自社が参入している市場のシェア率を拡大させたいと思っている企業は多いでしょう。
トップシェアを勝ち取ることができれば、市場への影響力が大きくなるだけでなく、顧客への宣伝効果もアップするからです。
この記事では、市場シェア拡大戦略のコツや、バリュープロポジションの分析手順についても紹介しています。
市場シェア率の拡大戦略に興味がある人は、ぜひ読んでみてください。
目次
市場シェアの概要
市場シェア(率)はマーケットシェア・市場占有率とも呼ばれ、商品やサービスが市場に占める割合のことです。
市場規模と売上高で算出されることがほとんどですが、売上高以外に販売個数や重量・ユーザー数なども使われます。
市場シェア率には次の2種類があります。
- 絶対的市場シェア率
- 相対的市場シェア率
いずれも市場シェア拡大戦略に必要なデータです。2種類のシェア率について詳しくみていきましょう。
絶対的市場シェア率
絶対的市場シェア率を求めることで、自社商品やサービスが市場全体でどのくらいのシェアを獲得しているのかがわかります。
自社の商品やサービスの売上高÷市場の総売上高で算出することができます。
例えば、自社の売上高が200万円・市場の総売上高が1,000万円の場合、200万円÷1,000万円で自社の市場シェア率は20%です。
ただし、市場をどこに定めるかによって算出されるシェア率は変わってきます。
例えば、日本国内のみを市場とするのか、世界全体を含めるのかによってシェア率は違った数値になるでしょう。
自社の販売戦略に合わせて市場の定義を決めておくことが大切です。
相対的市場シェア率
相対的市場シェア率とは、特定の競合他社のシェア率に対する自社のシェア率です。
相対的市場シェア率は、同じ市場内での自社の絶対的市場シェア率÷競合他社の絶対的市場シェア率で求めることができます。
例えば、自社のシェア率が20%、競合他社のシェア率が40%の場合、20%÷40%で相対的市場シェア率は50%となります。
相対的市場シェア率は、トップシェアの企業を基準にして算出されることがほとんどです。
市場シェア率には絶対的市場シェア率と相対的シェア率があることがわかりました。
では、市場シェアの拡大戦略ではどれくらいのシェア率を目標にすればいいのでしょうか。
クープマンが定めた市場シェアのシンボル目標数値について、次の章で詳しく解説していきます。
マーケティング戦略の事例はこちら
市場シェアのシンボル目標数値
アメリカの数学者・B.O.クープマンは、経営戦略の概念であるランチェスターの法則を研究しました。
その結果導き出されたのが市場シェアのシンボル目標数値です。
シンボル目標数値は、シェア率によって6つのポジションに分かれています。
- 73.9%:独占的市場シェア
- 41.7%:安定的トップシェア
- 26.1%:市場影響シェア
- 19.3%:並列的競争シェア
- 10.9%:市場認知シェア
- 6.8%:市場存在シェア
7割以上のシェアを占める独占的市場シェアは、名前のとおり市場を独占している状態を指します。
短い間で2位以下の企業にトップの座を奪われることはまずありません。
安定的トップシェアは、3社以上でトップシェアを競っている場合に強者とされるシェア率です。
一般的には「40%目標」とされることが多く、トップシェアを狙う企業の多くが目指す数値になります。
強者と弱者のボーダーとなるシェア率が市場影響シェアです。
26.1%以上のシェア率が確保できれば、市場でも一定の影響力があるとされています。
並列的競争シェアの場合、複数の企業が上位シェアを競っていることが多いです。
業界第3位のポジションを目指す企業が目標とする数値でもあります。
市場認知シェアは、競合他社や顧客に存在を認知される段階のシェア率です。
市場競争に参入するためには、もっとシェア率を高くする必要があります。
市場存在シェアは、新規参入の際に目標とする最低ラインのシェア率です。
もしこのシェア率を確保することが難しい場合は、事業の撤退を検討した方がいいでしょう。
目指すシェア率によって経営戦略も変わってきます。
自社のポジションを見極め、現状に見合った経営戦略を考えましょう。
市場シェア率を拡大する目的
市場シェア率を拡大する目的の1つに、販売戦略を有利に進められるということが挙げられます。
例えば、顧客からのニーズが高い商品の場合、値下げしなくても売り上げが期待できるでしょう。
つまり、シェア率を高めておけば価格競争に巻き込まれる心配が少なくなるということです。
また、生産量が多くなればなるほど製造設備のコストパフォーマンスは高くなります。
販売数が増えれば顧客からの意見を聞く機会も多くなり、商品やサービスの品質向上につながるでしょう。
市場シェア率を拡大することは企業が発展していくために重要な戦略なのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
市場シェア率拡大戦略で大切なこと
市場シェア率拡大戦略で大切なことは2つあります。
- シェア率を拡大したい市場を決める
- 自社のバリュープロポジションを把握する
それぞれ詳しく解説していきます。
シェア率を拡大したい市場を決める
市場シェア率拡大のためには、まずシェア率を拡大したい市場を決めましょう。
業界全体、などと大雑把な設定では自社のポジションも把握することが難しくなります。
商品やサービスのターゲットとなる性別・年齢層・地域など、市場の範囲を設定することによってシェア率も変わってきます。
どの市場でのシェア率を伸ばしたいのかを明確にしておきましょう。
自社のバリュープロポジションを把握する
自社のバリュープロポジションを把握することも、市場シェア率拡大のために大切なことです。
バリュープロポジションとは、顧客に提供できる自社の商品の価値で、競合が真似できないものを指します。
つまり、顧客のニーズとマッチした自社独自の強みということです。
市場シェア率を拡大するためには、自社のバリュープロポジションを活かした戦略が効果的です。
バリュープロポジションを把握することがなぜ大切なのか、次の章で詳しく解説します。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
バリュープロポジションの把握が大切な理由
バリュープロポジションを把握して経営戦略に活用することにより、競合他社との差別化を図ることが可能です。
同じ市場でシェア率を競う場合、商品やサービスのアピールポイントはどうしても似通ってしまいます。
顧客に自社製品を選んでもらうために独自の強みを打ち出すことは必須といえるでしょう。
ただし、自社の強みをいくらアピールしても、それが顧客に受け入れてもらえなければ意味がありません。
なぜなら、顧客のニーズを満たしていない商品は売れないからです。
商品の売り上げを伸ばしてシェア率を拡大させるためにも、バリュープロポジションの把握は非常に重要なのです。
バリュープロポジションの分析手順
バリュープロポジションの分析手順は次のとおりです。
- 顧客のニーズを分析する
- 競合を分析する
- 自社を分析する
それぞれ詳しく解説していきます。
顧客のニーズを分析する
バリュープロポジションで最も重要となるのが顧客のニーズの分析です。
企業側で顧客のニーズを予想するのではなく、さまざまな情報を集めることをおすすめします。
検索エンジンの検索結果やSNSで話題になっていることなども有益な情報です。
もっと深く知りたい場合は、アンケート調査などを行うといいでしょう。
競合を分析する
顧客のニーズを分析したら、競合を分析して自社との違いを見つけましょう。
競合している商品やサービスの価格や内容だけでなく、顧客がどのような理由で他社の商品を選んでいるのか知る必要があります。
自社よりも競合他社の方が高いシェア率を維持している場合は、経営戦略についてもリサーチしておいた方がいいでしょう。
自社を分析する
最後に自社の分析を行い、自社の商品やサービスが顧客に対してどのような価値を提供できるのか洗い出します。
そして、顧客が抱えている悩みや課題をどのように解決できるのかを深く掘り下げて考えてみましょう。
顧客のニーズと自社製品が提供できる価値とのすり合わせを行うのです。
競合他社と差別化を図れる自社だけの強みがバリュープロポジションとなります。
では、バリュープロポジションをどのように戦略に活用すればいいのでしょうか。
次の章から、市場シェア拡大戦略のコツについてご紹介します。
市場シェア拡大戦略のコツ
市場シェア拡大戦略のコツは次のとおりです。
- エリア戦略の検討
- 販売エリアの拡大
- 定期的なイベントの実施
- 自社商品・サービスの情報を統一する
- 新規顧客の獲得
- リピーターの獲得
それぞれ1つずつみていきましょう。
エリア戦略の検討
最初にご紹介するのは、エリア戦略の検討です。
どの地域を販売エリアに定めるのかはとても重要となります。
取り扱う商品によっては、ユーザーの興味・関心・好みなどにかなり地域性が出るからです。
実店舗を出店するのであれば、競合店の販売価格などもあらかじめ調べておきましょう。
販売エリアの拡大
最初の販売エリアである程度のシェア率を獲得できたら、徐々に販売エリアを拡大していきましょう。
販売エリアを拡大することは市場規模の拡大につながります。
同じ戦略が通用すると思われる地域から始めてみるといいでしょう。
定期的なイベントの実施
集客効果を高めるために、定期的なイベントを実施しましょう。
割引セールや会員限定のイベントなどが効果的です。
最近ではSNSを活用したイベントを行う企業も増えています。
イベントの実施は、新規顧客獲得だけでなく既存顧客のマンネリ化を防ぐためにも役立ちます。
パターン化しないように、バリエーション豊かなイベントを企画しましょう。
自社商品・サービスの情報を統一する
店舗数が増えてきても、常に自社商品・サービスに関する情報は統一させるよう心がけましょう。
情報を統一させることで、営業戦略やPR戦略の効率がアップします。
各店舗の社員やスタッフとの情報共有も大切です。
情報に統一性をもたせることで、企業やブランドのイメージアップを図ることもできます。
新規顧客の獲得
シェアを拡大させるためには、新規顧客の獲得が欠かせません。
新規顧客獲得のカギを握るのは集客となります。ターゲットにあわせた方法で集客を行いましょう。
年齢層によっては、SNSによる集客だけでなくDMやチラシなどの活用も検討する必要があります。
宣伝効果を高めるためにも、広告費は潤沢な予算があることが望ましいです。
顧客になってもらうための施策も工夫しましょう。初回限定クーポンや新規会員登録の特典などが代表的な例です。
SNSなどで口コミで情報を拡散してもらえば、さらに多くの集客が見込めるでしょう。
リピーターの獲得
最終的な売り上げをアップさせるために重要なのはリピーターの獲得です。
リピーターがコンスタントに来店してくれれば、安定した収益が期待できます。
顧客満足度を高めることができれば、客単価アップにもつながるでしょう。
ポイントシステムの導入やSNS・アプリによるアプローチで定期的な来店を促すことがコツです。
リピーターの獲得には新規顧客を獲得するよりもコストや労力が抑えられるというメリットもあります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
市場シェアの拡大戦略で売り上げをアップさせよう
市場シェアの拡大戦略を成功させるためには、まずシェア率を算出し、自社のポジションを把握する必要があります。
なぜなら、市場内のポジションによって最適な経営戦略は変わってくるからです。
例えば、市場での存在が許される市場存在シェアしかない企業がトップシェアを誇る企業に戦いを挑むのは得策といえません。
市場認知シェア・並列的競争シェアと段階を踏んでシェアを拡大させることで、盤石な経営基盤を築くことができます。
売り上げをアップさせて自社の業績を伸ばすためにも、市場シェアの拡大戦略に取り組みましょう。
新規顧客獲得の事例はこちら
市場シェアの拡大戦略で悩んだら
市場シェアの拡大戦略を成功させるためには、自社に勝ち目がある市場を選ぶ必要があります。
最低限のシェア率すら獲得できない市場に参入しても、撤退を余儀なくされるからです。
市場を分析し、確実に成功する市場で高いシェア率を獲得するためには、専門知識やノウハウが必要となります。
市場シェアの拡大戦略で悩んだら、専門コンサルタントのデジマクラスに相談してみましょう。
まとめ
市場シェアの拡大戦略は、市場内での競争を優位に進めて自社の業績を伸ばすために重要な経営戦略です。
拡大戦略に取り組む前に、まず自社のバリュープロポジションを把握しましょう。
自社の強みを十分理解した上で、販売エリアを広げて顧客を増やしていくことが成功への近道です。
市場シェアの拡大戦略で困ったことがあれば、ぜひデジマクラスにご相談ください。