問題が生じたときに、根本的な原因を追究して解決に結びつけたいという人は多いでしょう。
そこで必要となるのが原因分析ですが、どのように行えば効果的か分からないという人もいるのではないでしょうか。
今回は、そんな原因分析について3つの手法を取り上げながら詳しくご紹介します。
目次
原因分析の特徴と目的
原因分析とは、何らかの理由で起こった問題や課題について、その原因を分析することです。
多くの業界・業種で使われる原因分析は、もちろんマーケティングにも活用できます。
最初に、原因分析の特徴や目的をみていきましょう。
原因分析で分かること
原因分析を行うことで、その問題や課題の根本的な原因に辿り着くことができます。
単に問題の理由を考えるだけでは、根拠のある分析とはいえません。
そこで、原因分析のフレームワークを活用し根本的な原因に迫ります。
実施する目的
原因分析を実施する目的は、根本的な原因を見出すことです。
そして、同じ問題を繰り返さないような解決策を打ち出すことも実施目的の1つといえます。
なぜ問題が起こったのか、課題が生じたのかを把握し次の施策に活かすことが大切です。
施策が成功した場合にも有効
フレームワークを用いた原因分析は、問題や課題があるときだけ実施する訳ではありません。
施策が成功した場合にも、原因分析は有効です。
例えば予想を超える成果を出すことができた場合、そこには何らかの要因があった可能性があります。
「成功してよかった」で終わりにせず、何が成功の要因となったのかを見出すことが大切です。
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原因分析の重要性
原因分析は多くの業界・職種で実施されていますが、その重要性がはっきり分からないという人もいるのではないでしょうか。
ここでは原因分析の重要性についてご説明します。
もしも重大な事故で人命が失われたら、なぜその事故が起きたのかという真因を探らなければなりません。
事故の原因が機械のトラブルだったのか、あるいは人的ミスであったのかによって対策は異なるでしょう。
また、機械やシステムに問題があったとしたら、どのような問題だったのか何が引き金となったのか究明する必要があります。
これらのことを行わなければならないのは、もちろん「再発防止」が目的です。
再発防止のためには、表面上にある原因ではなく数々の原因の根底にある「根本原因」に辿り着かなければなりません。
事故を例えて説明してきましたが、ビジネスにおける問題や課題についても同様のことがいえます。
表面上にある原因を除去するだけでは、本当の意味での解決とはいえません。
根本原因を究明して解決策を打ち出さなければ、同じことを繰り返すリスクがあるのです。
このように、原因分析のフレームワークは再発を防止するための重要なツールといえます。
原因分析を行うメリット
ここまでは、原因分析の目的や重要性についてご紹介してきました。
それでは、原因分析を行うことでどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。
原因分析を行うメリットには以下のようなことがあげられます。
- 状況を把握できる
- 思考の整理ができる
- 過程を知ることができる
問題や課題が生じたとき、まずは冷静になって状況を把握することが大切です。
そして、状況把握と原因究明のためには自分自身の頭の中を整理する必要があります。
原因分析を行うことで、効率よく状況把握や思考整理ができるのです。
問題を解決したいと思うあまり、「きっとこれが原因だろう」「この対策をすれば大丈夫」という予想で動いてしまうこともあります。
しかし、本当に問題を解決したいのであれば、原因と結果ではなく過程に注目しなければなりません。
原因分析を行うことで、原因が問題を引き起こすまでの過程を知ることができるでしょう。
このように、原因分析によってさまざまなメリットが期待できます。
そして、メリットを引き出すためにはフレームワークを活用していくことが大切です。
ビジネスで活用したい原因分析の手法について、この後3つご紹介します。
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原因分析の手法①:なぜなぜ分析
原因分析のフレームワークとして活用されることが多いのが「なぜなぜ分析」です。
なぜなぜ分析は、「トヨタ生産方式」の一環としてトヨタ自動車株式会社が始めました。
その手法が原因分析に効果的として、さまざまな業界・業種で広く活用されるようになったのです。
ここでは、なぜなぜ分析の実施方法と分析例をご紹介します。
なぜなぜ分析の実施方法
なぜなぜ分析は、問題や課題が生じたことに対して「なぜ?」を繰り返していく手法です。
あらゆることに興味・関心を示す子どもは、「なぜ?」「どうして?」と大人によく聞くでしょう。
そのようなイメージで、「なぜ?」を繰り返していくことで根本原因に迫っていくのです。
なぜなぜ分析では、より深掘りするために「なぜ?」を5回繰り返すことを基本としています。
この分析方法のポイントは、できるだけ具体的な原因を抽出していくことです。
抽象的な原因だと深掘りできないことも多く、真因を追究することができなくなってしまいます。
そして、その原因に対して「なぜ?」と問いかけ、また具体的な原因を出していきましょう。
分析例
なぜなぜ分析の実施方法を踏まえて、分析例をみていきましょう。
「お客様からの苦情が先月の〇倍になった」という問題を例にして分析していきます。
- なぜ?:カスタマーサポートの対応が遅れたから
- なぜ?:電話での問い合わせが多いから
- なぜ?:問い合わせフォームだと返事が遅いから
- なぜ?:1件ずつ確認をして回答するのに時間がかかるから
- なぜ?:よくある質問への対応がマニュアル化されていないから
5回「なぜ?」を繰り返す過程で、さまざまな原因が関連していることが分かります。
そして、5回目にはマニュアル化されていないという根本的な原因に行きつくことができました。
業務のマニュアルがしっかりと構築されていなかったことで、現場の職員の対応に遅れが生じた可能性があります。
解決策としては「対応マニュアルの作成」「FAQの作成と周知」をあげることができるでしょう。
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原因分析の手法②:変化分析
問題やヒューマンエラーというものは、それが起こる背景がどこかに潜んでいます。
変化分析(事象分析)は、問題やエラーが生じた時点ではなく長期に渡る背景に目を向ける手法です。
ここでは、変化分析の実施方法と分析例をご紹介します。
変化分析の実施方法
変化分析は以下の4つの手順で実施していきます。
- 事象の把握
- 要因の整理
- 要因分析
- 対策立案
まずは、どのような経緯で問題が起きたのかという状況を把握します。
現在どのような状況にあるのかも併せて確認しましょう。
次に、その問題が起きた状況や要因を整理します。考えられる要因を洗い出してください。
そして、洗い出した要因の関連性を分析し、根本的な原因となるものがないかチェックしていきます。
最後に、改善策や再発防止策を立案しましょう。
分析例
変化分析の実施方法や手順を踏まえて、分析例をご紹介します。
- 事象の把握:A社に渡すはずの資料をB社に渡してしまった
- 要因の整理:確認不足・チェック体制がない・急いでいた・忙しい
- 要因分析:社内でのチェック体制がないことが確認不足を招いている可能性がある
- 対策立案:取引先に渡す資料・郵送物のチェック体制を作る
事象が起こった背景に目を向けることで、解決すべき課題がみえてくるでしょう。
要因を関連づけて分析していくことも、この変化分析のポイントの1つです。
原因分析の手法③:特性要因図
特性要因図は、もともと製造業で活用されてきた原因分析の手法です。
結果と要因を図式化すると魚の骨のようなので、フィッシュボーン図とも呼ばれます。
製造業で活用されてきた特性要因図ですが、潜在的な要因の把握につながることから多くの業界で用いられるようになりました。
そんな特性要因図の実施方法と分析例をみていきましょう。
特性要因図の実施方法
先ほどお伝えしたように、特性要因図は魚の骨のような見た目です。
そして、実施するときは以下の順番で書いていきましょう。
- 特性:魚の頭
- 背骨:大骨と特性をつなぐ直線
- 大骨:背骨につながる直線
- 小骨:大骨につながる複数の直線
最初に魚の頭となる特性を書きますが、この特性とは解決すべき課題やプロセスを経た結果のことをさします。
次に、特性に向かって矢印を書きましょう。特性を右側に書き、横一直線に矢印を引くのがポイントです。
この矢印が魚の背骨となり、そこに大骨を足していきます。
大骨を構成するのは問題に関連する要素ですが、業界・業種ごとに適したフレームワークを使ってください。
例えば、もともとこの特性要因図を活用していた製造業であれば「4M」を当てはめていきます。
- Man:人
- Machine:機械
- Method:方法
- Material:材料
他にも3P(顧客・自社・競合)や4P(製品・価格・広告・流通)などがあります。
そして、大骨(要素)に影響を及ぼす詳細な要素(小骨)を書いていきましょう。
小骨で終わりにせず、さらに詳細な要素に分ける場合は「孫骨」として書き出していきます。
特性につながる要素を関連づけて書き出していくことで、全体像を把握することができるでしょう。
なぜそのような問題が起きたのか、どういったプロセスでそのような結果になったのかという根拠になります。
分析例
特性要因図の実施方法や要素を踏まえて分析例をご紹介します。
ここでは、「不良品が増加した」という問題を分析していきましょう。
- 特性「不良品の増加」と右側に書く
- 特性に向かって矢印を書く(背骨)
- 要素「人」「機械」「方法」「材料」などを書き矢印につなぐ(大骨)
- 各要素に関連する詳細な要素を書き大骨につなぐ(小骨)
大骨につなぐ詳細な要素の例をみてみましょう。
- 人:人手不足・疲労・注意力散漫
- 機械:老朽化・メンテナンス不足
- 方法:チェック不足・スピード重視
- 材料:不揃い・数の不足・チェック不足
1つの要素に対して細かな要素をあげていくことで、「不良品の増加」に至った過程を把握することができます。
その中から特に重要な要素を抽出して改善していきましょう。
この分析例でチェック不足を重要な要素とするのであれば、チェック体制を整えるのが改善策となります。
原因分析を行うポイント
ここまで3つの原因分析の手法をご紹介してきました。
それぞれの実施方法や分析例が分かったところで、原因分析を行うときのポイントをみていきましょう。
ポイントを押さえて、より効果的な原因分析を実施してください。
複数人の視点でチェックする
原因分析を実施するときは、複数人の視点でチェックするのがポイントです。
複数人の視点が入ることで、1人では気づけなかったことに気づける可能性があります。
1人で原因分析を行うと「こうだと思う」「こうであってほしい」という主観が入ることもあるでしょう。
しかし、複数人で実施すれば客観的な視点で原因分析を進めることができます。
原因分析は深掘りしていく過程で行き詰ってしまうことも少なくありません。
1人では行き詰ってしまっても、複数人で行えばあらゆる思考を取り入れることができるでしょう。
議論を展開し、1人よがりな分析にしないためにも複数人の視点でチェックすることが大切です。
将来を見据えて分析する
将来を見据えた分析も、原因分析を行ううえで押さえておきたいポイントです。
原因分析を行う目的は、原因究明だけでなく今後に活かすことだと先ほどご紹介しました。
つまり、解決策や再発防止策につなげられる原因分析が必要ということです。
「原因が分かってよかった」で終わらせず、「どうやって解決するか」「同じ問題を起こさないためにどうすべきか」につなげていきましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
原因分析を行う際の注意点
原因分析を行う際には、注意しておきたい点があります。
注意点を知らずに原因分析を行うと、真因に辿り着けないこともあるでしょう。
ここでは、再発防止につなげられるよう、原因分析を行う際の注意点を2つご紹介します。
真因を把握するまで原因追究する
原因分析のそもそもの目的は、真因を把握して再発防止につなげることです。
つまり、原因分析を行っても真因の把握ができなければ意味がありません。
例えば、なぜなぜ分析は「なぜ?」を5回繰り返すという方法ですが、5回で真因に辿り着けないこともあるでしょう。
この場合は5回にこだわらず、根本的な原因に辿り着くまで分析を続ける必要があります。
原因分析を行うことを目的とせず、本来の目的を意識した分析を行いましょう。
垂直的・水平的な掘り下げを行う
原因分析を行う際は、1つの原因だけにこだわらず掘り下げていくことが重要です。
そこで、垂直的・水平的な掘り下げがあるということを押さえておきましょう。
- 垂直的:階層的に原因の原因を掘り下げる
- 水平的:原因と原因の因果関係を掘り下げる
どちらの掘り下げ方についても、最終的な目的は真因を把握することです。
原因を掘り下げていくことで、根拠のある真因を見出すことができるでしょう。
原因分析で困ったときは?
ビジネスで何らかの問題が発生したとき、その原因を追究し解決策を見出すことが重要です。
そこで、多くの企業が原因分析のフレームワークを活用しています。
しかしフレームワークの中にもいくつかの種類があるため、どれを活用すればいいか迷う人もいるでしょう。
結果につながる原因分析の方法や、再発防止策の検討など原因分析では考えなければならないことがたくさんあります。
もし原因分析でお困りのことがあれば、デジマクラスまでご相談ください。
結果を重視するコンサルタントが、課題解決に向けたサポートをさせていただきます。
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まとめ
今回は、原因分析の重要性や手法についてご紹介しました。
問題や課題が生じたとき、そのままにせず根本的な原因を追究しなければなりません。
根本原因が分からなければ、再発防止に向けた対策ができないからです。
原因分析の手法を活用して、問題や課題の真因を把握してください。
もし原因分析の手法や活用方法でお困りのことがあれば、デジマクラスの活用をおすすめします。