スイッチングコストは自社の顧客を奪われにくくするだけでなく、他社の顧客を奪うためにも重要なコストです。

そのため、マーケティングにおいてスイッチングコストの概念を理解することは非常に大事なことといえます。

そこでこの記事では、スイッチングコストの具体例やスイッチングコストを意識したマーケティングの重要なポイントについて解説します。

スイッチングコストはマーケティングにおいて重要な要素!

まとめ

スイッチングコストとは、顧客がある製品やサービスから別の製品やサービスに切り替える際に発生するコストのことを指します。

これには、金銭的コストだけでなく、時間や労力などの物理的コストや新しい製品やサービスに馴染むまでのストレスといった心理的コストもあります。

マーケティングにおいて、スイッチングコストの概念は非常に重要です。

スイッチングコストが高いほど顧客が他社に移るのをためらう可能性が高くなるため、顧客が離れにくくなり、価格競争に巻き込まれにくくなります。

そのため、スイッチングコストを理解し、それに対応したマーケティングを行うことは顧客維持に非常に重要な要素となります。

スイッチングコストを意識しやすい具体例

OKポーズ

スイッチングコストを具体的に理解するためには、日常生活の中からいくつかの例を挙げて考えてみると良いでしょう。

ここでは、皆さんにもスマートフォン・PCソフト・賃貸物件・医療機関の4つの事例をもとに、スイッチングコストについて紹介します。

スマートフォンの買い替え

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スマートフォンを買い替える際にもスイッチングコストが存在しています。

新しいスマートフォンに機種変更した際、新しい機種の操作方法を覚えるために時間や労力が必要になります。

あるいは、新たにアプリを入れなおさなければなりません。

これは物理的なスイッチングコストといいます。

また、iPhoneが好きなのに他の企業のスマートフォンを使う場合、そのスマートフォンを使うときに嫌な気持ちになります。

これが心理的なスイッチグコストです。

最後に、iPhoneからAndoroidのスマートフォンに乗り換えた場合には、これまでiPhoneで使用していたアプリが使えなくなってしまいます。

特に有料のアプリを使用していた場合、Andoroidでもう一度同じアプリを使うためには、またそのアプリを買い直さなければなりません。

こうした商品をスイッチすることによって生じる追加の費用は金銭的なスイッチングコストといいます。

パソコン用ソフト

特定のパソコンソフトウェアから別のソフトウェアに変更する際も、スマートフォンと同様に心理的・物理的・金銭的スイッチングコストが必要です。

新しいソフトウェアに慣れるまでに時間と労力がかかります。また、新しいソフトウェアの購入費用といった金銭的な負担も発生します。

これらの時間・労力・金銭的な負担が他のパソコン用ソフトへの変更をためらわせる理由にもなるのです。

居住用賃貸物件

引っ越しもスイッチングコストを考えなければなりません。

住居を変えるということは、家賃や引っ越し費用などの金銭的なスイッチングコストだけではありません。

新しい環境に慣れる時間や家具の配置をやり直さなければならなくなるなど物理的な負担も伴います。

これらが引っ越しに伴うスイッチングコストとなります。

また、その土地で人間関係を築いていた場合、仲の良い人たちと会えなくなることが嫌だなどの心理的なスイッチングコストも無視できません。

これらが組み合わさることで、引っ越しをためらう大きな要因となります。

住めば都という言葉は一度その場所に住んでしまうとスイッチングコストが発生して、他の場所に移りにくくなるという意味だとも解釈できます。

医療機関

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医療機関の選択もまた、スイッチングコストが大きな影響を及ぼす一例です。

特に慢性的な病気を抱えている人の場合、医療機関を変更することは医師との信頼関係の断絶や、治療方針の変更など大きな心理的ストレスを伴います。

また、新しい医療機関への通院ルートやスケジュールの確保など、新たな医療機関に慣れるまでの時間や労力が必要となるというコストも発生します。

このように新たな医療機関に変更することで追加的に発生してしまうこれらの費用がスイッチングコストです。

スイッチングコストを構成する3つの費用

では、スイッチングコストにはどのようなタイプがあるのでしょうか。

スイッチングコストをより理解するためには、スイッチングコストにはどのようなタイプがあるのかを理解することが欠かせません。

そこで、ここでは金銭的・物理的・心理的という3つのスイッチングコストの要素について詳しく解説をしていきます。

金銭的コスト

この金銭的コストは、文字通り新たな製品やサービスに切り替える際に発生する金銭的な出費を指します。

例えば、新しいスマートフォンを購入するときの購入費用は金銭的なスイッチングコストです。

また、新しいソフトウェアのライセンス料も金銭的コストに含まれます。

金銭的コストは直接的で分かりやすいため、消費者が最も意識しやすいスイッチングコストの形態でしょう。

物理的コスト

物理的コストは、新製品やサービスへの切り替えに際して、直接的な労力や時間が必要となる場合に発生するコストです。

例えば、居住用賃貸物件を引っ越す際には、物件の選択から契約や引っ越しをするまでに多くの手間暇がかかります。

また、PCなどのキーボードはQWERTY配列といわれていますが、この配列は文字入力においては非合理的な配置であることが知られています。

タイプライターの時代では早すぎるスピードでタイピングしてしまうと、タイプライターがその速度に付いてこられず、故障してしまいました。

そのため、わざとタイピングスピードが抑えられるよう非合理的な配置になったといわれています。

PCの時代になってタイピングの速さによってPCが故障する心配はなくなりましたが、世の中の人がすでにQWERTY配列に慣れてしまっていました。

その結果、非合理的なQWERTY配列が今もなお根強く残り続けています。

このように新たな商品・サービスへの変更に伴って生じる時間と労力が物理的なスイッチングコストです。

この物理的コストは具体的な金額として表現することが難しく、時には消費者自身がその存在を認識しにくいものでもあります。

そのため、スイッチングコストの評価を難しくする要素です。

心理的コスト

心理的コストは、新たな製品やサービスへの移行が心理的な負担を伴う場合に発生するコストです

この負担には、新しい操作方法を覚える不安や、新たな環境に適応するストレスなどが含まれます。

例えば、スマートフォンやパソコン用ソフトの切り替えは、新たな操作システムへの適応が必要となり、これは心理的なストレスを生じさせます。

こうした心理的なスイッチングコストもまた商品やサービスを切り替えるのを躊躇させる理由です。

 

ワンポイント
スイッチングコストには金銭的・物理的・心理的なスイッチングコストがあることを理解しよう!

スイッチングコストの高低と顧客心理の関係

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スイッチングコストは、その高低によって顧客の行動パターンや心理に大きく変わります

この影響は既存顧客と新規顧客で異なるため、それぞれの視点からスイッチングコストと顧客心理の関連性を見ていきましょう。

既存顧客の心理

コンサルタント

既存の顧客は、スイッチングコストが高いと感じる場合にその製品やサービスを継続して使用しやすい傾向にあります。

なぜなら、新しい製品やサービスへの切り替えは、金銭的・物理的・心理的なスイッチングコストを伴うからです。

そのため、企業はスイッチングコストを高く保つことで、既存顧客のロイヤリティを維持することが可能になります。

しかし、スイッチングコストが高すぎると顧客は囲い込みに感じ、ネガティブな感情を抱く可能性もあります。

そのため、スイッチングコストは高ければ高いほどよいというわけではなく、適切な水準に保つことが重要です。

他者からの切り替えを検討している顧客の心理

考える

他社からの切り替えを検討している新規の顧客は、スイッチングコストが高いとその製品やサービスに乗り換えることをためらいます。

新しい製品やサービスに切り替えることはリスクと見なされ、そのリスクを避けるために現状維持の選択をすることが一般的です。

したがって、他社から新規顧客を引きつけるためには、その潜在的な顧客が感じるスイッチングコストをできるだけ低くする必要があります。

例えば、Webサービスであれば競合となるサービスとページのレイアウトを似通ったものにすることもスイッチングコストを下げることに繋がります。

競合サービスで慣れ親しんだ購買行動をそのまま自社のWebサービスでも利用でき、自社サービスに慣れるまでの時間と労力を下げられるからです。

また、Amazon Payなどを用いることで、氏名・住所・支払い情報などの入力の手間を省くことも物理的なスイッチングコストを低下させられます。

こうしたスイッチングコストを下げる取り組みによって、潜在的な顧客の獲得に繋がります。

 

ワンポイント
既存顧客のスイッチングコストは高く、潜在的な顧客はスイッチングコストを低くなるように工夫しましょう

自社サービスのスイッチングコストを確認

グラフをもとに会議する人たち

自社サービスのスイッチングコストを確認することは、顧客の行動を予測し、マーケティング戦略を策定するために重要なステップです。

ここではスイッチングコストを確認するための方法として、競合他社との比較やコンテンツ内容の精査について詳しく解説をしていきましょう。

競合他社と比較する

スイッチングコストを確認するためには自社のサービスを分析するだけでなく、競合他社のサービスとの比較を行うことも重要です。

競合他社のサービスを詳細に調査することで、それぞれのサービスで顧客がどの程度のスイッチングコストを感じるのかを把握できます。

それによって、潜在的な顧客がどれだけ自社サービスにスイッチしやすいのかをより正確に理解することが可能となります。

コンテンツの内容と見合っているか

次に、自社が提供するサービスのコンテンツがそのスイッチングコストと見合っているか確認することも重要です。

例えば、金銭的・物理的・心理的なスイッチングコストを負担してでも自社のサービスに乗り換えてくれるほど魅力的なコンテンツになっているのか。

こうした点などを確認するようにしましょう。

このように顧客の視点に立って自社サービスを見直すことで、改善の方向性を見つけていくことにも繋がります。

 

ワンポイント
自社のスイッチングコストを確認するためには、他社サービスとの比較とコンテンツの価値をチェックしましょう

スイッチングコストを意識したマーケティングとは

悩むビジネスマン

スイッチングコストを意識したマーケティングとは、顧客がサービスや製品の変更に対して感じる損失や負担を考慮に入れたマーケティング戦略です。

この戦略では、他社サービスから自社サービスへのスイッチングコストを下げることで新規顧客の獲得の促進を目指します。

また、それと同時に自社から他社サービスへのスイッチングコストを上げることで既存顧客の維持を狙います。

そのため、新規顧客の獲得のためには、初期費用を下げるなどの戦略を通じてスイッチングコストを下げることを考えましょう。

一方、既存顧客の維持には、スイッチングコストを上げる戦略が必要です。

会員特典の提供やポイントシステムの導入など、顧客が長く自社サービスを利用し続けることで得られる価値を高めることなどが重要な方針となります。

このように、スイッチングコストを意識したマーケティングでは、顧客の視点に立ってサービスの移行に伴う負担を詳細に理解しましょう。

 

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値段だけでスイッチングコストを認識するのは間違い

注意

スイッチングコストを考える際に、自社や他社のサービスの価格だけを考慮するのは間違いです。

スイッチングコストには、物理的な手間や心理的なストレスも含まれています。

そのため、値段だけでスイッチングコストが低いと考えていると、見落としが生じてしまいます。

例えば、顧客が他社製品への変更を検討しており、その他社製品が自社製品よりも若干安価である場合を考えてみましょう。

この場合、金銭的なスイッチングコストのみを考えていると、スイッチングコストは低いと捉えられます。

しかしながら、実は自社サービスと他社サービスではユーザーインターフェースや機能などの面で大きく異なっているとしたら、どうなるでしょうか。

この場合、新しい製品の操作方法を覚えるための時間や労力がかかるため、実はスイッチングコストは高いと顧客は考えているかもしれません。

また、金銭的なスイッチングコストのみを考えていた場合、自社製品の価格を下げなければならないと考えてしまいがちです。

しかしながら、物理的・心理的なスイッチングコストまで考えると自社の顧客が他社製品にスイッチすることは容易ではない場合があります。

その場合、価格を下げる必要はないでしょう。

このようにスイッチングコストを考慮したマーケティング戦略では、金銭的なコストだけでなく、時間的・心理的なコストも考えることが重要です。

 

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スイッチングコスト戦略の例

発想

スイッチングコストを活用した戦略は多岐にわたります。

そうした多岐にわたるスイッチングコストをより理解するために、ここでは具体的な例を4つ挙げて説明します。

自社サービスの宣伝・情報開示

自社サービスの宣伝や情報開示もスイッチングコストを変える力を持っているマーケテイング施策です。

自社のサービスが顧客にとってどのような価値を提供するのかかを詳細に伝えることは、顧客が自社サービスを続ける動機付けになります。

また、新機能の導入やサービスの改善点などの自社サービスのメリットを随時伝えることも有効でしょう。

それによって、競合他社の顧客は自社への切り替えに対する心理的負担を感じる可能性が低くなります。

競合他社サービスとの差別化

競合他社のサービスと差別化を行うこともスイッチングコストを高める方法です。

競合他社のサービスと差別化は、自社の顧客が他社商品にスイッチすると諦めなければならない機能やブランドがあることを意味しています。

そのため、自社だけの特徴的なサービス・独自の機能・品質の高さなどを強調することが有効でしょう。

それによって、自社の顧客が他社にスイッチした際にそれらのサービスを失うことを理解するからです。

このスイッチすることで失われるサービスがあることが、スイッチングコストになります。

このように自社サービスの差別化を行うことで、顧客が他社に移行する際のスイッチングコストを高めることができます。

購入前のサポート

顧客が製品やサービスを購入する前に、その商品・サービスの使用方法や使用することのメリットなど、具体的な情報を提供することも効果的です。

購入前の十分なサポートにより、顧客は自社の製品やサービスへの信頼感を高め、他社への切り替えを考えることが少なくなります。

購入後のアフターサービス

購入後のアフターサービスは、顧客ロイヤルティを高め、他社への切り替えを防ぐ重要な要素です。

購入後の問題解決サポート・製品のメンテナンス・カスタマーサポートなどのサービスを提供することで、顧客は安心感を持てます。

これらのサービスは、顧客が自社の製品やサービスを継続的に使用する意欲を高め、スイッチングコストを上昇させることに繋がります。

 

ワンポイント
スイッチングコストを高めるために、自社と他社のサービスの違いについて情報提供するとともに、サポート体制を充実させましょう!

スイッチングコストについてプロに相談したいなら

握手

もし、スイッチングコストの確認や、それを活用したマーケティング戦略について詳しく知りたいという場合にはプロに意見を求めるのが良いでしょう。

専門家にはその分野の深い知識と経験があり、あなたが見落としている可能性のある要素を見つけ出せます。

さらに、専門家は適切な戦略を計画し、実行するための具体的なステップを提案することが可能です。

その際には、ぜひお気軽に弊社Wediaへお問い合わせください。

私たちWediaはマーケティングの専門家を抱えており、スイッチングコストを活かしたマーケティング戦略立案のお手伝いができます。

 

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スイッチングコストを意識したマーケティングを目指そう

スイッチングコストは、ビジネスを行う上で重要な要素の一つです。

スイッチングコストを適切に活用することで顧客のロイヤルティを確保し、自社のサービスを継続的に利用してもらうことが可能となります。

また、スイッチングコストを意識したマーケティングは、競争力を維持し、市場での地位を確立する上でも有効です。

しかし、スイッチングコストの理解やその活用は専門的な知識を必要とします。

もし、スイッチングコストを活用する方法や、立案すべき具体的な戦略ついて疑問点がある場合は、私たちWediaまでお気軽にご相談ください。

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