マーケティングを考えるうえで重要な要素が、消費者に商品・サービスを届けるまでの「チャネル」です。
マーケティングチャネルにはどのような種類があるのでしょうか?
Web時代に活用したいチャネルや種類ごとの特徴を把握して、自社の利益を伸ばすチャネル戦略を立てましょう。
チャネル戦略を構築するステップや流通チャネルの長さ、チャネルをマーケティングに生かす方法も解説します。
目次
マーケティングチャネルの概要
「マーケティングチャネル」とは製品やサービスが、生産者の手を離れて消費者の元へ届くまでの経路や媒体・組織です。
現物の商品がユーザーの手に渡るルートだけでなく、自社商材に集客する媒体もチャネルに含まれます。
近年は無形商材の増加や消費者が触れる媒体の多様化によって、チャネルの種類も多岐にわたるようになりました。
商品やサービスの売上増加を図るには、チャネルの特徴や役割に応じた戦略が必要です。
調査や宣伝・接触・交渉といったチャネルごとのプロセスを最適化する取り組みを「チャネル戦略」と呼びます。
マーケティング戦略の事例はこちら
マーケティングチャネルの種類
マーケティングチャネルには目的によって3つの種類があります。
それぞれの意味や役割・該当する媒体や経路を正しく理解しておけば、戦略を立てやすくなるでしょう。
販売チャネル
「販売チャネル」は実際に消費者が商品を購入する場所や手段です。
BtoC事業の場合、オンラインであればECサイトやネットショップ・オフラインであれば店舗や窓口が該当します。
消費者側からすると企業から物を買う場所であり、企業にとっては顧客に物を売る場所です。
製品が生産者から消費者に届くまでに通るルートの中で、最後に通過するチャネルと考えましょう。
流通チャネル
商品が生産者から消費者へ届くまでには、さまざまな経路をたどって販売チャネルに届きます。
運送業者や小売業者・問屋・卸売業者などの流通業者が「流通チャネル」です。
流通チャネルは商品の売り方によって次の2種類に分けられます。
- 直接流通チャネル
- 間接流通チャネル
「直接流通チャネル」は「直販」とも呼ばれており、代理店や小売業をはさまず生産者から消費者へ届ける形態です。
直営店の他、訪問やカタログを使った通信販売が採用される場合もあります。
「間接流通チャネル」は間に流通業者を介在させ消費者に届ける形態です。
間に入る業者が多くなるほどチャネルが長くなると考え、3段階までに分類します。
コミュニケーションチャネル
「コミュニケーションチャネル」とは消費者に商材をPRしたり、ユーザーの意見を取り込んだりする手段や媒体です。
新聞やテレビなどのメディア・Webサイト・SNSなどが例として挙げられます。
コミュニケーションチャネルの役割は自社商材を顧客に見せ、集客することです。
実店舗を持つ企業の場合は店頭にのぼりを立てたり屋外広告を使ったりして、店舗やその近くにいる人へアピールします。
・消費者が実際に商品を買う「販売チャネル」
・生産者からユーザーに届くまでの道のり「流通チャネル」
・商品を見せて集客する「コミュニケーションチャネル」
チャネル戦略の役割
チャネル戦略はマーケティング戦略の立案と実行を表す「マーケティングミックス」の一つです。
マーケティングミックスは「Product」「Price」「Place」「Promotion」の「4P」という要素から成ります。
このうち「Promotion(どのように)」「Place(どこで)」に関係するのがチャネル戦略です。
Promotionに関連するチャネル戦略の役割として、次の3つが挙げられます。
- 見込み顧客を調査して自社商品・サービスへの興味を把握する(調査)
- 広告の内容や配信の仕方を考える(プロモーション)
- 広告やコミュニケーションを通じて見込み顧客にアプローチする(接触)
この3つに取り組みたいときに対策するのはコミュニケーションチャネルです。
Placeに関わる役割には以下の3つがあります。
- 顧客ニーズを深く理解する(適合)
- 運送など物流を管理したり運用したりする(物流)
- 流通にかかる経費を管理する(コスト)
これらに関係するのは販売チャネルと流通チャネルです。ただ各チャネルは1つの役割だけを果たしているとは限りません。
実店舗やECサイト・SNSといったチャネルは互いに作用し、複雑に関連していることを覚えておきましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
チャネル戦略の構築ステップを紹介
チャネル戦略を自社のマーケティングに取り入れるときは、次の手順で構築を進めます。
- ターゲットを明確に定める
- 生産者からユーザーまでに流通業者が介入する度合い(チャネルの長さ)を決める
- 直販でない場合は流通業者の数(チャネルの幅)を決める
ターゲットの絞り込みはチャネル戦略に限らず、マーケティング施策全般において重要です。
BtoCであれば具体的な個人の人物像をペルソナとし、価値観や行動特徴から訴求力の高いアプローチ方法を定めます。
BtoBでも個人向けと同じようなペルソナ設定だと、効果を発揮しない場合もある点に注意が必要です。
自社の商材を必要としている企業の業種や規模だけでなく、リードとなり得る担当者の役職まで細かく設定します。
次の項で深掘りする「流通チャネルの長さ」は最終的な販売価格や管理の手間・出費に大きく関わる要素です。
段階ごとのメリットやデメリットを理解して適切な長さを決めましょう。
流通させる数を重視するなら、小売業者を選ばない「開放的流通政策」で流通業業者の数を増やすのが適切です。
ある程度の価格とブランドイメージを担保したい場合は、「選択的流通政策」を採用して小売・卸売業者を絞ります。
流通チャネルを自社で徹底的に管理したいなら、「排他的流通政策」で特定業者にのみ販売権を与えましょう。
・ターゲットを明確化
・流通チャネルの長さを決定
・流通チャネルの幅と流通政策の種類を決定
流通チャネルにおけるチャネルの長さ
自社から消費者に商品・サービスを届けるまでに、どの程度の流通業者を介入させるかが「チャネルの長さ」です。
0〜3段階までに分けられるチャネルの長さと、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
0段階チャネル
メーカーや開発企業が直接商品・サービスを提供する「直販」の形態を、「0段階チャネル」と呼びます。
0段階チャネルでは運送業者以外の流通チャネルが存在しません。
小売業者を介在させないことで、消費者に届くまでの過程を全て管理できるのが大きなメリットです。
自社製品の通信販売や建売住宅をはじめとして、十分な利益が見込まれる商材を扱う場合に適しています。
クラウドサービスなど提供会社からのサポートが必要なサービスも、0段階チャネルで売りたい商材です。
ただ個人向けの商品をインターネット上で売る場合は、0段階チャネルに当たる自社ECが最適解とも限りません。
複数社の製品を比較しながら買い物したいユーザーにとっては、ECモールに出店されていた方がアクセスしやすいでしょう。
1段階チャネル
「1段階チャネル」は「メーカー(生産者)→販売チャネル→消費者」の流れで販売される形態です。
間接流通チャネルの中では最も流通チャネルが短くなっています。
道の駅が農家から直接仕入れた野菜を売る方法と考えれば、1段階チャネルをイメージしやすいでしょう。
販売する店側は仕入のコストを抑えられ、消費者はスーパーよりも安い値段で野菜を買えます。
ただ販売する商品の数を重視する場合、1段階チャネルだと流通業者が1社のみになるため不十分になりがちです。
あくまでも少量の商品を安く届けたいときに採用する長さととらえましょう。
2段階チャネル
「2段階チャネル」は国内企業が最も多く取り入れている流通チャネルの長さです。
スーパーで商品カテゴリーごとに卸売業者をはさんでいる例を考えると分かりやすいかもしれません。
「メーカー(生産者)→卸売業者→小売業者(販売チャネル)」の順に商品が流れます。
仕入や販売の数が多い商品を扱っているときは、1番コスパがよくなる可能性が高いでしょう。
1段階までのチャネルに比べて流通コストはかさみますが、販売数も多くなるため利益を見込めます。
特にダースやグロス単位で販売したいものを売るなら、かかるコストと効率のバランスが取れる長さです。
3段階チャネル
間接流通チャネルの中で最も多くの流通業者を介在させる形態が「3段階チャネル」です。
2段階チャネルより間に入る小売業者が1つ増え、「メーカー→卸売業者→2次小売業者→小売業者→消費者」の流れになります。
以前は文具業界・駄菓子業界で多かったチャネルの長さですが、流通コストが高く現在はあまり採用されません。
流通が進歩した現代では一気に販売チャネルまで商品を運べるため、介入する小売業者は1つで十分になったのです。
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Web時代のマーケティングチャネル
インターネットが普及する以前の時代と比べて、現代のマーケティングチャネルは年々進化しています。
誰もがWeb上のコンテンツにアクセスできるようになった今、功を奏する戦略はどのように変わってきたのでしょうか?
インターネットの普及で変化する
スマートフォンが普及してからは、インターネットにアクセスできる人の数も大幅に増えました。
新聞やテレビで情報を得て実店舗に足を運ばなければならなかった時代と比べて、消費者の行動も様変わりしているのが現状です。
Web時代といわれる現在は多くの人がさまざまな媒体を使い、場所や時間を問わず買い物を楽しんでいます。
タッチポイント(企業と顧客の接点)の増加はマーケティング戦略において重要な現象です。
活用したいマーケティングチャネルも多様化しており、ターゲットの行動特徴や好みに応じて最適化する必要があります。
インフルエンサーの影響力を活用できる
InstagramやX(旧Twitter)・FacebookといったSNSは、現代における重要なコミュニケーションチャネルです。
特に20〜30代の若年層をターゲットとする場合、SNSでのアピールは欠かせないといっても過言ではないでしょう。
自社商品やサービスの認知度や売上の向上を図るカギが「インフルエンサー」の存在です。
インフルエンサーにはモデルや芸能人・YouTuberなどがおり、膨大なフォロワーやファンを抱えています。
投稿で自社商材をおすすめしてもらえれば、彼・彼女らのフォロワーやそのフォロワーまでアピールが可能です。
オムニチャネル戦略
実店舗やECサイトなど複数の販売チャネルや種類の違うチャネルを連動させる施策を、「オムニチャネル戦略」と呼びます。
時間や場所に縛られず買い物を楽しみたいユーザーにとって、複数のチャネルを購買に役立てられる仕組みは魅力です。
リアルとネットをシームレスに連携させ買う場所に関わらず同じ体験を与えられるようにすると、顧客の満足度が上がります。
ECサイトでも店舗でもポイントやクーポンを使える、ECサイトから店舗にある在庫を確認できるなどが代表的な体験です。
Webの活用が前提となった現代では、リアルとネットの境目をなくす戦略が企業の未来を大きく左右します。
・インターネットの普及でチャネルが多様化
・SNSマーケティングにはインフルエンサーの存在が重要
・オムニチャネル戦略で顧客の満足度を向上
マーケティングチャネルの活用方法
マーケティングチャネルを適切に設定して戦略に生かすには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
まず確認したい基本のポイントからコミュニケーションチャネルとなるWeb媒体、BtoBにおける販売チャネルまで解説します。
チャネル活用の基本的なポイント
チャネル戦略を立案するとき最初に考えたいのがSTPの構成要素です。
STPとは分析に使われるフレームワークの1つで次の3要素から成り立ちます。
- Segmentation(セグメンテーション)
- Targeting(ターゲティング)
- Positioning(ポジショニング)
「Segmentation」とは自社商材が売れる市場を細かくグループ分けすることです。
「Targeting」でアピールすべき層をさらに絞り込みます。
「Positioning」は競合他社の数や状況を調べ、自社がどの位置にいるのかを見極める取り組みです。
この3つを最初に済ませておかなければ、活用すべきチャネルが定まらず売上の増加も見込めません。
STP分析でターゲットと自社の位置を把握できたら、顧客の利益を最大化する方法を考えましょう。
顧客は自分が得られる利益が大きい手段で購入するため、消費者視点で活用するチャネルを考える必要があります。
Web媒体をコミュニケーションチャネルとして活用
SNSが普及した現在でも、オウンドメディアやリスティング広告などWeb媒体のコミュニケーションチャネルは有益です。
自社サイトにコンテンツを拡充するだけでなく、検索エンジンごとに設けられている広告も積極的に活用しましょう。
リスティング広告は検索ワードに連動して表示されるため、自社サービスを欲している人に情報を届けやすい手段です。
またオウンドメディアのコンテンツにユーザーの興味を引ける情報があると、リピート率の向上を見込めます。
自社サイトの更新情報をX(旧Twitter)で配信するなど、SNSと併用してWeb媒体のコミュニケーションチャネルを活用しましょう。
BtoBの販売チャネルはオンラインセミナーや商談
BtoBの無形商材は現物を扱うECビジネスと違って、販売チャネルとしてオンラインやオフラインの店舗を用意しません。
代わりに「サービスを購入する場」として機能するのが、オンラインセミナーや商談です。
セミナーの運営担当や営業担当が販売店員の役割を果たし、無形商材を売る場を作ると考えます。
セミナーや商談は販売だけでなく「交渉」や「商材認知」の役割も果たすのが特徴です。
後ひと押しというところまで検討が進んでいる顧客に対するときは、交渉と販売の機会をセットで作れます。
問題解決型営業の場合は何度か商談を行い、最初にヒアリングと自社サービスの認知・次回以降で販売という流れも一般的です。
・まずSTP分析と顧客利益の最大化を考える
・Web媒体をコミュニケーションチャネルとして活用する
・BtoBの無形商材ではセミナーや商談を販売チャネルとする
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
マーケティングチャネル戦略の事例
チャネル戦略で成功を収めている企業の1つが、大手ファストファッションブランドのUNIQLOです。
販売チャネルとして実店舗とECサイト・モバイルアプリを活用しています。
中でもアプリは広告を配信するコミュニケーションチャネルとしても機能しているのが特徴です。
モバイル会員限定でクーポンを配布し店舗で使える施策を行った結果、実店舗の来店者数が増えました。
ECサイトも使いやすさと視認性を重視して作られており、実店舗の情報をチェックできるなど連携の施策も充実しています。
マーケティングチャネルで悩んだら
マーケティングチャネルに適切な対策を取るには、まずターゲットの絞り込みや自社がいる位置の確認が必要です。
顧客に最大限の利益を与える施策も考えなければなりません。
チャネルとして使う媒体の選定を含め、難しいと感じたときはぜひデジマクラスのコンサルティングをご利用ください。
マーケティングの基礎となるSTP分析からチャネル戦略の構築まで、最適なソリューションを提供します。
マーケティング戦略の事例はこちら
まとめ
マーケティングチャネルは「販売チャネル」「流通チャネル」「コミュニケーションチャネル」の3種類です。
いずれも商品や生産者から消費者の手に届くまでに活用される経路や媒体・組織を表します。
Web時代ともいわれる現在はスマホの普及率が高く、多くの人が場所や時間に縛られず買い物を楽しんでいるのが特徴です。
多様化したチャネルをうまく活用して、リアルとネットを連動させる戦略が集客やリピートにつながります。
Web媒体とSNSの両方を使った効果的な宣伝も現代のマーケティングで有効な手段です。
戦略の立案に不安を感じるときはコンサルティングも活用して、施策を考えていきましょう。