WebやIT業界では仕事の中でプロジェクトを組んで開発を行うケースが多くみられます。
プロジェクトを進める上で、そのチームをまとめるプロジェクトマネージャーの役割は必要不可欠な存在です。
設定された納期までに効率よく業務を進めていくためにはプロジェクトマネージャーの手腕が問われます。
そしてプロジェクトをまとめ上げるには、タスク管理やリスク分析などの幅広い知識と豊富な実務経験が必要となるでしょう。
今回はプロジェクトマネージャーの職に就くために役立つ資格についてご紹介します。
今後キャリアアップを目指し資格取得を考えている方などは、ぜひ参考にしてみてください。
目次
プロジェクトマネージャー(PM)に役立つ資格
プロジェクトマネージャーの職種に役立つ3種類の資格をご紹介します。
PMP
この資格は米国の非営利プロジェクトマネジメント協会のPMIが運営するプロジェクト管理に関するスキルを証明する資格です。
資格の名前であるPMPとは「Project Management Professional」の略語となっています。
PMPは受験資格が厳しい資格であり、実務経験と公式の研修を受講しなければなりません。
実務経験は大卒であれば36ヶ月のプロジェクトマネジメント経験と4,500時間のプロジェクトを指揮する立場での経験が必要です。
高卒の場合は60ヶ月のプロジェクトマネジメント経験と7,500時間のプロジェクトを指揮する立場での経験が必要になります。
さらに、実務経験とは別に35時間の公式研修を受講する必要があるのです。
これらの条件をすべてクリアしてようやく受験資格を得られるので、知識があるだけでは取得できない資格となっています。
PM
プロジェクトマネージャー試験(PM)は独立行政法人である情報処理推進機構が実施している国家資格です。
この情報処理推進機構では他にもIT関連の資格が多数ありますが、その中でもPMの資格は高難度の資格となっています。
2001年までは受験資格として27歳以上で業務経歴書を提出しなければならなかったのが翌年からは撤廃されました。
PMPの資格はプロジェクトマネージャーの経験がないと受験できないのですが、この資格であれば誰でも取得を目指せます。
そのため国内では前述のPMPよりも認知度が高く、IT系の資格のなかでも人気の資格となっているのです。
P2M
P2M資格試験は、特定非営利法人日本プロジェクトマネジメント協会が認定している資格です。
この資格は4種類に分かれており、種類によって受験資格などが異なります。
1つ目はPMC(プロジェクトマネジメント・コーディネーター)資格試験で、これはPMC講習会を修了すると受験できる資格です。
講習を受け指定のガイドブックを学習すれば取得できる比較的易しい部類のレベルとなっています。
2つ目はPMS(プロジェクトマネジメント・スペシャリスト)資格試験で、この資格は受験資格はありません。
誰でも受けられる資格で、PMCの試験よりは若干難易度が上がりますが標準的な難易度の試験です。
次はPMSプログラム試験で、この資格はPMC資格登録をすることが条件となります。
PMC資格試験以外にも中小企業診断士やPMPの資格を保有している場合でも受験資格が得られるようです。
PMC資格を取得した後にこのPMSプログラム試験に合格するとPMS資格を取得することができます。
そのため、PMS資格を取得するのにPMC資格を取得した後にPMSプログラム試験を受験すれば段階的に学習して取得が目指せるのです。
最後にPMR(プログラムマネージャー・レジスタード)資格試験があり、この資格がもっともハードルの高い試験となっています。
この資格では受験資格として、PMS資格の取得とさらにプログラムマネジメントに関する3年以上の実務経験が必要となるのです。
また、他の資格とは違い試験が1次と2次に分かれており筆記だけでなく面接を行い態度や姿勢といった部分も審査されます。
この資格の取得ができれば、知識だけでなくより実践的な技術をアピールすることにもつながるでしょう。
PMが資格を取得するメリット
プロジェクトマネージャーが資格を取得するとどういったメリットがあるのでしょうか。
代表的な3つのメリットについてご紹介します。
実力やスキルの証明
資格を取得することで一番アピールできる点は、実力やスキルの証明ができることでしょう。
特に専門知識が必要な分野の職種であれば、どれほどの知識が備わっているかというのは重要なポイントです。
それを言葉だけでなく、資格を取得していれば客観的にその事実を証明することができます。
資格の中でも国家資格などの認知度が高く難易度も高いものを取得できれば、大きくアピールできるポイントになるでしょう。
資格手当などによる年収アップ
企業によっては特定の資格を保有していれば資格手当が支給される場合もあります。
資格を取得できれば知識が身につき自分の仕事に役立たせられるだけでなく、直接年収に関わる恩恵も受けられるのです。
企業にとっても従業員のスキルアップを促すことによって会社の成長に結び付きます。
人材難が深刻となっている昨今では人材の質も重要視されているので、資格手当の制度は有効な手段として注目されているのです。
実務における実力の向上
すでに現場で実務をこなしている方にとっても資格取得は有効です。
資格勉強をすることで自分のスキルを再確認することができて、さらに自分の見識を広げることもできます。
自分の実力を確かめる意味でも資格受験を行い、取得できれば客観的な技術や知識の証明をすることができるでしょう。
また、プロジェクトマネージャーの資格は有効期限が定められているものが多くあります。
それだけ知識を常にアップデートしていく必要がある職種だといえるでしょう。
各資格の合格率・取得期間は?
プロジェクトマネージャーの3つの資格の合格率や取得に必要な学習期間の目安についてご紹介します。
PMP
PMP試験は前述の通り、受験資格を得るのにマネジメントの実務経験が最低でも3年以上必要となります。
受験資格を得るまででかなりのハードルとなっているため、受験者数が他の資格よりも少ないため合格率は比較的高いようです。
実際の合格率は公表されていませんが、正答率の目安が60%程だといわれており合格率も同じ6割くらいだと考えられています。
取得難易度の高い資格ですが、実務経験がある人でなければ受験できないので必要学習時間はそれほど長くはありません。
だいたい100時間くらいが目安となるので、平日に1時間週末に3~4時間の学習時間を確保できれば2~3ヶ月の期間が目安です。
PM
プロジェクトマネージャー試験の合格率は公表されており、年に1回の試験で1万人前後の受験者で合格率は13~15%程です。
この合格率は公認会計士や税理士の資格の合格率と同じ水準であり、取得難易度の高い資格だといえます。
PM試験は午前と午後の2部制で、事前に応用情報技術者試験などの資格を取得しておくと2年間午前の試験が免除となるのです。
そうした状況によっても学習時間は差がありますが、一般的には半年~1年程の期間を見込んでおく必要があります。
PMの試験では知識を問うだけでなく、長文の小論文の試験が組み込まれていることも取得の難易度を上げる要因のようです。
P2M
P2Mの資格は4つの試験に分かれており、それぞれの試験によって難易度が大きく異なるので合格率にも差があります。
基礎レベルとなるPMCの資格であれば合格率は高く、6~7割程が合格しているようです。
PMSの前段階となるPMSプログラム試験も比較的高い合格率で同じく6~7割程が合格しています。
PMS資格試験となると合格率が下がり、だいたい5割程の合格率です。
最難関であるPMRの試験では難易度が高い上に受験資格として実務経験が必要なため応募者数が他の資格よりも激減します。
実施回の応募人数でも差がありますが、実務経験者のみが受験しているため合格率自体は高くなっているようです。
P2M資格では過去問などがほとんどなく、勉強する手段としては協会が発行しているガイドブックのみになります。
独学以外には協会の認定機関が実施しているインターネットでの通信講座でも学習可能です。
この通信講座が設定している目安の学習時間は各試験ともに3ヶ月となっています。
ただし、PMR資格に関しては通信講座が用意されていません。
実務経験も必要となる資格なので段階的に学んでいき経験を積んでから取得を目指したほうが良いでしょう。
・PMの合格率は約13~15%で学習期間は半年~1年が目安
・P2Mは合格率が約5~7割で学習期間は3ヶ月が目安、ただしPMRは例外となる
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
出題形式や出題内容は?
次に、それぞれの試験の出題形式や出題内容について解説していきます。
PMP
PMP試験は200問の試験となっており、試験時間は4時間です。
200問のうち25問は合否に関係ないダミー問題となっており、次回以降の試験の参考にしている問題となっています。
ダミー問題は各項目にまんべんなく配置されており当然受験者からは分かりません。
結果的にすべての問題に取り組む必要があるので、試験時間は4時間ありますが1問にかけられる時間は1分程です。
出題形式はコンピューターを使った4択問題であるため、解答自体は選択するだけで答えられスムーズに進められるでしょう。
しかし、設問の中には計算問題なども含まれているので時間配分をうまく使えないとすべて解答するのが難しくなります。
PM
PM試験は午前中がマークシート形式の出題で50分と40分の計90分の試験時間となっています。
午後の試験は90分の記述式の出題と、120分の小論文の試験です。
午前の試験ではセキュリティやソフトウェア開発管理技術などの分野から択一式の形式で出題されます。
関連する参考書や過去問も多く出版されているので、繰り返して学習することで安定して得点することが可能でしょう。
午後の記述式の問題も出題範囲としては午前と同様の分野から出題されます。
解答が記述式となるため、知識の暗記だけでなく用語の意味や使われ方を考え文章を作る応用力が試されるのです。
さらには、小論文の出題では設問に関しての知識を備えた上で規定の文字数で自分の主張を組み立てる必要があります。
小論文では規定文字数に対して少なすぎても多くなってもいけないので、文章力の技術も必要です。
苦手な場合はテーマに対して時間内で文章を書きあげる練習を反復して行いましょう。
P2M
P2M資格の中で、PMC資格試験は50問の4択問題で出題されます。
P2Mの中でも一番基礎的な資格となるため、出題範囲も概要とプロジェクトマネジメントの基礎部分からの出題が70%です。
PMSプラグラム試験は同様に50問の4択問題で、出題範囲はPMCよりも若干多く戦略策定や会計分野などからも出題されます。
そして上位の資格試験であるPMS資格試験は、PMCとPMSプラグラム試験を複合させた出題範囲です。
出題形式は同様に4択問題ではあるものの、出題数が倍の100問に増えています。
PMCとPMSプログラム試験の両範囲を並行して学習し知識量に自信があれば、段階を踏まずこのPMS資格試験を受けることも可能です。
最難関のPMR資格試験は1次試験と2次試験で分かれており、後日行われる2次試験には1次試験を通過しなければ進めません。
1次試験では経験と実績論文をもとに行われる書類審査、4つの課題について記述を行う論述問題、さらに面談審査も行われます。
2次試験では、モジュール試験と呼ばれる論述とグループ討議をセットで行うプロジェクトマネジメントの実践的な試験です。
1モジュールを150分で行い複数日に分けて数回繰り返して行われ、モジュール試験終了後に面談が行われます。
PMR試験では他の試験とはまったく形式が異なるので、学習方法も参考書や問題集中心に行うわけにはいきません。
仕事でマネジメントの計画書をまとめるのと同様に論文を作る力やグループ討議のスキルなど、実践的な能力が試される試験です。
PMにおすすめな資格はPMPの取得
プロジェクトマネージャーの資格はいろいろとありますが、中でも特に有効なものはPMPの資格です。
その理由について解説していきましょう。
国際的な資格として有効
PMPの資格は米国に本部を置くPMIが認定している国際資格です。
そのため、取得できれば日本だけでなく世界中で通用するスキルとなります。
日本ではまだそれほど認知度は高くありませんが、海外では広く知られている資格です。
外資系企業の中でもPMPの資格を重要視している企業は多く、この資格をポストに就く条件に設定している企業もあります。
毎日試験が開催されている
PMPの試験はほぼ毎日実施されています。
日本でも全国各地のテストセンターでCBTを使っていつでも受験することができます。
他の資格の場合ではほとんど年に数回しか受験のチャンスがないので、失敗すると次の機会までまたなければなりません。
一度学習しても常に知識を覚えているとは限らないので、次の試験の前にはまた学習する必要もあるでしょう。
仕事をしながら取得を目指すと学習時間の確保も難しいため、自分の都合でいつでも受けられるのは大きなメリットとなります。
業務全般の知識が得られる
PMPの資格を取得するとプロジェクトマネジメントの体系的な知識を身に付けることができます。
それまで独学でマネジメントを行っていた場合でも新たな知識を取り入れることで、仕事効率を上げることもできるでしょう。
また、同じスキルを持つ相手と共通言語を増やすことにもつながるので人脈を広げることにも役立つのです。
そうした知識をチームに共有することによって、チームでの作業効率も上げられプロジェクトの成功へとつながっていきます。
PMに関係する資格の勉強方法
プロジェクトマネジメントの勉強方法には大きく分けて2つあります。
- 参考書などを使った独学
- 通信講座・通学講座
まずは、関連するガイドブックや参考書をもとに独学で勉強する方法です。
多くの場合、資格試験を主催する協会などから公式のガイドブックなどが発行されていて、その範囲から出題されます。
資格によっては過去問などの問題集も用意されていることもあるので、実際の試験の内容を確認することもできるでしょう。
次に、インターネットを使った通信講座や通学講座で学ぶ方法です。
これも試験を主催する協会などが、通信講座などを設けており出題範囲となるガイドブックの内容を詳しく解説しています。
独学で学ぶより高額になりますが、項目のポイントなどを講師が解説を行うので活字だけで学ぶよりも理解が深まるでしょう。
ITコンサルティングスキルを証明する資格も価値がある
プロジェクトマネジメントの中でも主にIT戦略に特化したITコンサルティングのスキルを取得するのも効果的です。
実際の業務範囲がITに関連する範囲が多い場合には、ITコンサルタントに優位性のある資格を取得したほうが良いでしょう。
プロジェクトマネジャー同様にITコンサルタントになるのに資格は必要ありません。
しかし、ITコンサルタントのスキルを客観的に証明できる資格があるとクライアントからも信頼を得られやすくなるでしょう。
プロジェクトマネジメント同様にITコンサルタント関連でもさまざまな資格が用意されています。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ITコンサルティングスキルを証明する資格
ITコンサルティングスキルを証明する資格として代表的な2つをご紹介します。
ITストラテジスト試験
ITストラテジスト試験はITを活用し経営戦略を実現するスキルを身に付ける資格です。
主にIT分野での作業効率化やコスト削減の方法などを、高度な専門知識を使って解決していく内容が中心となります。
この試験はプロジェクトマネージャー試験と同じ情報処理推進機構が主催する情報処理技術者試験の1つです。
試験内容は、コンピュータシステムなどのテクノロジー関連から経営戦略やシステム戦略など幅広い分野から出題されます。
試験日程は年1回で合格率は約15%となっており、年齢や学歴に関係なく誰でも受けられる資格です。
ITコーディネータ試験
ITコーディネータ試験は企業のIT化をサポートする専門的なアドバイザーの知識やスキルを証明する資格です。
この資格はNPO法人のITコーディネータ協会が主催するITコーディネータ試験に合格し、ケース研修を修了すると取得できます。
これは経済産業省が推進する資格で、経営に役立つITサービスをサポートする人材を育成する目的で実施されている資格です。
出題範囲はIT全般の知識やフレームワークなどのマネジメント分野、SaaSなどのソリューション技術などの知識が問われます。
年3回実施され合格率は約60~70%となっており、出題範囲を一通り学習できれば取得のハードルはあまり高くありません。
この資格もITストラテジスト試験同様に年齢、学歴などに条件はなく誰でも受験可能です。
PMへの転職はエージェントへの相談がおすすめ
プロジェクトマネージャーは専門知識に加え、実務の経験も重要となる職種です。
資格取得を行う際にも、難関資格の場合知識だけでなくマネジメントについての長期に渡る実績を提出する必要があります。
それだけ取得難易度の高い資格になるほど、転職においても大きなアドバンテージとなるでしょう。
しかし、資格を取得できれば必ず転職が成功するとは限りません。
自分が希望する働き方ができる企業を見つけられなければ、資格の効果を発揮できない可能性もあります。
転職で悩みがある場合やさらなる情報を求める場合には、転職エージェントに相談することがおすすめです。
転職エージェントは幅広い業界の知識を持ち、一般に公開されている以上の非公開情報を持っている場合もあります。
また、独自ルートの非公開求人を紹介してもらえる可能性もあるので、転職先企業の選択肢を増やすこともできるでしょう。
まとめ
企業のプロジェクトを進める上でその方向性を示す役割を担うプロジェクトマネージャーは重要なポジションです。
さまざまな経営資源や目標となる成果物の情報などを考慮し、スムーズにプロジェクトを進めるには専門知識が必要となります。
実際の業務を進めていると、予期せぬトラブルなどに見舞われることもありその都度的確に指示を出し修正することも重要です。
そのため、知識だけでなく実務の経験も多く積まなければ優れたプロジェクトマネージャーになることは難しいでしょう。
知識と実務の経験を積んだ状態となれば、PMPなどの国際的にも認められている資格も取得することができます。
しかし、転職においては資格の取得がゴールではなく、自分のスキルを効果的に使える転職先企業を選定しなければなりません。
転職に不安や悩みがあれば転職エージェントに相談し、多くの情報を得た上で万全の状態で転職活動に臨みましょう。