経営フレームワークの一つ、Go to Market戦略(以下GTM戦略)をあなたはご存知でしょうか?

別名に「市場参入戦略」や「市場開拓戦略」とあるように、新製品を市場に投入する際のアクションプランのことを指します。

新規事業や製品について、顧客体験・顧客満足度を向上することに特化したフレームワークはぜひ教養として知っておきたいものです。

今回の記事では、そんなGTM戦略をわかりやすく解説します。

Go to Market戦略の特徴

ノート

前述の通りGTM戦略とは、企業が新製品を市場に投入する際の具体的な戦略・行動決定を指します。

その扱う範囲は広く、製品採択・顧客関係構築・チャネル選択など総合的に「商品・サービスがお客様へ届くまで」です。

新商品・サービスにおいて利益化への最初の関門に新規顧客の獲得が挙げられます。

お客様が商品・サービスをどこでどう知り、どの点に興味を惹かれ、購買を決定し、使用において満足するか、多くの要因が存在します。

カスタマージャーニーと呼ばれるこれらはマーケティングにおいて非常に重要かつ抽象度・自由度の高い概念です。

GTM戦略はその点において具体的なアクションを決定でき、後述するようにSaas企業との相性に優れています。

 

ワンポイント
GTM戦略は新規市場開拓と相性が良く、Saasスタートアップに非常に有用です。

Route to Marketとの関係性

ノート

  • GTM戦略:新製品について市場へのアクションプラン全体を指す。
  • RTM戦略:商品・サービスの「販売方法」に特化したマーケティングを指す。

GTM戦略と類似したキーワードとしてRoute to Market戦略(以下RTM戦略)が挙げられます。

これは商品・サービスの「販売方法」に特化した概念である点が特徴的です。

見込み顧客との接点構築など市場へのアクション全般を指すGTM戦略とは包含している内容が異なります。

「販売方法」以上に「製品採択」「販路開拓」を含んでいる点ではGTM戦略がより広いマーケティング内容を扱っているといえます。

 

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Go to Market戦略の指標になるデータ例

データ

GTM戦略の指標として活用できる数字は多くあります。

その中でも本項では「ネット収益継続率」「CAC回収率」「ノルマ達成率」の3つに絞ってご紹介します。

販売効率や売上予測の目安としてこれらの指標を活用することで、より正確なPDCAサイクルを回すことが可能となるでしょう。

ネット収益継続率

電卓

売上継続率(NRR:Net Revenue Retention)とも呼ばれている指標です。

繰り返し実現が期待される収益について、それがどの程度実現できているかを表します。

その特性から、特にサブスクリプションサービスなどにおいて使用される指標です。

新規顧客獲得のハードルが高いSaasにおいてはリピーターからの収益が非常に重要なためです。

算出には月間経常収益(MRR:Monthly Recurring Rate)、毎月継続的に(固定で)発生する収益を使用します。

専門用語などを使わず、簡単にネット収益継続率の計算式を表すと以下のようになります。

NRR=(月初のMRR+固定収益増加-固定収益減少)÷(月初のMRR)

固定収益について、増加要因にはアップセルやクロスセル、プランのアップグレードが挙げられます。

一方、減少要因にはプランのダウングレード、解約などを挙げることができます。

100%を基準とし、下回っている場合は新規顧客が獲得できていない・既存顧客の解約が進んでいるなどの分析が可能です。

CAC回収率

電卓

CACとはCustomer Acquisition Costの略であり、新規顧客の獲得費用のことを指します。

また、CAC回収率とは「新規顧客獲得コスト÷顧客数」で算出されます。

この数値をLTV(顧客生涯価値)と併せて計測することで事業の継続的な健全性を測ることが可能です。

具体的には「LTV÷CAC」によりユニットエコノミクス(顧客1人あたりの採算性)を算出、1以上が健全といえます。

CACにも種類があり詳細に解説したいですが、あくまでもGTM戦略が本記事の主題です。

Saas企業における必須概念、CACについてもより丁寧にお伝えするため、ぜひお問い合わせをお待ちしております。

ノルマ達成率

スーツ

営業担当者のノルマ達成率のことを指し、「実績÷目標」にて算出されます。

営業の仕事・プロセスにおいては常にノルマという概念が伴います。

営業というのは単体で完結するプロセスではなく、「どれだけ計画が期待通りの成果に結びつくか」の最終段階だからです。

営業担当者がどれだけノルマを達成できたか、その達成・未達要因は何なのか、常に把握しましょう。

Go to Market戦略における重要な要素

メモ

GTM戦略は「製品採択」「顧客関係構築」「市場投入プラン」など非常に多くの範囲におけるマーケティングを扱います。

広い範囲のマーケティングを総合的に扱うことができる一方、大事な要素については集中して考慮する必要があります。

本項はその重要要素、「顧客(customer)」「自社(company)」「競合(competitor)」のいわゆる3Cについての解説です。

これにより外部・内部環境をバランス良く把握することができ、より良い戦略立案を実現できます。

対象となる顧客

3Cのうち、Customer、すなわち対象となる顧客のことを指します。

万人に対しての「良い」商品・サービスは理想論です。

現実的には、「特定のお客様にとって良い」商品・サービスだという前提が伴います。

どんなお客様を想定して商品・サービスを開発し、併せてどんな販路開拓・広告展開を行えばいいか考案する必要があるのです。

いわゆるペルソナであり、対象顧客の抽象度が高くなればなるほど効果的なマーケティング活動は困難となります。

自社・従業員の意識

3CのうちCompany、自社や自社の従業員自体についてを指します。

自社から見て対外的な環境を見るだけではなく、内部についても意識を向ける必要があります。

企業戦略のベースとなる経営資源とは主に「ヒト・モノ・金・情報」です。

自社の商品やサービスに加えて「ヒト」、すなわち従業員の意識も丁寧にケアしていきましょう。

良い商品・サービスが存在したとしても、従業員の適切な意識が伴わなければ最終的な顧客体験の向上には繋がりません。

競合調査

3CのうちCompetitor、競合相手のことを指します。

自社の商品・サービス、顧客のペルソナ設定に加えて、実際の市場の明確化競合企業の調査によってより明確なGTM戦略を立てられます。

「業界における自社の強みを活かす」「広告展開で他社と差別化する」など、戦略決定は競合との比較による相対的なものです。

競合のリサーチによって常に自社の立ち位置を確認し、適切なマーケティングを行いましょう。

 

ワンポイント
顧客・自社・競合の3つの適切な把握によって明確な戦略立案が可能になります。

Go to Market 戦略の立て方

ノート

これまでのお話の通りGTM戦略には大きなメリットが存在します。

一方、その自由度は高く立案には要点・ポイントを抑えた総合的な判断が必要です。

本項ではそんなGTM戦略の立て方について、6つの観点から解説します。

市場・ペルソナの設定

市場への商品・サービス投入にあたって、適切な市場を選択してマーケティングを行うのは必須条件です。

競合相手と戦うためにも、まずどんな市場を選び、どんな顧客(ペルソナ)を想定しているのか最初に設定しましょう。

担当者や役割の決定

3C分析におけるCompanyの内容とイメージは同じです。

自社において、その商品やサービスの企画開発・広告展開・営業など、どの段階を誰が(どの部署が)受け持つのか決定しましょう。

価格マトリックスの作成

競合相手と戦うためには付加価値や総合的な顧客体験など様々な条件が挙げられますが、やはり購買に最も影響するのは価格面です。

商品・サービスのレベル感業界・競合調査によって、適切な価格マトリックスを作成する必要があります。

バイヤージャーニーの把握

バイヤージャーニー、あるいはカスタマージャーニーと呼ばれる概念をご存知でしょうか。

顧客が実際に商品を知り、興味を持ち、検討・購入に至るまでの経緯を指します。

商品を知るところから購入・使用に至るまでの総合的な顧客体験を想像することで、より具体的・実践的なマーケティングが可能です。

また、自社の商品・サービスの販路や営業における強み・弱みの把握もしやすく、こちらもGTM戦略立案の必須プロセスです。

具体的な戦略の選択

上記内容によりマーケティング展開の概念的な全体像を俯瞰できたら、いよいよ本格的な戦略立案に移ります。

製品採択・広告展開・顧客関係構築・営業手法など、現場レベルでのアクションプランを考案します。

上記内容で細部までイメージができていればいるほど、このプロセスにおいて実践的・具体的な戦略立案が可能です。

見込み客へのアプローチ

戦略を決定することができれば、見込み顧客に対してそれを実行する段階に入ります。

この段階においては「イメージした戦略をいかに狂いなく遂行するか」が焦点になります。

「計画通り」にプロセスを遂行することによってこそ、どれほどその計画が有効であったか数値で判断することができるからです。

マーケティングにおいては一度目で完全な戦略を完成させることは大事ではありません。

より重要なのは「改善」という意識であり、より迅速・正確にPDCAサイクルを回すことです。

結果としての数値を正しく計測できるよう、実際の計画遂行度合いについては可能な限り詳細に把握しましょう。

 

ワンポイント
重要要素・戦略の立て方の両方を知ることで必要な「選択と集中」を理解・実現できます。

Go to Market戦略で市場細分化の考え方

ミーティング

これまでのお話の通り、マーケティング、特にGTMにおいては市場選択やペルソナ設定が非常に重要です。

どれだけ具体的・実践的な戦略に繋がるか自体も、市場をどれだけ適切に選択できるかによって大きく決定されます。

適切な市場選択・ペルソナ設定に繋げるためにも、市場細分化についてその内容を改めて確認しましょう。

市場を細分化するメリット

前述の通り市場細分化によってより適切な(より自社の商品・サービスが有利に戦える)市場を選択することが可能になります。

市場細分化に伴う顧客層の細分化によって最終的に顧客が求める価値も明確になり、提供する側の目指すものも具体化されるためです。

総合的な顧客体験の向上を主目的とするGTM戦略において、このメリットは極めて大きく見逃せないものです。

細分化時に考慮すべき要因

市場細分化においては注目すべき要因として挙げられるのは主に以下の4つです。

  • 地理的変数:地域や人口規模における区分
  • デモグラフィック変数:年齢・性別・所得・職業などの区分
  • サイコグラフィック変数:顧客の心理・性格などにおける区分
  • 行動変数:顧客による購入の頻度・曜日・時間帯など行動における区分

いずれの要因も明確な市場イメージ、そして具体的なペルソナ設定に繋がるものです。

時間をかけ丁寧に市場細分化・市場採択を行っていきましょう。

 

ワンポイント
市場細分化は適切な市場採択の必須条件といえます。

Go to Market戦略の具体例

図

本項では実際にGTM戦略を取り入れる際の企業の動きを例として紹介します。

例えば、新しくスマートフォンを制作し、市場に投入する場合を例示しましょう。

まず、企業は市場を細分化することにより適切な競争市場を選択する必要があります。

ハイエンド・ミドルレンジ・ローエンドなど、価格面におけるセグメント選択がわかりやすい例です。

その後、同価格帯で競争優位を確立するためにスペック・付加価値・販売価格など詳細を決定します。

実際の製品モデルが決まったら、ペルソナ・カスタマージャーニーを想定しなければなりません。

顧客はこの商品をどう知り、どう感じ、何を根拠に購買決定を行い、何によって満足するかを考えます。

このモデルが具体的であればこそ、適切な戦略立案・マーケティング実現が可能です

あくまで例示であり上記手順が前後するケースは大いに有り得ますが、GTM戦略のイメージを捉えていただけたでしょうか。

SaaS企業におけるGo to Market戦略

コード

Software as a Service、すなわちサブスクリプション型のビジネスにおいてGTM戦略は非常に重要な概念です。

サブスクリプションにとって最も大きな関門となるのが「新規顧客の獲得」といえます。

市場投入時の具体的なアクションを中心に取り扱うGTM戦略にとってこれはまさにメインテーマです。

新商品・新サービスをどう企画し、どう生産・運営し、どう販売していくか、全てがGTM戦略で扱う範囲となります。

Saas企業において、GTM戦略の概念は間違いなく必須概念といえます。

 

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Go to Market戦略の立て方で悩んだら

レジュメ

これまでのお話の通りGTM戦略は徹底的に顧客体験に寄り添い、実践的なマーケティングに繋がる概念です。

しかし内包するマーケティングプロセス・考慮すべき要因なども非常に多く、詳細な知識や経験を必要とする側面もあります。

経営全体における迅速・正確なPDCAサイクルを実行するためにも、必要であれば社外からのノウハウ共有は必須となるでしょう。

GTM戦略についてお困りであれば、ぜひマーケティング経験・知識の豊富なデジマクラスへ一度ご相談ください。

プロフェッショナルのカウンセラーによって最適な戦略を立案、売上向上が望めます。

 

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まとめ

握手

いかがだったでしょうか。

情報過多、それに伴う顧客の嗜好細分化・市場の細分化によりマーケティング活動の重要性・難易度は高まりを見せています。

その中でも、GTM戦略は現代の顧客ニーズにマッチするための有効な手段として選択肢に挙げられます。

ぜひマーケティング活動に取り入れ、経営の合理化・効率化に繋がれば幸いです。