2010年代後半から徐々に市場へと姿を見せ始めた「PMP」ことPrivate Market Place。
広告を掲載するメディアと広告主を限定することで、メディア側と広告主双方にメリットが生まれるという方法です。
今回はPMPが広告市場でどのような役割を担っているのか、また広く浸透することとなった背景について見ていきましょう。
目次
PMPの概要
PMPとは、その名の通り広告市場を限定し、目的に沿った広告だけを取り扱うことができる方法のことを指します。
あらゆる広告が不特定多数の媒体に掲載されるのではなく、選び抜いたメディアのみと取引することができるPMP。
広告主とメディア双方が抱える「自社のブランドイメージを損ないたくない」という願いを一度に叶えることができるのです。
2017年に行われた株式会社AJAの調査によれば、当初はRTB取引額全体のうちわずか5%ほどであったPMP取引市場。
しかし2017年には12%となり、2020年には20%へと増加すると予想されていました。
今後も市場規模はさらに増え続けると見られています。
さらに取引額は400億円に迫る勢いを見せており、広告業界に大きな影響をもたらしたことは間違いないでしょう。
広告市場におけるPMPの重要性
PMPが生み出すメリットの1つに、掲載される広告が従来と比べて品質の高いものになるという特徴があります。
これまでは目的に沿ったメディアに対してのみ入札する、ということはせず、品質に関わらずまとめて入札するという形が取られていました。
しかしPMPの場合は、そもそもの入札自体が限られた広告主とメディアの間で行われるものであり、必然的に広告の精度が高まります。
広告主は目的に沿った高品質なメディアに広告を掲載でき、メディアにとっても自社のイメージを損ねないような広告のみを掲載できるのです。
サイトや動画に掲載されている広告の中には、テレビCMとまったく同じものが含まれています。
つまり、低品質なメディアに広告が掲載された場合、テレビCMでの評価も下落してしまうことになりかねません。
その結果、いとも簡単にユーザーやカスタマーが離れてしまう可能性も……。
広告主にとっても、そしてメディアにとっても、不特定多数と取引をすることはあまり得策とはいえません。
いわばPMPは、広告市場における「リスク」を大きくカットした方法ともいえるでしょう。
インターネット広告の事例はこちら
RTB取引市場の概要
PMPについて理解するためには、まず「RTB」という単語について知っておく必要があります。
一般的にRTBと略されているのは、「Real Time Bidding」のこと。
リアルタイムで行われる入札、つまり1つのメディアの中の限られた広告枠を巡り、各広告主による入札が行われているということです。
PMPが登場する前から根付いている仕組みであり、これからも欠かせないものとなっていくでしょう。
これだけではイメージがわかない、という場合は、絵画のオークションに例えてみるとわかりやすいのではないでしょうか。
1つの有名な絵画を巡って、それを手に入れたい人々が次から次へと高額入札を行っていく……。
そして最後に最も入札金額の大きかった人が、絵画を手にすることができるのです。
このような一般的なオークションと同じく、RTBでは1つの広告枠を争い合い、最も高価な取引ができる広告主がその枠を勝ち取ります。
この取引は月に100億件を超えるといわれており、そのすべてを統括しているのがRTBシステム、というわけです。
効率的な広告配信が可能
RTBでは、1つの広告枠ごとに入札が行われ、取引が開始されます。
最初から何十、何百の枠に入札することがないため、無駄な出費を減らすことができるのです。
入札時には自分の目的に合ったメディアを優先的に表示させることも可能。
広告の内容にマッチしたメディアを中心に狙えば、必然的に広告そのものの価値がアップします。
さらに、RTBでは入札金額をセカンドプライス方式と定めています。
最高額を入札した広告主が、「2番目に高額な広告主」に大差をつけて落札した場合、結果的に大きなコストがかかってしまうことがあります。
しかしセカンドプライス方式の場合、落札者が支払うのは「2番目に高額な入札金額よりも1円多い金額」のみ。
これにより、1つの広告枠に莫大な金額をかける必要がなくなるのです。
広告表示の機会を増やせる
入札をする広告主と、広告枠を提供するメディア側は、どちらもRTBにおいてパラメーターを設定することができます。
どんな広告主やメディアを優先したいか、さらにはどんなカテゴリーに該当する対象をピックアップするかなどを選択可能。
これにより、条件にマッチする対象全てに対し落札するチャンスが巡ってくるのです。
また、広告が表示されるのは1つのメディアに留まりません。
自動入札ができるため、条件にマッチするすべてのメディアに入札することができ、必然的に広告表示の幅が広がります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
RTBに潜むリスク
さまざまなメリットが存在するRTBですが、一方でリスクも存在します。
PMPが登場するまでは全盛期だったRTBには、どんなリスクが隠されているのでしょうか。
また、そのリスクを回避しながらRTBを利用するためにはどんな方法を用いるべきなのかも見ていきましょう。
ブランドイメージの低下
RTBのデメリットとして挙げられるのは、広告主が自身の広告を掲載してもらうメディアを1つ1つ選ぶことができないこと。
つまり、実際に掲載されるまでどんなメディアに載るのかがわからないということです。
ある程度条件を絞り込み、そこからマッチするメディアを選べるとはいえ、各メディアのレベルやクオリティは千差万別。
せっかく落札して勝ち取った広告枠にもかかわらず、自社のイメージを損なう結果となる可能性があるのです。
逆にいえば、カテゴリーさえ合っていればどんなメディアでも構わないという広告主にはRTBが合っているといえます。
自社のブランドイメージを損なわない程度の優良メディアを選びたい、という場合には、RTBのリスクをよく理解しておく必要があるでしょう。
メディア価値の下落
ではメディア側はどうかというと、これもまたリスクが付き物です。
メディアのイメージとは異なる広告が掲載されれば自ずとメディアの価値が下がってしまうのです。
しかし、誰も使うことがなく余ってしまっていた広告枠に対しても、条件がマッチすれば広告主が入札してくれる可能性もあります。
広告主側だけでなく、掲載するメディア側にとってもプラスとマイナスの両面を兼ね備えた方法といえるでしょう。
広告取引の種類
RTBやPMPなどの広告取引には、大きく分けて4つの種類があり、それぞれ優先度や参加方法、価格などが異なります。
- Open Auction
- Invitation Only Auction
- Unreserved Fixed Rate
- Automated Guaranteed
メインとなるのはオークションがあるかどうか、そして在庫予約ができるかどうか。
このうちオークションが開催されるOpen AuctionとInvitation Only Auctionが「RTB」に該当します。
そして、Open Auction以外の3つは「PMP」に当たる取引方法。
それぞれの詳細について確認してみましょう。
Open Auction
こちらは4つの中で唯一、誰でもオークションに参加することのできる取引方法です。
そのため在庫量が多く、価格が安めに設定されているのが特徴。
先ほどもご紹介したメディア側で余ってしまっている広告枠などはここに分類されることがほとんどです。
また、誰もが参加できる方法のため、よりメディアを厳選したい広告主にとっては優先度が低い方法でもあります。
当初は広告枠のレベルも低いものばかりでしたが、徐々に品質が改善され、全体的にレベルの高いものが増えてきています。
Invitation Only Auction
オークション形式でありながらも、参加する広告主やメディアが限定されている方法です。
高品質な広告枠を優先的に取引することができるため、先のOpen Actionと比べると広告枠のレベルも高いものが多く見受けられます。
誰もが参加できるオープンなオークションに対し、広告主やメディアを制限する方法をクローズドオークションといいます。
これはPMPの性質も併せ持っており、双方が自身の目的により近い取引ができるという強みがあるのです。
Unreserved Fixed Rate
こちらは先の2つとは異なり、オークションが開催されない方法です。
価格があらかじめ設定されているため、広告主側からすれば毎月出ていく金額を一定に保つことができるのも魅力の1つです。
また、在庫の予約をすることはできませんが、厳選された高品質な広告枠のみを取引できるためブランドイメージを損なう心配がありません。
魅力的な広告枠がオークションに出る前に、Unreserved Fixed Rate内で取引を終えることで広告枠そのものの価値も上がるといえるでしょう。
Automated Guaranteed
最後にご紹介するAutomated Guaranteedは、最も高品質な広告枠を取引することができ、それに伴って取引額も高額に設定されています。
優先度が最も高いということもあり、多くの広告主がこの方法で取引を行っています。
また、この方法のメリットとして挙げられるのは「在庫予約ができる」という点。
これにより「必ずこの数の広告枠が必要だ」と分かっている場合は、あらかじめ予約をしておくことで確実に取引ができるのです。
季節に左右されやすいものの場合は特に、時期を指定して予約しておくことが必須といえるでしょう。
PMPのメリット
PMPが広告市場に加わったことにより、大きく分けて3つのメリットが生まれました。
中でもウエイトを占めているのが「ブランドイメージを損ねない」という点。
そして他にもさまざまな利点があり、多くの広告主やメディアを救うこととなったのです。
ブランドセーフ機能の充実
そもそもPMPは、純広告と運用型広告の中間に位置しているといわれています。
それは双方のメリットを兼ね備えているという意味であり、より目的に沿った運用ができるようになったのです。
メリットのうちの1つが「ブランドセーフ機能」。
これは先ほどからご紹介しているように、品質の高いメディアに対してのみ取引ができることから生まれたものです。
品質の低いメディアに広告が流れることがないため、ブランドイメージが損なわれずに済むのはもちろん、閲覧数も稼げるようになります。
横断的な出稿が可能
PMPの場合、複数ある広告枠のそれぞれにかける予算を抑えることができるのが大きなメリットの1つ。
その結果、豊富な広告枠に対し少しずつ広告を掲載することができ、多種多様なメディアへの出稿が可能となります。
コストを抑えつつ、より多くのユーザーの目に留まりやすくするという、まさに「一石二鳥」の方法といえますね。
オーディエンスデータによるターゲティングが可能
自らが取引して出稿した広告については、オーディエンスデータを用いて詳細を確認することができます。
実際にはどれだけの閲覧数を集めているかなどの詳細をチェックしていくことで、今後の動向を決めるのにも役立ちますね。
また、実際に取引が成立する前の段階からターゲティングをすることで、より有用な広告枠を見極めやすくなります。
PMPと純広告の関係性
PMPが登場する前、初期のインターネット広告市場では純広告をメインとした取引が行われていました。
純広告とはあらかじめ期間を決めて広告枠を買うというもの。
掲載された後は変更や調整ができませんが、常日頃から動向をチェックする必要がなく、手間がかからないというメリットがあります。
一方、純広告の後に登場した運用型広告は、オークションを用いて双方の目的に合った取引が行われるというもの。
意思にそぐわないメディアへ広告が出稿されたり、低品質な広告を自社メディアで扱う心配がありません。
しかし運用型広告の場合、常にユーザーの動向をチェックしておかなければ理想とする効果を得ることができません。
知識と経験を兼ね備えた担当者が、日々詳細にチェックする必要があるのです。
純広告のメリットである、「それぞれの思惑に合致した取引ができる」という点はPMPにも共通する大きなメリットの1つ。
広告主にとっても、メディアにとっても価値を下げることなく広告出稿が可能です。
さらにDSPやSSPといったツールを経由することで、取引の支援や広告枠の分析といった運用型広告のメリットも兼ね備えているのです。
純広告と運用型広告の中間に位置しているPMPは、いわば両者のメリットだけを抽出した画期的な方法ともいえるでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
PMPの成長の裏側
PMPが登場し始めたのは、日本では2015年ごろのことだったといわれています。
始まりはアメリカで、次第に日本をはじめとする各国へと広がりを見せるようになりました。
多くの広告主やメディアが参加する方法となるまでに成長した経緯とは一体どんなものなのでしょうか。
ブランドイメージ低下事例の多発
高品質なものもあれば、低品質なものも含まれ、多くの広告枠が乱立していた当初。
どんな広告枠に当たるかわからず、大企業や有名ブランドであればあるほど広告の出稿がしにくいという事例が多発していました。
そして強行を試みた結果、目的にそぐわないメディアへ広告が出稿されてしまった……ということも。
また、メディア側もどんな広告が載るかわからないというリスクを抱えていました。
このままでは品質に関わらず広告を受け入れるか、もしくは広告枠を減らすか……という究極の2択を迫られていたのです。
不正広告サイトの増加
広告を出稿すると、さまざまな問題をチェックする必要があります。
第一に、広告がしっかりとユーザーの目に留まっているかどうか。
そして、自動でクリックするなどのプログラムにより不正に閲覧数が増えていないかなどの問題です。
多種多様なメディアへ広告が出稿されたことで、このような「不正広告サイト」が増加してしまったのです。
純粋な閲覧数を把握することが困難となるほか、純粋なユーザーの意向を汲み取ることができなくなってしまいます。
このような問題の数々を経て誕生したPMP。デメリットを可能な限り排除し、広告主・メディア双方に利をもたらす方法となりました。
インターネット広告の事例はこちら
PMPに関して悩んだら
多数のメリットがあるPMPですが、これまで採用してきた方法を一新するためには知識と経験が必要です。
PMPのことで悩んだら、その道のプロに相談することをおすすめします。
PMPは株式会社AJAを始め、株式会社電通デジタルや株式会社NTTドコモなど大手企業もPMPサービスを展開したことで話題となりました。
名の知れた大企業も利用しているサービスについて詳しく知りたい場合は、ぜひ以下のリンクからプロのコンサルタントに相談してみてくださいね。
インターネット広告の事例はこちら
まとめ
今回はPMPが広告市場においてどのような役割を果たしているのか、またその種類やメリットはどんなものなのかをご紹介しました。
デメリットを出来る限り改善し、双方にメリットをもたらすこととなったPMP。
今後も成長していくことが予想されるため、現段階でしっかりチェックしておくことをおすすめします。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。