スケーラビリティはIT関係のビジネスを語る際に使われることが多い言葉で、日本語では「拡張可能性」などと訳されます。
ただ実際の所、スケーラビリティの獲得がIT分野に限らずビジネス全般において重要な意味を持つことをご存知でしょうか。
今回の記事ではそんなスケーラビリティ獲得のビジネスにおける重要性について解説します。
獲得の条件や事例・獲得のポイントなどについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
スケーラビリティの概念
スケーラビリティはscale(規模)から派生した言葉で、日本語では拡張可能性などと訳されます。
拡張とは事業規模の拡張のことです。ある事業がそのパフォーマンスを保ったままどの程度規模を大きくできるかを意味しています。
事業を拡大した結果ユーザーに提供できるサービスの質が落ちたのであれば、それはスケーラビリティがあったとはいえません。
スケーラビリティはどのような分野のビジネスにおいても大きな問題となりえます。
スケーラビリティの獲得がビジネスで重要な理由
スケーラビリティの獲得がビジネスで重要な理由は、それがビジネスの拡大と深く関わる問題だからです。
ビジネスの拡大は世にある多くの企業にとって重要な目的の1つであり、以下に挙げるようなメリットをもたらします。
- 利益の増加
- 知名度の上昇
- 市場シェアの拡大
ただし、事業の拡大ができたとしても、それに見合ったパフォーマンスの維持も同時に実現できていなければ意味がありません。
事業を拡大した結果、提供する商品・サービスのクオリティが低下したらユーザーは離れてしまうことでしょう。
スケーラビリティを獲得する条件
リスクを伴うので難しい問題ですが、多くの経営者にとってビジネスの拡大は常に重要な課題として位置付けられます。
スケーラビリティを獲得することはそんなビジネスの拡大のために欠かせない重要な要素だといえるでしょう。
スケーラビリティを獲得するためには主に3つの条件があることが知られています。
この項目ではそれら3つの条件についてそれぞれ詳しくご紹介します。
製造ラインの標準化
スケーラビリティを獲得する条件、1つ目は製造ラインの標準化です。
商品・サービスによって形は様々ですが、多くの場合、ビジネスには商材の製造ラインが存在します。
スケーラビリティの獲得にあたってはその製造ラインを標準化しなければなりません。
ここでいう標準化には全体のばらつきをなくしてクオリティを高く保つという狙いがあります。
事業拡大に伴って製造ラインの質が落ちていくのでは意味がありません。
事業拡大前後で同じクオリティの製造ラインを維持できることはスケーラビリティ獲得のための重要なポイントです。
調達ライン・販売網の開拓
スケーラビリティを獲得する条件、2つ目は調達ライン・販売網の開拓です。
拡大後も事業を展開できるのは製造ラインに対する安定した資材の供給と商材の確実な販売網があるからに他なりません。
調達ラインがなければ商材の製造ができませんし、販売網がなければ商材が余って事業を拡大した意味が失われるでしょう。
確実性を求めるなら、事業の拡大は安定的な調達ラインの確保と販売網の開拓が実現できてから取り組まなければなりません。
顧客のニーズを満たす商品開発
スケーラビリティを獲得する条件、3つ目は顧客のニーズを満たす商品開発です。
ビジネスの拡大は常に大きなリスクを伴います。場合によっては既存の商材が新たな販売網に受け入れられないこともあるでしょう。
そんな場合には顧客のニーズを改めて分析し、受け入れられそうな商品開発に努めなければなりません。
事業の拡大が可能となるのは、市場で求められているものを正しく把握できて、なおかつ自社のリソースでそれに応えられる時です。
スケーラビリティへのアプローチ方法
一口にスケーラビリティといっても、事業を拡大するためのアプローチの仕方は1つではありません。
質や能力を高めるか数を増やして補うかの2パターンがあります。この項目ではそれぞれについて詳しく解説します。
スケールアップ
スケーラビリティへのアプローチ方法、1つ目はスケールアップです。
スケールアップではすでにあるものの性能や能力を高めることでスケーラビリティを獲得します。
製造ラインにある機械の性能を高めたりスタッフに再教育を施して能力の底上げをしたり、様々な方法が考えられるでしょう。
ただし機械の性能や人間の能力には必ず限界があります。また作業効率が劇的に上がるとは限りません。
ある程度まではスケールアップを行って、そこから先は次に紹介するスケールアウトでアプローチすることになるでしょう。
スケールアウト
スケーラビリティへのアプローチ方法、2つ目はスケールアウトです。
スケールアウトでは、事業の拡大にあたって発生する様々な不足を、単純に数を増やすことで補います。
機械が足りなければ新たな機械を入れ、人員不足なら新たに人を雇います。これによって短期間で事業の拡大ができるでしょう。
標準的な製造ラインを維持したまま短い期間でスケーラビリティを獲得できる、とても有効なアプローチだといえます。
ただこの方法には多額のコストがかかるという大きな問題があります。
確かな販売網があって、事業拡大による利益が確実に見込める場合に取るべき方法といえるでしょう。
Crocsが行ったスケーラビリティの事例
クロックス(Crocs,Inc)はコロラド州ニオットに本社を置く企業で、合成樹脂製サンダルの製造・販売で広く知られています。
このクロックスが行った事業拡大は、スケーラビリティの好事例として有名です。
この項目ではクロックスによるスケーラビリティの事例からポイントとなる部分を3つ取り上げてご紹介しましょう。
職人製造の標準化
クロックスが行ったスケーラビリティのポイント、1つ目は職人製造の標準化です。
クロックスはサンダルの製造にあたって「金型を用意して原材料を流し込む」という方法を採用しました。
金型と材料さえあれば特殊な技術を持つスタッフがいなくても商品を製造できるという体制です。
職人的なスタッフが1つずつ手作りする方法を採用していた場合、人員不足がネックになって事業拡大はできなかったでしょう。
金型製造の採用は事業拡大を容易にしたばかりでなく大量生産によって価格を低く抑えることも可能としました。
原材料・販売チャネルの工夫
クロックスが行ったスケーラビリティのポイント、2つ目は原材料・販売チャネルの工夫です。
クロックスの原材料は合成樹脂です。はじめから入手が容易で加工もしやすい素材を選ぶことにしたのです。
もしも高価で手に入りにくい原材料を選んでいたら調達ラインを構築できずに事業拡大は頓挫していたことでしょう。
また販売にあたってクロックスは最初は大手小売業を狙わず、交渉しやすい小規模な商店を優先的に選択しました。
その際、店頭で販売しやすいよう店側にも配慮した設計をしていたことが現在の成功に繋がっています。
機能性と斬新性による訴求
クロックスが行ったスケーラビリティのポイント、3つ目は機能性と斬新性による訴求です。
クロックスのサンダルの配色は原色系の斬新なものが中心です。そのファッション性によって多くのユーザーの心を掴みました。
見た目だけでなく機能的にも優れています。履きやすさや滑りにくさはユーザーに広く受け入れられました。
こうした機能性による訴求は続いており、現在では医療用や料理関係者向けモデルなど様々なバリエーションを展開しています。
スケーラビリティ獲得の際の注意点
スケーラビリティの獲得は企業を大きく変化させます。
その変化がスタッフや設備に影響を与え、継続してきた事業に何らかの問題が生じることも少なくありません。
経営者にはそうした影響を最小限に抑えて事業を安定的に継続させつつ、拡張した事業も軌道に乗せることが求められるでしょう。
この項目ではスケーラビリティ獲得の際の注意点の中から2つ取り上げて詳しく解説します。
スケーリングによって生じるひずみ
スケーラビリティ獲得の際の注意点、1つ目はスケーリングによって生じるひずみへの対処です。
ここでいうスケーリングとは事業の拡張や縮小のことを指します。
事業の拡張が企業に及ぼす影響は多大です。一時的な製造ラインのストップやスタッフの移動が必要な場合もあるでしょう。
スケールアウトで補充した新しいスタッフへの教育や導入した機械のメンテナンス作業に時間を取られることもあります。
どれも新しい事業のスタートにありがちな問題ですが、ひずみが積み重なって本来の事業に悪影響を及ぼす可能性は捨てきれません。
経営者は日々発生する課題や問題に柔軟に対応し、なるべく早く全体のバランスを取って事業を安定させる必要があります。
リスクと隣り合わせ
スケーラビリティ獲得の際の注意点、2つ目はリスクと隣り合わせであることです。
製造ラインの標準化に十分気を配り、調達ラインや販売網の開拓が問題なくできても、事業の拡張が必ず上手く行くとは限りません。
市場のニーズが変わったり競合他社が同じタイミングで新商品を開発したり、様々な障害の発生が考えられます。
ビジネスの規模の拡大は常にリスクと隣り合わせです。その点を覚悟した上で踏み切ることが必要になるでしょう。
スケーラビリティを獲得するポイント
スケーラビリティの獲得は企業に利益の増加や市場シェアの拡大など多くの可能性を与えてくれます。
そんなスケーラビリティ獲得のためにはどのようなことがポイントになるのでしょうか。
この項目では経営者に求められるポイントを3つピックアップしてご紹介します。
製造ラインをマンパワーに依存しない
スケーラビリティを獲得するポイント、1つ目は製造ラインをマンパワーに依存しないことです。
先にご紹介したクロックスの場合、製造ラインに金型ではなく職人による手作業を採用していたら事業の拡大はできたでしょうか。
いくら原材料が安価で加工しやすかったとしても、職人に頼り切りの状態では新たな事業を展開することはできなかったでしょう。
スケーラビリティ獲得のためには、製造ラインはマンパワーへの依存を止めて機械化や自動化を進めた方が断然有利です。
リスクを恐れない
スケーラビリティを獲得するポイント、2つ目はリスクを恐れないことです。
事業の拡張には常に様々なリスクが伴います。それらのリスクの中には想定できることもあれば想定が難しいこともあるでしょう。
自然災害のような、ある程度予測はできても被害を完全にに防ぎきることはできないようなリスクもあります。
そうした数々のリスクすべてに対処しようとしていては、実際の所、新しい事業を開始することなどできません。
経営者にはリスクを恐れず事業をスタートさせる勇気も必要だといえます。
経営者のメンタルも大切
スケーラビリティを獲得するポイント、3つ目は経営者のメンタルも大切ということです。
事業の拡張によって企業には様々なひずみが生じます。それらのひずみが既存の事業に悪影響を及ぼすこともあるかもしれません。
経営者には、日々生じる様々な問題を正面から受け止め、1つずつ解決しながら前に進む強いメンタルが求められます。
始めた以上必ずやり遂げるという強い意志を示すことは、周囲のスタッフの士気を高めることにも繋がるでしょう。
スケーラビリティの獲得はビジネスに必須
多くのビジネスにとって、停滞することは事業規模の縮小と同じくらい避けるべき問題です。
停滞したままでは売上げが上がらず、当然スタッフの給与を上げることもままなりません。
そのため世にある多くの企業は事業を拡大して市場における自社のシェアを広げ、売上げをアップさせようとするのです。
そんな事業規模の拡大に深く関わるスケーラビリティの獲得はほとんどのビジネスにとって必須のものです。
スケーラビリティを獲得できているか否かは、その後の事業規模の拡大が成功するかどうかの指標の1つだといえるでしょう。
スケーラビリティを獲得してビジネスを成功させるなら
スケーラビリティを獲得してビジネスを成功させたいと思う時、経営者的な視点や経験は欠かせません。
ただ一般企業で働いていてもそうした視点や経験は得にくいものですし、失敗のリスクを考えると起業もすぐにはしづらいものです。
そんなふうに迷った時は、一度デジマクラスのスタッフに相談してみてはいかがでしょうか。
弊社ではWebマーケティングに精通したスタッフがコンサルタント業務も行っています。
コンサルティングを通して様々な企業と関わる中で、経営者に必要な様々な知識や経験を得ることができます。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回の記事ではスケーラビリティ獲得がビジネスで重要な理由について解説しました。
事業規模の拡大を目指す多くの企業にとってスケーラビリティ獲得は避けて通ることのできない問題です。
スケーラビリティ獲得のための3つの条件を改めて見直して、自社の事業規模拡大プロジェクトを少しずつ進展させてください。
本稿が経営の拡大とビジネスの成功を目指す皆様の一助となれば幸いです。