OODAループと呼ばれる意思決定方法は、マーケティングで大変重要視されています。
よく比較されるPDCAサイクルとの違いとは何か、実践するメリットやデメリットは何かを解説します。
どのようなものなのかを予め知っておくことで、フレームワークでも効果的に使用することが可能です。
OODAループとPDCAサイクルの開発された目的を知ることで、最大限の効果を発揮できます。
組織内で実践するためのコツも解説しますので、ぜひご活用ください。
マーケティングに悩みを抱える方のためになる内容ですので、参考にしてください。
目次
OODAループの特徴
OODAループとはどのような目的で開発されたのでしょうか。
どのような方法で実践していくのか、段階を踏みながら見ていきましょう。
歴史や開発目的を知るとどのような場面での使用が効果的なのか、自分自身で判断することができます。
米国の航空戦術家が提唱
OODAループはアメリカの航空戦術家である、ジョン・ボイドによって発明されました。
元々は軍事行動における指揮官のために考えられたものでしたが、その後様々な分野に取り入れられるようになります。
彼は、自国の軍がどんな不利な状況でも40秒で形勢を逆転したことから「40秒ボイド」と呼ばれていました。
彼の特に優れていた点は「迅速な意思決定からの迅速な行動力」です。
朝鮮戦争を振り返ると、アメリカ軍の戦闘機は敵国の戦闘機に比べて性能ははるかに劣っていました。
しかし実際の航空戦では、撃墜・非撃墜の比が10対1だといわれています。
性能が劣っているにもかかわらず敵国の戦闘機を撃墜できたのは、操縦士が迅速な意思決定をしたためだと考えられました。
スピーディーな判断と行動力は、軍事行動内で生死を分けるほど大変重要です。
そのことを実感した彼は、操縦士の意思決定の一般化を試みました。
彼自身も戦闘機を操縦しており、自身の経験と長年の研究を元に、OODAループを作り上げました。
ビジネスやスポーツの文化で採用されている
OODAループは軍事行動のために考えられたものですが、意思決定をするための枠組みです。
意思決定から行動に移すまでを4つのステップに分けて進めていくことで、迅速な行動を可能にします。
しかし意思決定を行うのは、軍事行動だけではありません。
軍事行動にとどまらず、現在は他の分野にも広く適用されるようになりました。
ビジネスや政治、スポーツに至るまで幅広く活用されています。
なぜ、そんなにもOODAループが求められるのでしょうか。次に理由を考察していきましょう。
OODAループが求められている理由
OODAループがビジネスにおいて求められる理由は、よく比較されるPDCAサイクルと比較することで見えてきます。
PDCAサイクルは主に品質改善をする方法として提唱されました。
しかし、このPDCAサイクルには多くの弱点があります。
- 時間がかかる
- 想定外のことに対応できない
- 前例主義
など、現代においては古いフレームワークとも呼ばれるようになりました。
不透明で不安定な経済状況下で、必要視されるのは「スピード」です。
PDCAサイクルを応用したほうが良い場合もありますが、これに替わって新しく取り入れられているフレームワークがOODAループです。
OODAループを実践することで得られる効果は3つあります。
- 迅速に意思決定・行動できる
- 臨機応変に対応できる
- 自発的になる
PDCAサイクルの弱点を全て補うことができるフレームワークがOODAループということです。
それゆえ、現代のビジネス界においてOODAループが求められています。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
PDCAサイクルとの関係性
OODAループとよく比較されるフレームワークにPDCAサイクルがあります。
しかしこの2つは目的が異なるため、比較されるべきではありません。
目的や場面によって使い分けが必要なフレームワークです。
目的が異なる
PDCAサイクルは工場での生産を改善するために作られました。
それぞれの過程を分析し、どうすれば課題を解決できるかを考えます。
そのため工程や過程がはっきりしている場面でしか活用できません。
課題や不足部分が見えてくるので、何かを改善する時に活用するフレームワークです。
業務改善を目的としているのが、PDCAサイクルです。
一方OODAループの目的は意思決定です。
軍事行動のように、先が見えない状況下で今ある情報のみで判断し行動に移すために活用されます。
「新しい物事を始める」といった、抽象的な場面での活用が効果的だと考えられます。
起業や新規事業開発に効果的なフレームワークです。
使い分けが重要
目的が異なるので、場面や状況によって使い分けが必要になります。
工程や過程がはっきりとしており、何かを改善することが目的ならば「PDCAサイクル」。
不明瞭な状況下で意思決定を目的とするならば「OODAループ」。
活用する場面の目的と状況をいかに見極められるかが、それぞれの効果を発揮するカギとなります。
見極めを間違うと効果がないので注意しましょう。
OODAループのステップ
OODAループには4つのステップがあります。
4つ目のステップを終えると、また1つ目のステップに戻ります。
このサイクルを繰り返し行うことで判断する情報や材料を増やしていき、効果的な判断を実践します。
一つ一つのステップを、詳しく解説しましょう。
Observe:観察
1つ目のステップはObserve(観察)です。
今ある状況を観察して、できるだけ多くの情報や材料を集めます。
どのようなことが起こっているのか、自分の立場や相手の立場、周りの状況など幅広く観察します。
この観察で得た情報や材料の多さは、後の判断や意思決定を迅速に行うために必要不可欠です。
Orient:状況判断
2つ目のステップはOrient(状況判断)です。
1つ目の観察で得た情報を元に、どのように行動していくかを判断します。
自分自身の経験もデータとして扱い観察で得た情報や材料を分析し、どのような行動がどのような結果を生むのかを判断します。
この状況判断によって最終的な行動が大きく変わるため、2つ目のステップが最も重要です。
Decide:意思決定
3つめのステップは、Dicide(意思決定)です。
最終ステップ(Act)に向けて、具体的な行動を確認します。
2つ目のステップでは、いくつかの選択肢が出てくるでしょう。
その選択肢の中から、次に起こす行動を決定するのが3つめのステップです。
Act:実行
4つ目のステップは、Act(実行)です。
3つ目のステップで決めた行動を実行します。
ここでのポイントは、実行して終わりにするのではなくまた1つ目のステップに戻ることです。
そうすることで、1回目のサイクルがデータとなり、よりよい行動を実行するための情報になります。
ビジネスにおける具体例
OODAループには4つのステップがありました。
では、具体的にビジネスにおいてはどのような例があるのでしょうか。
ここでは、2つの例を挙げて解説します。
例
新商品のプロモーションを例に見ていきましょう。
・Observe(観察)
- 新しく開発する商品がどの世代、性別にニーズがあるのかデータを集める。
- モニターに新商品をお試ししてもらい、集めたアンケートを分析する。
- 似たような他社の商品との違いを明確にする。
・Orient(状況判断)
- どの世代・性別が好むのかを分析し、ターゲットにする層を見極める。
- ターゲット層に人気のあるアイドルや俳優をイメージキャラクターとして売り出すのはどうか。
- 若者向けの商品であれば、SNSを活用したプロモーションも効果的かもしれない。
・Decide(意思決定)
若者向けの商品であることが明確になったので、SNSを活用した商品プロモーションを行う。
・Act(実行)
- X(旧Twitter)やInstagramの企業アカウントから、新商品キャンペーンの告知を投稿する。
- 若者に人気のアイドルを起用したCMを作成する。
必要であれば、1つ目のステップに戻って繰り返し行う。
例
メールマガジンでの広報活動を例に見ていきましょう。
・Observe(観察)
- メールマガジンの配信を希望する人が毎月減少している。
- メールよりもメッセンジャーアプリでやり取りすることが増えている。
- メールマガジン内でアンケートを実施して、需要を数値で表す。
・Orient(状況判断)
- メールマガジン配信を継続して、新たにメッセンジャーアプリでも配信する。
- メールマガジンのコンテンツを新しくする。
- メールマガジン内のクーポンくじが、評価を得ていたので継続する。
・Decide(意思決定)
- メールマガジンのコンテンツを新しくするが、クーポンくじは継続する。
- メッセンジャーアプリでの登録者には、初回クーポンを配信する。
・Act(実行)
- 情報量の多かったメールマガジンは、人気のコンテンツに絞る。
- メッセンジャーアプリでの企業アカウントを登録する。
必要であれば、1つ目のステップに戻って繰り返し行う。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
OODAループを実践するメリット
OODAループを実践するメリットは3つあります。
先ほども簡単に挙げましたが、メリットについてより詳しく解説しましょう。
臨機応変な対応が可能になる
OODAループは常に変化する状況下で意思決定を行うため、上司の指示を仰ぐのではなくその場にいる人物が状況を判断し、行動を決定します。
4つのステップそれぞれで想定外のことが起こったとしても、前のステップに戻ったりその場で完結したりと柔軟な対応が可能です。
常に想定外の状況下である戦場での意思決定がもとになっているため、臨機応変に対応できるのがOODAループの強みでもあります。
迅速な意思決定ができる
OODAループは現場の社員で全てが完結します。上の指示を待つ必要がないためです。
自分で考え自分で決断する、というプロセスがもとになっているためスピーディーな対応ができます。
トラブルが生じた際に、大きな強みとなるでしょう。
自発的な行動ができる
3つ目のメリットは、社員や従業員が自発的な行動を取るようになることです。
OODAループは基本的に個人、または小規模なグループで行動します。
指示を待たずに自分で責任を持って決定するので、積極的な行動が必要になります。
この習慣が身につくことで、自然と自発的に行動するようになるでしょう。
OODAループのデメリットは?
先ほど3つのメリットを挙げましたが、もちろんデメリットもあります。
それは、失敗する確率が高いことです。
「スピード」に重きを置くこのフレームワークは、状況に応じて対応するものです。
過去の失敗を例に検証するといった過程がないため、判断を間違うこともあります。
解決策ではなくどのように行動するかを考えるので、失敗する確率は高くなってしまいます。
OODAループを組織で実践するコツ
OODAループのステップやメリットなどを解説しました。
必要とされているOODAループを組織で実践するコツはあるのでしょうか?
ここでは、2つのコツをご紹介します。
情報や経験を共有する
組織内でOODAループを実現させるには、データとなる情報や経験を共有することがポイントです。
自分が経験したことを自分の中で終わらせるのは、大変もったいないことです。
自分の経験を人に話すことで、新しい発見があるかもしれません。
人の経験を聞くことで、今までにないアイデアや発想が生まれることもあります。
勉強会や研究会を行い、社員の話を聞く機会を設けましょう。
全社員が社内の情報を把握できるように共有ページを作成する方法もあります。
トレーニングを重ねた部下に権限委譲する
組織を成長させるためには、人材育成がカギとなります。
たくさんの従業員を抱える組織であればあるほど、この権限委譲は重要です。
十分な経験を積んで成長した部下に責任を持って現場の判断をしてもらいます。
どんな状況においても、柔軟に対応できる力が身につき、また次の人材育成につながります。
組織の仕組みを社員に定着させることがポイントです。
OODAループの実践で悩んだら
OODAループのステップやメリットを理解することは活用していく上で大変重要です。
上手く活用できるかどうか不安な思いや悩みを抱えているのであれば、ぜひマーケティングのプロであるデジマクラスにご相談ください。
マーケティングのプロが指導とアドバイスを行います。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
まとめ
OODAループの具体例を解説しました。4つのステップの中でもポイントはOrient(状況判断)です。
この判断を誤ってしまうと、失敗を招く可能性があります。
しかし、日々変化し不透明な世界経済の中で求められているのは間違いなくOODAループです。
いち早く組織内に定着させて、一歩先を行く組織へと成長しましょう。