マーケティングの最大の目的は自社の商品やサービスの売上を拡大させることです。
そのためにはさまざまな販売戦略が必要になります。
こうした戦略を立てるのに効果的なフレームワークのひとつにSTP分析があるのはご存知でしょうか。
今回はSTP分析の活用事例を基にSTP分析の目的や業種ごとの使い分けについて解説をします。
自社が属する業種に合わせた最適な活用方法の参考にしてみてはいかがでしょうか。
目次
STP分析の事例を解説
STP分析とはアメリカの経済学者コトラーが提唱した基本的なマーケティングフレームです。
STP分析は新規市場の開拓時や事業戦略の見直しの際に行います。
具体的には以下のような場面で活用することが多いでしょう。
- 地方や国内向けの商品・サービスを全国へ拡大、海外市場に展開する
- 既存顧客に加えて新たなターゲットを含めた新規市場の拡大を検討している
STP分析は既存のマーケティング方法以外に最適なマーケティング方法を検討する際に活用されます。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
STP分析の目的
STP分析の最大の目的は自社の商品やサービスが効率的にかつ多く売れる戦略方法を見つけることです。
効率よく売り上げを上げることができれば企業の業績は飛躍的に向上するでしょう。
そのためには3つのポイントを押さえておくことが必要になります。
ここではそれぞれのポイントについて詳しく解説をしていきます。
効率よく売り上げを上げる
STP分析ではセグメンテーションと呼ばれる方法で市場を細かく切り分けて分析することができます。
セグメンテーションを行うことで市場全体において自社がどのポジションに位置をしているかを把握することができます。
また、自社の商品やサービスと相性の良い顧客層を特定することも可能です。
これにより適切なターゲティングを行うことができるでしょう。
こうした分析は自社の商品やサービスを効率よく売り上げるための戦略立案に役立ちます。
ニーズにマッチした顧客層の把握
STP分析を行うことでニーズにマッチした顧客層を把握することが可能になります。
ニーズにマッチした顧客層とは一体どんな層のことをいうのでしょう。
自社の商品・サービスを必要とするユーザーには共通点があります。
例えば年齢や性別、職業などがこれにあたるでしょう。
こうした一定のユーザーが多く集まる層のことを顧客層といいます。
こうした顧客層を把握することで適切なプロモーションが可能になります。
例えば幅広い年齢層が顧客層の場合は大規模な販促活動を行っても十分に利益を上げることが可能でしょう。
しかし、ニッチな需要を満たした商品やサービスであればそれに見合ったプロモーションが必要です。
このようにニーズにマッチした顧客層の把握はマーケティングコストにも深くかかわる重要な要素といえるでしょう。
独自性・差別化ポイントの明確化
STP分析を行うことで自社の独自性や他社との差別化ポイントを明確にすることができるのが大きなメリットといえるでしょう。
独自性・差別化ポイントの明確化は競合他社の多い市場でのシェア拡大に必要不可欠な要素です。
ユーザーの多い市場にはそれだけ多くの競合他社が存在します。
その中で自社のシェアを拡大するためには他社にない自社の強みやオリジナリティが必要になるでしょう。
具体的には機能性の充実や一目で分かるデザインなど他にはない自社独自の工夫が求められます。
STP分析の目的は効率よく売り上げを上げるマーケティング戦略法を見つけることです。
そのためには自社の商品やサービスを必要とする顧客層や自社独自の強みなどを把握する必要があります。
STP分析の手法
STP分析は3つの視点から競合他社と自社の関係性を分析することができます。
- セグメンテーション (Segmentation)
- ターゲティング (Targeting)
- ポジショニング (Positioning)
これらの視点を組み合わせることで自社にとって最適なマーケティング戦略を立てることが可能になります。
ここからはそれぞれの視点について詳しくお話をしていきましょう。
セグメンテーション
セグメンテーションとは顧客や市場を一定の視点を基にカテゴライズすることを指します。
日本語で細分化・市場細分化と呼ばれています。
セグメンテーションを行うことで市場を細分化し自社の特性に最適な顧客層を見つけることができます。
カテゴライズに用いられる代表的な視点は以下の4つです。
- デモグラフィック (人口統計変数)
- ジオグラフィック (地理的変数)
- サイコグラフィック (心理的変数)
- ビヘイビアル (行動変数)
デモグラフィックとジオグラフィックでは自社の特性に合致したユーザーの大まかな特性を把握するのに役立ちます。
例えば、年齢や性別、職業などはデモグラフィックによりカテゴライズすることが可能でしょう。
また、ユーザーの住んでいる国や地域などはジオグラフィックで特定することが可能です。
これらの特徴はユーザーの基本的な属性を把握するためには欠かせない要素といえるでしょう。
他にユーザーの嗜好やライフスタイルなど性格的な特徴はサイコグラフィックで把握することができます。
ビヘイビアルではユーザーが週に何回どこで買い物をするかなどの行動の特徴を確認するために行います。
これらのデータを基にターゲットを選定することで確実に販売数を伸ばすことが可能になります。
また、ユーザーのライフスタイルや行動特性を把握しておけば効率の良いマーケティングが可能になるでしょう。
ターゲティング
ターゲティングとはセグメントで細分化した市場の中からさらにターゲットを絞り込むことをいいます。
特に幅広い層を狙った商品やサービスを展開する際に役立つ工程といえるでしょう。
代表的なターゲティングのパターンは以下の3つです。
- 無差別型ターゲティング
- 差別型ターゲティング
- 集中型ターゲティング
無差別型ターゲティングは食品などの幅広いターゲットに効果的なパターンです。
無差別型ターゲティングは市場の細分化を行うことなく広い市場での商品展開が可能な業種に限られます。
差別型ターゲティングはセグメントで細分化された市場に適した商品・サービスを提供するパターンです。
一般的な企業が用いる戦略方法といってもよいでしょう。
集中型ターゲティングは細分化した市場の中でもさらにコアな市場に向けたターゲティング方法です。
嗜好品やニッチな業界など限られた市場に向けた商品やサービスに適したマーケティング戦略に有効です。
上記のターゲティングを活用することで余計なコストを掛けずに売り上げを上げることが可能になるでしょう。
ポジショニング
ポジショニングとは市場の中での自社の立ち位置を把握することをいいます。
これにより競合他社と差別化や自社の強みなどの独自の特性を打ち出す手がかりを探ることが可能になるでしょう。
ポジショニングを行う上でポイントとなるのが以下の3つです。
- 価格
- 機能
- ラインナップ
これらのポイントを用いて自社の特性や強みを分析することで他社との差別化を図ることが可能になります。
もし自社の商品やサービスの特性が大手競合を重複している場合はさらなる独自性の追求が必要になるでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
STP分析の重要性
一般的にマーケティングは3つのフレームワークを基に行います。
・環境分析
・戦略立案
・施策立案
環境分析はマーケティングのはじめに行うフレームワークです。
この段階では自社の内部環境や自社を取り巻く市場環境について分析を行います。
環境分析は何のために行うのでしょう。
これは自社が置かれている環境を正しく把握するためです。
いわば事業戦略を立てる前に状況を整理するために行うのです。
次に具体的な戦略を立てる戦略立案に関するフレームワークを行います。
STP分析はこの戦略立案に関わる重要なフレームワークです。
この戦略立案がしっかりしていなければどんなマーケティングを行っても成功はしません。
言い換えればSTP分析が正しく行われていればその後の施策立案もスムーズに行えるのです。
STP分析の結果によってその後のマーケティングの方向性は大きく変わってきます。
マーケティングの成功の可否はこの分析に掛かっているといっても過言ではないでしょう。
STP分析の優れた活用事例
STP分析をマーケティングの現場に生かすためには自社の特性に合わせた分析を行うことが前提になります。
次にご紹介する3社は自社の特性を理解した上でSTP分析を活用の成功した企業といえるでしょう。
具体的な活用事例について詳しく解説していきます。
ユニクロ
ユニクロはこどもからお年寄りまで全年齢・性別をターゲットにしたアパレルブランドです。
ユニクロのマーケティングの成功の影にはSTP分析のポジショニングが活用されています。
アパレル業界は強力な競合が数多く存在しています。
そこでユニクロはトレンドを追うアパレル業界のセオリーとは真逆のポジショニングを行うことにしました。
誰もが使えるベーシックな日常着を提案したのです。
フリースなど誰でも着られる定番のデザインながらカラーとサイズを豊富に展開することでヒットを生み出しました。
近年では独自の機能性を追加したヒートテックやエアリズムなどインナーも発売しています。
現在では国内のみならず海外でも人気のブランドに成長しています。
スターバックス
世界中に数多くのファンを持つスターバックスは巧みなSTP分析を活用したことで成功しました。
スターバックスでは利用者のセグメントを徹底的に細分化しています。
年齢別のセグメント以外にも職業や居住地域など細かくカテゴライズしているのが特徴といえるでしょう。
また、出店先の地域の特徴や嗜好性などその土地の住民のニーズの調査にも力を入れています。
こうした徹底したセグメントとターゲティングでユーザーに合わせた商品開発を行っています。
加えてブランドイメージであるオシャレで都会的という企業イメージを積極的に打ち出すことで独自性を確立。
S・T・Pすべてを活用したマーケティング戦略で飲食業界でもトップブランドを確立するまでに至りました。
ライフネット生命
ライフネット生命は国内初のインターネット専業の保険会社です。
ライフネット生命の特徴は若い子育て世代をターゲットに低価格な保険サービスを提供しているのが特徴です。
この若い子育て世代という明確なターティングを軸に事業モデルを構築したことが成功の秘訣といえるでしょう。
小さなこどものいる家庭ではもしもの備えは必要ですが、高額な保険料は家計の負担になります。
そこで、インターネットで集客から手続きに関わる全てを完結することで人件費を削減。
コストを極限まで減らすことで格安の保険料を実現しました。
さらに24時間どこでも保険に加入できる利便性の良さも受け多くの加入者を獲得することができました。
3社の活用事例から見えてくるのが徹底した顧客目線でのマーケティング戦略の打ち出しです。
自社の強みや企業理念など特性に合わせたSTP分析により戦略を立てていることが成功の秘訣といえるでしょう。
STP分析のBtoBとBtoCでの使い分け
STP分析はBtoC、BtoBのどちらでも活用ができます。
しかし、BtoCとBtoBでは顧客の性質が異なるためSTP分析もそれぞれの特性に合わせて使い分ける必要があるでしょう。
BtoCでは個人である消費者の基本的な性質を分析することを目的にSTP分析を行います。
一方、BtoBは企業や団体の特性や業界の特性を分析することが目的といえるでしょう。
個人的な消費者と違い業界自体の特性や企業の性質は複雑な要素が絡み合って出来上がっています。
そのため、セグメントなどの分析の際にはBtoCと異なる視点を持つことが重要といえるでしょう。
BtoBにおける代表的なセグメント要素は以下の3つです。
- 企業の規模(従業員数・売上高)
- 業界
- 社風
これに加えてBtoBのSTP分析は決済権限の有無も考慮する必要があります。
通常、BtoCでは商品を購入する意思決定は消費者1人が行います。
しかし、企業の場合は窓口となる担当者や使用される現場の責任者や部門長などさまざまな担当者が購入の意思決定に関係しています。
こうしたことを踏まえてBtoC・BtoBのそれぞれの特性に合わせたSTP分析を行うことが重要になって来るでしょう。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
BtoBにおけるSTP分析の優れた活用事例
クラウド型CRM・SFAサービスで世界でもトップシェアを誇るSalesforceの活用事例をご紹介します。
Salesforceは徹底したセグメンテーションを行い、その分析結果を基にターゲティングやポジショニングを行いました。
ではSalesforceが行った徹底したセグメンテーションとはどういったものだったのでしょうか。
Salesforceは顧客である企業の規模を詳細に細分化しました。
Salesforceの最大のメリットは営業活動の効率化やノウハウの共有です。
しかし、これは従業員が多い企業が受けることができるメリットです。
加えてSalesforceを活用するには社員が積極的に活用してくれないと意味がありません。
そこで、Salesforceは企業のセグメントを従業員の多い大規模な企業でデジタルツールの採用に積極的な企業に絞りこみました。
また、既存のCRMに不満を持つ企業もターゲットに加えることで自社のファンを獲得することに成功をしました。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
優れた活用事例からわかること
ここまでSTP分析を活用した企業の成功事例をご紹介しました。
これらの企業の成功には4つの共通点があります。
その共通点について詳しく解説をしていましょう。
顧客視点で考える
STP分析を行う上で最も重要なのが顧客視点で分析を行うことです。
どれだけ緻密な分析を行っても顧客にとってメリットのない商品やサービスは売れません。
効率よく売り上げを取るには顧客のニーズや悩みを把握することが重要になります。
STP分析を行う際には顧客視点で考えることを心掛けましょう。
各項目は互いに作用する
STP分析の大きな特徴が各項目が相互に作用することです。
例えば分析の順番をS→T→PをP→T→Sに変えても分析を行うことができます。
多くの企業にはその企業ならではの強みが必ずあります。
例えば独自の技術やリソースを持っているのあればその強みを生かしたセグメンテーションやターゲティングが可能になるでしょう。
このように分析の手順にこだわることなく柔軟な発想で考えることが重要になります。
俯瞰的な見直しの必要性
先の章でもお話をしたようにSTP分析は各項目がお互いに強い関係性を持っています。
言い換えれば1つの項目を強化しても期待通りの結果を得ることは難しいということです。
もし問題点が発生した場合は各項目の1つを見直すのではなく全体を大きく捉え改善点を見つけることが重要といえるでしょう。
競合モデルのビジネスモデルの熟知
市場には多くの競合が存在します。
その多くがSTP分析を取り入れたマーケティングを行っていることでしょう。
実際に今回ご紹介したようにSTP分析を活用して成功を収めた企業も多数存在しています。
こうした企業と戦うためには競合他社のビジネスモデルを熟知しておくことが必要です。
成功事例を参考にるするだけは他社との競争に勝つことはできないでしょう。
自社ならではのオリジナリティを加えることで他社にはない独自性を生み出すことができるでしょう。
STP分析を行う上で重要なポイントは4つあります。
それぞれのポイントの重要性を理解した上でSTP分析を行いましょう。
マーケティングで悩んだらプロへの相談がおすすめ
ここまでSTP分析についてお話をしてきました。
自社のマーケティングにSTP分析を活用するにはまず自社の特性を把握することが重要です。
こうした作業は企業内の担当者だけではなかなか正確に行うことは難しいでしょう。
そこで企業のコンサルティングに特化したプロに相談することをおすすめします。
デジマクラスはWebマーケティングをはじめ企業のマーケティングのコンサルタントを行っています。
その他リサーチなど企業運営に関する全般のご相談も承っています。
マーケティングに関するお悩みはデジマクラスにご相談ください。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
まとめ
今回はSTP分析について解説をしてきました。
STP分析は企業の規模を問わず多くが取り入れているフレームワークです。
市場における自社の立ち位置を確認すること以外にもさまざまな場面で役立つでしょう。
また、特定の業種に限らず幅広い業種で活用できるのも大きな特徴です。
新規市場の開拓時や事業戦略の見直しの際にはぜひ活用してみてください。