SD法とは、Semantic Differential Methodの略称ですが米国の心理学者のオズグッドによって考案された手法です。
アンケートで多段階の評価尺度を取得して、回答者がそのトピックに抱く感情を測定します。
SD法が多く用いられる理由は、製品の印象評価・消費者のニーズ・トレンドなどを知れるため多くの企業が取り入れています。
ここでは、SD法の分析方法とアンケート作成手順・注意点・目的・アンケート調査の手法・活用方法を詳しく解説しますので、最後までご覧ください。
目次
SD法とは?
SD法は、心理学的な実験で用いられることが多く、「単純なー複雑な」などの反対語の対からなる評価尺度を複数使用して対象の評価を行います。
5段階や7段階の両極性の尺度から回答をしてもらい、各評価尺度段階をリケルト尺度で数値化するのです。
日本人は、「どちらともいえない」というような評価を頻発する場合が多いので、偏らないように4段階9項目などの評価尺度を用います。
SD法が活用される場面
SD法は、ブランド・企業・製品のイメージなどを調べる場合に、多く用いられる測定方法です。
元々は官能評価で使用されていましたが、商品の品質改善・飲食品の新商品開発などで現在も多く使われています。
測定によって顧客の感受性を理解して、それに基づき製品・サービスを提供することで、市場競争力を強化します。
リッカート尺度との違い
SD法は、商品や企業のイメージなどを調べる際によく用いられますが、対となる形容詞の中から選ぶ多段階での回答によって測定をしています。
それに対してリッカート分析は、質問に対しての答えは、「はい・いいえ」や「大変満足・満足・普通」などを多段階の回答によって測定します。
リッカート分析は単純な2択ですが、SD法は対となる形容詞のどれが該当するかを多段階で回答した測定です。
SD法の分析方法
SD法の分析方法の主な手法を下記に記載します。
- プロフィール分析
- 多変量解析
上記の内容について、ここでは詳しく解説します。
プロフィール分析
SD法の分析方法として最も基本的な手法は、プロフィール分析です。
プロフィール分析は、顧客中心のアプローチを取る上で重要な手法で、より効果的なマーケティング戦略を構築します。
測定結果によって、マーケティングやビジネス戦略の最適化を可能とし、顧客の商品への満足度や信頼度を向上させます。
多変量解析
多変量解析は、変数や変量などの複数データの関連性を分析して、データを予測する分析方法の総称ですが主成分分析と因子分析などが含まれます。
多変量とは、1変量・2変量よりもデータ数が多いため分析手法も多くなり、回答から考察可能な範囲も広がるのです。
マーケティングで多く用いられていますが、商品改善・売上予測・新商品開発などに使用しています。
SD法のメリット・デメリット
メリットとしては、顧客志向のアプローチによって顧客の視点からの改良が可能になることと、製品やサービスの最適化・市場競争力の強化などがあげられます。
デメリットしては、特定の視点に焦点を当てるため他の要因が見落とされる可能性があること、顧客の主観的な意見に基づくため客観的なデータとは異なる場合があります。
顧客の感受性は予測が難しい場合がありますので、他の分析手法と組み合わせて利用し、より総合的な視点での改良が必要です。
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SD法のアンケート作成手順
SD法のアンケート作成手順方法を、下記に記載します。
- 対になる形容詞を設定する
- 尺度の配列順序を決める
- 尺度の段階を決める
上記の内容について、ここでは詳しく解説します。
対になる形容詞を設定する
SD法を使用する場合は、対になる形容詞を設定する必要があります。
下記に主な例を記載します。
- 大きい – 小さい
- 高い – 低い
- 速い – 遅い
- 強い – 弱い
- 明るい – 暗い
- 新しい – 古い
- 単純な – 複雑な
- 高価な – 安価な
- 近い – 遠い
- 元気な – 元気がない
尺度の配列順序を決める
尺度の配列順序を決める場合には、まず対象となる要素やデータを収集します。
一般的にデータの尺度は、名義尺度・順序尺度・間隔尺度・比率尺度の4つに分類されます。
尺度に応じて配列順序を決める基準を選定し、統計的手法と組み合わせて配列順序を確定してから、専門家や関係者の意見を求め確定して下さい。
尺度の段階を決める
尺度の段階を決める手順を下記に記載します。
- データの性質を把握:データの種類や特性を理解、それぞれの尺度が適切か判断する
- 利用目的を考慮:データの用途や分析手法によって、適切な尺度を選定
- 尺度を確定:データ収集をする前に尺度を確定
- 統計解析の選択:尺度に基づいて適切な統計解析手法を選定
- データの可視化:選んだ尺度に基づいて、データを適切に可視化
以上の手順に従うことで、適切な尺度を選べるのです。
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アンケート作成の注意点
アンケート作成の注意点は、下記になります。
- 選択肢はわかりやすい表現にする
- 3つの基本属性に則した質問にする
- 質問の順番にも注意する
上記の内容について、ここでは詳しく解説します。
選択肢はわかりやすい表現にする
SD法のアンケートで、選択肢を選ぶ時は解りやすい形容詞を選ぶようにしましょう。
難解な表現や地方特有の方言などは、全国的に意味が通じないため、避けて下さい。
また、誤解されるような表現として「まずい」などは、味がまずいのか行動がまずいのか判断しずらくなります。
3つの基本属性に則した質問
SD法は、3つの基本属性に基づいた内容の質問を盛り込むことが重要です。
評価性・効力性・活動性の基本属性は、どのような文化の人でも持っている感情的側面で、多くの人に回答しやすいためです。
3つの基本属性の例について下記に記載します。
- 評価性:「好きー嫌い」「良いー悪い」
- 効力性:「大きいー小さい」「強いー弱い」
- 活動性:「積極的ー消極的」「熱いー冷たい」
質問の順番にも注意する
SD法を適用する際には、質問の順番にも注意が必要です。
質問の順番に関するポイントは下記になります。
- 基本的な情報から基本的な情報へ
- 開かれた質問から具体的な質問へ
- 感受性の高いトピックは注意して扱う
- 顧客の主観を重視する
- 柔軟性を持つ
- 終了時に総括的な意見を求める
マーケティングでアンケートを行う目的
マーケティングでアンケートを行う場合は、目的を明確にしましょう。
目的が定まっていないと、顧客の要望を引き出せないからです。
例えば、商品に関してのアンケートだった場合は、商品に対しての不満点や満足度が高かった製品名のような質問を設定します。
それによって、顧客がどのような商品を求めているかが解るのです。
アンケート調査の手法
アンケート調査の主な手法を下記に記載します。
- インターネット
- ホームユーステスト
- 会場調査
- 郵送調査
- 街頭調査
上記の内容について、ここでは詳しく解説します。
インターネット
アンケートというと従来は紙にプリントアウトされたものが多くありましたが、今ではインターネットを介して行われるWebアンケートが主流になっています。
PCやスマートデバイスなどからアクセスして、簡単に対応回答ができ便利です。
インターネットを利用するため、データの収集や集計が効率的に行えますので、手作業でのデータの集計作業が不要です。
テキスト、単一選択、複数選択、スケールなど、さまざまな形式の質問を組み合わせて、SD法も活用できます。
インターネットを通じて実施するWebアンケートは、効率的なデータ収集と顧客の声を活かすための重要な手法となっています。
ホームユーステスト
ホームユーステストは、製品やサービスの評価を目的として、顧客が自宅や普段の生活の中で製品を使用・試用するテスト方法です。
実際に顧客が自宅や日常生活で製品を使用することで、リアルな使用状況が解ります。
一定期間使用していただき、長期的な評価や効果を把握できますので、顧客の目線で製品を評価できるのです。
フィードバック方法もインターネットやアプリを利用して収集できるため、テスト参加者の評価を効率的に収集できます。
ホームユーステストは、製品開発やマーケティング戦略の評価に活用されている一つの重要な手法です。
会場調査
会場調査は、イベント会場などで実施されるアンケートや調査活動のことで、イベントに関連する情報や意見を得る際に非常に有効な手法です。
イベントなど特定の場所に集まるターゲット層に対して行うため、効果的な情報を得られます。
アンケートのみならず、出品している商品などのプロモーションやサンプリング活動も行えるので効率的かつ効果的な手法です。
現地での調査になるため、商品に興味がある参加者を対象としているので、アンケートへの回答率が高い傾向があります。
ターゲット層が集まる場所での調査は、具体的な洞察を得られますので、非常に重要です。
郵送調査
郵送調査は、紙のアンケート用紙を自宅へ郵送して、顧客に回答を記入して返送してもらう方法です。
その特徴や利点としては、インターネットや電話を使わないため、対象者の情報通信手段に依存しないことです。
インターネットによる個人情報の漏洩などを心配する方には、プライバシーが保護されていると感じやすのではないでしょうか。
また、郵送されたアンケートの記載も自分の時間で記入が可能となるので、インターネットでの回答に比べて時間の制約が少ないのです。
高齢者などは、インターネットの操作に不慣れな人も多いので、ターゲットが高齢者の場合などは対象者の範囲を広げられます。
郵送調査には手間や時間がかかるので、返送率が低い場合もありますが顧客の属性や調査の目的によって、最適な調査手法を選びましょう。
街頭調査
街頭調査は、特定の場所で通行人や来場者に対して直接アンケートや質問を行う調査方法です。
調査を実施する場所で直接回答を得るため、リアルタイムでデータを収集できます。
製品の実物を見せたり、サンプリングを行うことで回答者のリアクションを得られ、特定の場所や時間帯を選ぶので調査の範囲を制限できます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
マーケティングに役立つアンケートのポイント
マーケティングに役立つアンケートのポイントとは、どのようなものがあるのでしょうか。
下記に、主なポイントを記載します。
- 目的を明確にする
- 回答して欲しい層を想定する
- 具体的な質問を設定する
上記の内容について、ここでは詳しく解説します。
目的を明確にする
まず最初に、なぜアンケートを行うのか・何を知りたいのか目的を明確にする必要があります。
例えば、新商品のイメージを調査する・顧客のニーズを把握する・市場のトレンドを把握するなど、具体的な目的を定めましょう。
ターゲットを明確にすることも重要で、顧客・潜在顧客・特定の市場などの調査対象者も選定します。
目的を明確にした後に、調査の実施方法・調査の範囲や期間・データの収集と分析方法などを事前に決めてから実施することで、有益な情報収集が可能となるのです。
回答して欲しい層を想定する
アンケートを行う際に、回答して欲しい層を想定するのは非常に重要です。
具体的な年齢・性別・地域・職業など、調査の目的に合わせて必要な層を選定します。
既存の顧客データや市場調査データを活用し、対象者を選定する際の参考にしましょう。
選定したターゲット層の特性や行動パターンを理解したうえで情報収集方法を選ぶと、より効率的なアンケートが実施できます。
具体的な質問を設定する
アンケート内容は、具体的な質問を設定した方が調査結果の品質に大きな影響を与えます。
製品評価に関する質問・サービス改善に関する質問・購買行動に関する質問・新商品の関心度に関する質問など具体的な質問をするとより有益な情報が集まります。
特に購買行動に関しては、価格・品質・ブランド名などを質問内容に記載すると業界内の市場のシェア状況なども入手できるのです。
アンケートの活用方法
アンケートの活用方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
下記に活用例を記載します。
- ホワイトペーパーを作成する
- インフォグラフィックを作成する
上記について、ここでは詳しく解説します。
ホワイトペーパーを作成する
ホワイトペーパーとは、自社の製品やテーマについて詳細かつ総合的な情報を、ホームページや広告等からダウンロードできる文書です。
主にビジネスや技術の分野で使用され、専門的な知識や解決策を提供することを目的としています。
ホワイトペーパーの作成する大きな目的としては、新規顧客の獲得なので読む方に対して有益な情報を提供し、見込み顧客へのアプローチが可能となります。
課題解決型・事例紹介型・レポート型などの種類に分けられ、質の高いホワイトペーパーは企業に対する信頼が得られるので受注角度を高められるのです。
インフォグラフィックを作成する
インフォグラフィックとは、インフォメーションとグラフィックによる造語で、テキストや図表・イラストレーションなどを組み合わせ情報を整理して伝える手法です。
情報を視覚的に表現するため、交通機関の路線図や地図などで見る人の印象に残りやすくするために使用しますが、Webマーケティングで注目されている手法です。
情報をわかりやすく伝え、興味を引き付けたりする場面で幅広く利用されていますので、ウェブサイト・プレゼンテーション・報告書など様々な媒体で活用されています。
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アンケート結果をWebマーケティングにも活用しよう
アンケートによる結果をWebマーケティングに活用することは、非常に効果的な戦略です。
例えば、アンケート結果をSNS上などで共有して、フォロワーや顧客とのコミュニケーションを強化できます。
HPなどでアンケート結果に基づいたランディングページの作成、ターゲットが興味をもつ製品やサービスを紹介して顧客獲得につなげます。
Webマーケティングによって、分析結果からより効率の良い集客や購買を見込めますので、デジタルマーケティングを最大限活用してみましょう。
効果的なWebマーケティングを実施するなら
効果的なWebマーケティングを実施するなら、どのような方法があるのでしょうか。
さまざまな広告媒体がありますが、SNSを活用したマーケティング手法は特に注目を浴びています。
年齢層としては、10代~40代が主流になりますが商品などをアップするだけで、興味を持った人が一瞬で情報を入手できるため宣伝媒体としては有効です。
また、自社運営のECサイトなどを利用して宣伝したい内容を自由に発信して集客を見込む方法もあります。
Webマーケティングを活用して、どのような人々に対してマーケティングを行うのか、ターゲット層を明確にして下さい。
ターゲット層に響く効果的なWebマーケティングを実施して、成果を定期的に評価し、戦略の最適化を行うことが重要になるのです。
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まとめ
ここまでSD法の分析方法について、アンケート作成手順・注意点や目的・アンケート調査の手法・活用方法などを詳しく解説しました。
SD法などによるアンケートを実施する際に、最も重要なのは目的を明確にするということが解ったと思います。
アンケートにSD法を用いることで、ターゲット層のニーズを知り、何を提供すればいいのかの企業戦略につながるのです。
SD法は感情や印象を数値化する手法ですが将来的には、AIや機械学習の技術を活用して更に成長するでしょう。
大量のデータから消費者の感情や評価を自動的に抽出して、分析するシステムが進化する可能性があります。
今後SD法を用いた感情分析技術が進化すれば、より正確な結果が得られるようになり、消費者の本音に近づくことができるでしょう。