LTVとは顧客が生涯にわたって自社にもたらしてくれる利益を示す数字です。

顧客獲得コストを示すCAC、利益とコストのバランスを示すユニットエコノミクスとあわせてビジネスの健全性を測ることができます。

時間的な概念を取り入れた利益指標であるため、SaaSなど長期間の契約更新がプラスとなるビジネスで特に注目すべき数字です。

どうすればLTVを最大化できるのか、計算式の仕組みから確認しその方法を探ってみましょう。

SaaSにおけるLTVの位置付け

サブスクリプション

LTV(Life Time Value)とは顧客生涯価値です。

CLV(Customer Life Value)、CLTV(Customer Life Time Value)と記載されることもあります。

マーケティング上の指標の1つで顧客の時間と利益を軸にしたグラフで表されます。

対してSaaS(Software as a Service)とはインターネットを介して提供する定額制のサービスです。

  • データをインターネット上に保存可能
  • インターネットに接続できれば端末を問わない
  • 複数人で同一のサービス、ソフトウェアをシェア・編集できる など

このような条件を満たしているビジネスであればSaaSビジネスといえるでしょう。

SaaSは長く続けてもらうほど利益につながるビジネスです。

つまり、顧客1人1人のLTVを高めることがSaaSビジネス成功の条件となります。

 

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SaaSでLTVが重要視される理由

男性,握手

サブスクリプション型サービスは長く使ってもらえばもらうほど利益を得られる仕組みとなっています。

「それではどのようにすればより長く使ってもらえるのか」を検討するために注目されている指標がLTVです。

継続的なサービス提供

SaaSビジネスでLTVが重視されている理由は従来の市場で通用していた手法でヒット商品を生み出すことが難しくなっているからです。

従来の市場は売買が成立したら買う側と売る側の接点はそれで終わり、というビジネスモデルでした。

しかし近年は顧客の購買動機が多様化していて、商材そのものの魅力だけでは売れ続ける仕組みを作れなくなっています。

そこで登場したのがサブスクリプション型のサービス、特にWebを介したSaaSビジネスです。

SaaSをはじめサブスクリプション型のサービスは顧客が契約更新し続けてくれることが最大の利益につながります。

顧客が利益をもたらし続けてくれるサービスかどうか、それを判断する指標こそLTVなのです。

中長期的な戦略を重視

顧客1人1人のLTVを高められればSaaSビジネスで利益の最大化を期待できます。

顧客から選ばれ続けるサービスであるために見込み顧客から顧客へ。顧客から固定客へ。固定客からファンへ。

顧客とより良い関係を構築しながら契約を更新し続けてもらうことが必要です。

そこで中長期的な目線で見込み顧客からファンに至るまで成長させる戦略が注目されています。

LTVは顧客が契約更新し続ける程、数字が高まるのが特徴です。

LTVの数字を追いかけることで顧客をファンに育成する戦略の成功可否が見えてきます。

 

ワンポイント
SaaSのようなサブスクリプション型サービスの台頭がLTV重視の背景にあります。

LTVとCACの関係性

CACとは顧客を増やすためにかかるコストを示す指標で、利益を出し続ける仕組み作りのための先行投資ともいえます。

SaaSをはじめサブスクリプション型サービスにおいてはCACを確実に早く回収することがポイント。

そのためにLTV向上施策は不可欠です。

CACの役割

男性,電卓

CAC(Customer acquisition cost)とは顧客獲得コストのことです。

CPA(Cost Per Acquisition)と呼ばれる場合もあります。

<CACの具体例>

  • マーケティング部門やマーケティングツールにかかる費用
  • 営業活動費
  • カスタマーサポート・カスタマーサクセスにかかる費用
  • 新商材開発費用 など

こうした新規顧客獲得に欠かせない費用を示す指標としてCACがあります。

また、CACは各マーケティング施策・マーケティングツール・各商材のコストパフォーマンスを示すこともできます。

損切りの判断を早めにできるため、上手に活用すれば効率の良い顧客獲得につながるでしょう。

CAC回収にはLTVが重要

CACは利益を得るための先行投資と考えることもできます。

利益を出し続けるビジネスモデルを成立させるためには先行投資であるCACを確実に早期に回収することが不可欠です。

CACを確実に早期回収する方向性は2つあります。

  • 先行投資にかかるコスト抑制
  • 利益向上

どうすればビジネスによって得られる利益を最大化させるか、という施策こそLTV向上施策です。

LTVはある顧客がある商材に対して生涯でどの程度のお金を使うのか、という合計や見込み額です。

ある顧客に注目してみた時、LTVがその顧客を確保するために要したCACを上回れば利益が出ます。

特にSaaSのようなサブスクリプション型サービスはCACを比較的抑えやすいビジネスです。

LTV向上の仕組みさえ確立できればCACを早期に回収する難易度は高くありません。

 

ワンポイント
LTV向上によりCACの早期回収可能性が高まります。

計算式

LTVの計算式は客単価・利益率・離脱率によって成り立っています。

対してCACを構成する要素は顧客獲得にかかったコストと顧客数です。

それぞれを比較することで利益とコストのバランスを判断する指標となります。

まずは計算式を確認してみましょう。

LTV

計算式

LTVの計算式は商材の特性やビジネスモデルによって色々な形があります。

利益ベースで計算するなら下記の計算式が最もシンプルでわかりやすいです。

  • LTV計算式:ある一定期間の客単価 * 利益率 / サービス解約率

商材によって左右されますが解約率の計算式は下記となります。

  • 解約率計算式:ある一定期間中に解約した顧客数 / 元々の顧客数

LTVは売上ベースで計算する方法もありますが、ビジネスモデルによっては売り上げがプラスでも利益はマイナスになる場合があります。

そのため、利益ベースで計算する式がおすすめです。

CAC

CACの計算式は下記です。

  • CACの計算式:顧客を獲得するために要したコスト / 獲得した顧客数

CACは簡単にいうと顧客獲得にかかった経費です。

1人の顧客からどのくらい利益が得られるか、という指標のLTVと対の関係にあります。

シンプルに考えると経費と利益なのでビジネスの基本としてLTV>CACの状態を維持することが最低限必要です。

SaaSでのユニットエコノミクスの重要性

利益,経費,グラフ

ユニットエコノミクスとは利益とコストを時間軸で対比できる指標です。

SaaSビジネスの持続可能性を判断するために大変重要な数字となります。

そもそもSaaSビジネスとは固定客を増やし確実に長期間利益を得るための方法です。

実はこの長期間は重要なポイント。

SaaSビジネスのスタートアップ時においては初期投資であるCACが先行している状態であり、利益としてはマイナスの状態です。

しかし、SaaSをはじめとするサブスクリプション型サービスは固定客が契約更新し続けて初めて利益につながります。

そのため、ビジネスが「次年度どうなっているか?」「5年後どうなっているか?」という中長期的な視点での経営判断が欠かせません。

ビジネスである以上、利益とコストのバランスを見ながらの判断は必要です。

ただ、その判断が時期尚早になりすぎないように時間の概念を含めた利益とコストのバランスが求められます。

そこで登場したのがユニットエコノミクスです。

ユニットエコノミクスの計算式は時間軸に基づいたLTVに基づいて構成されています。

SaaSビジネスにおいて必要な「次年度どうなっているか」「5年後どうなっているか」を判断できる指標です。

利益とコストのバランスを中長期的な目線で判断できるため、SaaSビジネスの経営判断においても重要な数字といえるでしょう。

 

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ユニットエコノミクスの計算式

ユニットエコノミクスはLTVとCACが計算式を構成しています。

利益ベース・期間ベースでそれぞれ計算することで、ビジネスの成功持続可能性を検討できるのがメリットです。

どのように計算すればいいのか、まずは基本の計算式を確認してみましょう。

計算式

計算式

ユニットエコノミクスの計算式は下記の通りです。

  • ユニットエコノミクスの計算式:LTV / CAC

ユニットエコノミクス>1の状態であればLTV>CACとなるのでビジネスとしては持続可能性を期待できる状態です。

逆にユニットエコノミクス<1の状態であればLTV<CACであり、まだコストを回収しきれていないと判断できます。

このまま進めると次年度どうなっているのか、という視点からの見通しと改善ポイントの模索が必要です。

理想値は3以上

LTVとCACの関係性はプラスの状態になっていればマーケティングの成功を期待できる状態です。

特に理想的と考えられる目安の数字はLTV/CAC>3と一般的にいわれています。

例えば顧客1人あたりのLTVが3,000円のSaaSビジネスであれば顧客1人にかけるCACは1,000円以下に抑えるのが理想的。

マイナスの状態であれば売り上げがあっても赤字の状態なのでビジネスモデルの改善が必要性です。

またCACが低すぎてプラスになっている場合、必要なタイミングで適切な投資ができていない懸念もあります。

あくまでもLTV・CACを高水準で維持しながら理想の数字を目指すのがポイントです。

理想のCAC回収期間

カレンダー

ユニットエコノミクスは期間をベースにして計算することもできます。

  • ユニットエコノミクスの計算式(期間ベース):顧客がサービスを継続して利用する期間 / CAC回収にかかる期間

一般的に目安となる期間は12か月(1年)と言われています。

つまり、初期投資として顧客獲得にかけたコストを12か月で回収できなければ何らかの改善が必要です。

 

ワンポイント
ユニットエコノミクスを計算することで利益と経費のバランスがどうなっているのかがわかります。

ユニットエコノミクス向上の施策

ユニットエコノミクスを向上させる方法には2つの方向性があります。

1つは計算式の分子であるLTVを大きくする方法、もう1つは分母であるCACを小さくする方法です。

解約率を下げる

解約

途中解約はSaaSビジネスにおいて最も対策が必要なリスクです。

ポジティブな見方をすれば、解約率を低い状態でキープすることでLTV向上につながります。

まずは顧客アンケートなどで解約に至る理由を把握しましょう。

ただしアンケートを行う場合に注意しなければならないのが、記載された答えと顧客の本音が異なるケースです。

特に解約理由は本音を言いづらいものなので、建前である可能性を前提に読み取っていきましょう。

また、近年はSNSなど匿名性の高いメディアから顧客の本音を引き出せるケースも増えています。

自社商材のファンではない見込み顧客を見つけやすいメディアなので、上手く活用すれば新しいターゲットの発掘につながります。

アップセル・クロスセル

男性,営業

ユニットエコノミクス向上施策としてアップセルクロスセルといった手法も見逃せません。

アップセルとは通常利用している商材の上位置換商材を提案してもらう手法です。

音楽配信のSaaSで曲のみをDLできるプランからMVをDLできるプランへアップグレードするケースがわかりやすいかもしれません。

クロスセルはある商材をセットで購入・利用してもらうようにする提案です。

アパレル系ネットショップでよくある「2着購入なら1着は半額!」のような手法を例として挙げることができます。

アップセル・クロスセルの魅力は顧客1人あたりのLTVを高めつつお得感やVIP感をアピールできること。

ファンの育成も期待できるため、見逃せないユニットエコノミクス向上施策です。

顧客ロイヤルティを計測

ソファ,革

顧客ロイヤルティとは顧客がサービスを提供する側に抱く愛着愛情です。

企業にとって顧客ロイヤルティを高めることは単なる固定客ではないファンを獲得することでもあります。

ファンは一般的な顧客と違い、相当の理由がない限り離脱することがありません。

そのため、顧客ロイヤルティ向上によるファンの獲得は高いLTVを期待できるでしょう。

具体的な施策として行われているのが、会員限定のカスタマーサポートといったサービスの提供です。

例えばある化粧品メーカーでは商材を購入いただいた人限定でプロによるスキンケア指導を受けられるアドバンテージを設定しています。

一部の人のみ、という点がサービスを提供する側とされる側の距離感を縮めやすく顧客ロイヤルティ向上につなげやすい手法です。

マーケティング・営業コスト最適化

ユニットエコノミクス向上施策として、分母であるCACの数字をできるだけ小さくするのも有効です。

実は新規顧客獲得にかかるコストは既存顧客の契約更新にかかるコストの数倍といわれています。

まず商材を認知してもらったり強みを理解してもらったりするなど、潜在的なニーズの発掘から始め見込み顧客に育てないといけません。

成約に至るまでのアプローチは既存顧客よりも多くの手数を要するため、当然その分のコストがかかってしまうのです。

ポジティブに考えると、既存顧客の割合を増やせばCAC削減につながりユニットエコノミクス向上も期待できます。

 

ワンポイント
ユニットエコノミクスを向上させるには計算式の分子であるLTVを高めるか、分母であるCACを抑えるかのどちらかが基本です。

LTVを最大化する方法

グラフ,アップ

LTVを最大化する方法はユニットエコノミクス向上施策と共通している部分も多いです。

特に解約率の減少・アップセル・クロスセル・顧客ロイヤルティの向上は欠かせません。

そこで改めて意識しておきたいのが、自社商材の魅力メリットをしっかりと分けて把握すること。

魅力とは商材の特長や強み、メリットは商材利用によって享受できるベネフィットや成功です。

実は顧客にとって魅力はあまり重要ではありません。圧倒的にメリットの方が重要です。

そのため、LTV最大化施策においてもメリットを高める視点が鍵となります。

例えば、解約率を減少させたいのであれば「解約した顧客はなぜメリットを得られなかったのか」という視点からの問いかけが有効です。

また、アップセル・クロスセルもメリットが大きい顧客に絞った顧客ロイヤルティ向上アプローチを行うことで成功率が高まるでしょう。

LTVの最大化について悩んだら

男性,クエスチョン

SaaSをはじめサブスクリプション型サービスではLTVを最大化させることがビジネスの成功可能性を高めます。

しかし、LTV最大化の具体的なノウハウ構築ができている企業は決して多いといえないのが現状です。

  • アップセル・クロスセルの有効な方法は?
  • 解約率が一定の数字以上に下がらない…
  • 顧客ロイヤルティ向上のためVIP感を出せるサービスを企画したい など

LTV最大化に関するお悩みはWebマーケティングコンサルタントが解決のお手伝いをできるかもしれません。

特にSaaSはインターネットを介したビジネスです。

Webマーケティングに関するノウハウが強みのWebマーケティングコンサルタントにとっては専門領域の1つ。

LTVを高め、継続的に安定した利益を生み出すビジネスモデルを構築する上で心強いパートナーとなれるでしょう。

 

データ解析・活用の事例はこちら

 

まとめ

男性,ビジネス

長期間利益を得ることが重要となるSaaSビジネスにおいて、顧客生涯価値を示すLTVは目を離してはいけない指標です。

また、CACや利益とコストのバランスを見極めるユニットエコノミクスも成功可否を問う上で重要な数字となります。

自社のビジネスモデルに適したLTV向上施策を実施するならWebマーケティングコンサルティングも活用してみてください。