アパレルショップなどの実店舗で買い物をしているとそのショップの店員が声をかけて来ることがあります。
ECサイトにおけるAIレコメンドはちょうどこれと似たようなものです。
オンラインビジネスという一方向のやりとりに実店舗のような接客利益を生み出すものといえるでしょう。
今回の記事ではAIレコメンドの仕組みや種類について徹底解説します。
AIレコメンドのメリットや注意点・導入事例なども紹介しますのでぜひ参考にしてください。
目次
ECサイトで活用されているAIレコメンド
オンラインショップで買い物をする際に、商品を買い物かごに入れると以下のような案内が画面に表示されることがあります。
- あなたの買った商品を買った人は、他にもこんな商品と一緒に買われています
- 〇〇(閲覧した商品)をチェックした人は、こんな商品もチェックされています
- あなたにオススメの人気商品
これはAI(人工知能)によるレコメンド(推薦・紹介)で、AIレコメンドやレコメンドエンジンと呼ばれています。
ECサイトを訪問したユーザーに対して、当初欲しいと思って閲覧した商品のみを紹介して終わるのは非常にもったいない事です。
ニーズに合う商品や関連商品を紹介しておけば、ユーザーはすぐにはサイトを離れずに留まってくれるかもしれません。
AIレコメンドがあると、このようにユーザーの流動性を高めたりCS(顧客満足度)やリピート率を向上させたりできます。
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AIレコメンドの仕組み
AIレコメンドの概念は2000年頃から始まったとされています。本格的にシステム化させたのはGoogleです。
今現在、Amazon・楽天市場・ZOZOTOWNなど、同じようなシステムを採用しているサイトは枚挙に暇がありません。
レコメンドエンジンは、過去の閲覧・購入データに基づいて、新規に検索・閲覧された商品の関連商品や情報を提供します。
レコメンドエンジンのシステムによって商品との紐付けや相関性の仕組みは様々です。代表的なものをご紹介しましょう。
協調フィルタリング
協調フィルタリングでは、ユーザーの閲覧・購入履歴などから今後も買われそうな好みの商品をAIが抽出して紹介します。
訪問者の行動にフォーカスしたものか、利用者全体の行動にフォーカスしたものかによって以下の2つに大別されます。
- アイテムベースレコメンド
- ユーザーベースレコメンド
アイテムベースレコメンドではユーザーが閲覧・購入した商品から商品同士の類似度によって抽出する商品を選別します。
ユーザーベースレコメンドではすべての訪問者の行動履歴を元にAIが機械学習を行い、商品を選別して紹介します。
ユーザーの行動履歴・閲覧・購入履歴のデータを集めるまでにある程度の期間が必要となることがデメリットといえるでしょう。
コンテンツベースフィルタリング
あらかじめ商品データを顧客の行動履歴と紐付けておいたものがコンテンツベースフィルタリングです。
先に紹介した協調フィルタリングの、履歴データの蓄積に時間がかかるというデメリットを解消するために生まれました。
AIの機械学習では追いつかない広範囲での商品抽出が可能となるため、より細かな条件でのレコメンドが可能となります。
ECサイトの企業側にフォーカスしたものか、ユーザーの行動履歴にフォーカスしたものかで以下の2つに大別されます。
- ルールベースレコメンド
- パーソナライズレコメンド
ルールベースレコメンドはECサイトを展開する企業側が在庫を消費したい商品に対して抽出設定をするものです。
パーソナライズレコメンドはユーザーの閲覧、購入の行動履歴から好みをAIが機械学習を行い商品を抽出・紹介します。
利用者全てではなく対象者個人と紐付けした商品データから抽出される点が協調フィルタリングとは違うといえるでしょう。
メリットは協調フィルタリングのようにデータの蓄積期間が必要ない点です。
ただし商品カテゴリーごとに分析・抽出するため、ユーザーに同じ商品ばかりおすすめすることになる場合があります。
ハイブリッド・レコメンデーション・システム
ハイブリッド・レコメンデーション・システムは先に紹介した2種類の良いとこ取りです。
協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリングの利点を足して、より分析・抽出精度を上げました。
商品同士の異なる関連付けや相関性を持たせることによって、おすすめする時の抽出範囲を広げることが可能となりました。
AIレコメンドの種類
ECサイトにおけるAIレコメンドの活用やその仕組みについて解説してきました。
この項目ではAIレコメンドの種類についてご紹介します。
ASP型
ASP型のASPはApplication Service Providerの頭字語です。
ASP型のAIレコメンドは高い技術力がなくても低コストで簡単に導入できるのが利点です。
ただし導入後に利用者の好みに合わせてカスタマイズすることはほとんどできません。
クラウド上で利用できるサービスが多く、PC・スマートフォンからもアクセスすることができます。
オープンソース型
オープンソース型のAIレコメンドは導入後に自由にカスタマイズできることが特徴です。
ただしサーバーの用意やレコメンドエンジンの管理も自社で行わなければなりません。
在庫管理のため売りたい商品を優先的に上位表示させるなど、季節ごとの柔軟なカスタマイズが出来るのが魅力です。
開発・管理・運営に技術力と費用がかかるため、大手サイト以外では運用しているサイトは少ない傾向にあります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
AIレコメンドのメリット
ECサイトにAIレコメンドを取り入れるメリットは大きく分けて2つあります。
2つとも、運営側にとってもユーザーにとってもプラスになる事柄なのでチェックしてみてください。
ユーザーに合った商品紹介ができる
AIレコメンドのメリット、1つ目はユーザーに合った商品紹介ができることです。
現代ではいかにユーザー個人に対してパーソナライズされたアプローチができるかがマーケティングの鍵となっています。
潜在的なニーズを掘り起こして、ユーザーが思いもしない新しい商品と結びつけられればなおのこと良いでしょう。
AIレコメンドエンジンによってこれらが可能となったのには、データマネジメントの技術が発展したことが大きな要因でした。
AIレコメンドはパーソナライゼーション(顧客ごとの購入予測分析)が可能なため、季節ごとの売れ筋商品の先読みもできます。
リピート購入が多い商品を分析することで、売れ筋動向の分析のための時間と労力を削減できるというメリットもあります。
クロスセル・アップセルが効率的にできる
AIレコメンドのメリット、2つ目はクロスセル・アップセルが効率的にできることです。
ECサイトを訪問した際に、当初の目的以外の商品もついでに買ってもらう手法をクロスセルといいます。
コンビニやスーパーのレジ付近に置かれた乾電池やお菓子など、ついでに手を伸ばしてしまうものが実店舗での例です。
クロスセルはレコメンドエンジンを取り入れる際の代表的な施策の1つといえるでしょう。
クロスセルによって、ECサイトに訪問するユーザーの母数を増やさなくても客単価を上げることが出来ます。
アップセルは目的の商品の上位モデルを紹介して購入してもらうことをいいます。
ユーザーに品質の良い商品の提案が可能となる上、押し売り感もありません。
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AIレコメンドの注意点
AIレコメンドの導入にあたって注意しなければならないことがいくつかあります。
この項目では注意点のうち2つをピックアップしてご紹介します。ぜひこれらを踏まえた上で導入を検討してください。
データの数によって学習精度にばらつきがある
AIレコメンドの注意点、1つ目はデータの数によって学習精度にばらつきが起こることです。
商品や商品カテゴリーによっては閲覧数や購入頻度の低いものもあります。
こうした一部の顧客にしか目にされない商品はレコメンドではなかなか抽出されません。
こうした購入数は低くても質の良い商品は、企業側が紐付けをして表に出していく必要があります。
商品数が少ないと効果は薄い
AIレコメンドの注意点、2つ目は商品数が少ないと効果が薄いことです。
レコメンドエンジンはレコメンドに使用される商品や行動履歴のデータが少ない状態では精度が上がりません。
そもそも商品数が少ないECサイトの場合、レコメンドエンジン自体を取り入れるかの検討が必要となってくるでしょう。
ECサイトにおすすめのAIレコメンドサービス
AIレコメンドサービスには様々な種類があります。
その中から特にECサイトにおすすめのものを3つご紹介しましょう。
SENSY Marketing Brain
SENSY Marketing Brainはファッションに特化したレコメンドエンジンです。
顧客の趣味嗜好を分析し、「AIスコア」として商品アイテム別に好みを計算します。
スタイリストやモデル御用達のAIツールにコーディネートを頼めることが最大の魅力といえるでしょう。
ファッションのプロが持つセンスを気軽に取り入れることができます。
マーケティングから需要予測まで行えるオールインワン型のAIレコメンドサービスです。
デクワス.VISION
デクワス.VISIONはサイジニア株式会社の画像解析型レコメンドエンジンです。
取り扱う商品の流行があって品替えが頻繁なアパレル業界での導入活用を想定して作られました。
ユーザーが商品を閲覧すると、その画像と近い商品を抽出して紹介します。
アイジェント・レコメンダー
アイジェント・レコメンダーはシルバーエッグ・テクノロジー株式会社が提供するリアルタイム・レコメンドサービスです。
ECサイトと実店舗の商品レコメンドの質を統一させたい企業におすすめのサービスだといえるでしょう。
複数の機械学習を組み合わせる手法を取っており、ユーザーの行動を速やかにレコメンドに反映させることができます。
AIレコメンドの導入事例
ここまでAIレコメンドの特徴や種類について解説してきました。
この項目ではAIレコメンドの導入事例を2つご紹介します。
MIX.Tokyo
MIX.Tokyoは様々なECモールを展開する TSIホールディングスグループ直営のファッションECサイトです。
「Mix.Tokyo」は実店舗・webサイト・アプリを横断した接客ツールの導入で話題となりました。
webとアプリを横断してユーザーの行動データの解析ができるようになることが特徴です。
かご落ちユーザーに対して、アプリのプッシュ通知で購入を促すことも可能となります。
ハウスコム株式会社
ハウスコム株式会社は賃貸マンション・賃貸アパート・賃貸住宅の情報提供をする企業です。
ハウスコム株式会社は不動産賃貸仲介大手の株式会社レッジと共同で「ハウスコム・ライフスタイルサーチ」を公開しました。
このAIによる物件サービスは、ユーザーの好みや生活スタイルから“住みたい街”そのものを紹介することを目的としています。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
AIレコメンドはLTV向上の効果も期待できる
AIレコメンドには顧客の購買意欲の向上の他にLTV(顧客生涯価値)を向上させる効果も期待できます。
LTVとは1人の顧客が購買行動(取引)を始めてから完了するまでの間に起こる利益の総額値のことです。
既存ユーザーにLTV値の高いユーザー(優良顧客)を増やす事で、企業は利益率の向上を実現できるでしょう。
LTV値の高い優良顧客はその企業の根強いファンに他なりません。
そんな優良顧客に溢れたサイトを作ることができれば、企業にとってはとても理想的です。
AIレコメンドの活用で困った時は?
ECサイトにおいてAIレコメンドの機能がいかに有用か、実例を交えながらご紹介してきました。
AIレコメンドは今や様々なサイトに導入され、顧客にアプローチを続けています。
しかし、自社サイトの場合どのように運用すれば良いか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
AIレコメンドの活用で困った時は、ぜひデジマクラスのコンサルタントに相談してみてください。
マーケティングのプロフェッショナルが親身になってお話をうかがい、適切なアドバイスをさせていただきます。
マーケティングツール導入・活用の事例はこちら
まとめ
いかがだったでしょうか。今回の記事ではAIレコメンドの仕組みや種類、導入のメリットなどについて解説をしました。
購入履歴からおすすめの商品提案を行うAIレコメンドエンジンのシステム導入は今後も進化を遂げて拡大していく事でしょう。
購買率の向上に留まらず、企業にとっての重要課題となる優良顧客の獲得・維持にも大いに貢献することが期待されます。
顧客にとっても自分のためにパーソナライズされた提案を受けられることは気分の良いものです。
これを機に、自社サービスに合ったAIレコメンドエンジンの取り入れを検討してみてはいかがでしょうか。
本稿がそのための一助となれば幸いです。