企業間の取引を効率よくするためのシステムがEDIシステムです。
「Electronic Data Interchange」は電子的交換を意味しますが、この頭文字をとりEDIと呼ばれています。
こちらではEDIシステムの仕組みや導入のメリット・デメリットなどについて解説しています。
Web-EDIについても解説しているので、EDIシステムの導入の参考にしてください。
目次
EDIシステムの特徴
EDIは文字通り取引状況を電子データ交換に置き換えて、業務の効率化をはかることを目的とするシステムです。
その特徴にはどのようなことがあるのか確認していきましょう。
電子データの交換
電子データの交換というと広い範囲でとらえられがちですが、EDIシステムの場合にははっきりとした定義があります。
その定義は次の4つの事柄で定められています。
- 商取引におけるデータであること
- 通信回線を利用すること
- 標準的な規約に基づくこと
- データはコンピュータ間で交換すること
上記定義から、EDIシステムは企業と企業の間で用いられる電子データの自動交換のことをいうのだとわかります。
内部統制に有効
EDIの特徴にはデータが電子化されたもので送られるため、内部で共有しやすく統制が取りやすくなることが挙げられます。
内部統制は組織内部のルールやプロセスを整備し運用することで、組織の目的を達成に導く要としての考え方です。
送られるデータが電子化されることで、この内部統制がスムーズに行えるのです。
その結果として、EDIシステム導入は組織の目的を効率的に達成できることに繋がります。
EOSとの関係性
EDIシステムと似た言葉にEOSがあります。Electronic Ordering Systemの頭文字を取ったEOSは電子発注システムをいいます。
取引業務すべてに対応するEDIシステムに対して、EOSは発注のみのシステムと考えるとよいでしょう。
1970年代量販店などでEOSシステムは多く導入されましたが、受注側にとってはそのシステム対応が負担となる場合も多かったのです。
電子データ交換の標準化によって、その適用範囲の広さから多くの企業がEOSに代わりEDIを取り入れたのです。
EDIシステムの仕組み
EDIシステムを導入することで、企業間のデータのやり取りが自動化でき、紙ベースによるコスト削減や業務の効率化が期待できます。
システムの仕組みはどのようになっているのか、解説していきましょう。
ひと言でいうとEDIはデータをコンピュータ間で変換して取引を行うという仕組みです。
変換できるデータには次のようなものがあります。
- 文字コード
- レイアウト
- データコード
企業によって扱える文字コードが違う場合には文字コードを変換して各企業で扱えるようにしてくれます。
レイアウト形式も各企業で理解できる形式に変換します。
また商品によりデータコードが異なる場合には各企業で読み取れるデータコードに変換した商品コードでのやり取りが可能となります。
上記のように企業間での受発注がスムーズに行えるように企業によって異なるデータ形式を変換する仕組みがEDIシステムなのです。
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EDIシステムで事前に確認すべきものは?
EDIシステム導入前に確認しておくことについて解説していきましょう。
まず大切なのは取引先とのデータ送受信環境を整えておくことです。
通信プロトコル・導入スケジュールなど主要なことを決めておきましょう。
通信のプロトコル
データ通信はプロトコルという決まり事で行われています。
コンピュータが意思疎通のために使う通信の手順や約束事がプロトコルなのです。
通信プロトコルは企業によって違い、EDIシステムで主に使われるプロトコルは次のようなものがあります。
- 全銀協標準プロトコル
- JCA手順
- 石化協ビジネスプロトコル
- JX手順
銀行間で使われる全銀協標準・小売業流通業で使われるJCA・石油化学工業協会の石化協ビジネス・流通BMS採用のJXなどになります。
EDIだけでなく、Web-EDIでもさまざまなプロトコルがあるので事前にしっかりと確認しておくようにしてください。
書類のフォーマットやデータ形式
またEDIではお互いのデータフォーマットが違っている場合やデータ形式が違う場合でも、変換してやり取りができるのです。
確認して、取引先のデータ認識コードなどデータ形式を事前に決めておくとよいでしょう。
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EDIシステムの種類
EDIシステムを有効活用するためにはいくつかのルールがあり、その種類によってルールも違います。EDIの種類についてお話しましょう。
個別EDI
個別EDIは取引先ごとに通信の形式や認識コードを決めるので、取引先ごとに個別にルール設定が必要になります。
複数の取引先との通信が難しく、EDIを広げにくい点がデメリットです。取引先が少ない場合にのみ利用したい種類です。
標準EDI
異なる通信形式の企業間では、共通した形式や規格が必要になります。
これが標準化された規格という考え方で、その標準化された規格を使ったものが標準EDIとなります。
標準規格のEDIは同日規格の多い企業とのやり取りが可能となるので、EDIシステムでは一番多い種類といえるのです。
業界VAN
標準EDIの中で業界に特化したネットワークサービスが業界VANと呼ばれる種類です。
特定の業界ということで取引先も特化されますが、業界共通のコードなどが標準化されており、非常に利用しやすくなっています。
EDIの種類を選ぶことは重要で、同じ標準EDIであっても業界VANを選べば同じ業界であればより多くの取引先と接続できるのです。
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EDIシステムを導入するメリット
EDIシステムについておわかりいただけたでしょうか。
それでは実際にEDIシステムを導入することのメリットには、どのようなことがあるのか解説していきましょう。
大きなメリットには次に挙げることがあります。
- 業務の手間を削減する
- 業務スピードが向上する
- 業務がより正確に行える
それぞれ特にどのような点がメリットにつながるのか確認しましょう。
業務の手間を削減できる
今まで紙ベースでのやり取りをしていたとしたら、受発注にかかる労力やコストは大きなものでしょう。
EDIシステムでは帳簿類をすべて電子データとして保存可能となるので、印刷等の手間が省けます。
また会計システムや管理システムなどの情報を基にした帳票を自動で作成送受信もできるのもメリットといえるでしょう。
どうしても不可欠だった請求書などの送付に関してもEDIシステムを導入することで、ペーパーレスを実現することが可能となるのです。
業務スピードの向上が期待できる
業務の手間を省けるということは、同時に業務スピードの向上につながるということです。
高速通信によるメリットとしては、タイムラグが無くなることで必要以上に在庫を抱える必要がなくなるということも挙げられます。
EDIシステムを利用することで業務スピード向上が期待できるとともに、生産計画や在庫計画までもスムーズに行えるのです。
業務の正確性の向上に繋がる
EDIでは帳票類を自動でデータ化し送受信したり保存したりできます。手入力時と比べてミスが無くなるのは大きなメリットです。
取り込んだデータを自動で送信できるので、正確性が向上して信頼関係もより築ける結果となります。
取引企業同士の信頼関係も深まり、その正確性により内部統制の強化も期待できるのがEDIのメリットなのです。
EDIシステムを導入するデメリット
EDIシステムのメリットについてお話してきましたが、EDIシステムにはデメリットがまったく無いわけではありません。
どのような点がデメリットとなるのか、みていきましょう。
EDIシステムの導入のメリットは取引企業間で同じEDIを導入することで得られるものです。
もしも取引先と互換性のないEDIシステムを導入しているのならかえってデメリットとなりかねません。
また固定電話回線を利用したシステムのため、固定電話回線が廃止された場合のことも考えておく必要があります。
これもEDIシステムのデメリットであるといわざるを得ないのです。
この固定電話回線廃止を念頭に、近年導入が増えているのがWeb-EDIなのです。
Web-EDIの特徴
近年、固定電話回線を利用するシステムであるEDIに代わりインターネット回線を利用するWeb-EDIが注目されつつあります。
次にWeb-EDIの特徴について解説していきましょう。
「EDI-2024年問題」への有効な解決策
Web-EDIはインターネット回線で手軽に利用でき、インターネットの通信費用のみの低コストも受け広まっています。
加えて、Web-EDIが注目される原因の1つに「EDI-2024年問題」があります。
これはNTT東日本・西日本が発表した、2024年1月をもって、ISDN回線を終了しアナログ回線をIP化するという計画です。
現在でも多くの企業がISDN回線を利用したEDIシステムを利用しており、この「2024年問題」は大きな課題となっています。
そこで代替えとしてWeb-EDIが受け入れられはじめているのです。
Web-EDIが受け入れられる理由には、ブラウザでの操作が可能なためインストールの必要がないことと、クラウド型が多いことです。
Web-EDIは一般的なパソコン用のブラウザを使用するため、パソコンの仕様を選びません。
またクラウド型が基本のため、比較的簡単に導入することができるのが大きな特徴です。
標準化されていないことに注意
EDIシステムに代り切り替えが進むWeb-EDIですが、次のような注意すべき点があるのも事実なのです。
- 標準化されていない
- 取引先との調整
- セキュリティ問題
Web-EDIはEDI システムのように標準化されていません。そのため切り替える場合には取引先との調整が必要になります。
通信プロトコルが取引先で対応可能かどうかも確認する必要があるのです。
また、インターネット回線を利用する以上、サーバー攻撃などへの対策は不可欠となります。
システムメンテナンスや運用サポートが充実しているWeb-EDIシステムを選ぶようにするとよいでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
EDIシステムの活用事例
さまざまな企業がEDIシステムを導入していますが、どのように活用されているのでしょうか。
EDIシステムで取引業務として扱われる電子データには2つの種類があります。
商流EDIと金融EDIの2つのデータです。その内の商流EDIデータは次のようなデータになります。
- 見積もり・見積もり回答
- 注文・納期回答
- 出荷・受取
- 請求・支払
上記が電子データとして取引業者間でやりとりされるのです。
EDI導入以前は紙ベースでのやり取りが多く、FAXや電話、郵送で行われていたことです。
保存データも当然紙ベースのため、場所を取り郵送にかかる費用や作成にかかる手間などももちろん、人為的ミスも多いのが実情でした。
EDI導入後は時間も短縮され、コスト削減されるなど活用でのメリットは大きいものでした。
ただ金融機関とのやり取りを行うには別の金融EDIのデータを別に利用する必要があったのです。
1つの単位として扱われるデータには上限があり2つのデータを1つにすることは難しいとされているのです。
こういったEDIは従来型EDIと呼ばれ、多くの企業や物流会社などで活用されています。
ただ課題も多く、通信速度に限度があることや料金が従量制だという問題点に加えて2024年にはISDN回線終了計画も課題の1つです。
そのような課題や情報の変化にいち早く対応しようと、新しいEDIへの切り替えを成功させた企業も少なくありません。
エバラ食品工業株式会社と、同グループの株式会社エバラ物流もその企業の一例といえるでしょう。
エバラ食品工業株式会社は約25年前からEDIをシステム化して利用していましたが、2016年から運用形態を変えています。
また通信プロトコルをJCAから全銀TCP/IP、全銀TCP/IPからebMSに手順変更しているのです。
システムを刷新したことで、データ転送のスピードアップなど業務効率の向上が認められています。
スムーズな移行と業績アップに成功した好事例といえるでしょう。
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EDIシステムの導入で困ったら?
EDIシステムは企業と企業の間でやり取りを行う電子データを自動交換するシステムです。
業務の手間を省き業務のスピード向上や正確さが期待できるため、導入している企業は多いのです。
ただ従来型EDIシステムにはさまざまな課題があり、新しいEDIへの導入が必要とされています。
導入についてはデジマクラスなどコンサルタントに相談して、自社にとって有利なEDI導入を検討されることをおすすめします。
まとめ
EDIは企業間のデータを自動交換して業務の効率化をはかるためのシステムです。
従来型EDIからWeb-EDIさらに新しいEDIシステムへと、さらなる業務の効率アップやコスト削減も期待できるでしょう。
ただ、課題もありEDIシステムを有利に導入するためには充分な検討が必要です。
デジマクラスに相談して、スムーズな導入を目指してください。