クロスセル戦略は効率的に客単価を上げたい場合、とても効果を発揮するマーケティング手法です。
新規顧客の獲得には多大な労力が必要であるため、1つの商品・サービスを販売するだけでは非常に非効率だといえるでしょう。
関連商品をセットで販売することを目的とするクロスセルは、効率的な販売を目的としたマーケティング戦略です。
ただし、その戦略面でメリットや具体的な進め方が理解できていないと、成約に結び付けることはできません。
この記事ではクロスセルの成功事例やメリット・具体的なステップについて紹介します。
目次
クロスセルの意味
クロスセルとは、1つの商品・サービスを購入しようとする顧客にその関連商品を推奨するマーケティング手法です。
1度の購買機会に複数商品・サービスを購買できるため、非常に効率の良いマーケティング手法だといえます。
ただし、顧客が購買を想定していない商品・サービスを成約に導くには、戦略的な進め方や高いスキルが必要です。
クロスセルに似た言葉に「アップセル」「ダウンセル」がありますが、その違いを理解することでさらに理解を深められるでしょう。
アップセルと何が違う
アップセルとは、1つの商品・サービスの購買機会によりグレードの高い商品・サービスを推奨するマーケティング手法になります。
例えば、自転車を購入しようとする顧客に対して、電動自転車を勧めて成約に結び付けるのがアップセルです。
クロスセルが関連商品を推奨するのに対して、アップセルはより高額な商品・サービスの購買を目指すためややハードルが高くなります。
したがって、顧客のニーズを瞬時に把握し、「価格以上のメリットを感じてもらえる」交渉力が求められるといえるでしょう。
ダウンセルと何が違う
ダウンセルとは、1つの商品・サービスの購買機会によりグレードの低い商品・サービスを推奨するマーケティング手法です。
例えば、電動自転車を購入したくとも予算が合わない顧客に対して、自転車を勧めて成約に結び付けるのがダウンセルだといえるでしょう。
クロスセルが関連商品を推奨するのに対し、ダウンセルは低額な商品・サービスを勧めるためメリットがないと感じる人も少なくありません。
しかし、実績ゼロだと顧客との関係は終わりますが、何らかの商品・サービスを販売することで関係が構築できるのは大きなメリットです。
クロスセルの成功事例を紹介
クロスセルを正しく理解し実践するには、成功事例に数多く触れることが大切です。
クロスセルの意味・概念を正しく理解することはとても大切ですが、それだけでは実績を上げることはできません。
机上の理論を実践するには成功事例を検証して、どのように活かされているのかを確認することが大切です。
ここではクロスセルで成功している「マクドナルド」「Amazon」「保険の営業」の事例を検証してみましょう。
マクドナルド
ファーストフードの草分けともいえる存在の「マクドナルド」は、クロスセルの手法で大成功を収めた企業の1つです。
マクドナルドの最大の強みは、セットメニューの充実と徹底した社員教育にあります。
魅力的でお得感のあるセットメニューを販売する一方、単品購入の顧客に対しては必ず「○○はいかがですか」と1言添えるのが特徴です。
決して嫌味にならず思わずオーダーさせてしまう話法は、社員教育の賜物でありマクドナルドの財産だといえるでしょう。
また、Sサイズのドリンクをオーダーした顧客にさりげなくMサイズを提案するなど、アップセルの手法を用いていることも見逃せません。
Amazon
通販最大手の「Amazon」もクロスセルを中心にダウンセル・アップセルを交えながら成功している企業です。
Amazonでは生活必需品から家電・ファッション関連まで、ありとあらゆる商品をECサイトで販売しています。
つまり「店員」が不在であるため、話法をもってクロスセルの手法を実践することはできません。
そこで、ユーザーが商品を検索した際、関連商品が同時に表示される仕組みを用いてクロスセルを実践しているのが特徴です。
併せてグレードの高いもしくは低い商品も表示させることで、ダウンセル・アップセルも実践して顧客拡大に努めています。
保険の営業
実績を上げている保険の営業マンはクロスセルの達人であるといえるでしょう。
保険に加入する人は将来に対して何らかの不安を抱えている人であり、可能な限り不安を解消したいと考えています。
保険商品は非常に複雑である上、1つの商品で全ての不安が解消できるわけではありません。
そこで、優秀な保険の営業マンは顧客のニーズに合わせて、いくつかの関連商品を勧めることでセット販売を成功させています。
さらにアップセルの手法を用いることで、特約保険の成約も獲得しているのが特徴だといえるでしょう。
クロスセル戦略のメリット
マーケターがクロスセル手法を取り入れるには、そのメリットを正しく理解しておくことが大切です。
クロスセル戦略のメリットを理解することで導入後の効果測定が可能となり、スムーズにPDCAサイクルを回すことができます。
ここでは、マーケターが知っておきたいクロス戦略のメリットについて具体的に解説します。
客単価を上げることができる
クロスセル戦略の最大のメリットは1度の購買機会で複数商品を販売し、客単価を上げることができる点です。
もちろん、限られた購買機会の中で、単に顧客に関連商品を勧めるだけでは実績を上げることはできません。
しっかりとした戦略を構築し、必要な設備投資や社員教育を行うことがクロスセルには不可欠だといえるでしょう。
手間やコストがあまりかからない
手間やコストがあまりかからない点もクロスセル戦略のメリットの1つだといえるでしょう。
クロスセル戦略の第1歩は、リアル店舗では顧客に1声掛けることであり、ECサイトでは関連商品を表示させる仕組みを作ることです。
つまり「ひと手間」かけるだけで、クロスセル戦略の第1歩をスタートさせることが可能となります。
もちろん、効率的に実績を上げるのは社員のスキルアップや様々な仕掛けが必要ですが、大きな手間やコストはかからないといえるでしょう。
新規顧客開拓のコストを削減することができる
クロスセル戦略を導入することで、新規顧客開拓のコストを大幅に削減することができます。
新規顧客を開拓するにはリストの整備や販促資料・物品の整備などの準備が必要となりコストも必要です。
クロスセル戦略は、すでに商品・サービスを購入している顧客に対して関連商品を勧めることから余分な労力・コストは必要ありません。
とりわけ、ECサイトにおいて必要となるのは関連商品を表示させるための初期費用のみであることから、非常に効率的だといえます。
単体では売りにくい商品を売ることができる
商品・サービスによっては単体で売りにくくとも、クロスセル戦略を用いることで比較的簡単に売ることが可能です。
例えば自家用車を販売する場合、多くのオプションを勧めることで顧客に「スペシャル感」を感じてもらうことができます。
しかし、オプションだけを販売するのは、故障・トラブルでもない限り難しいのが一般的です。
また、関連商品をセット販売するには割引価格を導入することで、より効果的・効率的に実績につなげられるでしょう。
リピーターを作りやすくなる
クロスセル戦略が成功すると、その顧客にリピーターになってもらえる可能性も飛躍的に高まります。
例えばシャワーヘッドの関連商品としてカートリッジを販売した場合、顧客は次回以降定期的にカートリッジを購入するのが一般的です。
ただし、関連商品・サービスの質が高いことが前提であり、万が一品質が劣悪だと顧客を失いかねません。
関連商品・サービスの質が高ければ、販売担当者に対する信頼も得られることから非常にメリットは大きいといえるでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
クロスセル戦略のデメリット
ここまでクロスセル戦略のメリットを紹介してきましたがメリットばかりではありません。デメリットもあります。
なお、クロスセル戦略のデメリットは次のとおりです。
- 営業マンが強く関連商品を勧めたため、顧客から「押し売り」「強引過ぎる」と評された。
- 関連商品を数多く提示し過ぎてしまい、顧客を困惑させてしまった。
いずれのパターンも営業マンのスキルの低さが原因だといえるでしょう。
こういったデメリットは、「営業手法のマニュアル化」「定期的な研修の実施」を行うことで克服することが可能です。
大切なのは営業担当者にクロスセル戦略の考え方や手法を正しく落とし込むことだといえるでしょう。
クロスセルのパターン
クロスセルは関連商品・サービスをセットで販売するマーケティングの手法ですが、厳密には2つのパターンがあります。
なお、クロスセルの2つのパターンは次のとおりです。
- 関連商品を勧める
- 主たる商品・サービスを補完する商品・サービスを勧める
関連商品とは、例えばパソコンを購入する顧客に対して、HDDや高性能マウスを勧める手法となります。
主たる商品・サービスを補完するとは、例えばミネラルウォーターを購入する顧客に対して定期継続プランを勧める手法です。
いずれもクロスセルの手法を用いるものであり、1度の購買機会で複数の商品・サービスを成約することを目的としています。
クロスセルを実行するためのステップ
クロスセルを効率的かつ効果的に実行するには、戦略的なステップを踏むことが不可欠になります。
単に関連商品を勧めるだけでは、成果を上げることはできません。いかに顧客の購買意欲を刺激するかが成否のポイントです。
したがって、マーケターは顧客の購買意欲を刺激するための、戦略的なステップをマスターしておくことが大切だといえるでしょう。
その1:既存のデータを分析する
クロスセルを成功させるには、顧客データを分析しておくことが不可欠だといえます。
具体的には、次の顧客データを分析しておくと良いでしょう。
- 顧客属性
- 購買履歴
- 問い合わせの有無・内容
- Webサイトの閲覧履歴
これらのデータを確認することで、顧客の抱えている課題や購買傾向を分析することが可能です。
顧客の課題・購買傾向が把握できれば、どういった関連商品・サービスを勧めるべきかが明らかになりクロスセルを実践しやすくなります。
その2:販促のシナリオプランを構築する
顧客の課題・購買傾向が把握できれば、それに基づき販促のシナリオプランを構築しましょう。
関連商品・サービスを勧める際、行き当たりばったりの手法では成約はできません。データに基づいたシナリオが必要になります。
例えば、A商品を定期的に購入している顧客が、稀にB商品を購入している履歴が残っていればB商品を勧めるといった具合です。
なお、販促のシナリオプランを構築する際、特に注意したいのが以下の項目になります。
- 商品の種類・グレード
- 購入のタイミング・ 頻度
- 購入時期・間隔
- 価格帯
これらの項目をチェックしておくことで、よりニーズに合った関連商品・サービスを提案できるでしょう。
その3:施策を実行する
顧客の分析・販促のシナリオプランが構築できたら施策を実行に移します。
施策を実行する際、重要になってくるのが営業マンのスキルであり、ECサイトの仕組み作りです。
営業マンにおいては、関連商品を勧めるタイミングや話法などをしっかりとマスターして実践することが大切になります。
ECサイトにおいては、顧客の興味を引く商品・サービスが的確に表示される仕組み作りが大切です。
これらが十分に対策できていないと、返ってマイナスに作用することもあるので注意しましょう。
その4:継続的に効果検証を行う
クロスセル戦略は施策を実行したら「終わり」ではありません。施策を実行した後には継続的に効果検証を行いましょう。
むしろ、施策実行後の効果検証こそが、クロスセル戦略を成功に導く重要なポイントです。
「なぜ販売できたのか」「なぜ販売できなかったのか」を検証することで、どういった商品・サービスが関連性が強いのかが明確になります。
効果検証を繰り返すことでこういったデータが精査され、より効率的・効果的にクロスセル戦略を展開できるでしょう。
クロスセルに役立つツール
クロスセル戦略を効率的に進めるには次のツールがあると便利です。
- 顧客情報管理ツール
- アクセス解析・分析ツール
- Web接客ツール
顧客情報管理ツールとは顧客の購買履歴や属性などの情報をカルテのように管理してくれるシステムであり、MAやCRAなどが有名です。
アクセス解析・分析ツールとはWebサイトに残された顧客のアクセス記録などを管理するツールであり、ECサイトには不可欠だといえます。
Web接客ツールとは、ECサイトを訪れた顧客に対して、チャットを通じて会話をしたり、属性に合った情報を提供するツールです。
自身のクロスセル戦略にマッチしたツールを選ぶことで、大幅な作業の効率化が期待できるでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
クロスセルの注意点
クロスセルは顧客のニーズにマッチすれば大きな実績を残せますが、ポイントを外すと顧客離れを引き起こすこともあるので注意しましょう。
顧客はあくまでも目的・ニーズを満たすために、リアル店舗やECサイトを訪れています。
まずは、顧客のニーズを満足させることが大切です。その上で関連商品・サービスを勧めることがクロスセルの正しい手法になります。
したがって、顧客のニーズを無視して、関連商品・サービスばかりを勧めることは本末転倒であることを心得ておきましょう。
クロスセルで悩んだら
クロスセルで悩んだら、マーケティングに精通したコンサルに相談することを検討しましょう。
マーケティングの手法は奥が深く、クロスセル戦略にも様々なパターンがあります。
それらを独学でマスターするには限界があり、大きな実績に結び付けるのは難しいといえるでしょう。
マーケティングに精通したコンサルであれば、クロスセルもちろん様々な手法をレクチャーしてくれます。
マーケターとしてレベルアップしたいなら、迷わずコンサルに相談することが成功への近道です。
マーケティング戦略の事例はこちら
まとめ
クロスセル戦略は1度の購買機会で関連商品を販売することを目的としており、客単価を引き上げることができるのがメリットです。
クロスセルを取り入れている企業としては「マクドナルド」「Amazon」があり、保険の営業マンもこの手法を取り入れています。
しかし、単に関連商品を紹介するだけでは実績を伸ばすことはできません。しっかりとした戦略が必要だといえるでしょう。
クロスセル戦略を効率的に学び実践するには、マーケティングの手法に精通しているコンサルに相談することが近道です。
コンサルはクロスセルは当然として、様々なマーケティングの手法を熟知してますから、的確なレクチャーが受けられるでしょう。