すでに事業を始めていらっしゃる方や経営を志す皆さんの中にKSFをご存じない方はいらっしゃらないのではないでしょうか。
KSFは企業経営において非常に重要な戦略の立案をするために欠かすことができないものです。
今回の記事ではそんなKSFの事例や業界別の考え方について詳しく解説します。
KSFの分析方法や設定時に役立つフレームワークなども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
KSFの特徴
KSF(Key Success Factor)はその名前の通り事業を成功させるために必要な要因のことです。
様々なフレームワークを用いて社内環境や市場を分析し、抽出したデータを元に設定します。
同じようにアルファベットを3つ並べた指標にKPIやKGIがありますが、いずれも意味がまったく違うので混同すべきではありません。
この項目ではKSFとその他の指標との関係性などについて詳しく解説します。
最重要成功要因
KSFは日本語では最重要成功要因や主要成功要因と訳されます。その達成なしに事業の成功はありえないという要素のことです。
KSFは色々なフレームワークを用いて市場や社内環境を分析することで求められます。そのため1度決めて終わりではありません。
社内外の環境は様々な要因で変化します。事業成功のためにはKSFもそれらの変化を元に適切に変更していかなければなりません。
KPIとの関係
KPI(Key Performance Indicator)は日本語では重要業績評価指標と訳されます。
定められた最終目標に対して、その目標達成の度合いを監視・計測するために設定される以下のような定量的な指標のことです。
- 成約率
- リピート率
- 個人営業売上高
- アポイント件数
以上は主に営業担当部署で用いられるKPIです。業種や部署によって成功へのプロセスは様々なため設定されるKPIも多様です。
それら最終目標達成のために必要な様々なプロセスのうち、最も成功に影響するものがKSFにあたります。
KGIとの関係
KGI(Key Goal Indicator)は日本語では重要目標達成指標と訳されます。
多くの場合年単位で設定される特定の期間の中で、自社が何をどの程度達成するのかという最終目標を数値化した指標にあたります。
たとえばその年の目標に「次年度比50%の売上げアップ達成」を掲げた場合、それがKGIにあたると考えて良いでしょう。
KGIを達成するために必要不可欠なものが重要成功要因であるKSFです。
OKRとの関係
OKR(Objectives and Key Results)は高い目標を達成するためのフレームワークとして知られています。
組織の目標を達成するために個人の役割を明確にし、コミュニケーションを活発化させることがOKRの目的です。
そのため原則として、定めた目標を完遂しなければ評価が下がるということはありません。
KPIもまた業績評価のための指標ですが、プロジェクトの目標を達成するための指標であるなど様々な点でOKRとは違います。
業界別の考え方
何を目標とし、どこまでを成功とするかは企業によって違います。
そのため重要成功要因であるKSFも企業によって様々なものが設定されます。
ただ、同じ業界に所属する企業同士の場合、似通ったKSFが設定されることも少なくありません。
この項目では3つの業界に着目して業界別のKSFの考え方について解説します。
化粧品業界
化粧品業界では重要成功要因として「広告・宣伝」に関する事柄が多く設定されます。
多くのユーザーにとって最も関心があるのはその化粧品を使うことで自分の見た目にどのような変化があるかです。
そのため利用者や著名人による使用感の紹介などが重要となります。結果、企業も広告や宣伝を重要視せずにはいられません。
様々なメディアを介してどれだけ効果的な宣伝活動ができたかが化粧品業界における成功のカギを握っています。
石油業界
石油業界で重要成功要因として設定されるのは多くの場合「調達」に関する内容です。
石油業界の事業領域は石油や天然ガスの開発生産を行う上流と、調達した原油の精製や販売を行う中下流の2つに大別されます。
いかに低価格で調達・輸送できるかが重要な問題なので、どの会社も調達に力点を置かないわけにはいきません。
上流専業の場合も上流・中下流どちらも手がけている場合も、やはり調達が最も大きな成功要因です。
百貨店業界
百貨店業界では「品揃え」が重要成功要因として設定されがちです。
他にはない自社だけの強みや他所では真似できない品揃えの豊富さがあれば、より多くの顧客を呼び込めるからです。
そのため仕入れ担当者の人数の確保や質の向上は会社全体にとって非常に大きなウェイトを占めているといえるでしょう。
市場のニーズを見極めるための情報収集やデータ分析も重要となります。
KSFの事例
企業によって最終目標は違うものの、業界別に見れば同じようなKSFが設定されがちであることは説明した通りです。
この項目では実際に設定されたKSFをよく知られた紙おむつ事業と携帯電話会社を例に挙げてご紹介します。
紙おむつ事業
ある紙おむつメーカーは紙おむつ事業におけるKSFを「低価格であること」と定めました。
消耗品であり必ず使い捨てられる紙おむつは、低価格であればあるほど売れるはずだと考えたのです。
実際、低価格をKSFに定めて事業展開したこのメーカーはたった1ヶ月で業界シェアを7.7%も伸ばすことになりました。
何をKSFに定めて事業を進めるかによってその後の成功の度合いが大きく変わることの好例だといえます。
携帯電話会社
携帯電話を用いるユーザーは、手続きの煩雑さから一度顧客になるとよほど特別な事情がない限りなかなか乗り換えません。
ある携帯電話会社はその点に着目し「先に消費者をより多く囲い込み、事業展開のスピードを上げる」というKSFを設定しました。
スタッフの増員だけでなく販売代理店も増やしてKSFの達成に尽力し、大きな成果を上げることになりました。
髪おむつ事業の場合と同様、業界の特性を分析して効果的なKSFの設定をしたことが成功に繋がったといえるでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
KSFが重要な理由
KSFが重要視される背景には現代社会の価値観の多様化があります。
ダイバーシティへの注目が集まり、企業には消費者のニーズの多様な変化に対する柔軟で迅速な対応が求められるようになりました。
その際、重要となるのがニーズに応じたマーケティング戦略の立案です。
社内外の環境を多角的に分析して得られたKSFを戦略に活かすことは事業の成功のために非常に効果的な方法だといえます。
KFSを見つける方法
設定されるKSFには業界別におおよその傾向があることを先の項目で解説しました。
ただ、他社にとって有効なKSFが自社にも同じように有効であるとはいえません。
KSFは社内外の様々な要因を分析して設定されるべきものだからです。
この項目では適切なKSFを見つけるための方法を2つピックアップしてご紹介します。
特性分析
適切なKFSを見つける方法、1つ目は特性分析です。
化粧品業界なら広告宣伝、医薬品業界なら研究開発というように、業界ごとに力を注ぐべき分野は違っています。
そうした業界ごとの特性を詳しく分析することは、適切なKSFを見つけるためには非常に有効な方法といえるでしょう。
他社が気付いていない特性を見出すことができれば、そこを起点とした事業展開をすることで成功を収められる可能性もあります。
フローごとに多角的視点で分析
適切なKFSを見つける方法、2つ目はフローごとに多角的視点で分析することです。
どのような業界・業種も様々な業務のフローが連続することで1つの仕事として完成されます。
そんなフローのうちどのような部分にどんな特性があるかを多角的に分析することで、新たなKSFを見出せるかもしれません。
ここでもやはり、新たな視点で見出したKSFから他社がまだ行っていない新事業を展開できる可能性があります。
KSF分析方法
KSFは業界の特性や自社が置かれた環境を十分に吟味して決める必要があります。
その際、マーケティングで用いられる様々なフレームワークを使うことが非常に効果的です。
事業特性や社内外の環境を多角的な視点で見つめ直し、フレームワークを使って分析してみましょう。
自社が属する業界について理解を深めることにもなるため、より効果的なKSFの設定が可能となります。
KSF設定の役立つフレームワーク
KSFを適切に設定するためには市場や社内環境に関する詳細な分析が欠かせません。
その際とても有効なのがマーケティングのフレームワークを使って分析を行うことです。
この項目ではKSFの設定に役立つフレームワークを5つピックアップしてそれぞれ詳しくご紹介します。
3C分析
KSFの設定に役立つフレームワーク、1つ目は3C分析です。
3C分析は業界環境を分析するためのフレームワークで、3つのCは以下の意味を持ちます。
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
市場・顧客では市場規模や市場の成長性、顧客のニーズなどについて情報を把握します。
競合では競合相手の業界ポジションや現状シェアなどを、自社については強みや資本力などを詳しく把握します。
3C分析を行うにあたっては徹底的に「事実」を収集しなければなりません。
集めた事実を突き合わせて自社を取り巻く業界環境の詳細を把握します。
5F分析
KSFの設定に役立つフレームワーク、2つ目は5F分析です。
5F分析は業界の状況や競合各社の収益などを明らかにし、自社の利益の上げやすさについて分析するフレームワークです。
KSFの設定にあたっては必ず業界環境の詳細な分析を行わなければなりません。
その際、自社を取り巻く外部の脅威について分析する5F分析が役立ちます。分析対象は以下の通りです。
- 新規参入者
- 代替品の存在
- 業界内での競争
- 買い手の競争力
- 売り手の競争力
脅威の分析の際は収益性を上下させる要因となる点について詳しく把握します。
SWOT分析
KSFの設定に役立つフレームワーク、3つ目はSWOT分析です。
SWOT分析では以下の4つのカテゴリーを視点に現状分析を行います。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
SWOT分析では現状自社が抱えている問題点や将来起こる可能性がある問題などを整理・把握することができます。
PEST分析
KSFの設定に役立つフレームワーク、4つ目はPEST分析です。PEST分析では以下の4つの視点から分析を行います。
- Politics(政治)
- Economy(経済)
- Society(社会)
- Technology(技術)
自社を取り巻く外部のマクロ環境が今後自社にどのような影響を与えそうか把握・予測するのがPEST分析です。
バリュー・チェーン
KSFの設定に役立つフレームワーク、5つ目はバリュー・チェーンです。
バリュー・チェーンとは原材料の調達から商品・サービスの顧客への到達までを価値の連鎖として捉えるものです。
バリュー・チェーンではまず企業の活動を主活動と支援活動の2つに大別しなければなりません。
主活動は購買物流・製造・出荷などを、支援活動は調達・技術開発・インフラ管理などを示しています。
自社を含めた産業全体のバリュー・チェーンを把握し、活動にかかるコストや自社の強み・弱みを明確にするのが目的です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
KSF設定時の注意点
KSFを設定する際、注意しておかなければならないことがあります。KSFをあまり多く設定すべきではないということです。
重要成功要因が複数あると、どこに注力すればいいのか迷いが生じる原因になりかねません。
場合によってはどのKSFに重きを置くかという意見の相違から社内に亀裂が走る可能性さえあります。
取り組むべき最重要KSFはどれなのかきちんと見極めて、適切な数を設定することが大切だといえるでしょう。
KSFの手法が身につく環境で働くなら
KSFの設定や分析にはマーケティングのフレームワークを用いることが有効です。
ただ、いくつもあるフレームワークを適切に使いこなすにはそれなりの経験も必要となってきます。
KSFの設定に必要な手法を効率的に身に付けられる環境で働きたい時は、ぜひデジマクラスのコンサルタントにご相談ください。
弊社ではWebマーケティングに関するノウハウを用いてコンサルタント業務も行っています。
色々な業界に属する多種多様な企業を顧客としているので、様々な知見を短い期間で得ることが可能です。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回の記事では実際の事例に触れながらKSFが重要な理由や業界別の考え方について解説しました。
適切なKSFの設定は企業にとって目標達成のために欠かせない要素です。
自社が属する業界の特性や内外の環境について各種フレームワークを活用して分析し、最も望ましいKSFを設定しましょう。
本稿がそのための一助となれば幸いです。