企業が商品やサービスを販売し提供する場合、価格を設定します。
価格を決めることは、企業の利益に大きく関わってくることであり重要です。
ここでは、プライシングの考え方について解説していきます。
価格決定で把握すべきことや分析方法についても解説していくので、参考にしてください。
目次
プライシングの概要
プライシングとは価格を設定するという意味です。
企業が利益を得て存続するために必ず行う必要なことになります。
この価格設定は分析を行い決めていくことが重要です。
しっかりと戦略を立て、自社に合った価格を設定しないと企業の存続も危うくなってしまいます。
また価格はその企業のイメージ付けにもなるのです。
価格に見合った商品なのかということを消費者は見極めています。
購入が増えるように商品を安くすれば良いというわけではありません。
商品が安いと、品質があまり良くないのではないかという印象を与えてしまう可能性もあります。
そうするとブランドのイメージがあまり良くない方向にいってしまうでしょう。
しっかりと価格戦略を立て、価格を決定していくことが重要なのです。
価格決定において把握しておくべきこと
価格決定において、まずターゲットを明確にして把握しておくことが重要です。
年代や性別などで設定する価格が大きく変わってきます。
例えば10代など若い年代がターゲットの場合、高い価格はあまり向いていません。
40代以上の年代をターゲットとしていて安い価格で販売してしまうと品質が良くないという印象を与えてしまうかもしれないのです。
商品を開発する段階でターゲットを決め、そのターゲットに向けた商品の開発を進めていくでしょう。
そのターゲットに合わせた価格設定が必要になるのです。
ターゲットに価値がある商品であることを分かってもらうためにも、ターゲット層やニーズを把握しておきましょう。
次に、自社にとってどのくらいの利益となるか把握しておくことが重要です。
商品を開発し販売していく場合、さまざまなことにコストがかかっています。
商品のコストや、販売のコストなどさまざまな内訳があるのです。
そのコストをまかない、利益を出していかないと企業は倒産してしまうかもしれません。
どのくらいの利益が出るのか把握しておくことは重要です。
プライシングの考え方
プライシングは、新しく事業を始める場合や新商品販売などに必ず行います。
また企業が安定した経営を続けていくためにも重要なことです。
プライシングには3つの考え方があります。
その考え方について解説していくので参考にしてください。
スキミングプライス
1つ目がスキミングプライスという考え方です。
新しい商品発売時には最初高い価格で設定をし、徐々に価格を下げていくという戦略になります。
市場で新しい商品が発売された場合、大多数の消費者が必ず購入する訳ではありません。
しかし市場の中には、イノベーターという層が存在します。
イノベーターとは、新しい商品などが市場に入ってきたときに早い段階で受け入れる層のことです。
このイノベーターは、新しい商品であれば高い価格でも購入する確率が高いと考えられます。
高い価格で最初販売することで、開発にかかったコストを回収するという意味でもこの考え方は活用されるのです。
最初から価格を下げて販売してしまうと、開発にかかったコストも回収できないかもしれません。
開発にかかったコストを回収できれば、徐々にコストを下げ多くの消費者向けにターゲットを切り替えることができるのです。
ペネトレーションプライス
2つ目はペネトレーションプライスという考え方です。
新しい商品の価格を下げ低価格で販売し、市場のシェアを早期に獲得していくという戦略になります。
早い段階で市場のシェアを獲得することで、顧客が増え利益に繋がることを目的としていることが特徴です。
価格の変動が大きい市場で活用されることが多くあります。
低価格で販売することで消費者を注目させる商品にもなり、市場での価値が上がっていくでしょう。
早い段階で市場のシェアを獲得できるというメリットがありますが、初期のコストが回収できないかもしれないので注意が必要です。
この戦略はシェアを獲得することで製造量を上げることができます。
多く製造できれば1商品あたりのコストも抑えることができ、安定した収益を保つことができるでしょう。
シェアを獲得しブランドイメージを付けたあとは、価格を上げてさらに利益を増やしていくという方法もあります。
コストプラス
3つ目はコストプラスという考え方です。
商品にかかったコストに利益を加えた価格設定のことになります。
商品が売れれば、確実な利益に繋がることが大きな特徴です。
市場などの影響を考えて設定する訳ではないので、消費者から受け入れられる価格であるということは限らないことが考えられます。
コストが明確になっていない場合に用いられることが多く、建設業界やシステム開発業界で活用されていることが多いです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
プライシングにおけるアンケート調査の分析方法
プライシングを行う場合、アンケート調査が用いられることが多いです。
アンケート調査を行ったあとは分析を行います。
分析方法には、下記の2つがあるので覚えておきましょう。
- PSM分析
- CVM分析
PSM分析は、商品の適切な価格を導き出していく分析方法です。
消費者が商品に対して感じる4つの視点を数値で表し、計測していきます。
4つの視点は下記です。
- 商品はいくらから安いと感じるか(需要最低価格)
- 商品はいくらから高いと感じるか(需要最高価格)
- 商品はいくらから安すぎると感じるか(非需要最低価格)
- 商品はいくらから高すぎると感じるか(非需要最高価格)
この4つの内容をアンケートを通して調査し分析します。
消費者の価格に対しての感覚値を知ることができるので、プライシングに活かすことが可能です。
CVM分析は、どのくらいの価格であれば、どのくらいの購入率が見込めるか導き出していく分析方法になります。
まず商品の価格帯を設定し、各価格において消費者の購入意欲の度合いをアンケートを活用し調査します。
例えば下記のような質問です。
「この商品が500円だったら購入したいと思いますか?」
上記のような内容の質問に、購入したいか購入したくないかでまず答えてもらいます。
そしてそれぞれの答えに対し下記のような内容を追加で質問するのです。
- 購入したい…550円なら購入しますか?(はいorいいえ)
- 購入したくない…450円なら購入しますか?(はいorいいえ)
購入したい場合は、設定している価格よりも高い価格で購入してもらえるかもしれません。
また購入したくない場合は、いくらくらいなら購入したいのか把握することでプライシングに活かすことができます。
プライシング方法を理解する必要性
プライシングにおいて、理解する必要性についてそれぞれ解説していきます。
売上に直結
企業にとって売上が上がらないと経営を続けていくことはできません。
価格戦略を行うことは、売上に直結してくるのでとても重要なことなのです。
戦略を立てず、価格だけ安くしても企業にとって利益にはなりません。
売上を上げ、消費者に購入してもらうためにもプライシングを行うことは必要不可欠といえるでしょう。
市場シェアに直結
プライシングは市場シェアにも直結していきます。
商品が沢山購入されれば、企業は大量に生産していくことになるでしょう。
大量生産になれば、1商品にかかるコストを抑えることができるのです。
コストが抑えられることでシェアは拡大し商品の生産量は増え、商品のコスト単価を下げることができるので利益へと繋がります。
シェアを拡大していくことで、市場での需要が高くなるでしょう。
価格の安定化
プライシングは価格の安定化を図ることができます。
価格に見合った商品であるほど、消費者は安心して購入できるのです。
商品のシェアを拡大したい、商品の購入率を上げたいという考えから商品を安くしてしまうと赤字になってしまう場合もあります。
調査と分析を行い、プライシングを行うことが重要です。
適正な価格で商品を販売することで、価格の安定化を図ることができるでしょう。
他社との差別化
他社との差別化を図る目的で活用される場合もあります。
企業にとって同じ市場での商品とは差別化を図ることが重要です。
同類の商品が他社で自社よりも安く販売している場合、消費者は他社の商品を購入するかもしれません。
場合によって自社の商品の価格を調整する必要があるのです。
マーケティング戦略の事例はこちら
戦略ごとのプライシング方法
プライシングを行う上で、どの部分に着目し戦略を行うか企業によって分かれてきます。
それぞれの着目点の戦略に関して解説していくので参考にしてください。
コストに着目
商品にかかるコストに利益を足し、コストだけに着目し価格を決めていく方法です。
この着目点の戦略は、購入率が増えれば企業にとって安定した利益を獲得することができます。
しかし消費者にとって適切な価格となっていない場合もあるので、購入率が増えない可能性も考えられることがデメリットです。
需要に着目
商品に対して消費者がどのくらいの価格であれば購入したいと思うのか需要に対して着目し価格を設定していく方法です。
アンケート調査などで、消費者の意見を把握し価格を決めていきます。
消費者の需要に対して価格を設定できれば、シェアを拡大することへと繋がるでしょう。
アンケートを行った結果、あまり利益にならない価格設定を求められることもあるので注意が必要です。
競争面に着目
競合他社との競争を意識して価格を設定していく方法です。
多くは企業と同じ価格やその価格よりも低い価格を設定することが多くあります。
競合他社よりも価格を同等か低価格にすることで消費者の購入意欲を上げることができるからです。
心理に着目
消費者の心理に着目し価格を設定していく方法もあります。
例えば下記のようなものです。
- ブランドイメージ
- 同類商品の価格の相場
ブランドによってイメージがあります。高級なイメージもあれば、低価格なイメージがそれぞれあるでしょう。
そのイメージ通りに価格を設定していくことを指します。
または同類商品の価格の相場と同じにすることです。
同類の商品よりも高すぎたり安すぎたりすると消費者へ違和感を与えてしまうかもしれません。
同等な価格にすることで新商品の価格の違和感をなくすことができるでしょう。
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AIによるダイナミックプライシングとは
最近AIによるダイナミックプライシングが活用されています。
ダイナミックプライシングの概要と近年の動向について解説していくので、理解しておきましょう。
ダイナミックプライシングの概要
ダイナミックプライシングとは、市場の需要の変動に応じて価格を設定する方法のことです。
商品によって市場の需要が、時期や時間帯によって変わってきます。
ダイナミックプライシングを活用している例がホテル業界です。
ホテルは連休などには需要が上がり、平日には需要が下がります。
この需要の変動に応じて、ホテル代は変わっているのです。
近年の動向
ダイナミックプライシングは、プライシングより設定が複雑になります。
複雑になる分、価格決定まで時間がかかることがデメリットです。
最近ではダイナミックプライシングによる価格の設定を、AIで行っている企業が増えています。
AIでは多くのデータを扱うことができ、正確に分析を行っていくことができるからです。
今後もAIを活用したダイナミックプライシングを活用する企業は増えていくでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
新商品の価格の決め方
企業にとって新商品のプライシングは重要です。
新商品の価格の決め方について解説していきます。
2段階の価格準備
新商品の価格の決め方として、2段階の価格を準備しておく方法があります。
利益を考えた価格か、市場のシェア拡大を目指した価格の2つの視点からの価格です。
商品のコストを考え、利益もしっかり出せるような高価格な価格設定をすることが1つになります。
商品が売れた分、大きな利益へと繋がるので収益の安定性を保てるでしょう。
後者は市場のシェア獲得を大きな目的としており、シェアを拡大させることで顧客数が増え商品単価のコストを下げることが可能になります。
価格を少しづつ下げる
発売時には高価格で設定し、徐々に価格を下げていく方法です。
スキミングプライシングの考え方になります。
最初はイノベーターをターゲットに発売し、市場の価格帯などを見ながら価格を少しづつ下げていくのです。
早い段階で開発のコストを回収できることが大きなメリットとなります。
価格を安く設定
最初から価格を安く設定し発売する方法もあります。
他社よりも低価格で発売することで、消費者の注目を集めることが可能です。
商品がヒットすれば、市場のシェアを一気に拡大することができるでしょう。
安くし過ぎるとコストを回収できない場合もあるので、コストを考慮して価格を設定することが重要です。
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価格戦略で勝つためには
プライシングにはご紹介した考え方や分析方法があります。
上手く活用し自社にとってより良い価格戦略を考えなくてはいけません。
価格戦略で勝つためには、プロのコンサルタントの力を借りることがポイントです。
考え方や分析方法を理解できても、自社でどのように進めていくか悩んでいる企業もあるでしょう。
そのような場合はデジマクラスへご相談ください。
デジマクラスのコンサルタントが、価格戦略で勝つための方法をアドバイスいたします。
まとめ
プライシングについてご紹介しました。
価格戦略は、企業として価値を見出すためにもとても重要なことです。
価格戦略を怠ってしまうと大きな赤字を出してしまうかもしれません。
企業の経営を安定して続けていくためにもとても大切なことなのです。
プライシングについて悩みがある場合はデジマクラスへご相談ください。
あなたの企業にとってより良い道が拓けるようお手伝いいたします。