日本ならではの製品を海外に販売したい。
現代はそんな方の願いをかなえるプラットフォームが当たり前のように存在する時代です。
しかし、インターネットで国を超えて商品の売買を行う越境ECでどのぐらい利益を得られるのか気になる方もいるでしょう。
ここでは、そんな方のために越境ECの市場規模を解説します。
また、インバウンドとの関係性や、越境ECを実行する際のポイントも押さえておきましょう。
グローバル時代における販売テクニックを学びたい方は注目です。
目次
ECの基本をチェック
越境ECの説明に入る前に、まずは「EC」とは何かを正しく理解しましょう。
ECの特徴
ECはElectronic Commerce、つまり電子商取引の略です。
インターネットを通じて売買をするというのが大きな特徴です。
ECサイトを通じて世界中どこから注文しても、商品を配送してもらえる仕組みになっています。
形のある商品だけでなく、サービスの取引をすることもECの一環です。
また、代金の決済もインターネット上でできるというのが魅力でもあります。
Eコマースとの関係性
EコマースもECも、結論からいえば同じ意味を表す言葉です。
しかし、ここで注意したいのは、英語では一般的にECという略よりもE-Commerceという表現が使われるということです。
特に越境ECでは、英語で情報を仕入れる機会も多いでしょう。
英語で検索するときはECだけでなく「E-commerce」や「eCommerce」で検索してみてください。
越境ECを始めるのは有利?
越境ECは、国内でもある程度の販売実績があるのならば、始めれば成果を得られる可能性が高いでしょう。
もちろん国内と海外では言葉の壁もあり、アピールポイントの違いもあります。
しかし、国内のECサイト運営で培ったノウハウが生かせる部分はあります。
また、海外には、国によって日本製品の人気が高く、日本の物だというだけで優位に立てるチャンスもあるでしょう。
特に「爆買い」というワードで注目された中国は、日本製品の販売先として注目されています。
ECサイト制作の事例はこちら
越境ECは成長市場
越境ECは市場的には好調です。
経済産業省の電子商取引に関する調査報告書には、2020年から2027年までの越境ECについて次のように記されています。
年平均成長率は約 27%であり、世界の BtoC-EC 市場規模の拡大を上回るペースで越境 EC の市場規模は拡大すると見られている
出典:https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf
このデータからも、かなり好調な市場であることがわかるでしょう。
ここでは、越境ECが好調な理由についてみていきましょう。
伸びている理由
越境ECが成長している理由として、まずその認知度の高まりが挙げられます。
越境ECというワード自体が認知され、実行してみようという事業者や消費者が増えるとの予想があるのです。
また、SNSの発達により海外製品を知る機会が多くなり、手に入れたいと思う消費者が増えたという理由もあるでしょう。
さらに、自国よりも安い値段で信頼性のある製品を手に入れられるというメリットも影響しています。
物流システムや、ネット環境の改善によって利用しやすくなっているというのも一因です。
日本製品購入者の利用頻度
日本貿易振興機構が2018年に中国人消費者を対象に行った調査では、次のような結果が示されています。
越境ECで日本製品を購入したことのある層は65.3%
出典:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/820261128897b417/20180028.pdf
半数以上が日本製品を越境ECで購入しており、日本製品の人気の高さがうかがえるデータです。
その理由については、中国の店舗で買えないから、ニセモノではないから、というものもありました。
同じ調査では、中国の越境EC利用者の利用頻度は「月に1~2回」が一番多いという結果が出ています。
割と頻繁に越境ECを利用している人が多い印象です。
こうしたデータから、中国は越境ECにおける日本製品の需要が高い市場だということがうかがえます。
成長推計
経済産業省の調査報告では、以下のような成長推計の具体的な数字が出されています。
2020 年の世界の越境 EC 市場規模は9,123 億 US ドルと推計され、その値は 2027 年には 4 兆 8,561 億 US ドルにまで拡大する
出典:https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf
つまりは、400兆円近い成長が2027年までに見込まれているということです。
このデータを見る限りでも、越境ECはかなりの成長市場であることがおわかりいただけるでしょう。
もちろん、政治的情勢やパンデミックといった予測不能要因で市場に変化が起こることはあり得ます。
しかし、そうした要因がなければ順調に成長していく市場として、参入する好機だといえるでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
越境ECの市場規模
ここからは、世界や日本の越境ECの市場規模について、データとともに紹介します。
越境ECの世界規模
経済産業省の2020年7月時点による調査では、「成長推計」に記載した通り2020年には9123億米ドルとの予想でした。
日本円にすると、100兆円を超える規模感です。
これは2017年時点での「2020年には9940億米ドル」という予測よりは少なくなっています。
しかし、いずれにせよ拡大傾向の予測は続いています。
国別市場規模
経済産業省の2020年度の報告書でまとめられている日・米・中の越境EC市場規模は以下の通りです。
日本の越境BtoC-EC(米国・中国)の総市場規模は 3,175 億円
米国の越境 BtoC-EC(日本・中国)の総市場規模は 15,570 億円
中国の越境 BtoC-EC(日本・米国)の総市場規模 36,652 億円
出典:https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf
前年比の伸び率をみると、中国は12.3%、アメリカは11.8%とどちらも増加しています。
特に中国は、政府が越境ECを支援する法整備を整えていることも伸びに影響しているでしょう。
また、インフルエンサーによってネットで海外製品に触れる機会が多くなったのも一因とされています。
アメリカでも配達サービスの改善といった要素から、EC市場自体が伸びています。
日本の市場規模
日本の越境EC市場規模は、3,175億円とほかの2国に比べると金額自体は少なめです。
しかし、伸び率をみると、前年から14.8%増加しており、上の見出しで挙げた3か国の中ではトップです。
このデータから見ると、日本の越境EC市場は拡大スピードが増しているといえるでしょう。
中国・米国それぞれから経由した購入額は、以下のように示されています。
米国経由の市場規模は2,863 億円、中国経由の市場規模は 312 億円
出典:https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf
現状では、米国経由の取引額の方が多い状況です。
中国側から見ても、日本よりも米国からの取引額の方が多くなっています。
しかし、米中対立の影響や、中国での日本製品人気を踏まえると、状況が変化する可能性もあるでしょう。
越境ECの今後
引用した経済産業省の調査報告書にもあったように、越境ECは今後も大きく成長する見込みがあります。
日本に限った話だと、まだ越境ECに関しては伸びしろがある状況です。
特に今後注目なのは中国消費者の動向でしょう。
国内で越境ECに対する環境が整えられていくことに加え、品質に信頼感のある日本製品にも注目が集まっています。
つまり、日本でこれから越境ECを始めるならば、中国市場を狙うのは効果的です。
インバウンドと越境ECの関係
パンデミック前には、訪日観光客を呼び込むインバウンドマーケティングが日本でも盛んでした。
この動きは、越境ECにも関係しています。
ここでは両者の関係性について、日本貿易振興機構の調査データも参考にしながら見ていきましょう。
商品を購入する流れ
上述の日本貿易振興機構の中国人消費者への調査には、中国人消費者に対する日本旅行に関する質問があります。
同調査結果では、旅行の渡航先として一番多いのは日本だということが示されています。
海外旅行の渡航先は、日本が54.4%で前回調査に続き1位となった。
出典:https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf
さらに、日本旅行の目的で一番多いのは「買い物」であるという結果もありました。
このことからも、いかに中国人消費者が日本の製品に注目しているかがうかがえます。
そして、こうした中国人消費者の中には、日本で購入して気に入った製品を越境ECで再購入する人もいるのです。
これについては、次項で詳しく見ていきましょう。
なぜ越境ECで購入するのか
同じ日本貿易振興機構の調査には越境ECを使って日本製品を購入する理由に関する質問があります。
この質問の回答で、「日本旅行をしたときに気に入った商品だから」という選択肢があります。
複数回答可能で、この選択肢を選んだ割合は2017年は40.4%、2018年でも21.6%でした。
つまり、一定数の割合で日本旅行後にリピート購入をしている中国人消費者がいることがわかります。
その他にも、2018年の調査では多い順に以下のような回答がありました。
- 中国内では店頭で販売されていない製品だから
- 注文してから商品が届くまでの時間が短いから
- ニセモノではないから
- 知人等からの口コミで購入しようと思ったから
- 価格が安いから
こうした結果から、日本でしか買えない製品を旅行で知った中国人消費者が便利な越境ECを活用していることがわかります。
このデータから、インバウンドが越境ECでの購入のきっかけづくりに重要な役割を果たしていることがうかがえるでしょう。
越境ECで直面する課題
ここまで読んできて、越境EC参入に魅力を感じた方も多いでしょう。
しかし、実際に始めるとなると、なかなか簡単にはいきません。
越境ECを始めるには、ここから紹介するような課題に立ち向かっていく覚悟が必要です。
言語の違いによる壁
海外に商品を販売する以上、やはり言語の壁は乗り越えなければなりません。
まず販売するECサイト自体も日本語には対応していない場合が考えられます。
また、相手国の顧客・取引先との対象言語によるコミュニケーションも重要です。
さらに厄介なのが、場合によっては商取引に関する書類の提出を相手国の言語で行わなければならないということです。
中には外国語の専門用語を扱わなければならない場合もあるでしょう。
現在は、翻訳ソフトウェアも進歩が進んでいます。
しかし、信頼性を保つには言語能力を持った人材を用意する必要も出てくるでしょう。
取引規制
越境ECを行うにあたっては、相手国の商取引規制にも注意する必要があります。
この記事の前半で注目の取引先として扱った中国も、規制が厳しい国の1つです。
中国はそもそもネットに関する規制が厳しく、海外のECサイト自体が中国向けには対応していない場合があります。
また、中国のECモールで販売する場合にも、厳しい条件が課せられる可能性があります。
このように、相手国の事情に留意して規制に従いながら販売を進めていかなければなりません。
決済方法
海外には、日本のECサイトのようなクレジットカード決済が一般的ではない国もあります。
それぞれの国によって、広く普及している決済方法はさまざまです。
国外の顧客相手に販売する場合は、使い慣れていない決済方法を使用しなければならない場合もあります。
特に、対象の国が増えるほど、使用するシステムは多くなり業務も複雑化するでしょう。
為替リスク
海外との取引なので、当然ながら為替のリスクも発生します。
外貨建てで決済する場合は為替が急激に変動したことにより、大きな損をする可能性も考えられるでしょう。
逆に、円建てで決済すれば販売する側は安定が見込めます。
しかし、結局は購入する顧客に対してリスクや不便を与えることになります。
越境ECを実行する際には、このバランスを考えながらどちらの通貨を使用するか考慮しましょう。
法規制のリスク
日本では販売が認められている商品でも、海外では事情が違う場合もあります。
各国の法律により、売買が禁止されているような品物もあるのです。
相手国の法律に関する知識が不十分で、違法な製品を販売してしまうというケースもあり得ます。
こうしたリスクを避けるためにも、相手国の商取引法に関する理解が必要です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
越境EC成功のポイントは集客
特に海外で知名度が少ない企業が越境ECに参入する場合は、集客戦略がカギを握ります。
国境を超えた集客で活用できるのは、まずはSNSです。
各国ではそれぞれ人気のSNSがあるので、事前にリサーチしてターゲットを絞りましょう。
その国で人気のインフルエンサーにアプローチして、スポンサーとして紹介してもらうのも戦略の1つです。
日本ならではの製品を販売するのであれば、日本好きが集まる対象国のプラットフォームをリサーチしてみましょう。
また、対象国に向けた広告出稿も集客につながります。
SNSマーケティングの事例はこちら
越境EC市場への参入で悩んだら
越境ECは成長拡大の可能性を秘めた魅力的なマーケットです。
しかしながら、当記事後半で紹介したように参入のハードルが高いという実情もあります。
越境ECに参入するには相手国への理解が必要です。
実際に販売を始める前の準備や手続きの段階でも、困難が発生することもあるでしょう。
販売開始後も、日本とは違った集客戦略を考えるのには試行錯誤するでしょう。
もし越境ECに参入したいのなら、プロに相談しながら進めていくのがおすすめです。
デジマクラスでは、ECはもちろんマーケティングに関する各種相談を受け付けています。
越境ECでお悩みのことがあれば、お気軽にお問い合わせください。
マーケティング戦略の事例はこちら
まとめ
この記事では、注目の越境ECについてその市場規模や参入の注意点を紹介しました。
経済産業省や日本貿易振興機構の報告書を見る限り、越境ECは拡大中で魅力的な市場であるといえます。
特に状況変化の激しい中国は、これからの動向に期待が高まっているでしょう。
その一方で、海外との取引には依然として高いハードルがあります。
しかし、インターネット上で販売の場が充実し、以前よりは参入しやすくなったといえるでしょう。
大きなチャンスをつかむためには初期の投資と努力が重要です。
じっくりと戦略や計画を立て、越境ECという将来性のあるフィールドで活躍していってください。