新規事業成功の出発点はユーザーに支持されるソリューションの提案です。
多くのユーザーから支持を得るために構築→分析・計測→学習の3段階を繰り返しながら計画をブラッシュアップしていきましょう。
成功に至るまでに必要なリソースやノウハウを得るために転職で実績を積むのもおすすめです。
目次
新規事業立ち上げのためのプロセスを解説
新規事業によって社会やユーザーが抱える課題を解決できれば、新しい利益の確保や安定したインバウンド効果を期待できます。
成功に至るまでのステップは3段階です。
- 課題解決につながるアイデアを魅力的な形に具現化
- 具体的な形にしたアイデアをリリースし、市場のリアクションを検証・分析
- 検証・分析結果から改善点を洗い出しノウハウを蓄積
このプロセスを順に踏まえることで、スタートアップ時点では粗い部分が目立つ事業計画の隙や漏れをカバーできます。
実際にプロセスを踏まえる上で不可欠な3つの要素が下記です。
- 3段階のステップを繰り返し実行するために必要なリソース
- プロジェクトチームのメンバーとのマインド共有とステークホルダーからの協力
- 分析に必要なフレームワークのノウハウ
成功に必要な要素・ノウハウを得るために、実績を積める企業への転職を経て計画を立ち上げる方法がおすすめです。
新規事業立ち上げプロセス
新規事業立ち上げプロセスは構築・データの計測・分析したデータの学習という3つのサイクルで成り立っています。
まずはリーンスタートアップの手法を取り入れ、小規模でスタートしてみましょう。
リーンスタートアップ
リーンスタートアップとは少ないコストで新規事業をスタートアップし、早いサイクルで提案と改善を繰り返す手法です。
2010年代以降、シリコンバレーのベンチャー企業を中心に多くの企業が取り入れました。
ポイントは市場の反応を見ながら商材をブラッシュアップするサイクルを止めないこと。
商材を市場にリリースするまでの無駄を削ぎ、十分な市場分析データを獲得することができます。
プレスタートのような感覚で第1歩を踏み出すことができるため、リソースが足りないスタートアップ時に使える手法です。
構築・計測・学習
新規事業を立ち上げる時、そのプロセスのスタートは市場のニーズや課題解決につながるアイデアの創出から始まります。
そのため、まずはソリューションにつながるアイデアを具体的な形として構築することが必要です。
市場ニーズの解決策を構築するためのアプローチ方法は大きく分けて2つの方法が考えられます。
- 具体的な商品・サービスを設定してアプローチする方法
- 解決ビジョンのイメージからアプローチする方法
また、具体的な形として構築したアイデアが市場に受け入れられるかどうか、市場の動向を計測する期間も必要です。
そのため、初めは結果が出るまでのサイクルが短い小規模スタートをおすすめします。
ある程度成果が出れば「規模をもう少し大きくして運用してみましょう!」とステークホルダーへのアピール材料になるでしょう。
もし結果が出なかったとしても、小規模スタートなのでリスク・ダメージが少なくて済むのがメリットです。
課題の発見に必要な学習過程とポジティブに捉えれば改善・再構築・再計測のサイクルを早める材料にできます。
新規事業立ち上げの成功ポイント
どのような新規事業であっても立ち上げから成功に至るまでに不可欠なリソースがあります。
中でも特に重要なのがひと・かね・もの・情報です。
ひと
新規事業の立ち上げにおいて、最も重要なリソースはひとです。
その他のリソースが揃っていても事業を進めることはできませんが、ひとがいれば何かしら進めることができます。
新規事業でひとを有効活用するポイントは適材適所です。
プロジェクトチームのメンバーは専門的な知識や経歴を持つメンバーやマインド面で共感・共鳴してくれたメンバーがいます。
高い知識・スキルを持っているメンバーには専門分野に集中してもらうことで計画をスムーズに進めることができるでしょう。
しかし、専門分野ごとに常識が違うため時には対立してしまうことがあるかもしれません。
そこで活躍するのが理想・マインド面を共有しチームメンバーをつなぐ力をもったひとです。
つまり、専門性を持ったひととインターフェース的な役割を担うひとのバランスと配置を適切に行うことが成功ポイントです。
かね
新規事業運用リソースとしてのかねは事業資金のことです。
ポイントは適切なタイミングで適切な資金を投入すること。
例えば、優秀な人材を一定期間拘束するための人件費やその他のリソース獲得にかかる費用などです。
特に優秀な人材は自身の持つ知識やスキルに対する適正評価を望む傾向があります。
また、キャッシュフローの透明性を維持することも重要です。
かねというリソースの透明性確保はステークホルダーからの信頼獲得に不可欠な要素といえるでしょう。
もの
経営資源におけるものとして下記が挙げられます。
- 商材そのもの
- 商材を製造するために必要な材料
- 商材の開発に必要な施設設備
- 企業経営に必要な備品・消耗品 など
経営資源としてのものは適切な人材に十分な量を任せることがプロジェクト成功の鍵です。
またものをどのように活用するか、も重要です。
例えば、自社内や社会で不要とされていたものを経営資源として活用することで大きな利益を得たイノベーションの事例は数多くあります。
情報
情報も他の経営資源と同様に適切なひとが取り扱うことが重要です。
例えば、自社サイトの検索順位が1か月ごとに5位→6位→30位と推移していたとします。
SEOの知識を多少なりとも持っている人にとってはとても重要な情報です。
なぜなら競合サイトも含めて分析することで自社SEO戦略の改善点発見につながる可能性があるからです。
場合によっては検索エンジンのアルゴリズム解明に必要なデータを得られるかもしれません。
しかし、マーケティングの知識を持っていない人=適切でない「ひと」にとっては単なる数字の変動に過ぎません。
つまり適切なひとが適切な情報を得ることで新規事業のブラッシュアップにつながり、事業計画の運用がよりスムーズになるのです。
新規事業立ち上げ時のフレームワークでは情報というリソースを適切な人材に届けられる環境を作れるかどうか、にも注目してみましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
事前調査
市場分析の主な目的は新規参入後の収益可能性と勝算の確認です。
社会の課題を解決する商材だったとしても、どこにどの程度ニーズがあるかで事業として成立するかどうかが変わります。
また、先行商材があるのならシェアの奪い合いに参戦することになるでしょう。
<市場について確認しておくべき点>
- 特徴
- 構造
- 構成要素
- 将来性、成長可能性
- リスク、脆弱性
- 市場を動かしている要素、企業、人
- 成長可能性として考えられる要因 など
<ターゲットについて確認しておくべき点>
- 特徴
- ニーズのある商材
- 供給する側とコンタクトを取る手段
- 規模
- リスク、デメリット
- 競合他社の存在 など
事前調査の結果は決定権・決裁権を持つステークホルダーを説得する材料としても重要です。
できるだけ具体的な数字に基づき分析を進めましょう。
明確なビジョン
新規事業立ち上げ後、プロセスを円滑に進めていくためには明確なビジョンが必要です。
ある程度ビジョン構築できたら得意分野か、メンバーが貢献することで得られるインセンティブが十分かをチェックしてみましょう。
得意分野を活かす
新規事業を立ち上げた時、自分が立ち上げるべき事業として説得力があるのかを客観的に検証してみましょう。
新規事業を進めていく上では融資を依頼する金融機関やパートナー企業に成功確率が高い事業であることを納得してもらう必要があります。
つまり、自分の得意分野であることをステークホルダーにわかってもらえるかどうかが成功と失敗の分かれ道となるのです。
ここで重要なのが得意分野とは自分が専門的な知識を持っている、何らかの実績がある分野に限らないということ。
例えば、断片的なノウハウを有している企業同士を結び付けられる人脈がある分野も得意分野といえます。
インセンティブ設定
新規事業にかかわるチームメンバーのモチベーション維持で重要な役割を担うのがインセンティブです。
十分な報酬が得られたのであれば当然モチベーションが上がりますしその逆も然り、です。
自己評価以上であれば「評価に値する働きを」「期待に応えたい」とチームにとってポジティブな影響が期待できるかもしれません。
インセンティブの設定で重要なのが定量的な評価によって有無・多少を決定すること。
例えば「前月よりも○○%生産性がアップしたら○○円のインセンティブ」というように具体的な数字を設定しましょう。
新規事業成功のために必要なこと
新規事業成功のために、市場が求めるニーズにジャストフィットした提案ができるかどうかがポイントとなります。
また、自分たちが提案できる解決策に収益性があるのか市場を分析することも重要です。
顧客と自分の課題を見つける
新規事業の目的は自分たちが見つけた課題に対する解決策を提案し、お金を出して購入・利用してもらうことです。
つまり、すべては自分たちを含めたユーザーが持つ課題を発見することからスタートします。
課題を発見するためには3つの視点が有効です。
- 既存商材の課題を解決・補完・深掘り
- 社会の課題・ニーズ・流行を解決・補完・深掘り
- 新規事業や企業のビジョン・理念を具体化
3つの視点すべてにおいて要素や条件を満たしているのであれば新規事業がユーザーに受け入れられる可能性が高いです。
つまり、既存商材の課題が解決可能かつ社会のニーズに応えていて企業理念が具体的な形をとっている解決策がベストです。
市場分析
ユーザーが抱えている課題・その解決策を示すことができたら、市場ニーズを必ず調査・分析しましょう。
特に注意してチェックしたいのがソリューションの提案が自分のやりたいことになっていないかどうか。
自分がやりたいこと・作りたいものが社会課題の解決やニーズを満たすものでなければユーザーは利用する必要性を見いだせません。
あくまでもユーザーが抱えている課題を発見するのが重要です。
自分たちが提案できる解決策で利益を得られるか、という視点で分析してみましょう。
分析とフレームワーク
新規事業立ち上げ直後の枠組み・ビジョンは検証を繰り返しブラッシュアップしていく必要があります。
ブラッシュアップに必要な分析において有効なフレームワークがMVV・3C分析・SWOT分析・VRIO分析の4つです。
MVV
MVVは3つの要素から成り立っています。
- Mission(ミッション):社会の中で果たす役割
- Vision(将来):ミッションを達成することで到達する成功した姿
- Value(価値):行動指針となる価値観
ユーザーに向けてというよりはチーム・ステークホルダーに共有し、事業の必要性や将来性を共有するためのものです。
新規事業の意義や理念を定義づける際に有効なフレームワークで、理念を考える際にテンプレートのような感覚で使えます。
3C分析
3C分析は新規事業が市場で生き残っていける可能性を判断する際に有効なフレームワークです。
- Customer(カスタマー):ユーザー、市場
- Company(カンパニー):自分たちの強みと弱点
- Competitor(コンペティター):競合他社と自分たちとの関係、どのような差があるか
これから主戦場となる市場について産業構造やシェア上位の企業を把握する際によく用いられます。
また、自分たちについて客観的に分析し市場での立ち位置を判断できるフレームワークとしても有効です。
3C分析を活用し、競合他社と自社との比較から勝てる点と勝つために必要な要素を見つけ出すことができます。
SWOT分析
SWOT分析とは自分たちの強みやデメリット・外的要因によるリスクなどを把握する際に取り入れたいフレームワークです。
<内側>
- Strength(強いところ)
- Weakness(弱いところ)
<外側>
- Opportunity(機会)
- Threat(リスク)
内側に属する強いところと弱いところはある程度自分たちでコントロール可能な要素です。
しかし、外側の機会やリスクはあくまでも外部からもたらされるもの。コントロールが難しい面があります。
VRIO分析
VRIO分析は自分たちが持っているリソースがどの程度のレベルなのかを分析・把握する際に有効なフレームワークです。
- Value(価値):お金を出す価値があるか
- Rarity(希少性):オンリーワンに近い商材か
- Imitability(独自性):競合他社が類似商品をリリースするハードルは高いか
- Organization(組織):商材提供に至るまでのメカニズム、需要を十分に満たす供給システムがあるか
3C分析の1歩手前の段階で行う分析手法としてもよく用いられます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
成功事例
新規事業立ち上げの成功事例として北海道宗谷丘陵の白い道が挙げられます。
課題・ニーズ
1)道路整備事業
スタートは観光スポットでもある宗谷丘陵の道路整備事業です。
一般的なアスファルトは景観を損ねる懸念があり、北海道のブランドイメージを強めたいニーズがありました。
2)ほたての貝殻廃棄に伴う問題
北海道の名産品であるほたての貝殻は産業廃棄物という取り扱いになります。
そのため、地元業者にとって廃棄コストが大きく解決策が求められていました。
解決策の提案
2つの課題・ニーズを解決する方法として、当時の市役所観光課職員が砕いたほたての貝殻を道路に敷き詰める方法に注目しました。
海外での実施・成功事例も後押しし、1994年に新規事業としてスタートしました。
プロセスを進める中での課題
成功に至るまでに最も高いハードルだったのが下記2点です。
- ほたての貝殻は産業廃棄物であるため、道路に敷き詰めると法令上不法投棄の取り扱い
- 地元業者から貝殻を買い取り砕くためのコスト
そこで、プロジェクトのステークホルダーとして地元行政・観光協会・商工会議所などに協力を要請。
決定権・決裁権を持つステークホルダーを巻き込むことで法令上のネックやコスト面の問題をクリアしました。
現状
2011年に道路が完成。北海道ブランドを強化する景観としてSNSやマスメディアからのリアクションもありました。
2019年時点では年間37万人程度が訪れる人気観光スポットに成長しています。
また、景観維持のために廃棄扱いとなるほたての貝殻は地元業者からの買い取りです。
地元業者にとっては産業廃棄物が売り上げを生み出す資産に変身し、潜在的リソースの活用につながりました。
新規事業の立ち上げに失敗しないために
これまでに多くの企業で多くの新規事業が立ち上げられてきましたが、実は失敗事例の方が多いです。
様々な失敗事例に共通する特徴や得られる教訓として特に下記3つに注目してみてください。
- 撤退ラインの明確な線引き:どのポイントに到達したら損切り・事業からの撤退を行うか
- 事業規模とチーム規模のバランス:チームメンバーに過不足はないか
- 市場に参戦するタイミング:立ち上げ時点と比較してニーズ・市場規模が縮小していないか
例えば成功可能性を捨てきれず損切りラインを見誤ると、事業継続リスクが高まりステークホルダーが協力しづらくなります。
人員が少なすぎて個々の業務に集中できない、多すぎて意思決定・コミュニケーションに余計な工数を要する事態も避けたいです。
さらに、事業の立ち上げからじっくり計画を練っている間に起きる市場ニーズの変化には敏感でいることが重要。
いつの間にか参入メリットがなくなっていることも少なくありません。
まとめ
新規事業を成功に導くために、アイデアを具現化しリリース後の市場を分析しながらノウハウを蓄積するプロセスが求められます。
そこでおすすめなのが、マーケティングノウハウを持つ企業に転職してから新規事業を立ち上げるルートです。
企業が持つリソースを活用しながら基本のプロセスを踏まえて新規事業を成功に導く実績を積めます。
また、新規事業に欠かせない重要なリソースである人脈作りができるメリットも見逃せません。
デジマクラスでは将来新規事業の立ち上げを検討中の人、市場ニーズが見込めるアイデアを持っている人を募集しています。
思い描いている成功ビジョンを実現させるために、まずは十分な実績づくりから始めてみませんか?