AARRRとは商材やビジネスがどのくらい成長しているか、どのような課題を抱えているかを分析できるフレームワークです。
有効なマーケティング手法であるグロースハックと組み合わせれば、より的確な分析結果と改善施策の発見が期待できます。
すでにマーケティング戦略に導入して成功している企業もあり、特にインターネットビジネスと相性がよいです。
各段階で有効な施策や導入の際の注意点を確認しながら自社ビジネスに取り入れてみてください。
目次
AARRRの概要
AARRRモデル(アーモデル)はマーケティング分析を行う上で有効なフレームワークの1つです。
ユーザーが見込み顧客となり、継続的な収益を支える存在に至るまでの流れをモデル化しています。
「AARRR」は一見、意味を成さない文字列ですが各ステップを示す5つの単語の頭文字が由来です。
<AARRRの各ステップ>
- Acquisition:取得・獲得・習得
- Activation:活性化・活発化・有効化
- Retention:保持・保有・維持
- Referral:紹介・推薦・照会
- Revenue:収入・収益
ユーザー・顧客を継続利用するVIPに育成するために用いられることが多く「ロイヤルカスタマー戦略」と呼ばれることもあります。
グロースハックにおけるAARRR
グロースハックとは商材をハイスピードで成長させたい時に用いられるマーケティング手法です。
AARRRモデルと相性がよく、分析結果から導き出された施策をグロースハックの手法で運用した成功事例もあります。
グロースハックの本質はビジネスモデルを的確にすることです。
そのため、改善点を見つけ課題をクリアする施策を実践・検証することが重視されます。
それを繰り返していくうちに改善点がゼロになれば欠点のない完璧な商材・ビジネスモデルになるからです。
また、改善施策の運用を他社よりもハイスピードで実践できれば競合の中で最も早い成長スピードを実現できます。
グロースハックを成功させるためには改善施策の的確さが欠かせません。
つまり、改善施策の根拠となるマーケティング分析を正確に行う必要があります。
分析のためのフレームワークとしてAARRRモデルを取り入れる際は分析結果や各指標の数値が正しいかどうかを必ず確認しましょう。
AARRRを活用するメリットは?
AARRRモデルで商材・ビジネスを分析するメリットは自社の商材・ビジネスの成長度合いと課題を明らかにできることです。
AARRRモデルに基づいて商材・ビジネスを考える場合、各段階をクリアできているかどうかがスタートとなります。
例えば、新規顧客獲得数の目標を達成しているならファーストステップであるAcquisitionは達成度合いが高いといえるでしょう。
それにもかかわらず収益が目標に達していない場合、Acquisition以降のステップに課題が潜んでいる可能性が高いです。
もし、Acquisitionをクリアしている上で顧客の利用頻度が低いならActivation上の課題が考えられます。
商材を高頻度で利用している顧客の多さに反して継続利用者が少ないならRetentionが問題かもしれません。
このように、AARRRモデルに商材・ビジネスを当てはめることでどの段階の課題にフォーカスすればよいかがわかりやすくなります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
AARRR各ステップの目的
AARRRモデルはビジネスの成長段階を把握するためのフレームワークです。そのため、各段階にはクリアすべき目的があります。
Acquisition
Acquisitionの段階は新規ユーザー・顧客の集客・獲得が最大の目的です。
英単語としてのAcquisitionは「取得・獲得・習得」といった意味があります。
つまり、「顧客をどこからどのように獲得するか?」がテーマです。
特に商材を積極的に利用してくれる顧客をどのように獲得するかが重要なポイントとなります。
Activation
Activationは「活性化・活発化・有効化」などの意味があります。
Acquisition同様に英単語の意味からアプローチするなら「商材は積極的な利用を活性化させるために有効か?」がこの段階のテーマです。
つまり、ビジネス・商材の利用を顧客の課題解決につなげることや商材・サービスの満足度向上がActivation段階の目的となります。
さらに、獲得した顧客の喪失を防ぐことも重要なテーマです。
Retention
Retentionの意味は「保持・保有・維持」です。転じて顧客は商材を継続利用してくれるか?がテーマとなります。
そこからRetention段階の目的として下記が挙げられます。
- 顧客を2回目の利用に踏み切らせる
- さらに3回目、4回目…と定期的に利用してもらう
- 顧客にとって商材の購入・利用が常態化・日常化する
あわせて、定期的な利用スパンの短期化や休眠中の顧客の再度利用も見逃せない目的です。
Referral
Referralの段階ではさらに多くのユーザーに顧客となってもらうことが求められます。
そこで継続利用してくれる顧客の紹介によって新規ユーザー・見込み顧客の母数を増やすのがReferral段階の目的です。
Referralの「紹介・推薦・照会」という意味から「顧客は親しい人に商材を紹介してくれるか?」に注目してみましょう。
Revenue
Revenueの段階では下記が主な目的として考えられます。
- 顧客のアクションを収益につなげる
- 各顧客から得られる収益を最適化・最大化させる
- 無料プランの顧客を有償プランにグレードアップさせる
- 各商材の利益率を高める など
Revenueの収入・収益という意味から「各顧客は収益につながっているか?」をテーマに考えてみてください。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
AARRR各ステップで有効な施策
AARRRモデルは顧客の継続利用による収益化が最終ゴールとなります。
そのため、各段階の有効な施策は「次も利用してもらうためには?」「有償プランを利用してもらうためには?」という発想が主軸です。
Acquisition
Acquisitionの段階は新規ユーザー・顧客の獲得が最重要課題です。
<Acquisition段階の施策例>
- 顧客が商品を手に入れやすい環境の整備
- SEOなどサイトを訪れるユーザー数向上
- 顧客が商材を認知してから購入・利用に至るまでの動線をシンプルで分かりやすくする
- リスティング広告のキーワードを最適化
- 次のステップへの布石として会員登録のメリットを伝えておく など
特に商材を知ってもらう・比較検討してもらう・まずは使ってもらうためにはどうすればよいか、という視点で考えてみましょう。
Activation
Activationの段階は商材・ビジネスが顧客にとって有益なものであることを伝えなければなりません。
そこで下記のような施策が考えられます。
<Activation段階の施策例>
- 魅力的な活用シーンの提案
- 有益な情報を入手できるメルマガ登録の促進
- カスタマーサポートへのスムーズなアクセス
- グレードアップしたプランのトライアルキャンペーン案内
- サイトのUX・UI改善をさらに進める など
顧客が想定していなかったさらに有益な利用方法の提案など利用を活性化させる施策が有効です。
Retention
Retention段階における最大のテーマは継続利用です。そこから下記のような施策が有効かもしれません。
<Retention段階の施策例>
- 複数回利用・継続利用キャンペーン
- 継続利用してくれた顧客へのアドバンテージを案内
- VIP感を感じられるカスタマーサポート
- 継続利用者向けの特別なプッシュ通知
- サイトを定期的に訪れるユーザー数増加
- サイトのUX・UI向上
- 継続利用中の顧客にしか案内しない会員登録キャンペーン
- 休眠中顧客を対象にしたお得な再利用キャンペーン など
特に新規利用の時よりもVIP感を感じられるチャネル・動線を用意するのがおすすめです。
また、Retentionよりも前の段階で止まっているユーザーに存在感を示し忘れられないようにする施策も求められます。
Referral
Referralの段階は継続利用している顧客から新規顧客を紹介してもらう施策が有効です。
<Referral段階の施策例>
- 継続利用の顧客に口コミ・レビューを書いてもらう
- 継続利用の顧客による紹介キャンペーン
- 複数回利用の顧客が自信をもって進められるように商材の品質・満足度向上
- SNSでハッシュタグ付きの投稿をしてもらうキャンペーン
- 公式アカウントをフォローしているユーザーが「いいね」・RTをしたくなる有益な情報をシェア
- 紹介された新規ユーザーにもわかりやすいアクセス・動線の案内
- SNSにとどまらないクロスメディア戦略の検討スタート
Referralの段階では継続利用の顧客を起点に新規ユーザー・見込み顧客・初回購入・利用者を増やす施策が大事です。
特に最近はSNSが積極的に活用されている点に注目してみましょう。
Revenue
Revenueの段階では各顧客からの収益をアップさせる施策が求められます。
<Revenue段階の施策例>
- 無料プランから有償プランへのグレードアップキャンペーン
- 無料プランから有償プランに切り替わるタイミングの最適化 など
商材ごとの単価や客単価の向上も重要ですが、アプローチが適切でないと好感度や利用頻度の低下につながるリスクもあります。
顧客が不快に感じないタイミングでのアプローチや魅力的なキャンペーンを考えてみましょう。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
AARRR活用のポイント
AARRRモデルを運用する中で各段階がどの程度達成できているか評価するシーンがあります。
その際の評価は定量的な数字で示せるマーケティング指標を取り入れましょう。
マーケティング指標の中にはAARRRモデルの各段階を評価するのに適切な指標があります。
各段階で適切な指標を算出することで達成度を明確な数字で把握できるのです。
例えば、自社のRetentionがどの程度のレベルか判断する場合にLTV(顧客生涯価値)という指標が役立ちます。
LTVとはある顧客が一生のうちにもたらしてくれる利益のことで、どのくらい商材を継続利用してくれているかがわかる指標です。
もしLTVが低い水準であれば顧客が商材の継続利用に魅力を感じていない可能性があり、Retention段階の課題が考えられます。
そのため、継続してくれる顧客にメリットがある施策が的確な改善案である可能性が高いです。
反対にLTVが高い水準なのであれば抱えている課題がRetention以外の段階に潜んでいる可能性が高まります。
Retention向上につながる施策に割いていたリソースを別の的確な段階に配分し直せるチャンスが現れるかもしれません。
さらに、各段階で用いられた指標をそれぞれの段階のKPIとして設定する活用法もよく取り入れられる手法です。
AARRRの活用事例
AARRRモデルをマーケティング戦略に取り入れ成功をおさめた事例も数多く報告されています。
その中でもDropbox・X(旧Twitter)・スターバックスコーヒーに注目してみましょう。
事例①:Dropbox
Dropboxはサービスの認知度が広まり、さらに決定的なステップアップを模索していた時にAARRRモデルを導入しました。
その結果、サービス成長のためにクリアすべき段階がReferral(紹介)であると導きだせたことが成功要因です。
<Dropboxが行ったキャンペーン概要>
- X(旧Twitter)をはじめとするSNSでユーザーにDropboxを紹介してもらう
- 紹介者のフォロワーが会員登録
- 紹介者が利用できるストレージの容量アップ
Dropboxはさらにグロースハックの手法を取り入れ、マーケティング戦略やサービスそのものブラッシュアップも行いました。
結果、10万人だったユーザー数が1年強の短期間で400万人まで増加させるという成功をおさめています。
事例②:X(旧Twitter)
X(旧Twitter)はサービス開始初期にユーザーが定着しない・継続利用・定期利用につながらない課題を抱えていました。
そこでAARRRモデルで分析したところ、理想的なユーザーは新規登録当日に複数アカウントをフォローしている傾向がわかったのです。
<分析結果を受けX(旧Twitter)がおこなった改善施策>
- 新規登録したユーザーにおすすめユーザーリストを提案
- X(旧Twitter)にアクセスしているユーザーの目に触れる位置に常におすすめユーザーを表示
この改善施策はユーザーにとって「この人もX(旧Twitter)やってたんだ!」「この人おもしろそう」といった発見につながりました。
結果、ユーザーの定着率アップにつながりActivation・Retention段階のクリアにつながったのです。
事例③:スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーはAARRRモデルの中でも最終ゴールであるRevenue(収益の最大化)に成功した事例です。
<スターバックスコーヒーコーヒーの施策>「ワンモアコーヒー」
- ドリップコーヒーの2杯目を割引するサービス
- スターバックスコーヒーのドリップコーヒーは1杯目が300~450円程度 ※サイズにより変動
- 同じドリップコーヒーが2杯目は100円で購入可能
この施策の成功要因は2つ考えられます。
- 最大80%オフとなる魅力的なサービスで顧客満足度につながった
- 実はスターバックスコーヒーにとってコスト面のダメージが少ない施策だった
スターバックスコーヒーにはドリップコーヒーの風味をキープするために作り置きを1時間以内に廃棄するルールがあります。
そのため廃棄されるドリップコーヒーのロスをいかにして減らすか、が課題でした。
ところが「ワンモアコーヒー」の導入でこれまでロスしていたドリップコーヒーが売り上げに変わり客単価向上にもつながったのです。
また顧客から見ると、とてもお得に思えるサービスなのでワンモアコーヒーを目当てに定期的に利用するファンも増加しました。
顧客1人あたりの利用回数が増えたことで、顧客生涯価値の向上にもつながった事例として知られています。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
AARRRを活用する際の注意点
AARRRモデルはグロースハックと組み合わせられる場面も多く、分析結果の精度が改善施策の精度に直結することも多くあります。
ビジネスの成長戦略としてAARRRモデルによる分析を導入するなら各段階で適切な指標を選択することが大切です。
- 分析によって導きだされた課題は適切か?
- 分析に用いた指標の選択は適切か?
- 分析が必要な指標に過不足はないか? など
特に上記のようなポイントに注目して各段階の指標を選択しましょう。
注目すべき改善点や指標の選択を間違うとマーケティング戦略そのものの方向性にズレが生じてしまうため注意が必要です。
AARRRの活用で悩んだら
AARRRモデルはビジネスの現状を正確かつ定量的に把握し、今後ビジネスが進むべき方向性の道しるべとなるフレームワークです。
もし、マーケティング分析にAARRRモデルを導入したいとお考えでしたらデジマクラスにお声がけください。
AARRRモデルは基本的にどのビジネスにも応用できますが、特に向いているのがインターネットを介したビジネスです。
例えばネットショップビジネスやSaaSビジネス、サブスク型ビジネスとの相性の良さが知られています。
デジマクラスはAARRRモデルが向いているインターネットビジネスに欠かせないWeb・デジタルマーケティングが専門です。
そのため、AARRRモデルはデジマクラスの強みを存分に発揮できるフレームワークでもあります。
- AARRRモデルで自社ビジネスを分析したい
- AARRRモデルの考え方・理論は理解できたが具体的な分析方法がわからない
- 分析結果が適切かどうか判断できない など
特にこのようなお悩みをお持ちのビジネスでデジマクラスのノウハウが役立ちます。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
まとめ
AARRRモデルはインターネットビジネスをはじめ、様々なビジネスのマーケティング戦略に役立つフレームワークです。
ただし、正確な分析結果と各指標の正確な数値がその有効性を支えていることは見逃せません。
分析結果が正しいかどうか、チェックできる仕組みも構築しながら成長戦略に上手く取り入れてみましょう。