ZMOTとは消費者が商品やサービスの購買する意思決定をする瞬間のメンタルモデルのことです。
英語でZero Moment of Truthと訳されます。
インターネットが普及し、消費者は店頭に行って商品を決めるのではなくあらかじめSNSや口コミから情報収集し購入する商品を決めるのです。
関連するモデルとしてFMOT・SMOT・TMOTなどもあります。
今回はZMOTを駆使したマーケティングを解説します。
目次
ZMOTの考え方と登場背景
ZMOTは2011年Googleが提唱したマーケティングモデルです。
Googleはインターネットの普及が消費者の行動に大きな影響を及ぼしていると分析し、新たな消費行動のモデルを提唱したのです。
消費者が情報収集で注目する点は以下の通りです。
- 購入するメリット
- どのメーカーの商品が一番売れているか
- 他のブランドと比べて優れている点
- ユーザーの口コミ
こうした情報を参考にして消費者はほぼ事前に購入する商品を決定しているのです。
商品を絞り込んだ消費者は店頭で他の商品を進められても購入しない可能性が高くなります。
つまり店舗販売の売上げが減少することにつながるのです。
それではZMOTの考え方と登場した背景について解説していきます。
MOTの登場
Moment of Truth(真実の瞬間)は1990年代に提唱されたマーケティングの概念です。
当時、スカンジナビア航空のCEOだったJan Carlzonが提唱したものです。
スカンジナビア航空のスタッフが顧客に対応する平均時間が約15秒でした。
その15秒の体験で顧客が航空会社のサービスの質を判断するという経験から生まれた考えです。
この時代のマーケティング戦略は売り手優先であり、広告をすれば売り上げが伸びていました。
消費者はマスマーケティングしか受け入れる術がなかった時代です。
MOTとは消費者が商品やサービスのクオリティを判断する瞬間のことです。
例えば顧客からクレームが来たとします。
MOTの考え方は、その顧客はまた次回も来るかもしれないし、もう二度と来ないかもしれない。
その決定の瞬間と捉えます。
些細なことであってもそれを見落とすことで企業のイメージが損なわれるリスクがあるということです。
FMOT・SMOTの登場
次に登場したのが米国P&GのCEOだったAlan G.Lafleyが2005年に提唱したFMOT・SMOTです。
FMOT(First Moment of Truth)とは、買い手は店頭で目的の商品が陳列されている商品を見てから3秒から7秒で意思決定するという考え方です。
SMOT(Second Moment of Truth)とは、消費者が商品を使用した体験を通してその良し悪しを判断し、リピートするか決める瞬間のことを指します。
FMOTは第1の瞬間であり購入するかどうかの瞬間を指します。
一方、SMOTは第2の瞬間であり商品を購入後使う瞬間ということです。
Lafleyは消費者と接点が持てる店頭こそ生の声を聞いてブランドの付加価値を提供できると考えていました。
Lafleyによると、店頭こそが最も重要なプロモーションの場であったのです。
ZMOTの登場
Googleが新しいZMOTというMoment of Truthを2011年に提唱しました。
時は流れ、消費者は店頭に出向く前に欲しい商品をネットで検索し情報収集してオンラインで商品に接触するのが普通になりました。
当時のある調査によるとアジアの女性の78%が商品を購入する前に情報収集しているそうです。
ZMOTの情報源には次のようなものがあります。
- Google・Yahoo!などの検索エンジン
- 家族や友人からの情報
- 商品の公式サイト
- 商品のレビュー
- SNSの「いいね!」やフォローすることで届く情報
多くの消費者は商品を検索して対象商品の情報だけでなく、似たような商品と比較検討するのが当たり前になっています。
さらに、購入した消費者の4人に1人が口コミに投稿するといわれています。
このようにマーケティングをする際に、SNSがいかに戦略に影響を及ぼすか理解いただけるのではないでしょうか。
TMOTの登場
メンタルモデルで近年提唱されたものにTMOT(Third Moment of Truth)があります。
これは消費者が購入した商品やサービスのリピーターになり、使い続けているうちに愛着が出てファンになる瞬間を指します。
この段階になるとユーザーは商品のファンになり自らSNSを通して周囲にプロモーションする瞬間を迎えるのです。
ファンたちのコミュニティができ情報交換も盛んに行われ、企業が主導しなくても情報を拡散してくれるフォロワーがどんどん登場します。
実はこれこそが企業が望む商品のプロモーションの形といえるのです。
MOTのサイクルで捉える消費行動
MOTのサイクルを整理しておきましょう。
- ZMOT:ネットで気になる商品を検索してから購入するか決める
- FMOT:店頭で陳列された商品を見て検討する
- SMOT:再購入するか判断する
- TMOT:リピーターになる
企業はMOTのサイクルを理解し商品のマーケティングやプロモーションを企画する際の参考にすれば成功への近道になるでしょう。
マーケティング戦略の事例はこちら
ZMOTが重要である理由
GoogleによるとMOTのサイクルの中で、どの段階で得た情報源によって商品の購入を決めたかを調査したところ、ZMOTが84%に上りました。
アメリカでは70%の製品購入者がネットのある口コミをチェックしていると回答しています。
さらに消費者の79%が買い物はスマホを利用しているとそうです。
GoogleのアンケートでもZMOTで最も利用されている情報ソースが検索エンジンとなっているのです。
企業はZMOTの段階でいかに消費者の検索に留まるかが重要になっているといえます。
つまりSEO対策の良し悪しが商品の売上に大きく左右するということになるのです。
近年ZMOTがクローズアップされFMOTの効果が薄らいできていると指摘されています。
消費者は事前にネットで情報を入手して何を購入するかほぼ決定しているのです。
店頭でその意思を覆すのは非常に困難といえるでしょう。
しかも検索してそのままオンラインで商品購入すれば来店さえ難しくなるのです。
ZMOTモデルのポイント
消費者は検索エンジンを使って事前に情報収集を行い、商品を購入するかどうか判断しています。
そこにはスマホの普及が大きく影響しているのです。
そしてSNSが普及し情報収集はより活発になっています。
ZMOTモデルのポイントを解説していきます。
ZMOT段階の情報収集手段
ZMOT段階で消費者はどのようにして商品の情報を収集しているのでしょうか。
Googleの調査では検索エンジンで最も利用されているのはGoogleとYahoo!の検索エンジンです。
企業はこうした検索エンジンで潜在的な顧客も含めていかに商品の魅力をアピールできるかが重要になります。
その他には友達や家族からの情報、口コミ、オンラインの評価や企業のホームページなどもあります。
消費者は平均して10.4件の情報を事前に入手しているといわれています。
これはZMOTがどれほど重要なメンタルモデルであるか示しているのです。
消費者が購入前に入手できる情報は増加しています。
企業はその中で一番注目を集めるマーケティング戦略を施す必要があるのです。
ZMOTでの消費者の着眼点
ZMOTでは消費者が利用するのは検索エンジンです。
気になる商品があれば消費者は手っ取り早く商品の情報を検索します。
例えば消費者が一番参考にしたいのは購入者の口コミです。
Facebook、X(旧Twitter)、ブログやYouTubeなど幅広く情報を収集して自分に必要な消費かどうか判断します。
もちろん企業が提供する情報も参考にします。
しかし、バイアスがかかっていないユーザーの声は購入を考えている人には説得力があるのです。
また、消費者が商品を検索する際にチェックする項目は以下の点です。
- できるだけ安く購入する
- 時間をかけないで購入できる
- 自分の欲求を満足させられるか
消費者はこれらの条件が満たされれば購入の決断をします。
マーケティング戦略ではいかに消費者の悩みや不安に的確な回答が提示できるかです。
そのためには実際に購入した消費者の声は重要なのです。
情報収集のタイミング・情報量
消費者が情報収集するのはタイミングがあります。
特に高価な商品であればあるほど早い時期から時間をかけて情報を集める傾向が強くなるのです。
一方で消費財や食品類は購入直前に検索して素早く情報を集める傾向があります。
つまり企業側はどのような商品を販売するかによって、消費者が求めるニーズに応えるコンテンツを発信することが欠かせません。
ZMOTが登場して消費者が触れる情報量は平均10.4件、ここにコンテンツマーケティングが必要だといわれる理由があるのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ZMOTが起こした変化
インターネットの急速な普及で従来型のメンタルモデルは一変してしまいました。
これまで長く考えられていたFMOTの前にZMOTというステップが新たに加わったのです。
消費者は商品を購入したい時は店頭に足を運び、陳列された商品を手に取り確かめて購入していました。
ところがZMOTがその前に加わることで店頭に消費者の行動が大きく変わりました。
消費者が店頭に来る前に、自社の商品をいかに認知させ関心を持たせられるかが企業にとって重要になってきたのです。
ZMOTの生活上の事例
ZMOTが絡む生活上の事例はいくらでもあるのです。
多くの人は特に意識することなく誰もがネットで情報収集してZMOTを実践しているのではないでしょうか。
例えば街中で近く開催されるイベントのポスターが貼ってあります。
チケットはポスターに記載されてあるプレイガイドで購入できます。
しかし、詳しいイベントの内容はポスターには記載されていません。
そこでスマホでどのようなイベントで、会場はどんな雰囲気かなどを検索してみました。
チケットを申し込む前に概要を見てから購入するかどうか決定したいからです。
これは街で見かけたポスターが刺激になりZMOTが行われた一例です。
ここに消費者の意思決定の瞬間が見えます。
スマホさえあればどこにいても情報検索は可能で意思決定の時間もかかりません。
ZMOTはこのように日常生活の中にいくらでもあるのです。
ZMOTでの成功事例
それでは企業が行う実際のマーケティングの手法から消費者行動について見ていきましょう。
2つの企業のZMOTの成功例です。
ワークマン
今では若者から高齢者まで普段着にもできると人気のワークマンですが、その昔は作業着のイメージしかありませんでした。
ところが2018年に立ち上げた「workman plus」では対象商品を一新しました。
一般客向けの低価格で実用性のあるデザインを意識したものに変更したのです。
店内もこれまでとは違ったカジュアルなファストファッションを意識した店づくりにしました。
その第一号店は多くの若者やファミリー層も訪れるららぽーと立川立飛店でした。
オープン初日から大勢の人が訪れ入場制限が出るほどの盛況ぶりに店側も驚いたそうです。
実はこのブームにはSNSが大きな影響を与えていたのです。
あるユーザーがワークマンの商品を着ているスナップショットを掲載しました。
それが今までの作業着というイメージを覆し、安価でおしゃれで普段着として最適な商品だったのです。
他にも厨房向けに作られた滑りにくい靴が妊婦の間で人気になりました。
また作業として開発されたレインスーツがバイクユーザーの間で人気になるなどそのインパクトは予想外だったのです。
こうしたSNSの投稿が刺激になりZMOT、さらにTMOTへと繋がって行ったのです。
H&M
続いてはファストファッションで有名なH&Mの成功例を見ていきましょう。
ファストファッションが乱立する中でH&M JAPANは2019年4月に会員プログラムを変更しました。
H&Mのファン層を広げるのが目的でした。
その手段として海外で行われるファッションショーにファンを送り出し、現地での様子をSNSで発信してもらうのです。
一般人が感じたその場の雰囲気や感想がSNSで発信され多くの人に共感を与えました。
有名人ではなく一般人の目線で感じたままの思いが発信されるため思わぬ反響があったのです。
それを見て新たな消費者がファンになるというZMOTとTMOTの構造が見てとれます。
マーケティング戦略の事例はこちら
ZMOTを意識したマーケティング
ZMOTは消費者の購買行動にとって欠かせないモデルとなりました。
ネット社会が進む現代において、商品やサービスを広く消費者に認知してもらうためには、レビューや口コミが重要です。
ZMOTを意識したマーケティングについて解説していきます。
ユーザーファーストな情報発信
消費者が情報収集する場がネット中心になっている現代では消費者自らが発信するレビューや口コミが意思決定に多大な影響力を持ちます。
それを企業がコントロールするのは難しいといえるでしょう。
企業は自社サイトやSNSの公式アカウントでいかにユーザーファーストな情報を発信できるかが重要なのです。
誰かに共有したくなるコンテンツ
消費者の中にはSNSを見て共感を覚えたらその情報を拡散する人もいます。
企業はそうした誰かに共有したいと思えるようなコンテンツマーケティングすることが欠かせません。
企業は競合他社の分析、消費者のユーザーが利用するSNSで消費者の本音を探る「ソーシャルリスニング」が必要なのです。
消費者の課題を解決できるコンテンツを配信できれば、消費者自らが拡散して商品の認知度も向上します。
その結果ZMOTからTMOTへと繋がるのです。
顧客のニーズや消費プロセスの分析
消費者の検索行動の刺激を喚起するためには、ニーズを知ることが重要になります。
消費者の刺激はSNSでの友人との会話や口コミ、レビューがもとになるのです。
どういう情報を配信すれば刺激となり検索行動を誘発するのか企業は分析しなければなりません。
消費者の意思決定プロセスを分析し、消費者の購買パターンを検証することが効果的なアプローチになるのです。
自社サイトの客観的な評価の把握
消費者の目線で自社サイトの実力を客観的に評価することは、企業にとって集客を向上させる上で重要です。
課題や改善点に優先順位を見つけて一つ一つ解決・検証を重ねることで消費者に共感を与えられる情報が発信できます。
例えばアクセスのしやすさ、画像・フォント・イラストの見やすさ、使いやすさなど企業側の視点ではなくあくまで消費者の視点で評価すべきです。
Googleアナリティクスなどツールを利用してアクセス解析をするのも有効な手段です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ZMOTではSEOが重要
ZMOTで何よりも重要なポイントはSEO対策です。
アルゴリズムによって表示順位が決まるため正解を導き出すのは難しいです。
しかし、自社のサイトがSEO対策を適切にしているか評価することは大切といえるでしょう。
SEO対策を客観的に評価するならGoogleサーチコンソールなどの解析ツールもおすすめです。
SEO対策のポイントはこちらです。
- 消費者の検索キーワードを意識する
- キーワードから消費者は何を知りたいのか想像する
- 消費者を満足させられるコンテンツを盛り込む
マーケティング戦略の事例はこちら
ZMOTの戦略で悩んだらプロに相談しよう
ZMOTでは何らかの刺激を受け興味を持った消費者が店舗へ足を運ぶ前にインターネットで情報収集し意思決定します。
実質的な意思決定になるため店舗でその意識を変えさせることは難しいといえます。
つまりZMOTでいかに消費者のニーズに沿った情報を配信できるかがポイントなのです。
そのためにはさまざまツールによる分析やSEO対策など課題は数多くあります。
ZMOTの戦略に悩んだらデジマクラスに相談してみてはいかがでしょうか。
それぞれの企業に最適なZMOT戦略プランを提供できるノウハウと経験がデジマクラスにはあります。
企業にとって最適な戦略を立案・運用に至るまで全面的なサポートをします。
まとめ
消費者の購買行動のメンタルモデルとしてZMOTを取り上げました。
現代社会ではいかにインターネットでの口コミやレビューが消費者に影響を与えているか認識できたでしょう。
ZMOT戦略をすることで新たな顧客獲得もできてTMOTの層を厚くすることが可能です。
ぜひ自社のマーケティング戦略にZMOTを取り入れてみてはいかがでしょうか。