ゲームチェンジャーとは既存の市場ルールを無効化し、一気に業界トップに躍り出る存在です。

商材・マーケティング手法の新旧を問わず、多くの成功事例が報告されています。

考え方や分析手法を身につければ強力なマーケティングスキルとしてキャリアップや転職を助けてくれる武器です。

まずはゲームチェンジャーの4類型や成功事例を確認しながら、理解を進める第1歩を踏み出してみましょう。

ゲームチェンジャーの特徴

チェックメイト

ゲームチェンジャーは経営学者の内田和成氏が提唱した『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』でその存在が論じられ注目されました。

ある市場において既存企業で構成される競争や業界内バランスを一気に覆す存在です。

語源は野球をはじめとするスポーツで、試合の流れをまったく違うものに変えてしまう選手に対して使われる言葉でした。

その意味がビジネスの分野に転じ、既存の市場や売り方のルールを一気に変えてしまう特徴を持った商材・企業を指す言葉になっています。

 

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ゲームチェンジャーの例

各業界を見てみると、ゲームチェンジャーとして成功した事例が数多く報告されています。

特に注目すべき5つの事例を確認してみましょう。

オンラインショッピング

オンラインショッピング

ゲームチェンジャーの事例としてオンラインショッピングに注目してみましょう。

特によく取り上げられる事例の定番がAmazonの書籍販売部門です。

Amazonの書籍販売は商材・利益を得る方法は既存の書店と同じ仕組みを採用しています。

しかし、Amazonの場合はインターネット通販でそれを行うことで新しい付加価値をユーザーに提案しています。

<Amazonが提案する新しい価値>

  • 時間や場所の制約を受けずに本を購入できる
  • 抱えられる在庫が圧倒的に多い
  • 書店まで足を運ばなくてもいい
  • 本を探す時間と手間のショートカット など

また、Amazonにとっても店舗の維持にかかるコストをカットできるメリットがあります。

顧客への新しい価値と自分たちのリソースの削減という2つの武器によってゲームチェンジャーになれた事例です。

スマートフォン端末

スマートフォン端末もゲームチェンジャーの事例としてよく登場します。

スマートフォンはそれ1台で様々なツール・ガジェットの役割を果たせるツールです。

携帯電話に加えテレビ・ラジオ・デジタルカメラ・電子辞書・地図など、スマートフォンのみで生活できる人も少なくありません。

よほど高性能なツールを必要とするプロでない限り、端末とアプリで十分な機能を有しています。

事実、電子辞書・カーナビはスマートフォンの登場により需要減少を懸念する声もあるようです。

音楽配信サービス

音楽,配信

音楽業界のゲームチェンジャーとして挙げられるのが音楽配信サービスです。

例えば、Apple Music・LINE MUSIC・Spotifyなどが人気のサービスとして業績も好調です。

元々音楽業界の既存ルールはレコード→カセットテープ→CD・MDと記録媒体や再生するためのハードウェアが欠かせませんでした。

しかし、配信サービスはサブスクリプション型のビジネスモデルを採用しており記録媒体やハードウェアを要しません。

「もの」を必要としない斬新さがユーザーに受け入れられ、ゲームチェンジャーとして一気に市場を支配する存在になりました。

動画配信サービス

各種動画配信サービスも音楽配信サービス同様に業界内ゲームチェンジャーとして市場を支配しつつあります。

特に勢力を伸ばしているのがNetflix・Amazon Prime Video・Huluなどです。

音楽配信サービス同様にサブスクリプション型のビジネスモデルで既存の映像業界を脅かす存在に成長しました。

最近では映画制作レベルの潤沢な予算を武器にオリジナルコンテンツを提案する企業も登場し、より人気に拍車がかかっている状態です。

米アカデミー賞でも動画配信サービスのコンテンツが約半数を占めるなど影響力が拡大し続けています。

スマホゲーム

スマートフォン,複数

これまで家庭用コンシューマーが当たり前だったゲーム業界はスマホゲームの登場によって一気に勢力図が塗り変えられました。

スマホゲームがゲームチェンジャーとして業界を支配できた理由は無料ユーザーを歓迎できるビジネスモデルを構築できたことです。

スマホゲーム登場前のゲーム業界はハードウェアとソフトウェアを販売し、ソフトの売上で利益を生む仕組みでした。

対してスマホゲームは広告とアイテム課金で利益を得ることができます。

コストはソフトの開発費用がメインとなるため、無料ユーザーの比率が高くても利益を得やすいのが特徴です。

既存企業にとっては培ってきた経験値を諦め、後発としてノウハウを0から積み上げなければならない圧倒的不利な状況といえます。

ニュースアプリ

ニュースアプリはWebサイトやアプリで各メディアの報道をまとめ読みできるサービスです。

ユーザーの興味の方向性や過去の閲覧履歴からおすすめ記事を提案してくれる機能が特徴となっています。

ニュースアプリが打撃を与えた既存サービスは新聞やテレビ・ラジオなどの報道番組です。

これまではユーザーが興味のあるニュースを見つけるために各新聞・報道番組の読み比べ・見比べが必要でした。

対して、興味のあるニュースをまとめ読みできる価値を提案できたことがニュースアプリをゲームチェンジャーにしました。

定番のサービスとしてYahoo!ニュースやスマートニュース、グノシーなどが挙げられます。

 

ワンポイント
各事業がゲームチェンジャーになれた理由として、新しい価値の提案や斬新なマーケティングノウハウの導入があります。

ゲームチェンジャーとサステナブルな社会の実現

SDGs

ゲームチェンジャーはサステナブルな社会を目指す上でも重要な役割を果たす可能性があります。

サステナブルという考え方が注目されるようになったのは2015年にSDGsが登場したことがきっかけです。

理想とする社会の実現に向けて17の目標と169のターゲットが設定されています。

登場後、環境・人口問題がより深刻になる中でSDGsに取り組む企業やトピックとして取り上げるメディアも多くなりました。

個人レベルでも徐々に意識する人が多くなっていて、より環境に配慮した行動がスタンダードになりつつあります。

個人レベルでサステナブルな行動を取る人が増えると経済やビジネスを大きく変える可能性が出てきます。

なぜなら、SDGsを意識する一般消費者のニーズ・課題解決が企業にとって潜在的なユーザーニーズ・ビジネスチャンスとなるからです。

今後、SDGsがさらに浸透すれば目標達成につながる商材や課題解決につながる事業がゲームチェンジャーとして台頭するかもしれません。

環境・社会問題におけるゲームチェンジャー

環境問題をはじめとする社会の課題解決を目標に掲げるゲームチェンジャーもすでに登場しています。

リサイクル

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ファッション業界ではリサイクルという視点から顧客に新しい価値を提案するゲームチェンジャーがすでに登場しています。

例えば、ファッションブランドH&Mは2030年までにリサイクル可能かサステナブルな素材のみで洋服を製造する目標を発表しました。

植物由来のコットン・ビスコース・セルロースなど土に還せる素材で製造・廃棄にかかる環境への負荷を軽減することが目的です。

また、繊維メーカー大手の東レ株式会社は回収したペットボトルを繊維化する技術で廃棄にかかる環境コストの軽減に成功しています。

フェアトレード

SDGs目標の中には人権問題に注目した目標・ターゲットも設定されています。

特に発展途上国の貧困層が安い賃金で不当労働を強いられている問題は注目度の高いトピックです。

そこで登場したのがフェアトレードです。

フェアトレードとは定められた国際基準を遵守する企業に各商材の価値に見合った対価を支払う仕組みになっています。

生産者の利益を保証することでルールを守って経営を行う企業の経営基盤が固まり、労働環境や労働者の賃金へ還元される流れです。

<身近なフェアトレード商材>

  • コーヒー
  • 紅茶
  • チョコレートをはじめとするカカオ由来商材
  • フルーツ
  • スパイス
  • ワイン
  • オイル
  • コットン など

フェアトレードは人権問題への意識が高い人たちを中心に広まりつつあり、ゲームチェンジャーになれる可能性も十分秘めています。

 

ワンポイント
環境・社会問題に対するユーザーニーズが高まれば、課題解決につながるゲームチェンジャーの登場が期待できます。

ゲームチェンジャーならではの競争戦略

ゲームチェンジャーは既存のルールが通用しない圧倒的優位な立場です。

その戦略は後発企業となった既存企業を追い詰めるだけでなく、参考にすべき先人として捉えることもできます。

ルールの破壊

壊す,金槌

ゲームチェンジャーが既存企業を圧倒できる理由は元々の市場を支配していたルールを超越できるからです。

マーケティング戦略や課題解決方法に新しい視点を盛り込み、時にはユーザーの価値観をも一変させることがあります。

既存企業が構築した利益を得る仕組みが無効化され、ゲームチェンジャーが市場のスタンダードになってしまうことも珍しくありません。

既存企業にとってのゲームチェンジャー

既存企業から見たゲームチェンジャーは悪い面だけでなく良い役割を果たすこともあります。

ゲームチェンジャーとして市場を独占しているということは独自の勝ちパターンを構築しているということです。

つまり、成功確率の高いビジネスモデル・戦略・戦法を見出すヒントとなる可能性があります。

最新の必勝パターンであるゲームチェンジャーの手法を自社に取り入れられるか、という視点で分析してみましょう。

 

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ゲームチェンジャーの分類

ゲームチェンジャーは下記4つの類型に分類できます。

  • 既存のマーケティング×既存商材:秩序破壊型
  • 新しいマーケティング×既存の商材:市場創造型
  • 新しいマーケティング×新しい商材:ビジネス創造型
  • 既存のマーケティング×新しい商材:プロセス改革型

それぞれどのような特徴があるのか確認してみましょう。

秩序破壊型

ライバル

新しいマーケティングと既存の商材を掛け合わせるタイプです。

既存商材をこれまでとまったく違うマーケティングのメカニズムで売り出します。

<秩序破壊型の事例>

  • スマホゲーム
  • リプセンス
  • コストコ など

新しい市場のルールは消費者に受け入れられれば既存企業が真似できない独自性を発揮します。

新規参入のハードルが高く、時には競合を駆逐する勢いで勢力図を塗り変えることも珍しくありません。

提供する商材に大きな変化はないものの既存の市場ルールが一切通用しなくなるため、最も対応難易度が高いゲームチェンジャーです。

市場創造型

既存のマーケティングと新しい商材を掛け合わせたゲームチェンジャーです。

ユーザーが無意識に抱えているニーズを顕在化し解決につながる新しい商材を提案します。

<市場創造型の事例>

  • JINS PC
  • 東進ハイスクール
  • 青山フラワーマーケット など

市場創造型は利益を得るメカニズムは既存の仕組みを採用し、新しい商材で差別化を図り勝負します。

既存企業にとってはこれまでのマーケティングノウハウが通用するので十分競合できるゲームチェンジャーです。

ただし、既存企業が対応できないスピードで新商材が業界のメインストリームにとって代わると勝負が難しくなります。

ビジネス創造型

男性,電球

新しいマーケティングと新しい商材で勝負するゲームチェンジャーです。

商材・マーケティングノウハウのいずれもこれまでになかったアプローチで利益を得ます。

<ビジネス創造型の事例>

  • 価格.com
  • オキュラスリフト
  • カーシェアリング など

ビジネス創造型は商材・マーケティングノウハウともに目新しさ・斬新さが新しい市場を生み出すポイントです。

そのため新しいビジネスモデルをイメージするイマジネーション力とそれを具体的な形にするクリエイティブ力が求められます。

プロセス改革型

既存のマーケティングと既存の商材で勝負するゲームチェンジャーです。

現状のバリューチェーンに改善点を見出すことで今までになかった価値を構築・提案します。

<プロセス改革型の事例>

  • Amazon
  • セブンカフェ
  • ZOZOTOWN など

プロセス改革型の代表的な手法は商材提供のために踏まえるべき段階のショートカットです。

例えば産直野菜の通販は生産者と消費者の間に入る仲介業者の手間がショートカットされます。

  • 提供スピードの向上
  • 中間マージンのカットによる提供価格の値下げ
  • 生産者が誰かわかっている農産物に対する安心感 など

結果として顧客は上記のような付加価値を感じ、既存商材を上回るゲームチェンジャーとなります。

 

ワンポイント
ゲームチェンジャーの4類型はマーケティングと提供する商材を既存のもので勝負するか、新規商材で勝負するかの違いがあります。

異業種対策のポイント

ビジネス,ネットワーク

ゲームチェンジャーと競合する場合、同業他社との対決ではなく異業種間競争となる事例が増えています。

同業他社以外の競合の登場によって市場の競争がより激しくなるケースが珍しいものではなくなっているのです。

特に異業種間競争への対策を立てる上では事業連鎖がポイントとなります。

<写真関連事業の事業連鎖事例>

  1. フィルムメーカー・カメラ本体のメーカー・現像業者・写真を保管しておくアイテムのメーカーなどによる分業体制が確立
  2. 技術の進化によりフィルムメーカーとカメラメーカーの事業が一部重複し競争スタート
  3. DPEショップの登場で現像を依頼するハードルが低くなり、現像業者に代わるゲームチェンジャーとして業界に浸透
  4. デジカメの登場で写真を紙媒体に印刷する工程でフィルムが不要になり、フィルムメーカー・DPEショップが大ダメージ
  5. スマートフォンがデジカメをはじめとする写真業界全体の既存商材を脅かすゲームチェンジャーとして登場

こうした写真業界の変遷は写真に関連する様々な商材・事業にフォーカスしてたどることができます。

どのような商材・事業がゲームチェンジャーとなったのか、点ではなく線で捉えゲームチェンジャーの出現可能性を探ってみましょう。

異業種競争で勝ち残るには?

男性,読書

異業種のゲームチェンジャーに対抗するためそもそもゲームチェンジャーとは何かを明確に理解することが必要です。

例えば、ゲームチェンジャーの概念が提唱された原典である内田和成氏の著書を読み解くなどの方法が挙げられます。

また、異業種のゲームチェンジャー対策として最も簡単な方法はゲームチェンジャーの手法を真似することです。

真似するといってもマーケティングノウハウを真似するのではありません。

市場を支配しているゲームチェンジャーが追随できない新しい市場ルールを作る、という戦略を真似するのです。

自分たちがゲームチェンジャーになれれば、市場のルールを自分たちで設定できる権利を奪取できます。

また、ゲームチェンジャーのタイプによっては競合も発生しづらいです。

自社の持っているリソースやノウハウを活かしてゲームチェンジャーになる道を模索してみましょう。

 

ワンポイント
異業種のゲームチェンジャーとの競争を勝ち抜くために、ゲームチェンジャーになれないか考えてみましょう。

ゲームチェンジャーの手法が身につく環境で働くなら

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ゲームチェンジャーの概念や4つの類型に分ける手法は競合を分析するためのフレームワークとして有効です。

つまり、ゲームチェンジャーについて理解を深めることで競合を分析するスキルを得られます。

今後転職によるキャリアアップを目指すなら身につける価値のあるマーケティングスキルです。

そこで、マーケティングノウハウを蓄積できる企業への転職を検討してみませんか?

デジマクラスはWebマーケティング・デジタルマーケティングのノウハウ提案・コンサルティングを行っています。

様々なマーケティングノウハウを蓄積する中で業界知識としてゲームチェンジャーについても理解を深められるのが魅力です。

またゲームチェンジャーを分析するような事業連鎖を実践的に業務として行うなど、具体的な分析スキルを蓄積するチャンスもあります。

「ゲームチェンジャーの理論を習得したい」「マーケティングスキルを高めたい」とお考えでしたらデジマクラスでのキャリアップも検討してみてください。

 

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まとめ

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多くの注目を集めるゲームチェンジャーの考え方を活用すれば市場を一気に支配することも夢ではありません。

基本的な理論や過去の成功事例を題材に分析手法を身につけておきましょう。

マーケティングスキルとしてアピールできるようになればキャリアアップを目的とした転職にも役立ちます。