マーケティングを成功させるために非常に重要とされているのが価格戦略です。
価格を高くすると買い手が少なくなり、価格を低くすると売れても得られる利益が少なくなります。
それではどのように価格設定を行うべきなのでしょうか。
この記事では、価格戦略の事例や価格設定の方法をご紹介していきます。
目次
価格戦略が重要な理由
まずは、価格設定がいかに重要かをご説明します。
商品やサービスを購入する場合、消費者が一番に気にするのが価格です。
消費者には予算があります。質の良い商品・サービスであっても高価であれば手が出せないことも考えられます。
そのため、やむなく安価な商品・サービスを選択する消費者が居るのは否めません。
しかし、消費者が手が出せるように低価格に設定すればいいという訳ではありません。
安くしすぎると採算が合わなくなったり、品質を疑われてしまったりすることが考えられます。
価格設定はブランドの価値にまで影響があり、単純なものではないのです。
価格戦略の手法
それでは、価格戦略の手法はどのような種類があるのでしょうか。
この項目では以下6つの価格戦略の手法についてご説明します。
- プライスカスタマイゼーション
- レーザーブレード
- サブスクリプション
- プリペイド
- ペネトレーション・プライシング
- スキミング・プライシング
プライスカスタマイゼーション戦略
まずは、プライスカスタマイゼーション戦略についてです。
この戦略は、利益を最大限に出すために販売する場所・時間によって価格設定を変えるというものです。
大きな遊園地や登山コース付近では、同じ飲み物にもかかわらず普段よりも高い価格設定の自動販売機が設置してあります。
それがプライスカスタマイゼーション戦略にあたります。
大きな遊園地や登山コース付近には、他に飲み物が売っている箇所ないため多少高い価格設定にしても需要があるのです。
このように、販売する場所・時間の需要需給に応じて価格設定を変え、利益を最大限出すことができます。
レーザーブレード型価格戦略
レーザーブレード型価格戦略は、初期費用を低価格に抑えてその後にかかる消耗品などで持続的に利益を出す戦略です。
この戦略は、初めは採算が取れないことはやむを得ないとし、初期導入費用・本体価格を安くして購買意欲を掻き立てます。
ここでは、利益を出すことではなく多くの消費者に購入してもらうのが一番の目的です。
そして、消耗品の価格は利益が取れるように設定することで、本体でのマイナスを補って徐々に利益化する仕組みです。
多くの消費者に初期導入をしてもらっているため、多くの消費者が消耗品を買い求めてくれます。
さらには、初期費用を安価にすることで普及を早め、競合他社の競り勝つ効果も期待されています。
サブスクリプション
サブスクリプション型価格戦略は、単発的に購入してもらう売り切りモデルではなく「利用期間」に対して利益を得る戦略です。
最近よく目にしますが、新聞の月額購読料や携帯電話の月額使用料など昔からある戦略になります。
サブスクリプション型価格戦略は、消費者が継続的に課金するシステムであるため継続的な利益が期待されます。
また、売り切りモデルとは異なって、ユーザーとの接触が多い分より多くの顧客データが取得可能です。
そしてこの戦略は、売り切りで購入する場合よりも消費者の導入時の初期費用を安く抑えることができます。
そのため、消費者は手軽に導入できる仕組みです。
プリペイド型価格戦略
プリペイド型価格戦略は、購入するタイミングよりも前にお金を支払う仕組みです。
そうすることで、様々なメリットが生まれます。
この方法は、商品やサービスを受け取るタイミングと支払いのタイミングをずらせるところが特徴です。
そのため、ギフト需要に応えることができるようになりました。
例えば、Amazonギフト・Google Playギフトカード・スターバックスカードなどがこの例です。
この方法は一度カードを購入したら、それらに対応した商品やサービスしか購入できないため、顧客を囲い込むことが可能です。
ペネトレーション・プライシング
ペネトレーション・プライシングとは、商品やサービスを一早く市場に普及させることを目的とする戦略です。
そのため、市場浸透価格戦略といわれ価格設定は原価と同等であったりそれ以下に設定されたします。
そして競合他社が低価格競争についてこれなくなり、一早くシェア率を高めることが期待されています。
しかしこの戦略はリスクがあり、販売数と反比例して製造原価が下がる見込みがないと成立しません。
また、利益を得られるほどの販売数に至るまでには時間がかかるため、それに耐えられる企業である必要があります。
スキミング・プライシング
続いてはスキミング・プライシングについてです。
この戦略は、先ほどのペネトレーション・プライシングとは正反対で、販売当初から利益を得ることが目的です。
始めは高い価格設定で、開発費・設備投資の回収を済ませます。
そして競合他社が低価格で勝負してきた場合には、価格を引き下げて競争することになります。
成功すれば、初期の段階で開発費・設備投資費が回収されるため、価格を引き下げても問題ありません。
多くの企業では、このスキミング・プライシングの戦略を採用しています。
マーケティング戦略の事例はこちら
価格設定方法
様々な価格戦略の手法が分かりましたが、実際にはどのように価格を設定すればよいのでしょうか。
この項目では、価格の設定方法についてご説明します。
コストプラス法
価格設定の方法の1つに、コストプラス法があります。
この方法は、ある利益率や利益額を製品やサービス開発のコストにプラスして価格設定するものです。
式で表すと直接費+間接費+一定の利益=価格となります。
この価格設定方法は、商品やサービスが売れれば一定の利益を得ることが可能です。
しかし、消費者が設定された価格で購買意欲を駆り立てられるかは別問題となります。
そのため、受注生産品であったり独占性のある製品やサービスに適しています。
需要価格
次に、需要価格設定をご説明します。
この方法は、商品やサービスを購入してくれるであろう対象が、どのくらいの価格であれば支払うかという点に着目します。
この方法需要価格設定を取り入れているもので代表的なのが航空チケットです。
航空業界は、顧客の二ーズ・購買行動を分析し同じ区間でも様々な価格設定を行っています。
上限価格や下限価格の相場を知ると、設定する価格を決めることもできます。
競争志向型
次は競争志向型価格設定です。
この方法は競合他社を意識した価格設定で、競合ブランドがの価格設定よりも安いかもしくは同等での価格で勝負します。
他社と差別化するのが難しい商品やサービス業界が取り入れる方法です。
競合している企業が低価格で勝負してきた際には、自社も価格を見直ししなくてはなりません。
心理的価格
続いては心理的価格設定です。
この方法は、消費者の心理を利用した価格設定手法になり、人は合理性だけで価値を判断していないという考え方になります。
価格は、商品やサービスを得るための対価でもありますが、他にも価値を期待させる効果があります。
例えば、有名な人気ブランドの場合には、高額だとしてもそれ相応の価値があると期待するため購入する人がいます。
そのような消費者が多いため高額な価格設定が可能になるのです。
また、他にも行動経済学では、3種類の価格設定があると「極端の回避性」という心理が働くことが分かっています。
そのため、中央の価格を無意識に選択してしまうのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
価格マネジメント
競合他社が低価格で勝負してきたため、こちらも価格を下げなくていはいけない状況になることもあるでしょう。
しかし、値引きは簡単に行えるものではありません。
なぜならブランド力が低くなってしまったり、利益を得ることが難しくなるためです。
そのため価格マネジメントは非常に重要なポイントになります。
この項目では価格マネジメントを行う際のポイントをご紹介していきます。
価格マネジメントの注意点
多くの企業では、感覚的なものに影響されて価格マネジメントを行っています。
例えば、競合他社が値下げをしてきたから、予想よりも販売数が伸びないから、といった理由で値下げをするといった具合です。
しかし、値下げをした場合に得られる利益は継続的なものではありません。
消費者は、待てば値下げが行われると学習してしまうのです。
そうなってしまうと、値下げされた価格が当たり前となってしまい、値下げ前に購入する意欲が下がってしまいます。
そのため、販売当初に買うメリット作るなどの戦略が必要となります。
価格マネジメントの3つの要因
価格マネジメントが影響を受ける要素に、市場の需給要因・戦略要因・取引要因があります。
市場の需給要因はガソリン料金のように市場の需給によって変動があるため、企業側で操作することができません。
戦略要因は、マーケティングにおいて全体を俯瞰し戦略的に価格をマネジメントする部署が存在するかしないかです。
日本の企業にはそのような部署がほとんどないため、その場しのぎの価格マネジメントに陥りがちです。
取引要因では、資材調達などの取引の際の技術にあたります。
多くの企業の価格マネジメントは、この取引要因が原因で失敗しているといわれています。
知識の共有が大切
価格マネジメントに関する知識がある人とない人とでは、売上と利益のどちらに重きを置くかのという論点にズレが生じます。
そのため、有意義な議論をおこなうには社内教育などでの知識の共有が重要だといえるでしょう。
価格戦略には、先ほど述べたスキミングプライスに関する知識や、ブランディングに関する知識の共有が有効です。
事例①:サイゼリヤの価格戦略
ファミリーレストランのチェーン店サイゼリヤの価格戦略の事例を紹介します。
サイゼリヤは、圧倒的な低価格を実現し続け、若い世代や家族連れから人気を博してきました。
低価格でありながらも、品質を保ったイタリア料理が提供できているのは、徹底的に効率化・システム化に力を入れているためです。
自社農場を所有して野菜の生産過程をシステム化したり、生産性向上のための専門部署を設置したりと効率化を徹底しています。
サイゼリヤの低価格の実現は、独自の経営戦略だといえるでしょう。
マーケティング戦略の事例はこちら
事例②:Amazonの価格戦略
アメリカの情報技術産業でもトップといわれているAmazonは、競合の排除に専念しました。
競合他社より、低コストでサービスを提供して顧客を集めることをめざしたのです。
この戦略は、低コストでサービスづくりをしなければらなず、最先端をいく技術力や徹底した業務効率化が求められます。
Amazonは、巨大な物流センターを設置して物の一元管理を行い、物流コストを圧倒的に下げることに成功しました。
また、一早く送料無料というサービスを謳い、競合の排除に成功したのです。
事例③:東京ディズニーランドの価格戦略
大手テーマパークの東京ディズニーランドは、入園チケットの値上げをこれまでに10回以上も実施しています。
決して安くはないチケットですが、値段が上がっても来場者数が減ることはありません。
しかし、値上げを実施する代わりに様々なコンテンツを追加し、来場者の支払意欲を高めています。
このように、ディズニーランド側は来場者の支払意欲を把握した上で値上げをするため、値上げを成功させています。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
事例④:JR東日本の価格戦略
鉄道事業者JR東日本は、新型コロナウイルスの影響により大きく利益が落ち込みました。
そのため値上げを実施し、さらにはダイナミックプライシングの検討を発表しています。
これは、需給に応じて価格を変動させることで利益を最大化しようという試みです。
混雑時は価格を上げ、閑散時は価格を下げるなど利用者から不満が出にくくしています。
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価格戦略で勝つには
価格戦略で競合他社に勝つためには、価格戦略についての知識が必要です。
深く考えずに戦略を立ててしまっては、効果が出たとしても長続きしないでしょう。
そのため、価格戦略についての悩みはマーケティングのプロに相談することをおすすめします。
まとめ
この記事では、価格戦略の事例や価格設定の方法についてご紹介しました。
価格設定は売れないからといって安くしすぎると、採算が合わなくなったり品質を疑われてしまったりするリスクがあります。
価格はブランドの価値にも影響するため、単純なものではないのです。
そのため、価格戦略として人の購買意欲を掻き立てる心理や、価格マネジメントを学ぶ必要があります。
価格戦略でお困りのことがあれば、プロのコンサルタントのデジマクラスに是非ご相談ください。