マーケティングにおける基本用語として「プロダクトアウト」「マーケットイン」の2つの言葉をご存知でしょうか。
単に企業都合優先、顧客都合優先と覚えるだけでは、理解としては不十分でありマーケティングに活用することはできません。
それぞれの言葉に背景・メリット・デメリットがあり、一概にどちらが優れている、どちらが劣っているという話ではないからです。
もしあなたがマーケティングに興味があるのなら、ぜひ本記事にて最低限の教養として改めてこれらの言葉を学んでみましょう。
目次
プロダクトアウトの特徴
企業の商品開発やプロモーションなどにおいて、顧客のニーズ以上に企業側の都合や理論を優先したマーケティング活動を指します。
「企業の考えによって作られた商品を売っていく」というプロセスであり、戦後から高度経済成長期の日本にて主流の手法でした。
大量生産・大量消費のような時代には非常に則した手法である反面、顧客のニーズに応えることは後回しになりがちです。
マーケットインの特徴
顧客のニーズを優先し、顧客目線での製品開発やプロモーションなどを行うマーケティングを指します。
「顧客が望む商品・実際に売れる商品を作って販売する」というプロセスであり、バブル崩壊後の日本にて主流の手法です。
顧客や市場のニーズに的確に応えられる反面、同質化・価格競争に繋がりやすい側面も有しています。
プロダクトアウトのメリット
企業側の都合や理論に沿って商品・サービス開発を行うことができるプロダクトアウトにはどんなメリットがあるのでしょうか。
本項では、プロダクトアウトのメリットについて2つの観点を解説します。
企業の強みを活かした商品・サービスの開発ができる
企業の都合や理論を優先できるということはすなわち、企業の強みを最大限に活かした商品・サービス開発を行うことができるということです。
また、潜在ニーズという言葉があるように、消費者は必ずしも自分のニーズについて全て理解できているとは限りません。
消費者の心理に隠れたニーズを喚起し、強みを活かした革新的な商品・サービスを打ち出すことで飛躍的な売上向上を達成することも可能です。
例として、スマートフォン市場を作り上げたApple社のiPhoneはよく言及されるものです。
それまでの社会的通念・常識に囚われないアイデアでこそ、爆発的なヒットが生まれます。
時間・費用を抑えられる
上記の通り既に企業が「強み」として持っている要素を商品・サービス開発に活用することができます。
これによって企業の不得手な分野・不足知識やノウハウについて一から醸成していく時間・手間・費用がかかりません。
迅速な商品企画・販売活動までを行うことができるのは大きなメリットであるといえます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
プロダクトアウトのデメリット
上記の通りプロダクトアウトには大きなメリットが存在します。
それと同時に、プロダクトアウトには見逃せないデメリットも存在します。
プロダクトアウトのデメリットについて、下記2点については丁寧な確認が必要です。
ニーズに合わない可能性がある
企業側の理論や都合によって開発された商品・サービスは、必ずしも顧客目線で使用・購買について設計されているものではありません。
企業の強みが商品・サービスに最大限発揮されていたとしても市場や顧客のニーズにマッチしたものであるかどうかは別の話です。
例えば、現代において間違いなく最高品質のポケベルを開発・販売したとして、これを「欲しい」と思う人はどれだけいるでしょうか。
企業の強みや理論を活用、それを優先して開発や企画を行うとしても、最低限の市場調査や顧客へのヒアリングは必要です。
また、ニーズを喚起して市場を作り上げていく場合においても、必要な広告費は高くなる傾向があります。
製品の見直しに時間がかかる
企業の強みを最大限活かし企画・生産・販売まで行い、前項の通り顧客や市場のニーズにマッチしなかったとします。
その時点までの初期投資については比較的安く抑えられていると考えられますが、投資分は当然回収が必要です。
「売れる」商品に変更するため、改めて市場や顧客の調査・再設計・生産・販売の過程が発生します。
言ってしまえば「二度手間」であり、初めから顧客のニーズに沿っていた競合に対しては遅れを取ることになりかねません。
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マーケットインのメリット
顧客の需要や期待に沿った商品・サービス開発を行うマーケットインにはどんなメリットがあるのでしょうか。
本項では、2つの観点からマーケットインの大きなメリットについて解説します。
ニーズを掴んだ商品・サービスを開発できる
実際に商品・サービスを購入・使用する顧客側のニーズに沿って開発を行うことができます。
これにより「実際に売れる」とわかっている状態での計画立案が可能になります。
必然的に商品やサービスの開発規模・必要な販促活動・市場投入後の売上などが明確に予測しやすいことは非常に大きなメリットです。
目標設定がしやすい
顧客に求められている商品・サービスが開発における「ゴール・目標」として機能することが期待できます。
これにより商品・サービス企画を具体化するためのミーティングなど無駄な時間・手間を省くことができます。
予算の側面から見ても、時間的側面から見ても、技術力がある前提ではマーケットインはある種難易度の低い手法であるといえます。
マーケットインのデメリット
当然、良い面があれば同時に悪い面についても挙げることができます。
マーケットインについて、ここでは2つの観点からそのデメリットについて確認します。
大ヒットには結びつきにくい
顧客が望むものだけを作るマーケットインは、それまでの常識から外れた画期的な商品は生まれにくい手法でもあります。
確実に「ある程度」まで売れることは担保されていますが、その分爆発的な大ヒットに繋がる可能性は低いでしょう。
他社との差別化がしにくい
前述の通りマーケットインは製品開発における「ゴール・目標」が設定しやすいです。
しかし、これは多くの同業他社・競合商品においても同じことがいえます。
多くの企業が同様の目標に向かって商品・サービス開発を行い、それによりコモディティ化が進みます。
この流れにおいては最終的には泥沼の価格競争へと繋がるのは必至であり、その間利益は圧迫され続けるのです。
前述の通り、マーケットインは「顧客のニーズに応える」特性上、ある程度の売上・利益は確実に見込むことができます。
しかしこれには「短期的に見れば」という前提が隠れています。
市場や競合の状態によってはその利益も確実ではない可能性があり、注意が必要です。
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プロダクトアウトとマーケットインを取り巻く考え方の変化
マーケット手法におけるプロダクトアウト・マーケットインそれぞれについての考え方はこれまでも変化の繰り返しでした。
本項では、そんな2つの考え方の変化やポイントについて3点解説します。
時代の流れによる変化
戦後から高度経済成長期、大量生産・大量消費の時代は「良いものを作れば必ず売れる」社会でした。
企業は独自の強みを活かし企画・開発を行い、マスマーケティングによって施策・販売活動を実施します。
これだけで一定水準以上の売上が担保されており、企業は顧客一人一人以上に「何をどう生産するか」に躍起になりました。
これが「プロダクトアウト」と呼ばれるものです。
しかし1973年のオイルショックを機に、マーケットの動向は大きく変化します。
市場の成熟・経済成長率の鈍化・続く平成不況により供給過剰状態になり、「良いものでも売れない」市場になったのです。
ここで改めて、顧客のニーズに応えるビジネスモデルが注目を集めます。
これが「マーケットイン」のモデルです。
ユーザーニーズを掴むことが重要
前項では、プロダクトアウトの盛衰からマーケットインの登場までの流れを確認しました。
この点ではマーケットインの方が新しい、優れた概念にも思えますが、そこには大きな誤解があります。
マーケットインが後発概念なのは時代・市場の変化による「その場その時の最適手法」が変わったことに起因します。
前項の流れについて、改めてなぜプロダクトアウトからマーケットインへと主要なマーケティング手法が変化したのでしょうか。
簡潔にいえば、時代や社会の変化に伴い、「ユーザーニーズが変化したこと」が主な理由として挙げられます。
「どちらの手法が正しい」、ではなく「ユーザーニーズに応えた手法が正しい」という意識は常に必要です。
両者を融合させて考える
前述の通りプロダクトアウト・マーケットインそれぞれにメリット・デメリットがあり、優劣はありません。
必要なのは、市場に合わせて2つの概念を「バランス良く」融合させて捉えることです。
ユーザーニーズ・市場環境の複雑化した現代において、「企業目線だけ・顧客目線だけ」どちらでも不十分です。
どちらの手法を主軸にしても、前提として丁寧な市場環境調査・顧客ヒアリングは必須条件といえます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
プロダクトアウトとマーケットインの分析に役立つフレームワーク
これまで、プロダクトアウト・マーケットインそれぞれについてメリットやデメリットを交えてお話してきました。
本項では、そんな2つの概念についてより詳細に判断・検討するための2つのフレームワークを紹介します。
どちらもマーケティング理論において極めて重要な概念であり、丁寧に確認する必要があります。
4C分析
- 顧客価値(Customer Value)
- 顧客の経費(Cost)
- 顧客利便性(Convenience)
- 顧客とのコミュニケーション(Communication)
顧客側、すなわち「買い手の視点」を軸にした分析手法です。
「顧客価値」について、顧客が求めているのは製品自体ではなく「製品購入によって得られる体験」の価値であるという考え方です。
4C分析の軸であり、商品の機能以上に「顧客が何に価値を感じ対価を支払うのか」にまで想定範囲を広げることができます。
付随する「顧客の経費」「顧客利便性」「コミュニケーション」についても同様に顧客体験を軸に考慮します。
それぞれ、「移動費なども含めた総購買コスト」「商品入手の簡便性」「顧客ヒアリングによるサービス向上」のことを指します。
4P分析
- 商品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- プロモーション(Promotion)
企業側、すなわち「売り手の視点」を軸にした分析手法です。
「商品」については、メーカーにとっては「何を作るか」、飲食業であれば「どんなメニューにするか」のように「何を売るか」を考えます。
「価格」については、最適な価格設定を、「流通」は最適なマーケティングチャネルをそれぞれ判断します。
そして「プロモーション」は販売工程の終盤、顧客へのアプローチとして最適な広告手法を判断する段階です。
いずれの概念も1つでも欠けては顧客への最適な商品提供が損なわれ、非常に重要な概念であるといえます。
自社にあったマーケティング戦略に悩んだら?
これまでプロダクトアウト・マーケットインそれぞれの概念の重要性やメリット・デメリットについてお話してきました。
また、前項ではこれら概念の仕様に際してのフレームワークを紹介いたしました。
どちらも現代のマーケティングにおいては必須概念であり欠かすことのできない手法です。
しかし同時に、抑えるべきポイントは非常に多く複雑であると感じた方も多いかと想います。
前述の通り、現代においては市場環境の複雑化により、必要とされるマーケティングノウハウや知識は膨大なものに増えつつあります。
プロダクトアウト・マーケットインに限らず、デジマクラスであればあなたの会社に最適なマーケティングを提案することができます。
マーケティング戦略立案におけるプロフェッショナルに一度ご相談してみませんか?
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まとめ
いかがだったでしょうか。
プロダクトアウト・マーケットインの両概念はマーケティング手法発展の歴史とも深く関わりのある概念です。
非常に基本的であると同時に、現代の各マーケティング手法の根底にある重要な知識・教養として内容をご理解いただければ幸いです。
本記事のように、デジマクラスは多様なマーケティング手法・概念についてわかりやすく解説した記事を多く備えたサイトです。
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