ECサイトの運営をする上で、サイト上でのユーザーの行動分析を行うにはさまざまな情報を集める必要があります。
商品の販売数や売上高だけでなく、サイトに訪れたユーザーの数やそれぞれの商品ページに訪れたユーザーの数なども重要な情報です。
これらの情報を効率良く収集し分析が行える、Googleアナリティクスのeコマーストラッキング機能について解説していきます。
eコマース機能の導入によりどのようなデータを集計できるのか導入に必要な手順などをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
Googleアナリティクスのeコマース機能の位置付け
eコマーストラッキング機能とはGoogleアナリティクスでECサイトの商品の売上などの購入情報を集計し分析できる機能です。
ECサイトを運営する上で商品ごとの詳細な販売数や売上高など様々な指標を管理することは重要になります。
しかし、これらを自身で集計しレポートを作るのは非常に大変な作業です。
そこでGoogleアナリティクスにデータを取り込み、ユーザーの行動を効率的に分析することが可能になります。
Googleアナリティクスのeコマース機能では以下のような項目について集計することが可能です。
- 価格
- 収益
- 税金
- 購入数
- 配送料
こうした様々なデータを集計し分析することで、売れ行きの良い商品を可視化しその後の販売戦略に活かせるのです。
eコマーストラッキング機能でわかること
eコマーストラッキング機能ではいろいろな項目を集計することが可能です。
eコマーストラッキング機能で集計できる具体的な内容について解説していきましょう。
購入された商品の平均価格・平均数量
eコマーストラッキング機能で分析できる要素として、ユーザーが購入した商品の平均価格と平均数量を知ることができます。
売れ筋の商品を把握するだけでなく、もっと広い視点からサイト全体でユーザーがどれくらいの金額を使っているかを知ることも重要です。
ユーザーが利用する金額と数量の平均を把握することで、今後売り出す商品価格の参考にもできるでしょう。
また、場合によってはユーザーのサイトでの利用金額が想定より低くなっていることも把握できます。
そうした場合には、一緒に購入してもらえる関連商品を積極的に打ち出して平均購入価格の底上げを図るといった戦略も立てられるのです。
ユーザーごとの購入数・収益
eコマーストラッキング機能では、商品の詳細情報だけでなくユーザーごとの購入数や収益などの情報も知ることができます。
特定のユーザーがどれくらいの金額の商品をどの程度の頻度で購入しているかといった詳細な購買傾向を分析可能です。
例えば年齢別の購買傾向を把握し、狙っているターゲット層からどれくらいの販売実績を得られているか把握することができます。
商品の売上高だけでは分からないユーザーごとの購買傾向を知ることで、より戦略的な販売計画を立てられるのです。
ユーザーがサイトに訪れてから購入するまでの期間
ユーザーごとの販売傾向に関連したもので、ユーザーがサイトに訪れてから購入するまでの期間も把握できます。
これは特に高単価の商品を販売する時に重要な要素です。
安い金額の商品であれば、サイトに訪れて初めて商品を見たときにすぐに購入されるケースも少なくありません。
しかし、販売価格が高くなるにつれて消費者が購買行動に移すまでの時間が長くなる傾向が強いです。
ユーザーは商品を見つけてから購入するまでに、他サイトと比較するなどして購入を検討した後に商品を購入します。
この検討期間の間に他サイトに顧客が流れてしまうケースが多いようであれば、自社サイトに何かしらの問題があると考えられるのです。
・ユーザーごとの購入数や収益を知ることで詳細な購買行動を分析できる
・ユーザーが他社サイトなどと比較検討して購入までにかかる期間を知ることができる
どんなECサイトで利用できる?
Googleアナリティクスのeコマーストラッキング機能はすべてのECサイトで導入できるわけではありません。
ECサイトを構築する主な手法は以下の通りです。
- フルスクラッチ
- オープンソース
- ASPサービス
フルスクラッチは既存のプログラムやソフトウェアを一切使わず、サーバーなどすべてを自社で用意する手法です。
フルスクラッチでは自社の仕様に合わせてカスタマイズ可能であるためeコマース機能も使用できます。
オープンソースはフルスクラッチと似たやり方ですが、外部に公開されているソースコードを使ってサイトを構築する手法です。
これは自社ですべてのプログラムを構築する必要はなく、すでに作られたものを使って比較的容易にECサイトを作ることができます。
カスタマイズもできるため、この場合でもeコマーストラッキング機能を利用可能です。
最近ではプログラミングの知識がなくても簡単にECサイトを立ち上げられるASPサービスを利用するケースが増えています。
ASPはシステムの管理をすべてサービスの提供元が行うため、利用者は専門知識など必要なくECサイトの運営が可能です。
簡単にECサイトを運営できるのですが、ASPのサービスによってはできることが制限されるケースも少なくありません。
なかにはeコマーストラッキング機能を導入できない場合もあるため、事前にどのような機能が使えるか確認しておくことが重要です。
・ASPサービスの場合は機能が制限されeコマース機能を導入できないケースもある
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
eコマース機能の設定方法
eコマーストラッキング機能を実際に設定する方法について解説していきましょう。
eコマースプラグインの読み込み
Googleアナリティクスのデフォルトの状態ではeコマース機能を使うことができません。
使用するためにはGoogleアナリティクスのライブラリ内にプラグインとして読み込む必要があります。
具体的に記述する内容は以下のコマンドです。
ga(‘require’, ‘ecommerce’);
これによりプラグインがECサイト側に読み込まれ、eコマース機能を利用する準備が完了します。
購買情報(トランザクション)を追加
次に、ユーザーの購入情報の中からどの項目を分析するか設定します。
設定できる項目は以下の5つです。
- id…ユーザー別のトランザクションID
- affiliation…売上が発生した店舗
- revenue…合計販売金額(送料や税金を含む)
- shipping…送料
- tax…税金
この中から自社サイトに適したものを設定し使用します。
購買された商品情報(アイテム)を追加
ユーザーが購入した商品の詳細情報の分析も設定可能です。
これは個別の商品ごとに設定する必要があり、以下の項目の中から最大で6つ設定することができます。
- id…トランザクションID
- name…商品・製品名
- sku…商品SKU
- category…商品カテゴリ
- price…商品の単価
- quantity…商品の購入数
これらも自社が取り扱う商品に応じて適宜設定します。
データを送信する
最後に、これまで設定してきた内容を反映させるためにGoogleアナリティクスに送信するソースコードを記述します。
ga(‘ecommerce:send’);
上記コードを記述することでGoogleアナリティクスにデータが送信されます。
eコマース機能を利用するためには、これらのソースコード一式をプログラムに組み込まなければなりません。
自社が販売する商品や把握したい顧客の販売情報に合わせて必要になる項目を選んで設定する必要があります。
データ解析・活用の事例はこちら
レポートの確認方法
トラッキングコードの設定がすべて完了し顧客の販売データが集まると、Googleアナリティクスの管理画面から確認可能です。
eコマースの分析データを確認するには、メニュー画面の「コンバージョン」をクリックし「eコマース>概要」を選択します。
この概要から確認できるのは、ECサイト全体の収益の総額や購入につながったセッションの割合であるコンバージョン率などです。
これらの情報は任意の期間で数値を絞ることができて、数値の推移もグラフで確認できます。
eコマース機能を活用するメリット
Googleアナリティクスでのeコマース機能の設定が完了したら、次に集めたデータの分析を行います。
データを分析する上でeコマース機能を活用するメリットについて解説していきましょう。
受注数や貢献度の高いLPを可視化できる
商品の売れ行きをLPごとに分けて集計し、それぞれの貢献度合いを把握することができます。
サイト全体での売上や商品の販売数は通常のレポート機能でも見れますが、LPごとの売れ行きは把握できません。
eコマース機能を追加すると、それぞれのLPで売り上げた詳細な情報を把握することが可能です。
これにより、漠然としたサイト全体での情報だけでは把握できないユーザーの行動傾向を見ることができます。
LPごとの貢献度の違いも分かるため、それぞれの特性を生かした販売戦略を練ることができるのも大きなメリットです。
購入に至るまでの訪問回数や日数が分かる
eコマース機能を活用することで、サイト内でのユーザーの詳細な動きが把握できるため、購入に至るまでの経緯も見て取れます。
ユーザーはサイト内で欲しい商品を見つけたとしても、すぐに購入するとは限りません。
特に高単価な商品になるほどユーザーの行動は慎重になるため、購入までにかかる日数は長くなるのです。
ユーザーは購入に至るまでの期間で、同じ商品が掲載されている他社サイトと比較したり類似商品との違いを検討したりします。
この購入までにかかる期間が短いほど、自社サイトがユーザーからの信頼を得ている目安ともいえるでしょう。
逆に、多くのユーザーが購入までに長い日数をかけているようであれば離脱される可能性が高くなっているといえます。
購入までの訪問回数や日数を可視化することは、ユーザーからどれだけの信頼を得られているかを図れる指標の1つです。
ECサイト改善に活用できる
eコマース機能を活用すると、ユーザーの詳細な購買行動を把握することができるためECサイトの改善に活用できます。
サイト全体の売上を見るだけでは、ユーザーからどういったポイントが支持されているのか、どの部分を改善するべきなのか分かりません。
eコマース機能を活用することで、サイト内でユーザーがどういった行動をしているのかを可視化できます。
商品別のページの訪問回数や、そこからどれだけ購入につながったかのCVRを知ることでサイトの問題点を見つけやすくなるのです。
データ解析・活用の事例はこちら
トラッキングコード設置のポイント
eコマース機能をGoogleアナリティクスで利用するために、トラッキングコード設置のポイントについて解説していきましょう。
測定したいすべてのページに設置する
ECサイトにeコマース機能を導入するには、自社サイトのプログラムにトラッキングコードを記述する必要があります。
トラッキングコードとはデータを計測するため、サイトに設置するプログラミング言語で記述されたソースコードです。
このソースコードは1か所に記述すれば、全体に反映されるわけではありません。
データを収集したいページすべてに設置することによって、そのページでのユーザーの動きをデータで確認できるようになります。
HTMLソースのはじめに設置する
トラッキングコードをページ内に記述する際には、HTMLソースのはじめに設置されている<head>タグの直前に設置します。
記述するコードはJavaScriptというプログラミング言語で作られたもので、10行程度の簡単なプログラムです。
それぞれのページに記述するコードの内容は基本的に同じものであり、ページごとに内容を変える必要はありません。
ただし、コード内に記述するトラッキングIDはサイトごとに割り当てられてられているものです。
そのため、他のサイトを参照して記述する場合には違うサイトのトラッキングIDをそのまま使用しないよう注意が必要になります。
設置後は動作確認を行う
トラッキングコードの設置が完了したら、正しく動作しているか確認してみましょう。
確認するには、Googleアナリティクスの管理画面の「トラッキング情報」の中にある「トラッキングステータス」から確認できます。
このトラッキングステータスの初期状態の表示は「トラッキングコードが設定されていません」です。
トラッキングコードが正しく実装されていれば、この部分が「データを受信しています」という内容に変わります。
表示内容が変わりデータを受信していることが確認できれば、トラッキングコードが正しく設置されていると分かるのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
より高度な分析が可能な拡張eコマース
より詳細なユーザーの行動を調べるには拡張eコマース機能の活用が効果的です。
拡張eコマースは、eコマース機能を強化し購入までのプロセスを詳しく把握できる機能として2014年にリリースされました。
大きな特徴は、サイトに訪れたユーザーが商品の購入に至るまでの過程を数値とグラフで可視化できることです。
例えば、「ショッピング行動」のレポートでは商品購入までに至るユーザーの行動を以下の5段階のセッションに分けて調べられます。
- すべてのセッション
- 商品表示が発生したセッション
- カートへの追加が発生したセッション
- 決済が発生したセッション
- トランザクションの発生したセッション
この5つのセッションの数値を可視化することで、どの段階でユーザーが離脱しているのかを明確にできます。
拡張eコマース機能はユーザーの行動をより詳細に把握できる便利な機能ですが、実装には工数が多くかかり容易ではありません。
通常のeコマーストラッキングであれば、最終的な決済が完了するトランザクションが発生したページにのみ設置すれば利用できます。
しかし、拡張eコマースの場合は商品表示やカートへの追加などの行動も計測するため、すべてのアクションの箇所に記述が必要です。
そのため、記述する箇所が非常に多くなるため実装にはかなりの時間がかかります。
拡張eコマースは便利な機能ですが、実装までの工数を考慮し自社でそこまでの機能が必要か精査した上で導入したほうがよいでしょう。
データ解析・活用の事例はこちら
Googleアナリティクスのeコマース機能で悩んだら
Googleアナリティクスのeコマース機能は、ECサイト内のユーザーの行動を詳細に把握できるようになる便利な機能です。
また、拡張eコマースも追加で導入すればさらに詳細なユーザーの動きを数値で可視化できます。
しかし、導入するためにはECサイトのHTMLソースにプログラミング言語を使って記述しなければなりません。
Googleアナリティクスの管理画面から直感的に操作できるものではないので、知識がない状態ではややハードルの高い手順といえます。
Googleアナリティクスのeコマース機能の導入で悩みがあれば、デジマクラスにご相談ください。
デジマクラスでは豊富な業界知識とノウハウを使い、悩みに合わせたアドバイスをすることができます。
eコマース機能の導入についてだけでなく、その後のECサイトの運用についてご相談いただけますのでお気軽にご相談ください。
まとめ
ECサイトの運営においてユーザーの購買傾向を知ることは重要な要素になります。
Googleアナリティクスのeコマース機能は、顧客の購買傾向を探れる効果的なツールです。
便利な機能ではありますが、導入にはプログラミングの知識が少なからず必要になるため敬遠してしまうケースも少なくありません。
eコマース機能の導入で悩みや不安な点があれば、デジマクラスに相談することをおすすめします。
専門家のアドバイスをもとに効果的にeコマース機能を活用し、より良いECサイト運営を目指していきましょう。