経済産業省が推奨していることもあり、日本社会にも少しずつDX(デジタルトランスフォーメーション)が浸透してきました。
ただ中小企業の場合、DXに取り組んでいる所はまだ少ないのが現状ではないでしょうか。
大企業にしか活用できないと思われがちなDXですが、実は中小企業にこそおすすめしたい取り組みです。
今回の記事では中小企業がDXに取り組むメリットやDX推進の5つのステップなどについて解説します。
中小企業のDX推進における課題や解決策・事例などもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
中小企業におけるDXの位置付け
DX推進が大いに叫ばれていますが、実際に取り組むことができている中小企業はあまり多くないのが現状です。
しかし、もしもまだ着手していないというのであれば、なるべく早い時期にDXに取り組み始めた方が良いでしょう。
理由の一つが2025年の壁です。これは古いシステムが使えなくなったりシステム維持に莫大な費用がかかったりする問題です。
この2025年の壁に直面して何らかのダメージを被る前に、DXによる対策を講じておかなければなりません。
行政も積極的にこうした動きを奨励しており、中小企業に向けたDX推進に関連する助成金や補助金も整っています。
DXの考え方
DXとは企業がデジタル技術を活用して顧客のニーズに応え、ビジネスモデルや組織・プロセス・企業文化などを変容させることです。
大企業のDXの例を見ていると大がかりなものばかりで、中小企業ではとても実行できないと感じることも少なくありません。
しかし本当にそうでしょうか。自社の業態に合ったDXの取り入れ方というものがあるのではないでしょうか。
DXのXは「トランスフォーメーション」を指しています。デジタルを取り入れることによる前向きな変化を促すものです。
DXを通じて目指すのは新たなビジネスモデルや自社価値の創出であり、規模の大小は関係ありません。
その意味で、どんな中小企業にもDX推進の手段や機会はあるといえるでしょう。
DXでビジネスモデルを変えて競争力が高まることで、業務効率化・顧客満足度アップ・売上アップといった結果も期待できます。
中小企業ならではの要素は?
中小企業がDX導入まで至らない理由として、資金がないことや人材・時間が足りないことなど様々な要素があります。
しかし、積極的にDXに取り組むことによってそれらの問題を解決できる可能性も0ではありません。
たとえばDXによる業務の効率化は人的負担を削減することに繋がり、人材や時間の不足という問題を解消するでしょう。
中小企業がDX推進によって得られるメリットは非常に大きいといえます。
DX化の事例はこちら
中小企業がDXに取り組むべき理由
DXは大企業だけが導入できる大がかりなものだけではありません。
中小企業でもできること、そして中小企業こそが取り組むべき理由があるのです。
ここではその理由を2つピックアップしてご紹介します。
まだ時代の流れが追いついていない
中小企業がDXに取り組むべき理由、1つ目はまだ時代の流れが追いついていないことです。
競合他社や大企業と比べて優位に立つことが難しい中小企業でも、DXによって独自性を発揮できるようになります。
特にデジタル化が進んでいない業界なら、DXの導入を機に他社に差をつけることができるかもしれません。
また、そういった業界内でDX推進が広がれば、の業界自体の改革と活性化に繋がることも大いに期待できるでしょう。
消費者の購買行動の変化
中小企業がDXに取り組むべき理由、2つ目は消費者の購買行動の変化です。
対面して現金で購入する従来の購買方法とは異なり、デジタル化された現代では購買行動に変化が見られます。
まず路面店といったリアルな店舗よりもインターネットを利用した通販が拡大してきました。
また近年ではサブスクリプションサービスの利用の急拡大も見逃せません。
動画や音楽の配信サービスだけでなく、購入して個人所有するのが当然だった車や洋服などもレンタルするようになりました。
「所有」するのではなく「サービス利用」へと変わってきたのです。長年の常識は通用しなくなったとも言えるかもしれません。
従来の方法にこだわることを止めて、新しい時代に通用する業態を考えるべき時が来ています。
中小企業がDXに取り組むメリット
中小企業こそDXに取り組むべきであることを解説してきました。
それでは、中小企業がDXに取り組むことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
この項目では具体的なメリットを4つ挙げて紹介します。
顧客ロイヤリティの向上
中小企業がDXに取り組むメリット、1つ目は顧客ロイヤリティの向上です。
価格面など、中小企業ではどうしても大企業に勝てない部分があります。
それらの不利を補うには顧客ロイヤリティの向上、つまり顧客が自社に愛着や安心を感じてくれるよう促すことが欠かせません。
DXによる顧客データの管理と分析は、より詳細なターゲティングや顧客それぞれに適したマーケティングを可能にします。
それによって顧客と親密なコミュニケーションを取ることができるようになり、顧客ロイヤリティの向上に繋がるでしょう。
業務効率化
中小企業がDXに取り組むメリット、2つ目は業務効率化が図れることです。
データやデジタル技術を駆使するDXでは、顧客管理・顧客への対応・データ収集・分析など多くの面でデジタル化が推進されます。
これによって自動化が進んで人の手よりも短時間で正確に情報が処理できるようになり、人員や経費の削減に繋がるでしょう。
さらに、今までそこにかかっていた時間や労力を他の業務に回せるようになるため企業全体の生産性が上がります。
そうしているうちに力を入れるべき業務とそうではない業務が見えてくるので、より効率化が図れるようになるでしょう。
また遠隔会議システムや社内デジタル網を活用すれば移動時間も移動経費も削減にも繋がり、業務の進行も速くなるでしょう。
BPC(事業継続計画)の拡充
中小企業がDXに取り組むメリット、3つ目はBPC(事業継続計画)の拡充に繋がることです。
自然災害に見舞われる機会が増えてきた昨今、予測できない非常事態に対しても十分な備えをしておきたいものです。
地震や水害など大規模な自然災害が起きると自社にも被害が及び、システムが故障するかもしれません。
そんな非常事態に陥った場合も、重要なデータなどをクラウドに保存しておけば迅速に業務を再開できるでしょう。
非常時には人員も労力も時間もかけられません。DXを導入して効率化を進め、万が一の時も事業継続できる状態を保ちましょう。
働き方の選択肢が広がる
中小企業がDXに取り組むメリット、4つ目は働き方の選択肢が広がることです。
2020年、世界中に広まった新型コロナウィルス感染症をきっかけにリモートワークが定着しました。
リモートワークをするには自宅や旅行などの滞在先でもオフィスにいる時と同じように仕事ができる環境が必要となります。
そのためにはクラウドや遠隔会議システムが必須であり、多くの企業がDX推進に踏み切るきっかけとなりました。
このように、DXの推進は場所や時間に縛られない自由な働き方の選択を可能にします。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
DX推進の5つのステップ
多くの場合、DXを進めるには次に紹介する5つのステップを踏んでいきます。
- デジタル化
- 効率化
- 標準化
- 組織化
- 全社最適化
まずは自社の業務の中でデジタル化できるものの洗い出しを行います。
次にデジタル化したデータを分析して効率化を図ります。書類の提出や更新といった作業に関するスタッフの負担も減るでしょう。
デジタル化したデータは自社の基盤となり、標準化されてマーケティングや顧客管理など各部署がそれぞれに活用できます。
組織化はDXをより効率的に進める体制を整えるステップです。配置転換や採用によって最適な社内体制を構築しましょう。
DX推進が進むとデジタル化が整った・ノウハウが蓄積された・うまくデータ活用できたといった成果が出ます。
それらの成功事例を元に、DXをいっそう本格化したり他の業務のDX化を進めたりといった全社最適化を進めることができます。
中小企業のDX推進における課題と解決策
先の項目ではDX推進がもたらすメリットをご紹介しましたが、やはり中小企業ならではの避けがたい課題もあります。
ここでは考えられる課題を5つ取り上げ、それらを解決策と共に詳しくご紹介します。
現場と経営層の熱意の差
DXの影響は会社全体に及びます。実践していくためにはコストも人材も労力もかなりかかります。
現場だけで進めることはできないので、経営層がDX推進に前向きでなければまず実現できません。
逆に、経営層はDX推進に積極的なのに現場がついていかないというパターンもあります。
現場は目の前の業務に集中したいものですし、DXのために戦力が減ることに難色を示す場合もあるからです。
従来の業務のやり方を変えることに積極的ではない現場の社員も少なくないでしょう。
DX推進の最初の一歩は、実際に動く現場と管理する経営層の意識のすり合わせや理解の一致です。
なぜDX推進に着手するのか社内でDXの目的をしっかり共有し、DX推進のための専門チームを立ち上げましょう。
社内で反対意見が出た場合は経営層が判断し、DX推進をリードします。
日常的な業務の負担が軽減されると分かれば社員のDX推進への理解も得やすくなります。
社員数がそれほど多くなく、社内の意思疎通がスムーズにいく中小企業は、DX推進のスピードも自社改革の実現も早いでしょう。
IT人材の確保
DXを推進するためにはITに強い人材が必要です。
しかし今いる社員を育成することが難しい場合もあるでしょうし、新たに採用するにしても希望通りの人材が集まるとは限りません。
社内で人材確保ができそうになければ外部に発注することも有効です。
費用はかかりますが、専門知識を持った人たちに任せることで確実に効率よくDXを進められるでしょう。
アフターフォローも期待でき、社員の負担は最小限で済みます。
業務や知識の属人化
中小企業には特に職人的な仕事を手掛ける会社も多いものです。
ある業務や知識に特化しているスペシャリストばかりの属人化状態だと、担当者がいなくなった途端に業務が滞る恐れがあります。
これは自社のノウハウや技術を失ってしまうかもしれない致命的な事態です。
そこでもDXが大きな助けとなります。ノウハウをデータ化し、クラウドに保存して共有していくのです。
他の社員も常に最新のデータを閲覧できるようにはからえば、業務の属人化を防ぐことができるでしょう。
予算の確保
規模や内容にもよりますが、やはりDX推進にはコストがかかります。
すでに金融機関から借り入れをしている場合、DXのために追加で融資を得ることが困難な場合もあるでしょう。
ただ、中小企業がDXを推進するための補助金や助成金が用意されています。行政も積極的に奨めている施策です。
DX推進に関する補助金・助成金には種類があるので、自社に合ったものを探して大いに活用してください。
情報の肥大化
システムが古いままでは保守できる人材がいなくなったりシステムの維持費が余計にかかったりする可能性があります。
その場合、肥大化した情報が活用されることはなく、ただただ管理費ばかりがかかってしまうことでしょう。
またシステムの古さのせいで新しい情報やセキュリティに対応できず、それが原因でビジネスの機会を逃すかもしれません。
そうした事態を未然に防ぐために有効なのはやはりDXです。
日常的に使うツールや手間がかかっている業務を見直し、DXをスタートさせましょう。
DX化の事例はこちら
中小企業のDX推進事例
中小企業がすぐにでも取り入れられるDX推進の例をいくつかご紹介します。
DX推進によって、時間短縮・経費節減・ミスの軽減・業務負担の軽減など企業にも社員にもたくさんのメリットが生まれます。
会社業務での行政の手続きは多く、何かと煩雑です。それらを電子化すればスムーズに処理でき担当者の負担は減るでしょう。
「脱ハンコ」と「ペーパーレス化」で紙の書類が避けられるようになると、多くの書類の電子化が可能となります。
脱ハンコやペーパーレス化はDX推進を後押しする施策です。ぜひ請求書や契約書などの電子化も検討してください。
BCPの拡充でクラウド利用をご紹介しましたが、当然、日常業務にも非常に便利です。
クラウドはどこからでもアクセス可能なので、遠方の事務所ともデータやファイルを共有できます。
更新作業も容易ですし、必ず同じファイルを共有するのでミスも減り、スピーディーにやりとりできるようになるでしょう。
既存部署を生かしてDX化を進めるには?
DX推進にはITに強い人材集めとチーム編成が必要ですが、新しく設置するのは大変です。
そこでまずは既存部署の活用を考えてみましょう。
構造改革が必要な部署からDX化を進めるようにすると、DXが成功して改革しやすくなります。
ポイントは部署内でデジタル化できる業務をできるだけ具体的に洗い出すことです。
同じ部署の社員同士、問題点が把握できているのでゼロから始めるよりもスムーズに進むことでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ゴールはビジネスモデルの創出
デジタル化して業務の効率化を目指すのがDXのゴールだと思いがちですが、そうではありません。
DXのゴールは自社のビジネスモデルを創出することです。
DX推進によって自社・社員・顧客それぞれに有益なビジネスを新たに生み出しましょう。
悩んだらプロに相談しよう
DX推進にはアウトソーシングも有効だとご紹介しました。
ITインフラの整備のみを依頼する方法もありますし、DX全般についてプロに相談するのも有効です。
DXの進め方に関して第三者の視点から評価してもらえるので、自社内だけでは気付かない問題点も見つかるでしょう。
もしもDX推進に関して悩んだら、ぜひデジマクラスのコンサルタントに相談してみてください。
デジタルマーケティングのプロが親身になってお話をうかがい、適切なアドバイスをさせていただきます。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回の記事では中小企業がDXに取り組むメリットや具体的な方法について解説してきました。
今後はどんな企業においてもDXの推進が欠かせなくなります。ぜひ前向きに検討してください。
ただし最初から大規模なDX推進に取り組むのではなく、デジタル化できる部分がないか業務を見直すことから始めましょう。
自社に合ったDX化を進めて新たな価値やサービスを創出し、最適な自社改革を叶えてください。
本稿がそのための一助となれば幸いです。