どんなに優れたマーケティング戦略も対象となる顧客について分析ができていなければ費用対効果の低いものになりかねません。
それほど重要な顧客分析の手法の中でも、デシル分析は計算が簡単で分かりやすい分析方法として非常によく知られています。
この記事ではデジタルマーケティングにおけるデシル分析の方法を改めて解説します。
デシル分析の特徴や目的のほか顧客分析の代表的な手法や活用方法にも触れますので、ぜひ参考にしてください。
目次
デジタルマーケティングでのデシル分析の方法を解説
デシル分析の方法は極めて単純なのでマーケティングを始めて間もない方でも業務に取り入れやすいといわれます。
まず最初に、一定の期間における自社商品・サービスの購入金額で顧客を10段階にランク分けしてみましょう。
10等分された顧客層は購入金額の多い順にデシル1・デシル2・デシル3……、と名付けられます。
これだけでも売上げに貢献してくれている顧客層を特定できます。デシルごとの具体的な施策の立案に移ることができるでしょう。
ただこれはデシル分析を始める準備段階とも呼ぶべきものです。ここからデシル分析によって以下の指標を算出できます。
- 購入金額比率
- 累計購入金額比率
- 1人あたりの購入金額
購入金額比率はデシルごとの合計購入金額を全体の合計購入金額で割って求めます。
累計購入金額比率は指定したデシルまでの合計購入金額を全体の合計購入金額で割って求めます。
1人あたりの購入金額はそのデシルの合計購入金額を人数で割ります。これらの指標は優良顧客を深く知るヒントとなるでしょう。
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デシル分析について
上記の通り、デシル分析は自社にとっての優良顧客の範囲と特徴について深く知るための手法だといえます。
顧客データをデシル分析にかければ自社の売上げに貢献してくれているグループの特徴を把握することができるでしょう。
これによってマーケターはより効率的かつ効果的なマーケティング戦略を立案することができるようになります。
上位のデシルに対してはコストをかけて施策A、その他のデシルには施策Bを実行するなど範囲ごとに違った対応が可能です。
デシル分析の特徴と目的
デシル分析は簡単な計算で求めることができる上に実用的で分かりやすい分析方法です。
しかし用いるにあたって注意すべき点がないわけではありません。
この項目ではデシル分析が持つ特徴と分析の目的について今1度確認してみましょう。
特徴
デシル分析の特徴の1つは分析の精度が必ずしも高くないことにあります。
期間を限定しない場合、累計では古参の顧客ほど上位のデシルに入ることになるでしょう。
また数年前に1度大きな買い物をしただけで、その後は1度も足を運んでくれていない顧客を優良顧客と呼ぶことはできません。
戦略立案にあたってデシル分析を実行する時は、月間や年間など、ある程度スパンを区切って行うことが大切です。
目的
デシル分析の目的は自社にとっての優良顧客層の特徴を掴んで効率的なマーケティング戦略の実行に役立てることです。
たとえば分析によってデシル1とデシル2の顧客だけで売上の80%を占めていることが判明したとしましょう。
それらの顧客に適したマーケティング戦略を展開できれば、安定的に売上8割をキープすることが可能となります。
施策の実行にかかるコストと顧客の質を照らし合わせて戦略全体を効率化するなど、デシル分析は様々な用い方が可能です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
CRMでの顧客分析
消費者行動の変化やインサイドセールスの台頭といった理由から、現代では大規模な広告の効果が薄れつつあります。
むしろ顧客ひとり一人のニーズを捉えた個別のアプローチが重視されているといえるでしょう。
そこで多くの企業が注目しているのがCRM(Customer Relationship Management)です。
CRMは新規・優良顧客の獲得を主な目的とするマーケティング手法で、デシル分析と関わりの深いITツールだといえます。
この項目ではCRMでよく用いられるデシル分析以外の分析方法をご紹介しましょう。
RFM分析
CRMでの顧客分析、1つ目はRFM分析です。
RFM分析では以下の3つの指標を用いて購買データを分析し、顧客をランク付けします。
- Recency(最近の購入日)
- Frequency(来店頻度)
- Monetary(購入金額のボリューム)
RFM分析を行うと自社に有益な顧客グループを特定できるのでより効率的なマーケティング戦略の展開が可能となります。
優良顧客・安定顧客・休眠顧客などに顧客を分類してそれぞれに適した効果的なアプローチができるでしょう。
セグメンテーション分析
CRMでの顧客分析、2つ目はセグメンテーション分析です。
セグメンテーション分析では以下の変数を用いて市場を分析・分類します。
- 地理的変数
- 人口動態変数
- 心理的変数
- 行動変数
地理的変数は商品・サービスの販売エリアの特徴や地域独自の文化、気候などに着目します。
人口動態変数では市場を構成する人々の年齢・性別・家族構成・年収などについて考えます。
この時、国勢調査など信頼性の高いデータを用いることでより効果的なマーケティング戦略を展開できるでしょう。
心理的変数では市場を構成する人々のライフスタイルや価値観などに注目して分類します。
行動変数では購入回数や購入金額、購入した商品・サービスの種類などの観点から市場を分類します。
これらの分類によって自社がより有利に事業を展開できる市場を見つけることができるでしょう。
CTB分析
CRMでの顧客分析、3つ目はCTB分析です。
CTB分析では以下の3つの指標を使って顧客を集団(クラスター)に分け、それぞれの購買行動を予測します。
- Category(商品のカテゴリー)
- Taste(色・サイズ・デザインなど)
- Brand(ブランドやキャラクターなど)
CTB分析を用いると自社の顧客の傾向が分かるほか、潜在顧客のペルソナをより詳細に分析することも可能となります。
これによってより効果的かつ効率的なマーケティング戦略を立てられるようになります。
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デシル分析とRFM分析の違い
デシル分析で注目するのは顧客の購入金額のみですが、RFM分析では直近の購入日や来店の頻度にまで着目して分析をします。
より多くの指標を用いているという意味で、RFM分析の方がより詳細な分析を可能にしているといえるでしょう。
デシル分析では、数年前に1度大きな買い物をしただけの顧客まで優良顧客の範疇に入れられかねません。
RFM分析を併用すれば、そのような分析精度の低さをカバーすることができるでしょう。
デシル分析が注目される訳
時にその分析精度が問題にもなるデシル分析ですが、昨今新たに注目されているのには理由があります。
顧客分析によって優良顧客を導き出し、最適な戦略を展開することが効果的なビジネスモデルが増えてきたことです。
この項目ではそんなビジネスモデルを2つピックアップしてご紹介しましょう。
サブスクリプション
サブスクリプションは月額・年額といったペースで顧客が代金を支払うことによって商品・サービスを利用するものです。
買い切り型の商品・サービスとは違って、ユーザーに継続的に利用し続けてもらわなければなりません。
その時に重要となるのが顧客分析です。マーケターは自社にとっての優良顧客を見つけ出し、満足度を高める施策を展開します。
顧客分析によって優良顧客のニーズや状態を把握できれば、より効果的なマーケティング戦略を展開できるようになります。
シェアリングエコノミー
シェアリングエコノミーは空き家・空き部屋・車・スキルなど個人が持っている遊休資産を貸し出すサービスのことです。
サブスクリプションと同じように、ユーザーは対象となる品物やサービスを所有することなく利用することができます。
日本ではまだあまり法整備が進んでいないこともあり、市場が伸びていくのはこれからといえるかもしれません。
シェアリングエコノミーでも顧客の継続的な利用が求められるため、マーケターは日頃から顧客分析が欠かせません。
顧客分析の重要性
現代ではマスメディアを用いて大規模な広告を打つマーケティング手法が効きづらくなりました。
インターネットの普及などもあって、ユーザーへの個別的なアプローチの方が大きな成果を上げられるようになりつつあります。
デシル分析やRFM分析といった様々な分析手法は今後もマーケターにとって必須のツールであり続けるに違いありません。
こうした顧客分析の重要性について、ここで改めて確認しておきましょう。
顧客の現状把握
顧客分析の重要性、1つ目は顧客の現状把握ができることです。
自社にとってどのような傾向のある顧客が優良顧客なのか、またなぜそうなのかを分析・把握します。
デシル分析の計算は単純なので結果をすぐに得ることができますが、そこで分析を止めてはいけません。
どうしてそのような結果が出たのか、一歩踏み込んで理解を深めることでいっそう効果的な戦略の立案に繋がるでしょう。
販促活動
顧客分析の重要性、2つ目は効果的な販促活動の展開に繋がることです。
顧客の現状が把握できると彼らのニーズや傾向も明らかになり、より効果的な販促活動は何かを見出すことに繋がります。
仮に自社の優良顧客層がテレビやラジオにあまり触れない傾向があった場合、テレビやラジオのCMを打っても意味はありません。
より効果的な他の手段を選んで販促活動の無駄を省くことができるでしょう。
営業戦略
顧客分析の重要性、営業戦略の効率化に繋がることです。
顧客分析によって何が売れていて何が売れないのかといった自社商品・サービスの特徴も見えてきます。
これらの事実は仕入れだけでなく事業そのものの見直しにも大きなヒントを与えてくれるでしょう。
また定期的な分析によって客層の移り変わりが明らかになれば、それに応じた営業戦略の変更も重要になってきます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
顧客情報の収集と蓄積
CRMへの注目が集まる今、多くの企業が様々な手法で顧客分析を行なっています。
ただ、どのような分析を行うにしても問題となるのは顧客情報の収集と蓄積の方法です。
この項目では顧客情報の収集と蓄積のための様々な方法の中から3つをピックアップしてご紹介しましょう。
ヒアリング調査
ヒアリング調査では主に顧客への個別の聞き取り調査を行います。
1対1のやりとりなので双方向性があり、シーンに応じて柔軟に質問を変更できることが大きな特徴といえるでしょう。
ただし対話中心のやり取りなので時間がかかる場合が多く、調査の数を稼ぐことがなかなかできません。
直に会って会話するよりも電話でのヒアリング調査の方が効率良く進む傾向があります。
観察調査
観察調査は行動観察調査という別名の通り調査対象の行動をつぶさに観察する調査方法です。
言葉でのやり取りだけではうかがい知れない、対象が自分では意識していないニーズまで汲み取れる可能性があります。
そんな本人も気付いていない部分を言葉ではない情報から推察し、ヒントを得るのが観察調査のポイントだといえるでしょう。
観察調査の場合、思いがけない発見を期待できることも特徴です。
実験調査
実験調査は実験法とも呼ばれ、特定の因果関係を見出すために多くの場合複数のグループで行われます。
何をすればブランドのイメージが上がるのか、何をすれば顧客を多く呼び込めるのかなど、具体的な実験が可能です。
こうした実験を行い結果を分析することで、マーケティング戦略をブラッシュアップするためのヒントが得られるでしょう。
顧客分析に困ったら
顧客分析の方法にはRFM分析やセグメンテーション分析、CTB分析など実に様々な方法があります。
中でもデシル分析はサブスクリプションやシェアリングエコノミーなど一部の業態において非常に注目度の高い分析方法です。
自社でもデシル分析を活用し、より良い経営戦略の立案に役立てたいと考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
そんな時はぜひデジマクラスのコンサルタントに相談してみてください。
マーケティングのプロフェッショナルが親身になってお話をうかがい、適切なアドバイスをさせていただきます。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回の記事ではデシル分析の具体的なやり方を中心に顧客分析の重要性などをご紹介してきました。
顧客について詳しく知ろうとすることは自社の商品・サービスを見つめ直すことにも繋がります。
情報収集の過程で批判的な意見を頂戴することは辛いものですが、成長痛の一種だと捉えて改善に取り組んでいきましょう。
自社のどんな点が人気を集めていてどこが不人気なのかをよく知り、マーケティング戦略に活かしていくのです。
そうして耐えずブラッシュアップを続けていくことも市場で生き残っていくために必要なことだといえるでしょう。
本稿がより良い顧客情報の収集のための一助となれば幸いです。