズ・市場規模といった現状を把握するために行うのが、マーケティングにおける顧客分析です。
ユーザーの属性や購買行動を分析することで自社の課題や消費者のニーズをつかみ、売り上げの向上につなげられます。
顧客分析を行う細かい目的は業者やサービスによって異なりますが、ゴールを明確に定めるのがポイントという点は共通です。
例えば既存顧客の中でメインターゲットとなるユーザーを決める、新規顧客を開拓するなどが挙げられます。
それぞれの目的に応じた顧客分析ができれば、アプローチの方法が明確になり効率的な利益向上を見込めるでしょう。
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顧客分析の重要性
自社のマーケティングに顧客分析を取り入れるに当たって、まずはその重要性を把握することが大切です。
ここでは顧客分析の実施によって実現できることから、必要性を読み解いていきましょう。
顧客分析の情報を営業戦略に活かす
自社サービスの売り上げ向上を図るうえで戦略的な営業活動は欠かせません。
ただやみくもに売り込んでも相手のニーズを満たせなければ、営業に使った時間が無駄になる可能性もあります。
利益の向上につながるユーザーの属性や購買行動を把握できれば、リソースを割くチャネルや顧客層の絞り込みが可能です。
顧客分析を取り入れることでターゲットの選定に必要なデータを入手でき、営業戦略がより効率的なものになります。
自社サービスの改善
自社サービスをよりよいものにするために重要なのは、あらゆる角度から分析を加え解決すべき課題を洗い出すことです。
中でも顧客に関するデータはサービスを改善するための施策に大きく貢献します。
購買行動の傾向や属性ごとに分析を加えると、自社の商品やサービスが消費者のニーズを満たせているか把握が可能です。
実際のサービス内容だけでなくサイトの使い勝手やカスタマーサポートについても、改善すべき点を可視化しやすくなります。
・分析から得たデータを活用することで効率的な営業を実現できる
・消費者のニーズを把握でき自社サービスの改善に役立つ
顧客分析の基本項目をチェック
マーケティングにおける顧客分析を行ううえで、最低限押さえておきたい基本項目は4つあります。
適切な分析で売り上げを向上させるためにも、それぞれ具体的に何を指すのか・なぜ必要なのかをチェックしましょう。
ペルソナの明確化
「ペルソナ(Persona)」とはラテン語で仮面を意味する言葉で、マーケティングにおいては「顧客となる架空の人物」を指します。
従来のマーケティング手法では「20代男性」「既婚」「首都圏在住」のように、大まかな属性をターゲットとして定めていました。
しかし近年は消費者の価値観が多様なものになっており、これまでの分類方法では正確なニーズの把握が難しくなっています。
顧客分析では考え方や趣味嗜好・行動のスタイルなどを設定して明確にペルソナを決め、アプローチ方法を考えましょう。
特にLTV(顧客生涯価値)の高い人物像は長期的な利益につながる優良顧客のため、ペルソナとして理想的です。
オンラインマーケティングではインターネットをどのように活用しているかも、プロフィールとして詳細に定めます。
市場規模の分析
ペルソナを具体的に定めた後に必要なのが市場規模(需要)の分析です。
ペルソナの属性に当てはまる人たちがどれだけ自社サービスの売り上げにつながるか、将来性はあるかを分析します。
趣味嗜好がニッチすぎて市場規模が小さい、数年で自社サービスに興味を持たなくなるという場合はペルソナを見直しましょう。
自社のサービスを長期的に購買するような、LTVの高いペルソナに変更すると効果が出やすくなります。
顧客ニーズの分析
顧客となるユーザーのニーズを深掘りして分析することも、効果的な戦略の立案に欠かせません。
事業が目指す方向性の決定に使われる「3C分析」でも、最初に把握すべきポイントは顧客ニーズです。
例えば労務管理の一元化を実現するSaaSサービスを提供しているなら、クライアントとなり得る企業の課題を調査します。
規模や業種・業務状況によって企業が抱える課題は変わってきますので、丁寧に情報収集をしてニーズの把握に努めましょう。
得た情報をオンライン上のアクションなどとともにデータ化し分析を加えれば、ニーズとサービスの不一致を見つけやすくなります。
ターゲットの課題解決に役立つサービスを提供できるようになれば、長期的に利益を得られる関係を築けるでしょう。
購買プロセスの分析
顧客がどのようなルートを経て自社サービスの購買に至ったのかも、必ず分析したいポイントです。
ファーストコンタクトから消費者のアクションを追跡し、受注した場合も失注した場合もそのプロセスを調査します。
対象が個人ならサービスを購入した人と購入しなかった人で、どのような違いがあるか分かれば改善策を打ちやすくなるでしょう。
顧客の行動プロセスをたどることで購買につながった要素と、逆に障害となってしまった要素を特定できます。
精度を上げるにはこの段階でもペルソナ設定が適切だったか、カスタマージャーニーは有効かを検証しなければなりません。
また対象が法人の場合は1担当者の行動だけでなく、購買に関わる全員の行動プロセス把握も必要です。
・どのような人物をペルソナとするか明確に定める
・設定したペルソナで十分な市場規模や将来性があるかを分析する
・顧客となったユーザーが持つニーズを的確に把握する
・受注または失注に至るまでのプロセスを分析する
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
顧客分析の基本的な流れ
顧客分析にはさまざまな手法が用いられますが、戦略を決めるまでの基本的なプロセスは以下の流れで共通しています。
- 顧客となるユーザーを分類する
- 分類したグループごとに購買行動の特徴やニーズを分析する
- 2で得た情報を元に優良顧客を見定め、今後の施策を決定する
手法ごとに変わってくるのは主に1のフェーズです。自社が達成したい目標や顧客分析を行う目的によって、分類の仕方を定めます。
活用できるフレームワーク
顧客分析で目標を達成させるには適切なユーザーの分類が欠かせません。
しかし消費者・クライアントをどのように分類するか1から決めるのは簡単ではないでしょう。
そこで活躍するのが思考の枠組みである「フレームワーク」です。顧客分析ではどのようなフレームワークが役立つのでしょうか?
各フレームワークは並列に扱われるものではなく、目的に応じて複数組み合わせる場合が多いという点がポイントです。
RFM分析
接点を増やすべき顧客の絞り込みに役立つのが「RFM分析」です。以下の3要素から顧客を並べ替えてグループ分けします。
- Recency(直近の購入日)
- Frequency(購入の頻度)
- Monetary(購入した金額の累計)
Recencyの日付はシステムのデータなどから割り出し、現在に近いほど優良な顧客として位置づけます。
Frequencyは高いほど売り上げにつながるユーザーを見なす指標です。過去の購入履歴のデータを取って回数をカウントします。
実際にどの程度自社に売り上げをもたらしたかを把握できるのがMonetaryです。大きいほど優良顧客と見なします。
これらの指標を総合して高い位置にいる顧客をメインのターゲットとすれば、利益の向上を見込めるでしょう。
セグメンテーション分析
多様化した消費者のニーズに対応するために重要視されているフレームワークが「セグメンテーション分析」です。
セグメンテーションとは「Segment(区切り)」から来た用語で、顧客や市場をニーズや属性に応じて細分化する行動を指します。
分類に使われる要素は以下の4つです。
- 地理的変数
- 人口動態変数
- 心理的変数
- 行動変数
地理的変数とはユーザーがいる地域に関連する要素です。エリアごとの文化や慣習もこの中に含まれます。
人口動態変数は年齢や性別・家族構成・職業など、統計から読み取れる要素です。
価値観や性格・好みといった数値化できないものは心理的変数とされています。
行動変数はユーザーがサービスを購入した回数や問い合わせ件数など、アクションを分析すると分かる指標です。
これら4つを組み合わせて市場を細かく分けていくと、より精密なアプローチが可能になります。
デシル分析
「デシル分析」はRFM分析のように累計の購入金額による区分けが必要なとき、よく用いられるフレームワークです。
ユーザーがサービスに対して使った金額を10区分して分析を加えます。「デシル(decyl)」はラテン語で10を表す言葉です。
販売に使っているシステムから累計購入金額のデータを取り、並べ替えると区分けがしやすいでしょう。
上から1位・2位と順位を付けランクごとに売り上げ全体に対する比率を計算します。
デシル分析を使うと手軽に購入金額による順位付けができますが、購入頻度の低いユーザーも上位に入ってしまう点は問題です。
LTVの高い消費者を見極めたいのであれば、他のフレームワークと併用した方がよいでしょう。
CTB分析
高い精度でユーザーの購買行動を予測したいなら「CBT分析」の活用が効果的です。
次の3つの要素を軸として顧客を分類し、どのような購買行動を取っているかを分析します。
- Category
- Taste
- Brand
アパレルで用いられるCategoryは「メンズ」「アウター」など大枠の分類と、「ジャケット」といったアイテムの名前です。
Tasteはユーザーの選ぶ色やデザインの傾向・実現できるファッションスタイルなどを指します。
Brandで具体的にどのブランドの商品を好むかによって、対象となる顧客をさらに絞っていくのが定石です。
このように段階的に顧客を絞り込んでいくことで、精密な購買予測が実現されます。
コホート分析
サブスクリプションやSaaSサービスの普及に伴い注目を集めるフレームワークが「コホート分析」です。
「Cohort(集団・集まり)」という意味の通り、近い時期に同じ行動を取ったユーザーを1つの集まりとしてグループ分けします。
例えば「2021年の8月にA社のサブスクリプションサービスを購買し始めたユーザー」をまとめ、行動を分析するのです。
コホート分析によって正確に効果を測定できる指標として、チャーンレート(解約率)が挙げられます。
チャーンレートは定期購買を始めて間もない消費者より、長く購買しているユーザーの方が低くなるのが一般的です。
そのため購買しているユーザー全体を分析してしまうと、年月がたつにつれて解約されなくなっているように見えてしまいます。
しかし特定の期間に解約した顧客の数が分かれば、正確なチャーンレートの把握が可能です。
・ユーザーの優先順位付けに役立つRFM分析
・ニーズの深掘りを可能にするセグメンテーション分析
・精密な購買予測を実現するCTB分析
・期間ごとの動向を把握できるコホート分析
フレームワークのメリットやデメリット
顧客分析にフレームワークを取り入れる際は、メリットとデメリットの双方を理解した上で検討しましょう。
メリットがデメリットよりも上回るのであれば活用するのが賢明です。
メリット
フレームワークを使う最大のメリットは時間の節約です。
分類の仕方や区分けに使う要素を自力で考えるには、知識や経験だけでなく相当な時間も必要になってきます。
すでに用意されている枠組みに従って分析を進めていけば、手間をかけず最大限の効果を得られるでしょう。
自社の目的をよく洗い出してそれに合うフレームワークを選ぶと、少ないコストで大きな成果を見込めます。
デメリット
基本的にフレームワークを活用すること自体にデメリットはありませんが、使い方によっては問題が起こる可能性があります。
紹介したもの以外にもさまざまなフレームワークがありますが、どれも万能な枠組みではありません。
的外れな分析を加えても効果を見込めないどころか、分析に使った時間が無駄になってしまう事態も考えられます。
ゴールを達成するためにはどの角度から分析すればよいのかをよく考え、目的に合ったフレームワークを選びましょう。
「RFM分析+デシル分析」のように複数のフレームワークを組み合わせると、より精度の高い分析が可能です。
・メリット:既存の枠組みを活用でき効率化を図れる
・デメリット:目的に合わせた使い方をしないと効果を期待できない
顧客分析の注意点
顧客分析を行う上で注意したいのは「実施するだけでは意味がない」という点です。
まずは自社が顧客分析によって何を知りたいのか・得た情報は何に役立つかを考えなければなりません。
「Aは売れているがBは売れていない」という事実が分かったところで、その理由まで分析しなければ具体的な対策は不可能です。
分析データを新規顧客の開拓や既存顧客の囲い込みにつながるよう、常に深掘りする意識を持ちましょう。
目的とそれを達成するために必要なデータが明確になっていれば、収集すべき情報も見えてくるはずです。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
顧客分析の活用事例をご紹介
洋菓子を製造・販売する製菓メーカーは、地方のみ直営店を置きECサイトなどオンラインの市場をメインターゲットとしていました。
CRMに保有する顧客データと購買データを生かして、どのように購買回数の増加につなげるかが当時の課題です。
アピールしていきたいメインターゲットの見極めに「RFM分析」が功を奏しました。
コンサルティング会社が提案したのは、顧客を「優良顧客」「一般顧客」「育成顧客」の3グループに分ける手法です。
購入回数が1回のみのユーザーが7割ほど存在していたため、優先してアピールすべき優良顧客からは外しています。
平均して月4回も購入している優良顧客のニーズ分析に注力し、ロイヤリティや満足度の向上につながる施策を打ち出しました。
顧客分析に関して困ったときの対処法
自社が達成したい目標に合わせて顧客分析を実施するには、ペルソナ設定やニーズの深掘りなど細やかな戦略が必要です、
フレームワークを活用するにしても適切な使い方をしなければ、思うように効果が出ない場合もあります。
もし顧客分析の仕方が分からない・ターゲットの絞り込みが難しいといったお悩みがあるなら、弊社にご相談ください。
デジマクラスではフレームワークを用いた顧客分析をはじめ、マーケティング全般のコンサルティングサービスを提供しています。
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まとめ
顧客分析は売り上げを高めるために欠かせない施策です。導入によって営業戦略の効率化・自社サービスの改善を実現できます。
活用できるフレームワークには目的別に多くの種類がありますが、それぞれ適したシーンは別です。
自社で達成したい目標を明確にしたうえで適切なフレームワークを採用し、効果的な顧客分析を実施しましょう。