ビジネスやマーケティングの現場では常に客観的・論理的に物事を判断する思考力が求められます。
ロジカルシンキングと呼ばれる思考法です。
このロジカルシンキングには基本となる概念があるのをご存じでしょうか。
MECEと呼ばれる考え方でビジネスの現場はもちろん日常のあらゆる場面で応用が可能です。
今回はビジネスにおけるMECEの重要性やMECEに考える際のポイントをご紹介します。
併せてMECEに活用できるフレームワークも詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
MECEの特徴
MECEとは一体どのようなものなのでしょうか。
また、MECEを用いた活用法にはどんなものがあるのでしょう。
MECEの目的や特徴についてご紹介します。
MECEとは
MECEとは以下の4つの単語からなる用語です。
・Mutually お互いに
・Exclusive 重複せず
・Collectively 全体に
・Exhaustive 漏れがない
それぞれの頭文字を取り「ミーシー」「ミッシー」と呼ばれます。
日本語で漏れなく重複もないという意味を持っています。
MECEに考える
では、MECEはどのような考え方なのでしょう。
アンケート調査を例にMECEについて考えてみます。
仮に全国の男女100名を対象にアンケートを行った結果を整理する際、どのようなことから始めれば良いでしょう。
男性or女性で分ける、都道府県別に集約するなど回答者の属性に応じてカテゴライズから始める方が大半だと思います。
このようにカテゴライズすることで回答の重複を防ぐことができます。
また、100名分の回答を整理することで全体に漏れのない回答結果を集めることが可能になります。
これがMECEに考えるということです。
MECEを用いると複雑な要素を含んだ問題もシンプルかつ漏れなく整理することができます。
結果、情報の過不足や認識のズレを最小限に減らすことが可能になるでしょう。
MECEの重要性
ビジネスで最も重要なのが無駄を省きより効率的に業務を進めていくことです。
MECEは課題を細分化し、個々の要素をシンプルにすることで本質的な問題を明確化する特徴を持っています。
本質的な問題を明確化するとはどういうことなのでしょう。
次にこの意味について詳しく解説をします。
ロジカルシンキングの基本となる概念
マーケティングにはいくつもの客観的な根拠を基に事業戦略を立てることが求められます。
ここで役立つのが客観的・論理的に物事を判断する思考力です。
ロジカルシンキングと呼ばれる思考法で一度は耳にされた方も多いでしょう。
このロジカルシンキングのベースとなる概念がMECEです。
物事を体系的に整理し矛盾なく考えるためには、まず全ての問題を洗い出すことが必要になります。
この時、MECEを用いて漏れなく・重複なく整理しておくことが重要です。
問題の整理ができてこそロジカルシンキングが生きてくるです。
課題の整理に活用できる
MECEに考えることで複雑な要素を単純化し課題の整理を行うことができます。
先ほどのアンケート調査のように複数の回答ををカテゴリー別に仕分けすることで課題を単純化することができます。
これを繰り返すことによって、課題の本質を明確にすることが可能になるはずです。
このように複雑に絡み合った問題の要因を分析し最適な結論を導き出す上でMECEは欠かせない考え方といえるでしょう。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
MECEに活用できるフレームワーク
次にMECEに活用できるフレームワークをご紹介します。
代表的なフレームワークは以下の4つです。
- 3C分析
- 4P分析
- SWOT分析
- バリューチェーン
これらのフレームワークについて詳しく解説をします。
フレームワークを活用すれば市場の動向や経済状況に合わせて最適な戦略を立てることができます。
3C分析
マーケティング担当者ならご存じの方もいらっしゃるでしょう。
- Customer(顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
3つの要素で構成されるフレームワークです。
それぞれの頭文字を取って「サンシーまたはスリーシー」と呼ばれています。
3C分析ではこれらの3つの視点から問題を分析し、最適な解決策を導くことができます。
では、どのようにすれば最適な解決策を導くことができるのでしょうか。
3C分析を行う上でそれぞれの観点から押さえるべきポイントをご紹介します。
- Customer(顧客)…市場規模・顧客ニーズ・顧客の購買行動
- Competitor(競合)…競合の規模・競合のサービス内容・リソース
- Company(自社)…市場から見た自社の立ち位置・強み・弱み・リソース
上記のポイントを押さえておけば、他社との差別化や自社に合ったターゲティングなどが可能になります。
4P分析
別名マーケティングミックスと呼ばれるフレームワークです。
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販促)
4つの要素で構成されています。
4P分析も3C分析と同様にマーケティングに必要なフレームワークといわれています。
マーケティングにおいて4P分析はどの場面で必要とされるのでしょう。
4P分析はマーケティング施策立案に必要なフレームワークです。
実行段階の直前にあたるので実行戦略とも呼ばれます。
では、4P分析とは一体どんな考え方なのでしょうか。
4つの要素別に押さえておきたい重要なポイントをご紹介します。
- Product(製品)…どのような特徴があるのか・どんな人にメリットがあるのか
- Price(価格)…市場において適正価格であるか・自社にとって十分な利益を確保できるのか
- Place(流通)…実店舗もしくはECサイトなどユーザーの購買につながる流通経路は何なのか
- Promotion(販促)…ユーザーの関心を引く効果的な最適なプロモーション活動にどのようなものがあるのか
4P分析を活用すればリスクを抑えつつ効果的なマーケティングを行うことが可能になるでしょう。
SWOT分析
自社を取り巻く外部環境と自社の資産やブランド力などの内部環境を強み・弱みの2つの観点から分析するフレームワークのことをいいます。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
4つの要素を組み合わせたパターンで分析をします。
これらの頭文字を取り「スウォット分析」と呼ばれています。
実際にどのような組み合わせがあるのでしょう。
- Strength×Opportunity 強み×機会
- Weakness×Opportunity 弱み×機会
- Strength×Threat 強み×脅威
- Weakness×Threat 弱み×脅威
全部で4つのパターンがあります。
このパターンに照らし合わせて様々な状況に応じたマーケティング戦略を想定することが可能です。
バリューチェーン
企業の事業活動をそれぞれの部門に切り分けます。
その上で競合と比べてどの部門が優れているのか、どの部門を強化すべきなのかを分析するフレームワークのことです。
バリューチェーンのメリットは、自社の事業活動の全体を客観的に分析できること。
それにより自社の強みや強化すべき点が明確になります。
事業活動を1本の鎖(Chain)に例え、各部門の価値(Value)を高めることで総合的な価値を高める目的があります。
競合の差別化や事業前略の見直しなどに活用すると良いでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
MECEの基本的な手法
MECEを用いたフレームワークは以下の手順で行います。
- 最終的なゴールとなる目標の設定
- 目的を達成するための必要な要素の洗い出し
- 洗い出しした要素の細分化
具体的にいうと最終的なゴールを頂点に問題点や必要な施策を細分化していく作業です。
図に表すとツリーのような構造になることからマーケティングの現場ではロジックツリーと呼ばれています。
ロジックツリーには問題に関わる全ての要素が含まれていなければなりません。
また、同じ要素が含まれていてはツリーは完璧とはいえません。
そこで漏れなく・重複しないMECEの考え方が必要になるのです。
ロジックツリーを用いた問題解決へのアプローチ方法
ロジックツリーを用いたフレームワークには2つのアプローチ方法があります。
- ツリーの頂点であるゴールから問題を細分化するアプローチ方法
- ツリーの底辺から全体像を導き出すボトムアップアプローチ方法
この2つのアプローチについて詳しく解説をします。
トップダウンアプローチ
最終的なゴールである目標を設定した上で分析を進める方法です。
全体像がはっきりしている場合に有効なアプローチ方法です。
トップダウンアプローチにはどのようなメリットがあるのでしょう。
トップダウンアプローチのメリットは以下の通りです。
- 体系的・不観点的に物事を考えることができる
- ゴールを意識した分類がしやすい
トップダウンアプローチを用いる場合、全体像が見えていることが条件になります。
なぜなら必要な要素が漏れていても気付かない可能性があるからです。
したがってゼロベースの状態では使えないアプローチ方法ともいえるでしょう。
ボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチはゼロベースの段階で用いられるアプローチ方法です。
新規事業の立ち上げやプロジェクトの初期段階に有効なフレームワークです。
全体像が不明確な場合にメリットがある一方、ゼロベースの段階だからこそのデメリットも忘れてはなりません。
要素の洗い出しが不十分な場合、構成要素に漏れが生じる可能性があります。
また分類の仕方を間違っていると同じ要素が重複する可能性もあるので活用の際は十分注意しましょう。
ロジックツリーを用いたアプローチ方法は活用するシーンを間違うと誤った方向性に向かう危険性があります。
状況に応じてアプローチの仕方を使い分けることが重要です。
MECEに考える際のポイント
MECEに考える際のポイントは以下の2つです。
- 整理対象の全体像を把握する
- 整理の軸を決める
この2つのポイントについて詳しく解説をします。
整理対象の全体像を把握する
MECEは問題を俯瞰的にとらえる考え方です。
俯瞰的にとらえるとはどのようなことを指すのでしょうか。
それは物事の全体を大きく捉えるということです。
そこから物事を構成する各要素を洗い出し、必要な要素を漏れなく・重複なく抽出することがMECEの考え方なのです。
整理の軸を決める
次に重要なポイントが整理の軸を決めるということです。
なぜ、軸を決めないといけないのでしょう。
それは軸がぶれてしまうと必要な要素が漏れてしまうからです。
MECEの定義は漏れなく・重複がないことを指します。
整理の基準となる軸がぶれることによって全体を構成する要素もあいまいになります。
この状態ではMECEに考えることは難しいでしょう。
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MECEの分析における主な視点
MECEを用いた分析の際に重要なのが切り口の設定です。
以下の4つの視点で切り口を考えてみると漏れや重複なく分析を進めることができるでしょう。
- 類似性
- 因数分解
- 原因と結果
- プロセス
ここではそれぞれの視点について1つずつ説明をしていきます。
類似性
分析対象を類似性の視点からグルーピングする方法です。
この章の冒頭で例に挙げたアンケートがこの類似性の視点によって分類されたものです。
先ほどのフレームワークでご紹介した4P分析も類似性の視点を持つフレームワークといえるでしょう。
この手法は論点の整理や対象の絞り込みに用いられます。
因数分解
数式という視点で要素を切り分ける方法です。
自社の売上を例に考えてみましょう。
売上を知るには掛け算を用います。
その際の計算式は以下の通りです。
- 売上=客数×客単価×日数
これを因数分解すると客数・客単価・日数の要素で売り上げが構成されていることがお分かりいただけるでしょう。
マーケティングを行う際にはさまざまな要素が数値化されるのでこうした因数分解が頻繁に用いられます。
原因と結果
ある事象に対しその原因と結果のそれぞれの視点から現状の問題を洗い出す際に役立つフレームワークです。
マーケティング施策を行う上で欠かせない分析手法のひとつといえるでしょう。
仮に自社の売上が減少したと仮定した場合、このフレームワークを用いて問題の洗い出しを行います。
減少につながりうるあらゆる要因を洗い出すことでどの部分を改善しどこを強化すべきか課題点が浮き彫りになります。
これによってマーケティングに必要な現状把握が容易に行えるでしょう。
プロセス
時系列や段階など順を追って分解をする際に役立つ視点です。
有名なフレームワークがAIDMA(アイドマ)です。
AIDMAはユーザーの購買決定プロセスを以下のステップに従って分析に必要な要素を抽出します。
- Attention (商品の認知)
- Interest (関心を持つ)
- Desire (欲求)
- Memory (記憶)
- Action (行動)
この5つのステップを認知段階・感情段階・行動段階に分け、各段階に最適なマーケティング方法を探るフレームワークです。
課題や問題によって活用できる最適なフレームワークがあります。
さまざまな視点から事例にあった活用法を見つけましょう。
MECEに考える際の注意点
このように問題解決や現状の把握に役立つMECEですが、全ての出来事に対応ができるわけではありません。
MECEに考える際には以下のことに注意をしましょう。
グルーピングができない問題にはMECEは使えない
MECEは複雑な要素を単純化しグルーピングすることで解決策を導く考え方です。
したがって曖昧な要素を含んだ問題には活用できません。
その場合は別の考え方を用いることをおすすめします。
目的を明確にする
ビジネスやマーケティングにおいてMECEは非常に便利な考え方です。
しかし、MECEに考えることにこだわりすぎて本来の目的を見失ってしまっては意味がありません。
まずは目的を明確にし、その上でMECEに考える必要性があるかを冷静に判断することを心掛けましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
WebマーケティングにおけるMECEの活用法
MECEはWebマーケティングのあらゆる場面で活用できます。
MECEに考えることで得られるメリットは以下の5つです。
- 分析力の向上
- 問題解決力の向上
- 提案力の向上
- コミュニケーション力の向上
- 生産力の向上
これらの能力が向上することで、市場調査やプレゼンテーションなどマーケティングに関する業務に活用が可能です。
MECEの活用方法で困ったら
ここまでMECEについてフレームワークなどを交え解説をしてきました。
MECEはビジネスシーンのあらゆる現場で活用される考え方です。
しかし、活用方法が多岐にわたるためどのようなシーンで活用すれば良いか悩む方もいるでしょう。
そんな時は、MECEの効果的な活用方法を知る専門家に相談することをおすすめします。
自社の現状に沿った最適なアドバイスが受けられるでしょう。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
まとめ
今回はMECEについて現場で役立つフレームワークの解説とMECEの重要性やポイントをご紹介しました。
MECEは慣れるまでに時間が掛かりますが、トレーニングを重ねれば必ず習得ができます。
まずは今回ご紹介をしたフレームワークを使ってMECEについて理解を深めてみてはいかがでしょう。
繰り返しフレームワークを行うことで思考力は鍛えられます。
ぜひ明日からのマーケティングにMECEを取り入れてみてください。