CookieはWebサーバーのユーザーによる訪問記録を一時的に保存する仕組みです。
ユーザーのスマホやPCのブラウザに送られるユーザー情報でアクセス回数・サイト内での行動記録になります。
そこからユーザーの嗜好や趣味などが読み取れ、何に関心があるか知ることができます。
企業側から見るとCookieはマーケティング戦略を立案する際に活用できる貴重な情報です。
今回はCookieの活用方法や注意点を解説します。
目次
Cookieの仕組み
Webサーバーにユーザーがアクセスした時に、サーバーから送られてくるCookieがユーザーのコンピュータに自動的に保存される仕組みです。
Cookieの中身はテキストファイルになっています。
Cookieの仕組みについて具体的に見ていきましょう。
ユーザー情報を保存
Cookieの構成項目はルールが決められていて、その範囲内でユーザー情報を保存します。
- name
- value
- max-age/expires
- domain
- path
- secure
「name」は、任意の名前を付けて保存します。
「value」には、IDを持たせることでブラウザを認識させたり、訪問回数を記録したりします。
「max-age/expires」はCookieの有効期限を示すものです。
「domain」は、Cookieが発行されるドメインを指定します。
「path」は、Cookieが発行されるパスを設定し、特定のパス下のみでCookieを発行できるよう設定します。
「secure」は、アクセス先が安全なサイトのみCookieを発行できる設定が可能です。
有効期限が設定できる
Cookieには有効期限を設定できますが、無期限の設定はできません。
もし有効期限を設定し忘れてブラウザを閉じてしまうとCookieは削除されます。
ただし、ブラウザは2038年以降の日付が処理できなくなるという、2038年問題があり最長で2038年までしか設定できません。
Cookieの役割は?
Cookieの役割としては、訪問履歴・ログイン情報・カートの中身を一定期間保存する役割をします。
例えばX(旧Twitter)など一度ログイン・ログアウトして、しばらくしてからもう一度ログインするとIDとパスワードがなくても入れます。
Yahoo!ショッピングなどカートに商品を入れたままログアウトしても、商品はそのままです。
このようにCookieは、ユーザーのWebアクセスを簡単にし、便利なサービスを提供してくれます。
また、ユーザーのアクセス情報はWeb担当者にもメリットがある機能といえるでしょう。
Cookieの種類
Cookieには2種類あり、「1st Party Cookie」と「3rd Party Cookie」です。
それぞれ説明します。
1st Party Cookie
ユーザーがアクセスしているWebサイトのドメインから発行されるのが「1st Party Cookie」といいます。
1st Party Cookieはドメインを跨いで使用することができず、そのサイト内だけの閲覧のみとなります。
主にそのサイトの閲覧履歴・ログイン状態の保持に利用されるため、Cookieの利用許可がない場合は正しく機能しません。
また、1st Party CookieはドメインごとにCookieが付与され、横断ができないというデメリットがあります。
3rd Party Cookie
「3rd Party Cookie」は、ユーザーがアクセスしているWebサイト以外から発行されるCookieです。
サイト内にある広告をクリックして他の広告を閲覧すれば、サイトからCookieを受け取ります。
例えば化粧品のサイトを閲覧していて、その後旅行情報を見ていると化粧品関連のバナー広告が表示されるなどです。
このように3rd Party Cookieは、ユーザーが複数のドメインを跨いだ履歴情報が取得できます。
そのためマーケティング分析に応用することもできるのです。
しかし、プライバシーの観点から3rd Party Cookieをブロックする動きも見られるようになりました。
これでは、マーケティング分析をする際に、広告利用や効果測定に支障がでるという問題もあります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
Cookieとキャッシュの関係性
Cookieとキャッシュの違いがよく分からないという意見を聞きますが、全く異なるものです。
キャッシュとはそのサイトを訪問したユーザーが、2回目以降訪問した時にサクサクと閲覧できる機能です。
CookieはIDとパスワードであるのに対し、キャッシュはサイト情報になります。
不特定多数が利用するパソコンに個人情報を残したくない場合は、Cookieを削除すればいいのです。
一方、キャッシュを貯め過ぎるとパソコンやアプリの動作が遅くなるというデメリットがあります。
快適にインターネットを利用したいなら、適宜キャッシュの削除をしてください。
Cookieの活用方法は?
Cookieは私たちのまわりのさまざまなところで活用されています。
代表的な使い方を解説します。
アクセス状況の解析
アクセス解析ではCookieのIDを元に算出します。
CookieのIDさえあれば、セッション数やページの遷移の解析ができるのです。
主にGoogleアナリティクスを利用して計測します。
自社が保有するWebサイトにアクセスしたユーザーの行動を追跡しデータ分析をします。
アクセス状況を解析することで、コンバージョン率の向上に繋げられるのです。
- コンバージョンに至ったユーザーの意図を推測する
- コンテンツを改善し、ユーザーの流入を増やす
コンバージョンは会員登録・資料請求・商品購入をする行為をいいます。
ユーザーが自社サイトにたどり着いた経緯を把握することで、ユーザーの心理が推測できるのです。
Webサイトの改善を進めれば、コンバージョン率も向上します。
また、途中で離脱したユーザーの行動経路を追跡することで、コンバージョンに至らなかった課題を解決できるかもしれません。
CookieのIDを元にユーザーがGoogleやYahoo!などの検索エンジンから流入したのか、SNSからの訪問かが分かります。
どのチャネルから流入したユーザーが多いのか、どこのサイトが人気なのかが把握できれば対策方法も見つかるでしょう。
広告のターゲティング
Cookieは広告配信に利用されていて、ターゲティングする場合はブラウザ判定にも使われています。
3rd Party Cookieを発行することで、ユーザーがどのサイトを訪問しているか把握することができるのです。
得られたデータに基づき、ユーザーの年齢・性別・住所・関心などを各ブラウザに紐付けターゲティングを行います。
近年はユーザー単位でターゲティングできる手法も増えています。
Cookieはリターゲティングでも活用され、自社サイトを訪れたことがあるか判定できるのです。
3rd Party Cookieがあれば、ピンポイントで自社の広告が表示できます。
ユーザーに合わせた情報発信
ブラウザでの行動データを記録することで、ユーザーの属性や嗜好に合わせて訴求力の高い広告を発信できます。
一度訪れたユーザーの履歴から再度訪問してもらうために、興味を持ちそうな商品やサービス情報を提供します。
ユーザーをターゲティングして、再度訪問をするように誘導すればコンバージョンに繋がるのです。
このように企業はCookieを参照すれば確度の高いアプローチが可能になります。
コンテンツマーケティングでは、Cookieが大きなカギを握っているのです。
Webマーケティングの事例はこちら
Cookieを活用するメリットは?
Cookieを活用するメリットは以下の通りです。
- 情報収集の精密度が高まる
- ユーザーの好みに合わせたマーケティングが展開できる
Cookieの動きが掴めれば、企業やマーケターが管理するサイトに訪問したユーザーの動きが把握できます。
マーケティングに欠かせない分析ツールもCookieがあるからこそ精度の高い分析ができるのです。
一度サイトを訪れたことのあるユーザーに絞るリターゲティングもCookieあっての手法です。
年齢・性別・購買傾向などユーザーの属性から確度の高いマーケティングが展開できます。
このように企業やマーケターはCookieの恩恵を全面的に受けているといっていいでしょう。
Cookieの抱える問題
さまざまな恩恵をもたらすCookieですが世界的に大きな問題を抱えています。
欧州ではGDPR、米国ではCCPAといったプライバシーを制限する法案が施行され、プライバシー保護の波が押し寄せています。
インターネットの世界でもユーザーの属性を把握できるCookieを規制する動きが活発になっているのです。
具体的に見ていきましょう。
プライバシー保護の観点での問題
GDPR(欧州一般データ保護規則)やCaCPA(カリフォルニア消費者プライバシー法)ではプライバシー保護が重要視されています。
Cookieだけでは個人を特定できませんから個人情報ではないと一部の法律専門家はいっています。
しかし、企業側には既に個人を特定できる顧客情報が管理されていて、Cookieと紐付ければ完全な個人情報になるのです。
個人情報保護法では、個人を特定できる情報を取得したらすみやかにその個人に通知をすることが必要です。
特に欧州のGDPRでは罰則規定が厳格になっており、2020年1月28日以降の約1年間で1億5850万ユーロ(約200億円)にのぼります。
これはヨーロッパに進出している企業だけでなく、EU域内の顧客を持つ国内企業にも課せられます。
セキュリティ上の問題
Cookieは便利な反面、セキュリティに関する課題もあります。
特にCookieはWebサイトだけでなく画像にも設定できるため、バナー広告の画像からユーザーの閲覧履歴が追えるのです。
「Tracking Cookie(トラッキングクッキー)」と呼ばれ、プライバシー侵害だという意見もあります。
Tracking Cookieで問題となるのがセッションハイジャックです。
CookieにはセッションIDとログイン情報が含まれます。
その情報がSSL化されてもセッションIDさえわかればログインして再現できるためハイジャックといいます。
セキュリティが気になるのであれば各サイトのCookieを削除する設定を行いましょう。
ただし、この問題はインターネットを利用する以上つきまとうことは忘れないでください。
ユーザーが不快感を抱く可能性がある
EUのGDPRに端を発し、Cookieの取り扱いが厳しくなってきています。
日本においても例外ではありません。
トラッキングによるプライバシーの侵害、フィッシングなどのサイバー犯罪に対するセキュリティの意識が高まっています。
スマホユーザーの約8割がWebサイトの閲覧履歴に基づいて広告配信されていることを認識しています。
そして約4人に1人が不快なので止めて欲しいという意見だそうです。
ユーザーの中にはブラウザでプライバシー設定を既に行った人も多くいて、広告ブロックツールを導入する人もいます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
Cookieを活用する際の注意点
個人情報保護法の下、プライバシーやセキュリティに対してユーザーも高い関心を持っています。
企業はCookieを正しく取り扱わなければ、信頼を損ね企業だけでなく商品にとってもイメージダウンになります。
ここではCookieを活用する際の注意点について解説しましょう。
個人情報保護の観点に沿って活用する
Cookieの拡大利用を抑え、取得時の同意取得や利用停止対応などデータ所在を正確に把握するデータマネジメントが重要になります。
これまでは企業主導で行われていた情報管理もユーザーの合意なしには取得すら不可能になって行くでしょう。
企業は個人情報保護の観点に沿って、ユーザーの同意なしで個人情報収集は認められなくなり、処罰の対象になりうるということです。
- 利用目的の特定および通知
- 通知した目的以外に利用しないこと
- 通知した目的以外に利用する場合、本人の同意を取得すること
- 第三者に提供する場合、原則として本人の同意を取得すること
- 安全管理措置を講じ、従業員・委託先を適切に監督すること
このように個人情報を取り扱う時は厳格な社内ルール作りも必要になります。
ユーザーへの配慮を忘れない
企業によるデータ活用に不安を抱くユーザーが一定数いる以上、ユーザー感情を配慮する対応をすべきでしょう。
Cookieの不正利用はしないという同意書はもちろんですが、ユーザーから請求があれば情報開示を積極的に行う姿勢が大切です。
情報漏洩や不正利用への対策を行う
情報漏洩と不正利用対策にはセキュリティの専門家と協議しながら備えましょう。
また、社内からのデータ持ち出しにも注意して管理監督することが必要になります。
どれだけ万全を期していても悪意のあるアクセスを100%防ぐことは難しいです。
しかし、対策を怠り一度でも情報漏洩を起こしたら信頼は失墜する恐れがあります。
インターネットが普及し不正アクセスの手口も巧妙になってきています。
企業の存続すら危うくなる情報漏洩や不正利用への対策はしっかりとっておくことが重要です。
Cookieの活用で困った時は?
インターネットを利用するユーザーのプライバシー保護の高まりで、3rd Party Cookieへの規制が強化されています。
企業もCookieに頼らないマーケティングが求められてきています。
個人情報保護法の規制でプライバシー問題に悩んでいる企業もあるでしょう。
デジマクラスは企業からの相談を受けて必要な情報の提供・課題の洗い出し・ソリューション提案まで行います。
対策後の経過検証もサポート致します。
Cookieの活用で困った時でお悩みの方は是非デジマクラスにご相談ください。
Webマーケティングの事例はこちら
まとめ
世界的にCookieに対する関心が高まっています。
企業はユーザーへのCookie取得の同意への取り組みが迫られています。
対応の遅れや情報漏洩がひとたび起こればダメージは計り知れません。
迅速な取り組みには専門的分野の意見や評価が欠かせないのです。
そしてCookieに頼らないマーケティングを推し進めましょう。