顧客の本音を知ることは、マーケティング戦略においてとても重要なことです。
そこで活用されるのがリサーチ・市場調査ですが、その中にデプスインタビューという手法があります。
しかしデプスインタビューのやり方がよく分からない、実際にやってみたけど上手くいかないという人も多いのではないでしょうか。
今回は、デプスインタビューの手法について成功のポイントや事例を含めて詳しくご紹介します。
目次
デプスインタビューの概要や目的
リサーチ方法の1つであるデプスインタビューですが、あまり聞き慣れず詳細が分からないという人もいるでしょう。
まずはデプスインタビューとはどのようなものなのか、その概要と目的をご紹介します。
概要
デプスインタビューとは、対象者とインタビュアーが1対1で行うインタビュー手法のことです。
「デプス」は深さを表しますが、その深さには「対象者との関わり」と「対象者の回答」の2種類の意味があります。
マーケティング分野で広く活用されている、定性調査の1つです。
オンラインでの実施が普及し、居住地域に関わらず対象者を抽出できるようになりました。
目的
デプスインタビューにはどのような目的があるのかみていきましょう。
- 顧客の深層心理に迫る
- 顧客が行動に至った背景を知る
- 市場・ターゲット層の把握につなげる
- 新商品開発のためのアイディア出し
1対1でのコミュニケーションでは、質問の仕方によって相手の深層心理に迫ることができます。
これによって、顧客本人が意識していなかった潜在的ニーズや、購買行動の背景を知ることにつながるのです。
また、デプスインタビューは新商品の開発を目的として活用されることもあります。
顧客とのコミュニケーションの中で、既存商品や市場への意見を引き出しアイデアを出していくのです。
デプスインタビューにはさまざまな目的がありますが、自社の目的を明確にして実施しましょう。
グループインタビューとの使い分け方
リサーチや市場調査の中には、他にもアンケートやグループインタビューといった手法があります。
アンケートは母数が多い定量調査という点で、デプスインタビューと異なることが分かるでしょう。
しかし、グループインタビューとデプスインタビューはどのように使い分ければいいか悩む人も多いのではないでしょうか。
複数人を対象とするグループインタビューと、1対1のデプスインタビューは使い分けることが重要です。
まずはグループインタビューの特徴をチェックしましょう。
- 1回の調査の対象人数:5~6人
- 所要時間:120分程度
- テーマ:人前で話すことができる内容
- メリット:グループダイナミクスに発展する可能性がある
- デメリット:他メンバーの意見に影響されることがある
1対1のデプスインタビューでは、人前で話しずらい病気・お金・保険といったテーマを扱うことができます。
しかし、グループインタビューではそういったテーマを扱いにくいことに注意しましょう。
そのため、テーマによって使い分けるのも方法の1つです。
また深堀りしていきたいのか、グループで議論を発展させていきたいのかによって使い分けるのもいいでしょう。
それぞれにメリット・デメリットがあるので、理解した上で検討することが重要です。
デプスインタビューのメリット・デメリットについてはこの後詳しくご紹介します。
マーケティング戦略の事例はこちら
デプスインタビューのメリット
デプスインタビューにはその特徴から、さまざまなメリットが期待されます。
ここではデプスインタビューのメリットを3つみていきましょう。
より詳細な情報収集が可能
デプスインタビューでは、より詳細な情報収集が可能になります。
アンケートの場合は選択肢の中から選んだり、自由記載であっても文字数が制限されたりすることがあるでしょう。
またグループインタビューでは、他の人を意識して発言しにくいことも少なくありません。
しかしデプスインタビューなら1対1なので、その対象者に対して十分な情報収集ができるのです。
詳細な情報収集は、顧客の潜在化したニーズを把握することにもつながります。
顧客により深い質問が可能
デプスインタビューでは、より深い質問が可能というメリットがあります。
まずは、リサーチ・市場調査を行うときに押さえておきたい質問方法を確認しておきましょう。
- クローズドクエスチョン
- オープンクエスチョン
クローズドクエスチョンとは、「はい/いいえ」で答えたり選択肢の中から選んだりするような質問方法です。
例えば「あなたは〇〇という商品が好きですか?」という質問がこれにあたります。
一方、オープンクエスチョンは回答者が思うように回答できる質問のことです。
「あなたは〇〇という商品にどのような印象をもっていますか?」がオープンクエスチョンにあたります。
対象者とインタビュアーで会話するように調査するデプスインタビューでは、このオープンクエスチョンがメインになることが多いです。
そのため、深い質問をしていくことが可能となります。
本音を聞き出すことが可能
本音を聞き出すことができるのも、デプスインタビューのメリットの1つです。
心の中にある本音というものは、クローズドクエスチョンでは聞き出すことができません。
また、人前では話しづらいという人は決して少なくありません。
人前で話しづらいテーマでなくても、グループインタビューでは他の人を意識して発言できないこともあります。
「本当はこう思っているけど発言できなかった」という対象者が出ることもあるのです。
しかし、デプスインタビューは1人ずつ話を聞くことができます。
深堀りした質問で、より顧客の本音に迫っていくことができるのがデプスインタビューなのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
デプスインタビューのデメリット
さまざまなメリットがあるデプスインタビューですが、デメリットがあることも知っておく必要があります。
デメリットを知らずに実施すると、思うような結果を得られないという事態になりかねません。
ここでは、デプスインタビューで押さえておきたいデメリットを2つご紹介します。
コストがかかる
デプスインタビューでは、コストがかかるというデメリットがあります。
デプスインタビューにかかる費用の項目例はこちらです。
- 対象者へのインセンティブ(謝礼)
- リクルーティング(対象者の選定)
- 会場あるいは設備の準備
- インタビュアー(調査員)の調達
対象者1人あたり60~90分間インタビューをするのが一般的です。
しかし、対象者が数人だけでは調査できたとはいえないでしょう。
そのため数十人ほど対象者を選定してインタビューを実施することが多いです。
その対象者へのインセンティブが発生するため、どうしてもコストがかかる傾向にあります。
会場で実施する場合は、交通費の支払いについても検討しなければなりません。
インタビュアーの存在はデプスインタビューの実施に必要不可欠です。
質問の仕方1つで回答が変わることもあるため、効率よく実施するためには専門業者に依頼する企業も少なくありません。
このように謝礼以外にも費用がかかることが多いため、コストがデメリットとなり得るのです。
議論の発展性が低い
議論の発展性が低いことも、デプスインタビューのデメリットといえます。
1対1のコミュニケーションでは、なかなか議論ということにはならないからです。
そもそもインタビュアーと回答者という関係性であり、議論を目的としているわけではありません。
一方、グループインタビューの場合は意見が飛び交い議論に発展することもあります。
他のメンバーの意見に刺激されて、「自分はこう思う」「この方がいい」などグループダイナミクスに発展する可能性があるのです。
グループインタビューと比較すると、どうしても議論の発展性という面でデメリットとなるでしょう。
デプスインタビューのやり方
デプスインタビューを導入したいと思っても、どのように実施すればいいか迷う人もいるでしょう。
ここでは、デプスインタビューのやり方を4つのステップに分けてご紹介します。
やり方のポイントを押さえて、デプスインタビューを成功させましょう。
調査対象を設定する
デプスインタビューを行う際には、まず調査対象を設定します。
調査対象者を募集することをリクルーティングといい、質の高い調査のために重点を置くべきポイントです。
多くの場合、調査会社を通して対象者の選定を行います。
膨大な数のユーザーの中から、デプスインタビューの実施目的やターゲット層に合った対象者を選定するのです。
アンケートなどで対象者を絞ったら、直接連絡を取って内容に相違がないか確認をします。
中にはインセンティブ目的で参加する人もいるため、本当に自社が求める対象者かどうか見極めなければなりません。
インセンティブの金額設定
デプスインタビューでは、対象者にインセンティブを支払わなければなりません。
インセンティブの金額をどうするか、どのように対象者に支払うかを検討しましょう。
金額の相場は7,000~15,000円といわれていますが、実施時間によって差が生じます。
実施する時間だけ対象者を拘束すること、より深い質問をしていくことからアンケートよりも高い金額設定です。
支払い方法としては、郵送・振込・アンケートサイトでのポイント付与などさまざまな方法がとられています。
質問内容と優先順位を決める
デプスインタビューで重要となるのが、質問内容と優先順位です。
60~90分という限られた時間のため、質問できる内容も限られてしまいます。
そのため、インタビューの目的やどのように活用していくかを考慮して予め質問内容を決めておかなければなりません。
質問内容を決めたら、優先順位を決めて確実に「知りたいこと」をヒアリングできるようにしましょう。
質問のフローを決める
質問内容や優先順位が決まったら、次は質問のフローを考えます。
質問のフローとは、デプスインタビューを実施するときのシナリオのようなものです。
もちろん対象者の回答によっては、シナリオ通りにいくとは限りません。
しかし、ヒアリングの流れを決めておくことで、話が脱線したりポイントを外したりせずにすみます。
またインタビュアーを外部に委託する場合、何を質問してほしいかを確実に伝えておかなければなりません。
そういう意味でも、質問のフローはしっかりと作成しておく必要があるのです。
デプスインタビュー成功のポイント
コストや時間をかけてデプスインタビューを実施するので失敗は避けたいところです。
それでは、デプスインタビューを成功させるためにはどうすればいいのでしょうか。
デプスインタビューを成功させるポイントを2つご紹介します。
共感する
デプスインタビュー成功のポイントとして、対象者に共感することがあげられます。
対象者とインタビュアーは初対面で、決められた時間の間に知りたいことを聞き出さなければなりません。
60~90分という短い時間で信頼関係を築くのは難しいですが、安心して話せるという雰囲気作りはできます。
安心して話せるという雰囲気作りで大切なのが、対象者に共感することです。
反対に対象者の回答に対して否定してしまうと、それ以上話を膨らませることが難しくなります。
対象者の回答に対して「それは違うと思います」という発言をするのは避け、共感の姿勢を取りましょう。
聞き役を意識する
インタビュアーが聞き役を意識することも、デプスインタビュー成功のために必要なポイントです。
デプスインタビューでは対象者の意見を引き出すことが大切なので、インタビュアーが話し過ぎてはいけません。
あくまでも対象者の話を聞くのが目的なので、聞き役になることを意識してください。
先述したように共感の姿勢を見せながら聞き役になることで、対象者は安心して意見を出してくれることが多いです。
・安心して話してもらうために共感する
・対象者の話を聞く姿勢を見せる
デプスインタビューの活用事例
デプスインタビューは多くの業界で行われている調査手法です。
ここでは、実際にどのようにデプスインタビューが活用されているのか、その1例をご紹介します。
ある日用品メーカーでは、商品の認知度や満足感を調査するために定期的なアンケート調査を実施していました。
しかし、新商品を発売したばかりの時期は、十分なデータを収集することができません。
そこでオンラインでデプスインタビューを行い、実際にその新商品を購入・利用する顧客にヒアリングを行ったのです。
そして、新商品を購入した背景・使ってみた感想・課題などを詳細に聞き出すことができました。
この事例のように新商品を発売したばかりの時期であっても、デプスインタビューであれば対象者のリクルーティングが可能です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
デプスインタビューの費用相場
先ほどデプスインタビューのデメリットのところで、コストがかかるという点をご紹介しました。
コストがかかるとはいっても、どの程度かかるのか費用の相場が気になる人も多いのではないでしょうか。
デプスインタビューはアンケート調査と同じく調査会社に依頼する企業が多いです。
その場合の費用は、少なくとも12万円といわれています。
他には、対象者の人数・リクルーティングのための事前アンケート・質問フローの作成などによって費用が異なるので注意しましょう。
デプスインタビュー活用に関する悩みの対処法
デプスインタビューは顧客の本音を知ることができ、マーケティング戦略の幅が広がる調査方法です。
しかし、リクルーティングやインタビューの実施方法によって上手く活用できないこともあるでしょう。
そんなデプスインタビューの活用に関するお悩みがあれば、デジマクラスにご相談ください。
最適なデプスインタビューの実施ができるよう、コンサルタントがサポートさせていただきます。
マーケティング戦略の事例はこちら
まとめ
今回は顧客と1対1のコミュニケーションができるデプスインタビューについてご紹介しました。
オープンクエスチョンが可能なこの手法は、対象者に深い質問をすることができます。
さまざまなことに活かすことができるデプスインタビューですが、コストがかかることに注意が必要です。
しかし、効果的なインタビューができればマーケティング戦略に有効活用できるでしょう。
デプスインタビューを成功させたいという方は、ぜひデジマクラスにご相談ください。