企業の営業活動は従来、企業主導で行う「プッシュ型営業」が主流となっていました。
しかしBtoBの領域において、顧客側からのアクションを引き込む「プル型営業」が求められるようになっています。
その背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
この記事では、BtoBにおいてプル型営業が求められる背景やメリット・デメリットなどを分かりやすくご紹介します。
プル型営業の導入を検討中のご担当者の方はぜひ参考にしてください!
目次
BtoB営業の特徴
ここではBtoB営業の特徴をご紹介していきます。
BtoB営業のBtoBとはBusiness to Businessの略であり、いわゆる企業対企業の取引を指します。
つまりやり取りをする顧客は企業の担当者であり、BtoB営業は法人営業と呼ばれるケースも多いです。
顧客が個人となる場合よりも取引金額が高額となるためスケールの大きな案件に携わる事ができます。
個人向けの商品やサービスを売り込む事もよくありますが、顧客となる企業を通じて市場に届けるというイメージです。
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BtoB営業の種類
BtoB営業は以下の2つの種類に分ける事ができます。
- 新規営業
- ルート営業
それぞれの営業手法について詳しくみていきましょう。
新規営業
新規営業はその名の通り新しい顧客を増やすための営業活動です。
一般的には自社と取引がない企業を訪問したり電話をかけたりしてアプローチを行い、アポイントを取り付けます。
アポイントを取り付けた後、企業担当者へ繋いでもらうなどして商談や契約の締結を目指す営業方法です。
取引のない企業に向けてアクションを起こすため、担当者の営業力も試されるといえます。
ルート営業
ルート営業はすでに自社と継続的な取引実績がある企業を対象とする営業活動です。
既存商品の新情報や新商品に関する情報を提供しながら、新契約やビジネスチャンス獲得を目指します。
ある程度関係が構築された顧客にアプローチするため、良好な関係を継続させる力が求められるでしょう。
新規営業とルート営業はどちらも営業ですが、やり取りする顧客のほか必要なスキル等が異なります。
自社の営業戦略を考慮して適切なバランスで新規営業とルート営業の組織を作る事が重要です。
BtoB営業とBtoC営業
営業は法人を顧客とするBtoB営業と個人を顧客とするBtoC営業に分ける事も可能です。
ここでは、BtoB営業とBtoC営業において異なるポイントを3つご紹介していきます。
決裁権を持つ人物
まず契約するかどうかを決める権限(決裁権)を持つ人の違いです。
BtoC営業では決裁権を持つ人物に直接商談を行うケースがほとんどといえます。
一方、BtoB営業では商談の場に出てくる担当者には決裁権がないケースが少なくありません。
BtoB営業は相手企業の担当者は通常決裁者でない場合が多くあります。
あくまで契約するかどうかを決めるのは法人となり、担当者の背後にいる決裁権を持つ人物を意識した提案を行う事が求められるのです。
収益化までの時間
収益化を実現するまでの時間もBtoB営業とBtoC営業で違いがあります。
BtoC営業の場合は高額な商品やサービスでなければ、取引と同時または事前に支払いがなされるケースがほとんどです。
つまりBtoC営業では商品やサービスの引き渡しと同時に収益化が実現する事になります。
一方BtoB営業は商品やサービスをやり取りし、翌月以降に支払いがなされるのが一般的です。
BtoB営業では収益化までの時間がかかるため、資金繰りをより強く意識した営業活動が重要となります。
商品・サービスの評価基準
個人と法人では商品やサービスを評価基準も違いが発生するポイントです。
BtoB営業でもBtoC営業でも顧客の求める解決策の提案が重要であるという根本的な部分は変わりません。
しかし個人の評価と法人という組織の評価は同じとならない事が多いです。
BtoC営業では個人が良いと感じれば高評価につながり契約に至る流れになります。
一方でBtoB営業では担当者個人ベースの評価が得られても、法人組織としての視点で高い評価とならなければ契約に結びつかないのです。
法人組織でどのような評価基準を持っているかをつかむ事がBtoB営業の成功を左右します。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
BtoB営業の手法
ここでご紹介するのは、BtoB営業の手法である「プッシュ型」「プル型」という2つのタイプです。
それぞれのタイプの概要について確実におさえておきましょう。
プッシュ型
プッシュ型営業は企業から顧客に積極的にアプローチをする企業主導の営業手法です。
一般的にはテレアポやダイレクトメール等で顧客へアプローチをかけ、顧客との商談へつなげていきます。
顧客との商談において主導権を握りやすく自由度の高い提案が可能な点がメリットです。
ただし、営業活動が非効率になりやすいデメリットもあります。
プッシュ型営業は企業側から顧客にアプローチをかける方法です。
そのため顧客の関心度の把握が難しく電話やダイレクトメールが成果に直結しないケースも少なくありません。
1人の営業担当者が可能な電話などにも限りがありますので、行き詰まりを感じる企業も多いようです。
プル型
プル型営業は企業がWebメディアや広告等の仕掛けを作り、顧客からのアクションを引き出す営業手法となります。
プッシュ型営業とは逆に顧客主導の営業手法です。
関心を持って自ら問い合わせ等をしてきた顧客にアプローチするため、効率のよい営業活動ができます。
ただし、顧客が関心を持った点が把握できるため企業側の提案の自由度は下がる点に注意が必要です。
BtoB営業でプル型が求められている背景
なぜプル型営業がBtoB領域において求められるようになったのでしょうか。
その背景には以下にご紹介する2つの要因が考えられます。 それぞれについて見ていきましょう。
購買プロセスの多様化
1つ目の要因は顧客の購買プロセスが多様化した事です。
インターネットやスマホ等の普及により、顧客が自ら商品やサービスを購入するのが容易になりました。
BtoBの取引でも営業担当者を介在させる事なく、商品やサービスの購入を行うケースも増加傾向です。
企業側からアプローチするプッシュ型営業では成果を挙げる事が難しくなっている要因となっています。
そのため顧客が自らアクションを起こすようにするプル型営業が求められる事になったといえるでしょう。
タッチポイントの多様化
2つ目の要因はタッチポイントが多様化した事です。
タッチポイントとは企業と顧客が接触する機会の事をいいます。
従来はテレビCMやマスメディア広告など企業が発信する情報や営業担当者のアプローチがメインでした。
しかしタッチポイントは企業ホームページのほかブログやSNS、Web広告など多様化している傾向です。
こうした要因からもプッシュ型営業のみでの営業活動が難しくなったといえます。
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プル型営業のメリット
ここではBtoB領域においてプル型営業を行うメリットを2つご紹介していきます。
営業コストを抑えられる
プル型営業ではプッシュ型営業よりも営業コストを抑えられる可能性がある点が大きなメリットです。
BtoBではWebサイト等で商品やサービスの魅力をアピールして集客し顧客を獲得するのが主流となります。
Webサイトのデータ分析により顧客の関心度合いや興味のある点を動向を正確に把握することも可能です。
データ分析を行い、最適なタイミングでアプローチをかけていく営業活動が実現できます。
そのため、アポイントの獲得がしやすくなったり契約に至る確率も高くなったりして営業活動の効率化に繋がるのです。
また、そもそもプル型営業で獲得できる顧客はある程度商品やサービスに関心を持っている層となります。
顧客の知りたい事や役立つWebコンテンツ発信を行えば、顧客の関心度合いを高めて育成する効果も期待できるのではないでしょうか。
営業に関わるコストを抑えつつ、顧客を獲得・育成できる点がプル型営業の強みといえます。
見込み客に悪い印象を抱かれない
プッシュ型営業は、企業が積極的に顧客にいわゆる売り込みを行う営業手法です。
あくまで売り込み先は企業主導で決まります。顧客にとっては商品やサービスを必要と感じないケースもあるでしょう。
例え必要であったとしても売り込みに抵抗感を持ってしまう顧客や企業の担当者は少なくありません。
そのため積極的な営業活動をする事が自社の印象を悪くしたりクレームが発生したりするリスクを生む可能性があります。
プル型営業はすでに企業のブランドや商品・サービスに関心のある顧客が問い合わせ等をしてくれる営業手法です。
WebサイトやSNS等を用いたコンテンツマーケティングを行い、顧客と継続的な信頼関係を構築するパターンもよくあります。
そのような点から積極的な売り込みという印象は濃くないため、顧客に悪い印象を抱かれにくいのがプル型営業のメリットです。
プル型営業のデメリット
プル型営業のメリットについてはご理解いただけたのではないでしょうか。
しかし営業手法はメリットだけではありません。ここではプル型営業のデメリットをご紹介します。
メリット・デメリットの両面を把握して自社の営業活動に適切に取り入れていきましょう。
成果が出るまで時間がかかる可能性がある
プル型営業は企業からのアプローチではなく、顧客からのアクションを待つ営業手法です。
また、顧客のニーズに沿った情報発信やWebサイトのコンテンツ作成には時間がかかります。
さらにWebサイトから得られたデータ分析やそれらを活かした組織づくりにも労力が必要です。
そのためプル型営業を導入し、契約締結などの明確な成果が出るまでには時間がかかる可能性があります。
長期的な視点で見るとプル型営業は顧客との信頼関係を築きやすく、見込み客を地道に育成する事が期待できる手法です。
しかし、営業活動の成果を早期に得たい場合にはデメリットが強く感じられるかもしれません。
見込み客の質が落ちる可能性がある
プル型営業ではある程度商品やサービスに関心を持つ顧客を獲得する事ができます。
しかし獲得した顧客の中には、ひとまず説明を聞きたいというような顧客層が含まれるケースが少なくありません。
プッシュ型営業ではアプローチをかける見込み客の質は企業側でコントロール可能ですが、プル型営業ではそうしたコントロールは困難です。
そのため関心があっても検討度合いの低い見込み客の割合が多くなってしまうと、見込み客の質が低下するデメリットが生じます。
プル型営業の施策を展開する際は長期スパンでの成果実現の視点や事前のマーケティングが重要なのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
プッシュ型とプル型のバランスが重要
BtoB領域における営業活動において、プッシュ型とプル型はそれぞれメリット・デメリットがあります。
どちらか一方が優れているという事ではありません。
自社に適したバランスでプッシュ型とプル型の営業を行う体制づくりが重要です。
プッシュ型営業は成果を比較的早期に出しやすいですが、効率は落ちる可能性があります。
また、顧客にとっては売り込みの印象が強く抵抗感を与えるリスクや適切なタイミングでのアプローチが難しい事も認識しなければなりません。
プル型営業は顧客との信頼関係を構築しやすく効率的な営業活動ができますが、成果を出すまでに時間が必要です。
検討度合いの低い見込み客も含まれる事が多く、アプローチ顧客の質のコントロールが課題となります。
従来のプッシュ型営業にうまくプル型営業を取り入れ、バランスの良い営業組織を作り上げる事がBtoB営業の成功のカギです。
BtoB営業のプル型について悩んだら
プル型営業においては、事前のマーケティングによりターゲットを的確に設定してWebサイトやコンテンツに反映させる事が重要です。
しかし自社内で検討した営業戦略を実行したものの想定した成果が出ない事もあるのではないでしょうか。
BtoB営業でプル型の導入や自社に適した組織づくりに悩んだらデジマクラスにぜひご相談ください。
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まとめ
今回はBtoB営業でプル型が求められる背景やそのメリット・デメリットについてお伝えしました。
従来メインとされていたのは企業主導で積極的に売り込みを行うプッシュ型の営業手法です。
しかし購買プロセスやタッチポイントの多様化にともないプッシュ型の営業手法が通用しないシーンも増えています。
そのため企業がWebサイト等を通じて情報発信を行い顧客のアクションを引き出すプル型の営業手法の重要性が高まっているのです。
本記事でもご紹介したとおり、プッシュ型営業とプル型営業にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
いずれかの営業手法を選択するのではなく、自社に最適なバランスで営業手法を取り入れる事がポイントです。
プロの客観的なアドバイスも活用しながら、成果につながるBtoB営業を実現させていきましょう。