インターネット広告を活用する中で、アドフラウドについて考える人も増えてきたのではないでしょうか。

アドフラウドによって広告費が無駄になるだけでなく、本来の目的の広告配信ができないリスクがあります。

しかし、アドフラウド対策が必要だと知っていてもアドフラウドの種類や対策方法について知らない人は少なくありません。

今回は、そんなアドフラウドについて概要や事例を含めて詳しくご紹介します。

アドフラウド(広告不正)の概要

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アドフラウドとは、一言でいうと「不正広告」のことです。

「不正」というからには企業も対策を取っていく必要がありますが、その現状や傾向について広く知られているわけではありません。

アドフラウドの対策をとるために、まずは現状や背景を理解していきましょう。

アドフラウドの現状は?

アドフラウド対策が必要となる広告にはインターネット広告・SNS広告・アプリ広告があります。

インターネットが普及した現代では、その技術を活用した宣伝やマーケティングはなくてはならないものになりました。

それが分かるのが広告費用の内訳です。

2018年時点で、日本の総広告費は6兆5300億円とされています。

そのうち、インターネット広告費は1兆7589億円と多くを占めているのです。

インターネット広告の市場が拡大している一方で、ある調査ではその約12%が不正な広告だということが指摘されました。

それだけ広告主は広告費用を無駄にしてしまっているということになります。

しかし、アドフラウドの認知度はそれほど高くなく十分な対策が取られていないのが現状です。

アドフラウドが多い国の特徴

世界中で被害が増えているアドフラウドですが、どのような国で多く見られているのでしょうか。

ある企業の調査によると、アドフラウドの割合は日本・アメリカ・イギリス・インド・ブラジルといった国で高いことが分かりました。

これらのアドフラウドが多い国の特徴をチェックしておきましょう。

  • CPI(消費者物価指数)が高い
  • 人口が多い

CPIとはある時点を基準に商品・サービスの価格変動を見たもので、これが高い国が日本・アメリカ・イギリスとなっています。

また、インド・インドネシア・ブラジルは人口が多いという面で共通しています。

両方とも当てはまるという訳ではなく、どちらかの特徴をもつ国にアドフラウドが多い傾向にあるのです。

アドフラウドの傾向

動向

アドフラウドには、システムの脆弱性をついたものやプログラムの悪用など様々な手法があります。

多くの被害を被っているアドフラウドですが、広告配信側は対策を取っていないのか気になる人もいるのではないでしょうか。

アドフラウド自体の認知度は高くないとお伝えしましたが、広告配信プラットフォームの側はもちろん様々な対策を行っています。

しかし、アドフラウド対策をしても別の角度から不正が生じるなど、アドフラウド自体も多様化・複雑化しているのです。

そんなアドフラウドの傾向をチェックしておきましょう。

2017年7月に報告されたアドフラウドの種類は、「端末養殖場」がトップで「ボット」はまだほとんど登場していない状況でした。

そしてトップにいた端末養殖場が低下していき、「クリック洪水」や「インストールハイジャック」が上昇してきます。

2018年2月には、約半年前に全く見向きもされなかった「ボット」がトップに上昇したのです。

この傾向は、各広告プラットフォームが対策を講じていることが影響します。

しかし、アドフラウド対策をしても新たな手法で不正広告が忍び寄ってくるのです。

ここで取り上げたアドフラウドの種類については、この後詳しくご紹介します。

 

ワンポイント
日本ではアドフラウド被害が多くインターネット広告を活用する上で無視できません。

 
インターネット広告の事例はこちら  

アドフラウドの仕組みは?

ビジネスマン

アドフラウド対策を行うのであれば、その仕組みを理解しておく必要があります。

不正広告を意味するアドフラウドは、どのような仕組みになっているのでしょうか。

  1. 不正業者がボットを作成する
  2. アプリのインストールのデバイスにマルウェアを取り込ませる
  3. 不正業者が遠隔操作してWebサイトにアクセスさせる
  4. 質のいいWebサイトでCookieを取得させる
  5. アドフラウドのためのWebサイトで大量のアクセスを稼ぐ
  6. 大量のアクセス数を稼いだアドフラウド用のWebサイトに広告を出稿する
  7. 継続的にボットが表示されたり悪意のあるアフィリエイトサイトからのクリックを誘導させたりする
  8. インプレッションやクリックによって不正業者に広告料金が支払われる

これが、アドフラウドの仕組みですが複雑で手が込んでいるという印象を受ける人は少なくないでしょう。

これだけ複雑な仕組みになっているため、根絶が困難となっているのです。

アドフラウド事例:株式会社Gunosy

スマートフォン、男性

対策が難しいといわれるアドフラウドですが、日々増加する被害から対策を講じる企業が増えています。

株式会社Gunosyは、総合キュレーションサイトやニュースアプリ「Gunosy(グノシー)」を提供する企業です。

アドフラウド対策のために、2019年1月にAdjustのアドフラウド防止機能を導入しました。

株式会社Gunosyのアドフラウド対策の事例を見ていきましょう。

アドフラウド対策導入の背景

株式会社Gunosyは、あることがきっかけでアドフラウド被害に気づき対策を講じることになりました。

まずはその対策導入の背景をご紹介します。

2017年、グノシーのアプリキャンペーンのためAdjustという計測ツールを使ってログデータを分析しました。

その結果、不自然な数字の動きが配信ログの中から発見されたのです。

不自然な動きが見られたのは、アプリを使い続けるユーザー率を表す「継続率」というものです。

その不自然さをさらに分析したところ、グノシーアプリがアドフラウドの被害にあっていたことが分かりました。

こちらが、株式会社Gunosyがアドフラウド対策を行うことになった背景です。

検出された3つの不正タイプ

驚く男性

グノシーアプリで不正広告が判明したのですが、実際にどのような不正が検出されたのでしょうか。

グノシーで発見されたのは、こちらの3つの不正タイプです。

  • SDKスプーフィング
  • クリックスパム
  • クリックインジェクション

なりすましのSDKスプーフィングは、実際はインストールしていないのにあたかもユーザーがインストールしたかのように見せかける不正です。

そんなことが可能なのかと不思議に思う人もいるのではないでしょうか。

しかし、実際にこの不正によって広告主の予算が流れてしまっているのです。

クリックスパムは、ユーザーがWebサイトやアプリを使っているバックグランドで不正クリックが行われています。

クリックインジェクションは「高度なクリックスパム」だと思ってください。

不正業者が提供するアプリをユーザーがインストールした際に、そのデバイスが乗っ取られてしまいます。

そして、別のアプリをインストールした時にその報酬を横取りするというものです。

株式会社Gunosyでは、1か月間で約3万件の不正を検出したこともありました。

このような種類の不正が1か月間で約3万件なので、相当な額の広告費が奪われてしまったことが分かります。

また広告費用を無駄にしただけでなく、本来のデータが歪められる結果にも繋がるのです。

ツールを活用した改善

Adjustの分析ツールによって不正を検知した株式会社Gunosyは、同じくAdjustのアドフラウド防止機能を導入しました。

その結果どのようなことが改善したのかを見ていきましょう。

  • 広告費の無駄を削減
  • 不正検出に費やす時間を削減
  • 不正が多い媒体を特定

ツールを活用することで、アドフラウドを防止して無駄な広告費の発生を抑えることに成功しました。

また、Adjustのアドフラウド防止機能はアドフラウドを素早く検知・除外することができます。

そのため、不正検出に書ける時間を大幅に減らすことになったのです。

さらに不正が多い媒体を特定することで、その媒体を避けたり新たな媒体への可能性を見出したりすることにも繋がりました。

不正業者はどのように金銭を得るのか

ハッカー

アドフラウドを行うのは主に不正業者やハッカーです。

彼らは、一体どのようにして金銭を得ているのか気になる人もいるのではないでしょうか。

ここでは不正業者やハッカーがどのように金銭を得ているのかを説明していきます。

  • サイト運営者からの依頼
  • ポイントサイトやアフィリエイトサイトでの偽装クリック
  • 不正広告を掲載したWebサイトを立ち上げる

不正業者は、サイト運営者から依頼を受けて不正にクリック数を増やし報酬を得ることがあります。

これはインターネット広告の中でもクリックのタイミングで報酬が発生するタイプのものです。

ポイントサイトやアフィリエイトサイトでは、成果によって報酬が発生するため不正に使われることも少なくありません。

不正業者が、自身のWebサイトを立ち上げるというパターンもあります。

先ほどお伝えした株式会社Gunosyの件も含め、不正業者はありとあらゆる手を使っていることが分かるでしょう。

しかし、これらは不正業者が不正に金銭を得る方法の一部にすぎません。

広告配信企業が対策を講じれば不正業者は新たな手口を使うなど、いたちごっこのような状況になっているのがアドフラウド対策の課題です。

アドフラウドが発生するサイクル

ビジネスサイクル

アドフラウド対策において、問題とすべきは不正業者の存在だけではありません。

アドフラウドを根絶させられないのは、複雑化だけでなく負のサイクルが影響しているのです。

そんなアドフラウドの発生サイクルとは、どのようなものなのか見ていきましょう。

  1. 質より量で評価を設定している
  2. 安い広告枠に広告を大量に出稿する
  3. 低品質あるいは偽装された広告が増加
  4. 不正業者による不正インプレッション・クリックが増加
  5. 評価設定が「量」なので高い評価になる

質より量の評価設定は、アドフラウドによる不正インプレッションやクリックも成功の評価になりかねません。

そして、数字の見かけ上は成功したように見えるため、また量を重視した評価設定にしてしまうのです。

このサイクルを抜け出すために、量ではなく質を主軸にしたKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。

 

ワンポイント
アドフラウドの発生サイクルを避けるには量より質を重視することが大切です。

アドフラウドの種類を紹介

悩む

アドフラウドには様々な種類があり、不正業者はその時々で使い分けたり対策が講じられれば別の手口にしたりします。

そんなアドフラウドですが、どのような種類があるのか知っておくことでより理解を深められるでしょう。

ここではアドフラウドの主な種類を5つご紹介します。

その1:クリック洪水

クリック洪水とは、実際の広告クリックにかさ増ししたように見せかけることです。

ユーザーが広告をクリックすると、その端末IDによってどの広告をクリックしたか分かるようになっています。

その仕組みを利用したのがクリック洪水で、ある端末IDがあらゆる広告を踏んだかのように紐づけするのです。

この手法は、広告クリックからアプリインストールまでの時間が極端に短いことで発覚することも少なくありません。

その2:インストールハイジャック

ビジネスマン指摘

インストールハイジャックは、ユーザーがアプリをインストールした時に別のメディアを介した成果のようにすることです。

例えば、ユーザーがAというメディアを通じてアプリをインストールしたとします。

通常であれば、その広告報酬はAに支払われるはずです。

しかし、ユーザーの端末にマルウェアを仕込むことでBというメディアの成果にしてしまいます。つまり成果の横取りということです。

このインストールハイジャックは、対策を取らなければ気づきにくいのが現状です。

そのため、実際にインストールしているかの判断をする「インストールバリデーション」といったツールが活用されています。

その3:ボット

アドフラウドの中で、最も多いといわれているのがボットです。

クリック・インストール・広告表示などによって広告費用を発生させる方法は、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

先ほど株式会社Guonsyの事例でご紹介した「SDKスプーフィング」もボットの一種で被害の急増が問題視されています。

その4:行動異常

アドフラウドの一種に、行動異常というものがあります。

この行動異常は、特定のソフトウェア開発のためのツールセットでなければ見抜くことができません。

それだけ膨大な量のデータを分析してはじめて異常に気づくことができるのです。

その5:端末養殖場 (デバイスファーム)

端末養殖場(デバイスファーム)とは、1つの端末であたかも複数の端末からインストールしているように見せかける手法です。

端末IDをリセットすることで、1台で複数端末という複雑なことを可能にしています。

これはアプリのインストール件数を見かけ上増やすために使われるのです。

 

ワンポイント
多様化・複雑化したアドフラウドの種類を知って対策に繋げよう。

 
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広告主向けのアドフラウド対策方法

ポイント

アドフラウドは、広告主にとって不要な広告費が発生するだけでなく企業のイメージダウンに繋がるリスクがあります。

広告の内容によっては、企業のブランドイメージを落としかねないからです。

そこで広告主となる企業には、アドフラウド対策が必要とされています。

さらに、「ブランドセーフティー」という考えも忘れないようにしましょう。

ブランドセーフティーとは、広告によってブランドイメージを下げることを防ぐことをいいます。

ブランドセーフティーの考えも合わせて、アドフラウド対策を検討してください。

 

ワンポイント
広告主はアドフラウド対策とともにブランドセーフティーにも着目しましょう。

アドフラウド対策に役立つツール

任せる男性

アドフラウドは分析をしなければ発見できないことも少なくありません。

また、対策を講じるためにはツールを使う必要があります。そんなアドフラウド対策で役立つツールを2つご紹介します。

Spider AF

Spider AFは、AI分析やアルゴリズムを活用してアドフラウドを検知するツールです。

アドフラウドの検知だけでなく、どの程度不正が発生したのか可視化することができます。

無効アクセスのレポートという機能もあるため、アドフラウド対策に役立てることができるでしょう。

FICS

FICSは、クリック課金型広告における不正を感知するツールです。

企業独自のAI技術が備わっており、完全自動でアドフラウド対策ができます。

2週間の無料トライアル後に契約となるので、使い勝手や機能などを確認できるのがメリットです。
 
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アドフラウドで悩んだら

悩む男性

アドフラウド対策は、インターネット広告を配信する上で無視できない問題です。

しかし自社が被害にあっているのか、どのような種類のアドフラウドがあるのか理解しにくいのではないでしょうか。

また、対策を講じるにしても必要なツールの選択や活用方法などで悩むことも少なくありません。

アドフラウド対策で悩むことがあれば、デジマクラスにご相談ください。

アドフラウド対策や必要なツールなど、専門のコンサルタントがサポートします。

まとめ

データ分析

今回は、不正広告であるアドフラウドについてご紹介しました。

インターネットが普及した現代では、インターネット広告をマーケティングに活かすことは必要不可欠です。

しかし、そんなインターネット広告・SNS広告・アプリ広告を不正利用する業者もいます。

アドフラウドによってもたらされる被害は、広告費用だけではありません。

本来のデータとな異なる結果が出たり、顧客に必要な情報を発信できないリスクがあるのです。

不正業者はあらゆる手口を使って忍び寄ってくるため、ツールなどを使った対策が必要といえます。

アドフラウド対策でお困りのことがあれば、ぜひデジマクラスにご相談ください。