マーケティング施策を考える上で、顧客分析は必須となる要素です。
自社の顧客にどういった傾向があるか詳細に把握しておくことが、その後のマーケティングの成功を大きく左右します。
今回は顧客分析の手法の1つである「RFM分析」についてご紹介しましょう。
RFM分析のやり方やメリット、使用するツールなどについて詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
RFM分析の目的
RFM分析はRecency(最終購入日)・Frequency(購入頻度)・Monetary(購入金額)の3つの指標を使い分析する手法です。
購買行動別に顧客をグループ分けして、各グループの特性に合わせてマーケティング施策を実行していきます。
RFM分析の大きな目的としては、効率良く企業の利益を最大化させていくことです。
顧客の購買行動はさまざまであり、例えば毎月連続して購入する顧客もいれば半年に一度しか購入しない顧客もいます。
どちらの顧客が今後も購入する可能性が高いかといえば、当然毎月連続して購入する顧客のほうでしょう。
そうやって分析しグループ分けを行い、顧客の特性に合わせてアプローチの方法を変え効率良く利益を拡大させることを目指します。
RFM分析の指標
RFM分析の3つの指標について解説していきます。
Recency
Recencyは顧客の最終購入日を調べて、最後に商品を購入した日からどれだけ経っているかで顧客をグループ分けします。
最終購入日が近い顧客のほうが、自社の商品に現在興味を持っている可能性が高いと考えられるでしょう。
対して、最終購入日から大きく期間が空いている顧客の場合は、現在は関心が薄れている可能性があるのです。
例えば、最終購入日が近い顧客には自社の新商品の情報などが関心を持たれやすくなります。
何ヶ月も前に購入した顧客へは新商品よりも、直近で実績の高い売れ筋商品を紹介したほうが比較的効果が表れやすいです。
顧客の動向に合わせて思考を推測し、アプローチの方法を変えていきます。
Frequency
Frequencyは商品の購入頻度によって顧客をグループ分けします。
購入頻度が高い顧客は自社商品に対して関心が強く、購入期間が空いている顧客は反対に自社サービスに満足していないかもしれません。
グループごとの購入期間の設定は商品の特性に合わせて設定する必要があります。
Frequencyの値が高い顧客が多い企業の場合は常連客が多い傾向があり、低い顧客が多い場合は新規顧客が多いと考えられるのです。
Monetary
Monetaryは購入金額を合計し総額から顧客をグループ分けします。
やはりこの値も高い顧客のほうが自社製品を多く購入しており、自社にとって良質な顧客だと考えられるのです。
ただし、Monetaryで設定する期間をどれくらいに設定するかによってもグループ分けされる顧客は変わります。
今後のマーケティング施策の方針に合わせて、適切な購入期間を設定する必要があるのです。
マーケティング戦略の事例はこちら
RFM分析の手順
RFM分析の手順についてご紹介します。
現状の把握と仮説を立てる
RFM分析を行う上で、まず行わなければならないことは分析する商品やサービスの現状を把握し仮説を立てることです。
これはすべてのマーケティング手法に共通していえることですが、現状の売上や市場内での位置づけを把握します。
そして、その状況になっている根拠や仮説の理由を見つけることが重要です。
売上が伸び悩んでいるのであれば、その原因となるものを考え課題を見つけます。
その課題を解消できれば売上を向上させられるという方針を立てて、今後の活動方針を決定するのです。
データ収集
現状を把握し仮説を立てたら、その仮説の裏付けとなるデータを収集します。
仮説を立てる際に注意しなければならないのは、自身の主観だけで判断してしまうことです。
実際のデータとかけ離れた状態で仮説を立てると、その後の施策が現状とずれてしまい課題を解消できない可能性があります。
適切な仮説を立て改善方針を決められるように、顧客の購買データなどをしっかりと収集することが重要です。
収集したデータの分析
データを収集したら、そのデータをもとにRFM分析を行います。
それぞれの顧客のデータをRFM分析の3つの指標に従い傾向別にグループごとに選別し分析を行うのです。
グループの区切り方は商品の特性や事前に立てた仮説の方針に応じて決定します。
また、顧客データの分布状況も考慮しグループ選別に反映させることも必要でしょう。
あまりグループを細かく分けすぎてしまうと、その分コストや時間がかかってしまいます。
反対に大まかに区切りすぎると、グループごとの特性が見えづらくなってしまうのです。
分析する対象を増やすなどして、傾向が掴みやすい適切なグループ分けを行うことが今後の分析の精度にも影響します。
施策の企画
分析を行ったらその結果と事前の仮説をもとにマーケティング施策を企画します。
企画を行う上で考慮しなければならないことは、事前の仮説と分析結果の擦り合わせです。
最初に現状把握から考えた仮説が実際にデータを収集した分析結果と相違がないか確認します。
仮説通りに結果が現れているのならば事前に定めた方針を大きく変更する必要はありません。
しかし、仮説とはまったく違う傾向が分析で判明した場合にはその理由を検証しもう一度現状を再確認する必要があるでしょう。
現状とはまったく関係ない対策を打ち出したところで結果を変えることはできません。
そのため、ここでしっかりと見直して慎重に今後の方針を立て企画を考えることが重要です。
施策の実施
そして施策の企画を立てられたら、実際にその施策を実行していきます。
これまでの仮説や分析結果にもとづいて最善だと考えられる施策を実行するので、いわゆる答え合わせのような作業になるでしょう。
ここで注意するのは、あらかじめ立てたマーケティング施策を途中で変更せずにやりきることです。
企画を行う中で思うような結果が得られないからといって、その場の感覚で企画を変更してしまうと正しい判断ができません。
基本的には事前に予定した通りの期間まで施策をやり抜くことが重要です。
その上で次の段階で検証を行い、今後行う改善策の方針を立て直します。
検証&改善
最後に実行した施策の結果をもとに効果を検証します。
そして、目標としていた結果まで届かなければ原因を探り改善策を立てもう一度RFM分析をやり直すのです。
顧客データは日々変化し、競合他社の商品開発などの外的要因によっても購買行動は変化してしまいます。
事前に立てた仮説が、その段階では正しくても状況が変化することで現状とは合わなくなることも多々でてくるのです。
重要なことは変化に柔軟に対応していき客観的視点で状況を捉え施策を修正していくことでしょう。
そのために現状を分かりやすく反映するRFM分析を行い、現状の顧客動向を調べていくことが必要になります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
RFM分析のメリット
RFM分析の大きなメリットは顧客を購買行動によってグループ分けすることでマーケティング施策の効率化を図れます。
例えばFrequencyの視点で考えると高い頻度で商品を購入する顧客と1度しか購入していない顧客では購買行動は大きく差があるでしょう。
この両者に同じマーケティング施策を行っていては非効率です。
購入する可能性が高い顧客に対して強いアプローチをかけるなどしていくと、効率良く高い効果を期待できます。
場合によってはRFM分析のすべての要素で数値が低い顧客に関してはマーケティングの対象から外すこともコスト削減につながるのです。
RFM分析を活用し顧客の特性ごとにグループ分けし、適切なマーケティング施策を実行していくと無駄なく高い効果が期待できます。
RFM分析の注意点・課題
RFM分析の注意点と課題について解説していきましょう。
「何を購入したか」は考慮されていない
RFM分析では購入金額や頻度などは分析の指標として使いますが、購入した商品の内容については考慮されません。
そのため、例えば購入金額が同じならセール品だからまとめ買いした顧客も常に高い頻度で購入する顧客も同じグループになります。
その両者の顧客は明らかに購買行動が違うため、アプローチの仕方を変える必要があるでしょう。
しかし、RFM分析で単純に購入金額でカテゴライズしてしまうと同一グループになるため同じマーケティング施策を行ってしまいます。
RFM分析だけで顧客を区別してしまうと細かい状況は反映できないので、他の要素と組み合わせて考える必要があるのです。
継続性がない
RFM分析は基本的には任意の一定期間の中で分析を行います。
そのため、時間の継続性は考慮されず抽出した期間外の要素に関してはまったく反映されません。
例えば、毎年季節商品を定期的に購入している顧客は自社商品に対して愛着のあるユーザーだと考えられます。
しかし、RFM分析の期間内で1回しか購入していなければ、その期間でたまたま複数回購入している顧客より優先度が低くなるのです。
すべての顧客の購入行動は反映できませんが、任意の一定期間だけでは安定顧客が判断できないことは考慮する必要があるでしょう。
複雑でコストがかかる
RFM分析を行うためには使用する顧客データを準備する必要があります。
そのデータの内容も最終購入日や累計購入金額などを調べなければならないので、データを用意するだけでも相当な時間がかかるのです。
そのため、分析するデータ量が多くなりがちでコストも膨らみやすいでしょう。
分析で得られるメリットも大きなものではありますが、データを準備するのにコストや人員を十分整備しなければなりません。
・時間の継続性は考慮されないので抽出期間外の情報は反映されない
・分析に必要な顧客データを準備するのにコストと時間がかかる
RFM分析の応用
RFM分析の応用方法についても解説していきましょう。
購入商品の情報と組み合わせる
RFM分析と他の指標を組み合わせることで、さらに詳しい分析を行うことができます。
RFM分析では商品の購入金額や購入頻度などは分析対象になるのですが、購入した商品の内容は考慮されません。
その商品の内容を含めて分析する手法としてItem(商品)を加えたMRFI分析という方法もあります。
任意の商品が顧客に購入されているかを可視化し、RFM分析に加えることでより詳細な顧客のニーズを掴むことができるのです。
また、同様に顧客属性であるカテゴリーを追加したRFMC分析もあります。
これは顧客の性別や年齢などの情報を加えることで、どういった層に支持されているのかが可視化できるようになるのです。
エリア情報と組み合わせる
購入商品の情報の代わりにエリア情報と組み合わせるRFM-D分析の手法も効果的です。
これは顧客の居住エリアの情報と組み合わせることで、商圏ごとのニーズが可視化できるようになります。
日常的に使用するものであれば近距離圏の顧客にどれだけニーズがあるかが1つの指標となるでしょう。
また、独自性の高い商品であれば遠距離圏からの顧客ニーズがどれだけ取れているかでその後のマーケティング施策が変わります。
実店舗を持つ企業であれば店舗に訪れる顧客の居住地域というのは、マーケティング施策を考える上で重要な情報です。
意図した地域からの顧客が獲得できているかをこの指標を使って確認することができます。
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RFM分析に使用するツール
RFM分析に使用される3つのツールについてご紹介します。
- やよいの顧客管理
- BitRFM4
- RFM分析いいお客様Pro
やよいの顧客管理は顧客管理ソフトの中では老舗であり高い売上を長年維持している分析ツールです。
さまざまな顧客管理支援を行うアプリの機能の中にRFM分析も搭載されています。
顧客リストを使い幅広い分析手法を活用して優良顧客を絞り込み効果的なアプローチの方法をサポートすることが可能です。
BitRFM4は顧客分析に特化しており、RFM分析や購入金額が高い順にランク付けして分析するデシル分析を活用し多くの情報を得られます。
一番の特徴はその分析スピードであり、従来品で数時間かかっていたような分析をわずか数分で処理することが可能です。
RFM分析いいお客様ProはRFM分析などの分析ツールを活用して、分析結果をExcelシートを自動で出力する顧客分析ソフトになります。
顧客分析の内容をもとに、優良顧客へのメール発信やDM送付を行うためのデータも出力可能です。
また、比較的安価なプランがあるのも特徴の1つであり、初めて顧客管理ツールを使う場合でも導入しやすいソフトでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
分析結果の活用事例をご紹介
RFM分析では顧客の購買行動をRecency・Frequency・Monetaryの3つの要素で分析し傾向別に顧客をグループ分けをする手法です。
単純に購入金額だけで分けずに、購入頻度や最終購入日の要素を加えることで新規顧客や離反した顧客も読み取ることができます。
例えば、顧客の最終購入日・購買頻度・購入金額で顧客データをグループ分けしてランクごとに点数をつける手法が効果的です。
それぞれのカテゴリーでのランク別の点数を合計した数値を、そのサンプルのRFMスコアとしてグラフ化していきます。
これをすべての顧客データで算出しグラフに表し、もっとも多いスコアの部分を普通顧客として設定するのです。
そして、それより多ければ優良顧客少なければ離反顧客としてRFMスコア別に顧客を割り振ると自社の顧客の分布が可視化できます。
RFM分析は1つのデータだけでなく複数要素を絡めて分析するので、顧客データを多角的に捉えることができるのです。
RFM分析に関して困った時の対処法
RFM分析は購入金額や購買頻度など複数要素から顧客の購買行動を読み取る効果的な指標です。
RFM分析を活用できれば、自社の顧客が新規顧客が多いのか、離反顧客が増えているのかなどの購買傾向を知ることができます。
しかし、分析に使用するデータ量が多いためかなりの時間やコストをかけなければなりません。
また、分析ツールもさまざまであり自社に合わせた最適なツールを選ぶには迷うこともあるでしょう。
RFM分析に関して悩みがあれば、ぜひデジマクラスにご相談ください。
デジマクラスでは豊富な業界知識とノウハウを活用し、悩みに合わせたアドバイスを行うことができます。
RFM分析後のマーケティング施策に関してもサポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
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まとめ
Web技術の発達により実店舗での販売に加えて、オンラインでのECサイトなど顧客の購買行動は多様化しています。
それぞれに合わせた効果的なマーケティング施策を生み出すには、顧客データをしっかりと読み取り傾向を把握することが重要です。
RFM分析では最終購入日・購入頻度・購入金額の3つの要素を使い、顧客の購買行動を詳細に分析することができます。
ただし、分析を行うデータを準備するなど専門知識も必要となるので、不明点があればデジマクラスに相談することがおすすめです。
専門家の確かな知識でのサポートを受け、効率良くRFM分析を活用していきましょう。