企業の業績を上げるために他社との差別化が問題になる中、近年顧客ロイヤリティが重視されています。
しかし顧客満足度だけでは、現在の満足度は測れても今後も利用したいと思って貰える程差別化が出来ているのかは分かりません。
そこで顧客ロイヤリティを数値化して可視化できるのがNPS、「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」です。
自社の強みを活かし、継続した利用を獲得していくことは今後の業績に繋がります。
NPSを業績に繋げていくために計算方法やデメリット、メリットを解説していきましょう。
目次
NPSの計算方法を解説
NPSの計算方法はとてもシンプルです。
推奨度を元に三段階にスコアを振り分け、低評価のスコアから高評価のスコアを差し引く事で指標を算出します。
サービスなどに対するアンケートで「周りの人に勧める可能性はありますか」という質問を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
これが推奨度を測る質問であり、NPSの特徴です。
顧客満足度だけではなく、一歩踏み込んだ他者への推奨度を測るアンケートを取ります。
NPSの役割
NPSはロイヤリティの高い顧客を増やすための1つの指標です。
この指標こそがNPSの役割といっても良いでしょう。
スコアがでることで今後業績を伸ばすには何を行えば良いのか、考える上での道しるべとなります。
顧客ロイヤリティが重視される昨今、その指標を示すNPSは重要な役割を担うようになりました。
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NPS活用におけるメリット
NPSの活用には大きく分けて3つのメリットがあります。
- 数値として見えるのでわかりやすい
- スタッフに数値を元に説得する事でモチベーションに繋げやすい
- 競合相手と比較して自分の位置を知ることが出来る
以上の点です。
それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
数値で見えてくる
通常形のない「推奨度」を数値として見えるというのは大変分かりやすいです。
更に文章ではなく数値であるため、どのくらいの大きさなのかが一目見て分かりやすいということが挙げられます。
通常あまり意識していないかもしれませんが、他者に勧めるには責任が伴うものです。自身の満足度だけは判断出来ません。
他人に対しても同じ、またはそれ以上の満足を与えてくれるという信頼や期待がなければ出来ないことなのです。
状況が変われば、人が変わればこの商品・サービスはどうだろうという疑問が少しでもあればスコアは高くならないでしょう。
「周りの人に勧める可能性」を問うことで目に見えない愛着や信頼を形にすることが出来、上のスコアを目指す事で改善に取り組めます。
スタッフのモチベーションに繋がる
NPSで数値することで、スタッフのモチベーションに繋がりやすくなるでしょう。
人は目標に対して今自分がどの位置にあるのか分からなければ、今やっていることは正しいのか不安になってしまうものです。
逆に、スコアという具体的な形があれば目標までの道のりがわかりやすくなるでしょう。
今どの地点にいるのか把握することで、次はどうすれば良いのか考えやすくもなります。
結果としてこれらがモチベーションにつながりやすくなるのです。
自社と競合との比較が可能
具体的な形があるということは、他者と比べて自社はどうなのかが比べやすくなります。
つまり、競合相手のNPSを知ることで自分のサービスが他者と比べて優れているのか判断しやすくなるのです。
競合相手のNPSを知ることで現在の自分の位置も分かるため、相手のやり方を知ることで改善も取り組むことも出来るでしょう。
そのためにも正しいNPSの算出方法を知っておかなければなりません。
どのくらい満足しているか、他人にオススメできるかといったことも、顧客自身よく分かっていないところもあります。
そうした目に見えないものを、NPSは数値という客観的な情報にして算出するのです。
数値は見ただけで大きさや高い低いを判断しやすいため、誰にでも理解・比較しやすいといえます。
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NPS活用におけるデメリット
NPSにもデメリットはあります。
NPSの数値に出た信頼や愛着は、何故そのスコアに繋がったのかという具体的理由までは表示されません。
あくまで数値のみであるため、そこからどのような行動をすれば良いのかは自分で考える必要があります。
NPSを利用する際に注意しておきたいデメリットについて見ていきましょう。
売上と直結しない
NPSはあくまで顧客満足度・信頼度のスコアを出すものであり、売り上げや利益に直接影響するわけではありません。
売上を上げ、業績に繋げるためには更に踏み込んだ市場調査アンケートや顧客満足度アンケートで補足していく必要があるでしょう。
改善方法が明確にではない
現在の顧客ロイヤリティはスコアとして算出されますが、そのスコアになった理由までは出ません。
そのためこのスコアになった原因は自社で探すことになります。
スコアが低かった時に不満に繋がる事を真摯に受け止める姿勢と、分析し対策に当たる行動力が必要です。
このスコアをどのように判断し、どう改善していくかはその企業が各自で考えなければなりません。
NPSの計算方法
計算に必要な十分なアンケートを得られたらNPSを算出します。
数が少なすぎると誤差が生じやすくなってしまうので、十分な数のアンケートが必要です。
計算方法はスコアの割合を計算しますのでアンケートの数は多いほど、誤差が少なくなります。
では、具体的に計算の方法を見ていきましょう。
0から10の評価
「周りの人に勧める可能性はありますか」といった質問に対して0から10までの10段階の評価を用意します。
当然、値が大きくなるほど推薦の可能性は大きくなります。
それを「批判者」「中立」「推薦者」に振り分けましょう。振り分けは以下のとおりです。
- 0~6…「批判者」
- 7~8…「中立」
- 9~10…「推薦者」
中立者は商品やサービスに対して大きなメリットも大きなデメリットも感じていない人です。
企業のサービス次第で動き易い票となるので計算からは除外してください。
- 推薦の可能性が低く継続利用に至らない自社のマイナスとなりやすい「批判者」
- 推薦の可能性が高く継続利用も見込める自社のプラスとなりやすい「推薦者」
以上の2つを計算に用います。
推奨者の割合-批判者の割合
NPSは、「推薦者の割合」から「批判者の割合」を差し引くことで算出可能です。
割合の計算の仕方は、以下の公式で求めることが出来ます。
- (推薦者または批判者の数)÷(アンケートの総数)✕100
それぞれの割合から総数を差し引きましょう。
例えば1,000人からアンケートを集め「推薦者」が400人、「批判者」が200人だとするなら計算式は以下の通りになります。
- 推薦者の割合 400÷1,000×100=40
- 批判者の割合 200÷1,000×100=20
NPSは「推奨者の割合-批判者の割合」なので、以下のようになる筈です。
- NPS 40-20=20
算出した割合から%を差し引いたのがNPSのスコアです。
つまり、この場合は20になります。
専用の計算ツール
計算方法は前述した通り、非常にシンプルです。
しかし実際にNPSを社内で導入しようとすると、アンケートを行って集計結果から経営に反映する過程で手間がかかります。
ネットでは、現在アンケートから集計から計算・分析まで行ってくれるツールが無料・有料問わず多く提供されているのです。
中には世界で推奨されているものもみられます。
メールでの調査だけでなく、ブラウザにポップアップで表示するアンケートを簡単に作成・グラフ化可能なものも多いです。
自社に合わせたツールを使ってみてもよいでしょう。
マイナスになることも
NPSの数値はマイナスになることも多いです。
特に日本では9や10といった高評価がつきにくく、推薦者が出にくい国民性といえます。
そのため数値だけで判断するのではなく、過去の割合と比べてどうだったのか・業界全体を見て競合との比較でNPSを見ると良いでしょう。
そのため実際の評価よりスコアが低めに出やすく、推薦者を「9~10」にすることを疑問視する意見があるのも事実です。
スコアのみで判断せず、次に紹介する具体的な調査を行うと実際に近い評価が分かるようになるでしょう。
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NPSの調査方法
NPSを取った後は、具体的な調査を行うことで改善案が具体的ではないというデメリットを補う事が出来ます。
調査方法は二段階あり、全体の評価を調査するものと、顧客の体験を調査するものがあります。
NPSに加えた質問を使ったアンケートを実施することで調査が可能です。
アンケートの作成
構造は4つに別れており、以下のポイントを元にアンケートを作成します。
- 推奨度
- 推奨・非推奨理由
- ロイヤリティの構成する理由等要素
- セグメント行動に関わる質問
質問の項目は7問以内に収め、回答時間は長くとも5分以内に終わるものが理想です。
8問以上になると回答率も下がり始め、回答者の負荷が高くなってしまいます。
極力シンプルであることが理想です。
例えばサイトのアンケートで4つの構造を元に調査票を作るとしたら、以下の通りになります。
- 「貴方はこのサイトを他人におすすめしたいと思いますか?」
- 「上記のように評価された理由をお書きください」
- 「サイトに対する満足度を各要素からお聞かせください」
- 「次回からの記事で改善したいことがあれば1つ挙げてください」
「リレーショナル調査」と「トランザクショナル調査」
NPS調査には2種類の調査が必要で、目的に応じて使い分けていく必要があります。
- 商品やブランドのロイヤリティを把握する「リレーションシップNPS調査」
- 店鋪や個別のサービスを比較する「トランザクショナルNPS調査」
以上の2種類です。
リレーションシップNPS調査は自社のブランドや商品に対するロイヤリティを調査し、サービス全体を見直せます。
頻度は最低でも四半期に1回、出来れば定期的にこまめな調査を行うことでMPSの変化を確認することが望ましいでしょう。
トランザクショナルNPS調査は具体的に課題や改善点を見つける事が出来ます。
リレーションシップNPS調査では商品やブランド全体に対する質問です。
一方トランザクショナルNPS調査で望まれるのは店舗や営業担当者サポート担当者などより具体的な質問となります。
平常的な調査が望まれ、都度アンケートを取るのが理想です。
レシートにQRコードを添付したり、商談の後にメールでアンケートを配信したりすると良いでしょう。
日頃からこまめにアンケート調査を実施するのが望ましいです。
NPSを次に繋げるために
折角アンケートをとってNPSを求めても、その後に繋げられなければ意味がありません。
評価を低くしている理由は商品に問題があるのか、サービスに問題があるのかなどを把握しておきましょう。
自社の強みを活かし問題点を改善していくことで業績につなげていくことが大切です。
では具体的にどのような取り組みを行えば良いのでしょうか。
NPSを使った後にやるべきことを解説します。
自社の長所や改善点を把握
NPSの具体的な調査を行う事で知った自社の改善点や強みを生かしていくことが必要です。
高い評価が得られた項目は何だったのか、低かったのは逆に何だったのかを深く掘り下げていきましょう。
強みが分かれば、全体の指揮を上げることが出来、商品やサービスのさらなる安定化を測ることが出来ます。
また弱みが分かれば改善点を出していくことで、商品やサービスの質を上げていくことが出来るでしょう。
自身の武器を知っておくことは他者との差別化を測る上で大切です。
競合と比較
同じ業種の他企業のNPSを把握しておくことも次に繋げるための方法の1つといえます。
競合相手のNPSを知り、NPSの高い相手のインタビュー・活動実績を見ていくことで改善のきっかけをつかめるかもしれません。
NPSのみではマイナス評価が多く出る事もあり、自社内での比較だけでは判断が難しいところもあります。
競合相手のNPSを知ることで自社のNPSをどう持っていくか判断していくのもいいでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
NPSの活用事例
NPSを活用して成功した企業としてはアメリカの企業・アップルストアが有名です。
迅速なNPS調査を活用して、人々が集まって学べる、リピーターになって貰える場所づくりに成功しました。
具体的な取り組みは全店舗から貰った調査を元に、評価が高かった理由を分析することから始まっています。
評価が高かった理由は分析の結果「性能やデザインから生じているのではない」ということが分かったのです。
アップルストアの顧客満足度が高かった一番の理由は「店員の接客」が優れていたからでした。
アップルストアはNPSの調査と分析の結果、自社の武器である店員の接客をより重視する向きに舵を切っています。
また企業全体にNPSによる評価をしっかり理解・浸透させることで、従業員のモチベーションアップも測っているのです。
また、日本でも焼き肉コーポレーションがNPSを元にデータ重視の経験や勘に頼らない方法で成功しています。
500店舗を抱え、各店舗の状況を把握出来ずに各店舗の店長が経験や勘で運営するしかない状況でした。
しかし予約サイトを活用しNPSを実施することで成功と失敗を把握し分析する事が出来るようになったのです。
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NPSの計算方法に悩んだら
批判者・推薦者をしっかりと点数で分ければ計算できるため、NPSを算出すること自体は難しくありません。
しかしアンケートを実際に実施し集計するのは手間もコストもかかり、躓く人も多いのではないのでしょうか。
今はデジタル化が進み、個人や自社には出来ないことも外部でのサービスを使えば出来る事も増えています。
NPS計算法に悩んだら、ツールを活用したり外部のサポートを受けたりしてみるのがおすすめです。
悩んだら是非コンサルタントに相談してみてください。
まとめ
NPSの計算方法自体はシンプルですが、自社への信頼を築いていける可能性を秘めています。
これからの社会、顧客ロイヤリティが重視された結果、サービスや商品の質や価格競争が頭打ちとなる時はいずれ来るでしょう。
しかし自社の強みを知っておけば自社を利用してくれる顧客に愛着と信頼を持ってもらうが出来ます。
それは企業にとって、サービスと商品の質や価格以上に大きな強みとなることでしょう。
NPSで自社の差別化を図る方法を見つけることで、競争社会を生き抜いていけるのでは無いでしょうか。