リレーションシップマーケティングという言葉をご存知でしょうか?
顧客との関係を重視するこの手法は、既にマーケティングの基本概念となりつつあります。
しかしこれは長い歴史のある概念ではなく、高度経済成長期、大量生産-大量消費の時代にはまだ登場しておりませんでした。
リレーションシップマーケティングは、バブル崩壊以降、比較的最近になって登場した概念です。
時代の変化を象徴するようなリレーションシップマーケティングという概念について今回の記事で紹介します。
それではよろしくお願いします。
目次
リレーションシップマーケティングの概要
リレーションシップマーケティングとは、顧客との友好的・安定的な関係を構築することによりメリットを享受する手法です。
過去に主流であったマスマーケティングとは異なり、新規顧客以上にリピーター獲得・既存顧客の維持に力を注いでいます。
企業がやるべきことは顧客との長期的・安定的な関係の中で丁寧に顧客のニーズを分析・特定することです。
そしてそれを満たすべく自社の製品・サービス・販売方法そのもののアップデートを行います。
これにより短期の成果よりも、長期的な関係・ブランドイメージを確立することによる顧客LTV向上に重点を置いている点が大きな特徴です。
これは上位20%の優良顧客が売上げ全体の80%をもたらすという「パレートの法則」に裏打ちされた理論により成り立ちます。
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そもそもの定義は?
リレーションシップ、よい「関係」を構築するといっても、その「関係」とはどのようなものなのでしょうか?
簡潔にいえば「顧客が長期的・継続的に企業の商品・サービスを利用してくれる」関係です。
ポイントはこの関係、その内部にある情報が企業・顧客それぞれに対して双方向のものであるという点です。
企業は各種ツールを使い顧客のニーズや状況・悩みについてヒアリングします。
また、顧客はそのヒアリング機会や実際の購買行動を通じて企業へと希望や不満を提示します。
この関係をどのようにデザイン・構築し、そして計測を行うのか、この点において企業の手腕が試されるといえるでしょう。
リレーションシップマーケティングの事例
前項ではリレーションシップマーケティングの定義について確認いたしました。
しかしその概念の指す範囲は非常に広く抽象的で、明確にそのイメージはまだ現時点では浮かびづらいかと思います。
本項ではそんなリレーションシップマーケティングについて、4つの具体例を紹介していきます。
後述のメリットや詳細な種類にも繋がるイメージを捉えていただければ幸いです。
Amazon
現代において知らない人はほとんどいないであろう、世界最大級のインターネット通販サイトです。
Amazonでは、アップセル・クロスセルを実現し、購入履歴に応じて、顧客に適した商品をおすすめ表示してくれます。
マスマーケティングのように誰にでも同じ情報を一方的に流すのではなく、顧客一人一人に合わせた情報を配信します。
ディズニーランド
ディズニーグループでは、「顧客」という言葉を一切使わず、来場者のことは常に「ゲスト」と呼んでいます。
また、従業員同士の書面においても「ゲスト」という言葉には、大文字の「G」が使用されています。
これは顧客一人一人への敬意や尊重が実践された文化がサービスに落とし込まれている好例です。
東京ディズニーランドの90%を超えるリピーター率もこの文化に支えられているといえます。
ザ・リッツ・カールトン
世界各国に展開されており、国内でも大阪・東京・沖縄・京都の4箇所に店舗を構えた豪華ホテルです。
リッツ・カールトンでは、IT技術を利用することによって顧客一人一人に最適化されたサービスを提供しています。
顧客が自ら要望を出さなくても、リッツ・カールトンが顧客の潜在的なニーズを探り、サービスを提供します。
「かゆいところに手が届く」を体現したおもてなしで、顧客のリピーター率を上げている好例です。
ZOZOTOWN
多数のキャンペーンシナリオにより、コンバージョンレート(CVR)大きく引き上げることに成功している好例です。
ZOZOTOWNは、アクセスログ・購入履歴・デザインの好みなど、顧客一人一人に関する詳細な情報を蓄積しています。
そして、取得した情報を多様なキャンペーンの中で活用することで、顧客からのレスポンス率やロイヤルティの向上を実現しました。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
リレーションシップマーケティングのメリット
リレーションシップマーケティングには多くのメリットが存在します。
その中でも、本項では特に大きな4つの観点に絞って解説します。
1人あたりの収益を最大化する
リレーションシップは顧客と有効的・安定的な関係を構築する手法です。
顧客を固定的なファン(リピーター)として獲得することができれば、生涯に渡り何度も繰り返し商品を購入することが期待されます。
すなわち、既存顧客をファンへと昇華させることでLTV(顧客生涯価値)を向上させることができます。
これにより長期目線での顧客1人あたり収益を最大化することができるのです。
安定した利益が獲得できる
前項にて、長期目線で顧客1人当たりからの利益を最大化することができる点について確認しました。
長期に渡り安定的な収益が望むことができる、これは企業・事業の継続的な発展を可能にする条件そのものです。
企業経営においてあくまでも前提に存在するのは「ゴーイングコンサーン」、すなわち企業・事業の存続こそが経営の要点です。
その点においても、長期的・安定的に収益を望むことができるリレーションシップマーケティングは理論に即した手法だといえます。
口コミからの集客
現代において、企業にとっての顧客は単なる収入源以上の存在になりつつあります。
特にミレニアル世代・Z世代と呼ばれる若年層の生活において、SNSはテレビ・広告など従来のメディア以上の存在感を見せています。
その生活様式の変化に伴う、SNSにおける口コミの重要性・影響力の向上は企業にとっても見逃すことはできません。
固定ファンの獲得、そしてそれがSNSのポジティブな口コミに繋がると考えれば、顧客は収益源以上に広告塔としての役割を担います。
コストカットにつながる
固定ファンが獲得できれば、という前提にはなりますが顧客による口コミ効果による広告費の削減が期待できます。
商品の営業・販売の過程において、広告費の占める割合は多くのケースで非常に大きなものになりがちです。
その点において、普段かかるはずの大きな固定費が削減できるというのは非常に大きなメリットとして映ります。
リレーションシップマーケティングの手法
「リレーションシップマーケティング」という言葉自体が含む範囲は非常に広く、抽象的な概念・手法です。
本項ではそんなリレーションシップマーケティングを3つの手法に細分化することで、より具体的にお伝えします。
それぞれの手法・概念について学ぶことで、より「リレーションシップマーケティング」全体の概念の理解の助けにもなります。
1つずつ丁寧に確認していきましょう。
データベースマーケティング
データベースマーケティングとは、データベースを活用することによって既存顧客に効率的なアプローチを取る手法です。
顧客の個人情報・購買頻度や履歴などの膨大なデータを収集・蓄積・分析・活用することでニーズを確認することができます。
新規顧客の獲得ではなく、既存顧客の維持、及び単価の向上を主な目的としています。
One to Oneマーケティング
One to Oneマーケティングとは、消費者一人一人に対してニーズ調査・最適なコミュニケーションを行う手法です。
インターネットが普及するまでは、新聞・雑誌・テレビといったマスメディアが社会の情報伝達を担っていました。
基本的にこの時代では情報の流れは一方通行であり、顧客の情報・ニーズは埋もれがちであったといえます。
しかし、インターネット社会の実現、スマートフォン、SNSやメール文化の浸透により状況は大きく変化を迎えます。
個人の嗜好の細分化、そして企業と顧客の接点の増加によって、顧客一人一人に対するアプローチが必要であり可能になったのです。
こうした状況の中から生まれたのがOne to Oneマーケティングです。
サービスマーケティング
「サービス提供企業」「サービス提供者(従業員)」「顧客」という3者間で行われる以下の3つの活動を総合した概念です。
- エクスターナルマーケティング…サービス提供企業が顧客に対して行うマーケティング
- インタラクティブマーケティング…サービス提供者(従業員)が顧客に対して働きかけるサービス
- インターナルマーケティング…サービス提供企業が従業員に対して行うマーケティング
サービスという無形商品を扱う特性上、その仕組みや提供構造を確認することは非常に重要なポイントです。
別のマーケティング手法を使用する場合においても、この図を理解しておいて損はないでしょう。
効果的に行う方法
リレーションシップマーケティングは非常に強力な手法ですが、抑えておくべきポイントがあります。
それは、顧客の全ての情報を収集しようとしないことです。
データベースや各種ヒアリングツールの活用において、収集・蓄積したい情報量に比例してコストは増加します。
今一度自身の事業内容を確認し、必要な情報のみを収集・活用するスリムな体制を整えましょう。
顧客との有効関係構築に成功したとしても、固定費により圧迫されてしまえば事業としての成功とはいえません。
必要な情報に絞り収集・蓄積するシステムを構築することで、より効率的・効果的な戦略展開が可能になります。
顧客との関係作りに活用できるツール
過去においては、「顧客の本音」が最も表れる場所としてはラジオなどのメディアが使用されていました。
しかし現代においては、SNS・DM・電話などの「顧客の本音」を聞くためのツールが主流となっています。
本項では、そんな各種ツールについて、1つ1つその特徴を確認していきたいと思います。
SNS
テレビに代わり、現代におけるメディアの最たる存在となりつつあるツールです。
大きな特徴として顧客の意見がタイムラインに反映されるまでの「スピード感」が挙げられます。
これにより、常に最新の状況を、「今」顧客が何を感じ何を思っているかを企業が確認することができます。
DM
本項の3つのツールの中では唯一のオフラインツールです。
「オフライン」という特性上、SNSや電話のようなリアルタイム性は失われてしまいます。
しかし、その大きな特徴・メリットとして「調査対象の年齢に制限されない」という点が挙げられます。
超高齢化社会への道を歩んでいる現代日本において、インターネットに不慣れな高齢者層も大きなマーケットです。
しかし、インターネットに限定したツールではその高齢者層へのヒアリングは困難なものです。
オフラインツールとしてDMを活用することで、高齢者層へリーチする手がかりになります。
電話
従来からある手法ではありますが、電話によるヒアリングにはリアルタイム性以上のメリットがあります。
それは、文面ではなく発話である関係上、多くの内容を詳細にヒアリングすることが可能な点です。
これによって、対象が決まっていれば他のいかなる手段よりも顧客ニーズを丁寧に確認することができます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
リレーションシップマーケティングの今後の展望
リレーションシップマーケティングという手法が登場したのは比較的最近のことです。
インターネットの発展によって、ようやく顧客状況の詳細な把握が可能になったからです。
顧客との関係を重視し、長期的・持続的な企業利益へと繋げていくリレーションシップマーケティングの魅力は非常に大きなものです。
そして今後もその流れは変わることのないものと予想されます。
他メディアに対するインターネットの優位性は現時点で変化する目処は立っていません。
その上、市場環境の複雑化の流れは止まらず、顧客ニーズ把握の必要性は増加する一方です。
今後も、リレーションシップマーケティングは長きに渡って採用されるマーケティング手法であると予想されます。
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リレーショナルマーケティングで悩んだら
これまでのお話の通りリレーションシップマーケティングは現代において非常に有力な戦略といえます。
しかし広い範囲のマーケティングを含む反面、その抽象度・自由度は高く、実現は容易ではありません。
実際の戦略立案・実行・効果測定など、手順1つ1つに豊富な知識や経験を必要とします。
マーケティングに不慣れ・不案内な企業が自社のみで実行するにはハードルの高い手法であります。
もし「難しそうだけど興味はある」と感じていただけたら、デジマクラスへ一度ご相談ください。
経験・知識の豊富なプロフェッショナルを揃え、あなたのご相談をお待ちしております。
マーケティングのプロと共に、ぜひ貴社に最適なマーケティング手法を立案・展開していきましょう。
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まとめ
いかがだったでしょうか。
その立案・実行までのハードルは高いものの、現代において非常に効果的で強力な手法であることがおわかりいただけたかと思います。
かつてのマスマーケティングが主流であった時代とは異なり、現代では顧客との関係はマーケティング効率に直結します。
改めてその重要性を確認できた今回を機に、ぜひ貴社でもリレーションシップマーケティングを導入しましょう。