複数のインターネット広告を継続的に運用している場合、広告同士の効果の及ぼし合いを無視することはできません。
それ単独での効果は決して高くない広告Aが、広告Bを通じたCVに良い影響を与えてアシストしているという可能性もあるのです。
今回の記事では、そんな広告の間接効果を評価するビュースルーコンバージョンについて解説します。
媒体別の計測条件や計測時の注意、活用するポイントなども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
コンバージョンの定義
コンバージョンの捉え方は業界・職種・企業によって実に様々で、種類も意味も色々あります。
ビュースルーコンバージョンについて詳しく知る前に、そんなコンバージョンの定義について改めて確認しておきましょう。
この記事で扱うコンバージョンは運用型のインターネット広告を通じてユーザーが資料請求や商品の購入などを行うことを指します。
まずはコンバージョンの意味の詳細と運用型広告における3種類のコンバージョンについて解説します。
コンバージョンの意味
運用型インターネット広告におけるコンバージョンとは広告を通じてユーザーが資料請求や商品の購入などを行うことを意味します。
Googleでは「ユーザーが広告を操作し、広告主にとって価値ある特定の行動に至ること」をコンバージョンと定義しています。
特定の行動というと広告のクリックや動画広告の視聴といった積極的なアクションが想定されがちですが、それだけではありません。
広告を目にはしたけれど何もしなかった、というユーザーの行動も1種のアクションとして捉えることができます。
そのような消極的なアクションと呼べるユーザー行動に関わるコンバージョンがビュースルーコンバージョンです。
3種類のコンバージョン
運用型のインターネット広告はコンバージョンに至ったユーザー行動の軌跡から以下の3種類に大別することができます。
- 広告をクリックされて生まれたCV
- クリックされなかった広告のお陰で生まれたCV
- 上記2種類のどちらにも当てはまらないCV
1つ目の広告をクリックされて生まれたCVはCVの正規ルートと呼ぶことができるでしょう。
2つ目のクリックされなかった広告のお陰で生まれたCVは、広告の影響によって生まれた正規ルート以外のCVを意味しています。
3つ目は広告の影響を受けずに生じたCVです。すべてのCVが広告によって生まれたとは必ずしもいえないからです。
インターネット広告の運用にあたってはこれら3種類のコンバージョンの存在を念頭に置かなければなりません。
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ビュースルーコンバージョンの特徴
今回の記事で扱うビュースルーコンバージョンは広告同士の影響の及ぼし合いに着目するコンバージョンです。
広告を心にとめたユーザーが自然検索を行い、それがコンバージョンに繋がった場合もビュースルーコンバージョンに含まれます。
やや捉えがたい印象を抱かれがちですが、広告の効果を最大化しようとするなら考慮しないわけにはいきません。
この項目ではそんなビュースルーコンバージョンの特徴について詳しくご紹介します。
仕組み
先の項目でインターネット広告における3種類のコンバージョンについて解説しました。
コンバージョンについて考える時には、広告を見たユーザーが別の方法を通じてコンバージョンに至った可能性を排除できません。
単独では効果を上げていない広告であっても、コンバージョン全体を見た時、まったく貢献していないとはいい切れないのです。
そんな間接的なコンバージョンのきっかけになったかもしれない広告を評価する仕組みがビュースルーコンバージョンだといえます。
カウントパターン
ビュースルーコンバージョンのカウントパターンには媒体ごとに違いがあります。Yahoo!広告を例に見てみましょう。
Yahoo!広告では「広告の50%以上の範囲がユーザーの視認領域に表示された」ことをもって広告が表示されたと判断します。
広告が表示されてから24時間が「ビュースルーコンバージョン計測期間」で、この計測期間は変更することはできません。
つまり表示・スルーされて24時間以内にコンバージョンが発生した広告のことをビュースルーコンバージョンと呼ぶのです。
ただし、ビュースルーコンバージョンとしてカウントされる広告表示は計測期間内に表示された以下のパターンに限られます。
- 計測期間内に表示された同じ広告の中の最後の広告
- 計測期間内に生じたコンバージョンの前に表示された最後の広告
- 計測期間内に表示された複数の広告の中の最後の広告
コンバージョン発生前に表示された広告でも、クリックや動画視聴を経ていれば通常のコンバージョンにカウントされます。
クリックスルーコンバージョンとの関係性
ビュースルーコンバージョンとよく似た用語にクリックスルーコンバージョンがあります。2つはどのような関係なのでしょうか。
クリックスルーコンバージョンは広告をクリックしたユーザーがその後コンバージョンに至ることを意味しています。
対するビュースルーコンバージョンは、広告をクリックせず、別の方法でサイトにアクセスしてコンバージョンに至ったものです。
ビュースルーコンバージョンとクリックスルーコンバージョンの違いは広告がクリックされたか否かにあるといえるでしょう。
重要視されている理由
ビュースルーコンバージョンが重要視されている理由は、それが広告の効果を最大化するにあたって無視できない存在だからです。
表示された広告のことが気になって後から自然検索を行うというユーザー行動がまったくないとはいい切れません。
また複数同時に運用している広告のうち、広告Aが広告Bに良い影響をもたらしているという可能性も排除することはできません。
単独での効果が出ていないからといって広告を単純に停止してしまうと、全体で見たときマイナスになる可能性があるのです。
そのため、広告の価値を評価する際はビュースルーコンバージョンを計測して総合的に判断しなければなりません。
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媒体別の確認方法
ビュースルーコンバージョンの定義やカウントパターンには媒体ごとに違いがあります。
それらの違いについてきちんと把握していなければ広告の効果の最大化は望めないでしょう。
この項目では媒体別のビュースルーコンバージョンの確認方法について紹介します。
Google広告
Google広告のディスプレイ広告の場合、広告面積の50%以上が1秒以上表示されると広告が表示されたと判断されます。
ビュースルーコンバージョンの計測期間は1・3・7・14・21・30日間から幅広く選択でき、デフォルトでは1日間です。
管理画面から「ツールと設定」を選び、「測定」の「コンバージョン」から期間を選ぶだけなので設定も難しくありません。
確認は管理画面の「表示項目」から「表示項目の変更」を選び「コンバージョン」の「ビュースルーコンバージョン」を選択します。
Yahoo!広告
Yahoo!広告のディスプレイ広告では50%以上の範囲が1秒以上表示されると広告が表示されたと判断されます。
ビュースルーコンバージョンの計測期間は先の項目でもご紹介した通り広告が表示された瞬間から1日間です。
確認は管理画面の「表示項目」から「表示項目を編集」をクリックして行いましょう。
「キャンペーン一覧の表示項目を編集」に「ビュースルーコンバージョン数」があるのでチェックを入れれば完了です。
Facebook広告
Facebook広告では広告面積の1%でも画面に表示されれば広告が表示されたと判断されます。
設定と確認を行うには、広告マネージャから「列:カスタム」をクリックして「列をカスタマイズ」を選択します。
するとカスタム指標の作成に移るので、右下のアトリビューションウインドウから「編集する」をクリックしましょう。
「比較する別のウインドウを選択する」から「ビュー」と「クリック」を1・7・28日間のスパンで選択できるようになります。
設定後、各キャンペーンに表示される指標のうちビューアトリビューションと記されているものがビュースルーコンバージョンです。
動画広告
Googleは現在、クリックされなかった動画広告の貢献度を測るために「エンゲージビューコンバージョン」を導入しています。
5秒後にスキップできる動画広告を10秒以上視聴した後に至ったコンバージョンがエンゲージビューコンバージョンです。
これによって、異なる動画広告間のコンバージョン計測の比較がビュースルーコンバージョンを用いる場合よりも容易になりました。
X(旧Twitter)広告
X(旧Twitter)広告では1pixelでも画面に表示されれば広告が表示されたと判断されます。
X(旧Twitter)広告の場合ポストビューアトリビューションという指標がビュースルーコンバージョンなので気を付けましょう。
設定するには管理画面の「ツール」から「コンバージョントラッキング」をクリックします。
計測したいコンバージョンイベントを選び「ポストビューアトリビューション期間」から日数を選択します。
確認したい時は管理画面の「データ:その他」の「データをカスタマイズ」にある「ポストビュー」から適切な項目を選びましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
媒体別ビュースルーコンバージョン計測の条件
先の項目で触れた通り、ビュースルーコンバージョンの計測条件は媒体によって違います。
Google広告とYahoo!広告のディスプレイ広告では広告面積の50%以上が1秒以上表示されなければなりません。
Facebook広告では広告面積の1%でも画面に表示されれば広告が表示されたと判断されます。
X(旧Twitter)広告の場合、広告が1pixelでも表示されれば広告が表示されたことになります。
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ビュースルーコンバージョンの評価方法
ビュースルーコンバージョンは、コンバージョン1件あたりの広告費用を算出することで評価できます。
クリックスルーコンバージョンとビュースルーコンバージョンの合計値がその広告からのコンバージョン数です。
かかった広告費をコンバージョン数で割ることによって、1件あたりの広告費用を求めることができるでしょう。
ビュースルーコンバージョン計測時の注意点
インターネット広告の効果を総合的に判断して効果を最大化するために、ビュースルーコンバージョンは欠かせない概念です。
ただ扱う上で注意しなければならないこともいくつかあります。
この項目ではビュースルーコンバージョン計測時の注意点を2つピックアップしてご紹介します。
重複カウント
ビュースルーコンバージョン計測時の注意点、1つ目は重複カウントの存在です。
たとえばディスプレイ広告をスルーしたユーザーが自然検索を行い、コンバージョンに至ったとしましょう。
この時、広告の管理画面ではビュースルーコンバージョンが1件と計測されます。
しかしSEO対策担当者が自然検索からのコンバージョンをカウントしている場合、そちらでも1件と計測されることになります。
これでは正しい件数の把握ができません。
こうした事態を防ぐには広告管理ツールを導入し、すべての広告を一元管理する必要があります。
効果の計測は正確ではない
ビュースルーコンバージョン計測時の注意点、2つ目は効果の計測は正確ではないということです。
たとえばディスプレイ広告をスルーしたユーザーが関連する他の広告をクリックし、コンバージョンに至ったとしたらどうでしょう。
この場合、最初の広告がどんなに大きな影響を与えていたとしてもビュースルーコンバージョンにはカウントされません。
このように、ビュースルーコンバージョンには顕在化していないものがある可能性を把握しておく必要があります。
活用するポイント
ビュースルーコンバージョンを活用するポイントとして自社広告の最適化の材料とすることが挙げられます。
ビュースルーコンバージョンの回数が多い広告にはユーザーの意識に働きかける重要な情報や画像が使われている可能性があります。
それらが何なのかを分析し、効果を上げていない広告に適用することで最適化を図ることができるでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
広告の効果を正確に判断する指標になる
ビュースルーコンバージョンは広告の効果を正確に判断する指標としても扱うことが可能です。
単独での成果は低いけれどビュースルーコンバージョン率は高い、という広告があったとしましょう。
仮に運用担当者がビュースルーコンバージョンのことをまったく考慮していなかったとしたらどうでしょうか。
もしもその広告の運用を停止すれば間接的に得られていた効果まで失われ、全体のコンバージョン率は下がることになるでしょう。
このように、ビュースルーコンバージョンには広告の効果を全体的な視野で見て判断するための指標ともなりえます。
ビュースルーマーケティングで悩んだら
ビュースルーコンバージョンは広告の効果を正確に判断するためには欠かせない指標です。
しかし効果的に用いるためには問題の広告を詳細に分析し、ユーザーにどう影響を与えているのか正しく評価しなければなりません。
もしもそんなビュースルーマーケティングに関して悩んだら、デジマクラスのコンサルタントに相談してみてください。
Webマーケティングのプロフェッショナルが親身になってお話をうかがい、適切なアドバイスをさせていただきます。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回の記事ではビュースルーコンバージョンの特徴や媒体別の確認方法などについて解説しました。
ビュースルーコンバージョンについて理解を深めて正しく扱えば、全体的な広告の効果を底上げすることにも繋がります。
もしも今まで広告の間接的効果を評価したことがなかったのであれば、この機会に精査してみてはいかがでしょうか。
本稿がそのための一助となれば幸いです。