「ベンチマーク」の意味をご存知でしょうか。ビジネスシーンにおいては頻繁に出てくる言葉です。
しかしながら、ベンチマークの正しい意味について正確に答えらえる人は意外と多くありません。
とりわけマーケティングの分野ではベンチマークが重要視されており、その意味を正しく理解しておくことが不可欠です。
この記事ではベンチマークをマーケティングに活かす方法や重要性に加え、競合調査を行う際のポイントや活用事例を紹介します。
目次
ベンチマークの概要
ベンチマークとは「優良他社の戦略や指標」という意味で用いられるビジネス用語でベンチマーキングともいいます。
他社の商品・サービスを基準に、自社の商品・サービスを評価・分析し、改良していく手法のことです。
もともと「ベンチワーク」は測量の分野で用いられており、建築物の高低差や位置の基準点や水準点を表します。
現在では経営やマーケティングなど様々な場面で使われるようになりましたが、業界によって微妙に意味が異なるのが特徴です。
一般的には何かを評価する際の指標・水準・基準の意で使われており、特にマーケティングの分野で重要視されています。
したがって、マーケティングの分野でベンチマークを活用するには、まずは言葉の意味を正確に理解することが大切です。
マーケティング戦略の事例はこちら
ベンチマークの重要性
ベンチマークはマーケティングを行う上で非常に重要だとされていますが、具体的にはどういった活用ができるのでしょうか。
言い換えれば、具体的にどう活用できるのかが理解できなければ、導入しただけで終わってしまいかねません。
そこで、ベンチマークの重要性とその活用方法について考えてみましょう。
企業戦略に活用できる
多くの企業においてベンチマークは、マーケティングに活かして企業戦略の一環として活用しています。
なお、適切な企業戦略を構築するためには、自社の強み・弱みを的確に把握することは必要不可欠です。
ベンチマークを適切に設定することで、「どこを改善すべきか」「どこがアピールポイントなのか」を明確にできます。
ただし、ベンチマークを設定する際には、自社の課題や取組みにマッチしたものでなければ意味がないことはいうまでもありません。
競争優位の確立に活用できる
ベンチマークを設定した際には、自社だけでなく競合他社についても同じ項目で分析しましょう。
競合他社と比較することで、自社の不足している部分・勝っている部分が明確になり、課題や改善点がより具体化されます。
ただし、比較・分析する競合他社は、自社よりも業績面などで優れている企業を選ぶことが鉄則です。
市場において自社よりも低評価を受けている企業と比較しても、得られるものは少ないと言わざるを得ません。
自社よりも優れている企業と比較することで、自社の強みをもって差別化を図り競争優位の確立に活用することができます。
ベンチマークを設定するメリットは?
ベンチマークは企業戦略を構築する上で欠かせないものですが、具体的にはどういったメリットが考えられるのでしょうか。
ベンチマークを導入するにあたって、事前にメリットを把握しておけばスムーズに導入することが可能です。
ここでは、企業がベンチマークを導入することで期待されるメリットについて紹介します。
自社の現状を客観的に評価できる
実際に企業内にいると、自社の現状や課題を客観的に評価することは意外と難しいのが現状です。
どうしても物事をひいき目に判断してしまったり、主観・感情移入してしまったりするのは企業内にいる以上やむを得ません。
しかしながら、適切な企業戦略を構築するには自社の現状を客観的に評価することは必要不可欠です。
その点、ベンチマークは項目ごとに評価基準を定めることから、項目によっては数値で評価が明らかにされます。
したがって、自社の課題や強みが客観的に分析することにつながり、具体的な企業戦略の構築が可能となるでしょう。
他社の手法や施策から学ぶことができる
ベンチマークを設定する際には、自社よりも評価の高い競合他社においても同じ項目で設定するのが一般的です。
競合他社と比較することで、自社の課題・強みが明らかになるとともに、他社の手法や施策も明らかにすることができます。
他社の手法や施策の良い点を学べることは、企業経営を行う上で非常に大きなメリットです。
もちろん、競合他社の良い部分を学び取り入れる柔軟性・向上心が不可欠であることはいうまでもありません。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ベンチマーキングのデメリットは?
ベンチマーキングはメリットばかりではなく、デメリットもあることを理解しておきましょう。
ベンチマーキングを行うことで、自社のみならず他社の強みや手法・施策を分析することは可能です。
しかしながら、必ずしも全ての項目で参考になるものでも、導入できるものでもありません。
資金力の差や培ってきた伝統などから全くマッチできないもの、長期間を要するものもあります。
また、競合他社の手法・施策を取り入れることで自社の強みが希薄になったり、差別化が図れなくなることも少なくありません。
こういった事態を回避するためにも、事前の競合調査を徹底し目的意識をもってベンチマーキングに取り組むことが不可欠です。
業界別のベンチマーク
ベンチマークは物事を比較する際の指標・水準・基準といった意味で使われる言葉です。
ビジネスシーンではマーケティングに活かされ企業戦略の構築などに活用されますが、業界別で様々な使い方があります。
ベンチマークを適切に活用するには、業界別の使い方についても把握しておくことが大切です。
ここでは、ベンチマークを正しく理解するために知っておきたい、業界別の特徴的な使い方を解説します。
IT分野
IT分野においてベンチマークは、ソフトウェアもしくはハードウェアの性能を測定する際の比較基準として使われるのが一般的です。
プログラムの処理性能やアクセス速度はIT分野ではとても重要な要素であり、ベンチマークを設定することで改善点が明らかになります。
なお、プログラムなどの性能を比較・評価することをベンチマークテストと呼び、結果を可視化したものがベンチマークスコアです。
また、オンラインゲームなどでは「ベンチマークテスト版」を配信し動作検証やプロモーションを行うこともあります。
自動車業界
自動車業界では「優秀な自動車」「目標となる自動車」をベンチマークとして設定するのが一般的です。
新車が販売され市場で高い評価を受けると、その自動車がベンチマークとなり自社のモデルチェンジや新車の開発に活かされます。
もちろん自動車の評価ポイントはデザインや安全性・燃費など多岐にわたることから、目標によってベンチマークは異なるのが必然です。
したがって、何に重点をおいて「優秀な自動車」「目標となる自動車」とするのかが大きなポイントになります。
金融分野
金融分野においてベンチマークは、投資商品を評価する指標・基準として活用されるのが一般的です。
日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)はベンチマークとして、株式投資における特定銘柄や投資信託の収益性の評価に用いられます。
例えば株式投資において、特定銘柄がベンチマークを上回れば高評価であり、下回れば低評価です。
数値で運用結果を判断できることから、その後の投資先の選定などに役立ちますが、市場動向の見極めも大切になります。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
ベンチマーキングを行う手順
ベンチマークを設定して期待する効果を得るには、しっかりと手順を追って設定・実行することが大切です。
言い換えれば、手順など考えず無計画にベンチマークを設定しても期待される効果を得ることはできません。
ここでは、期待する効果を得ることができる、ベンチマークの設定・実行の手順について解説します。
計画を立てる
効果的なベンチマークを設定するには、まず計画を立てることから始めましょう。
具体的には自社の課題を洗い出し、どういった項目にベンチマークを設定すべきかを丁寧に検討します。
このとき自社に対する主観や思い入れを捨て、いかに客観的に自社を評価できるかが大きなポイントです。
さらに、どういった切り口・考え方で比較・分析するのか比較基準を綿密に設定することが重要になります。
また、ベンチマークを設定し計画を実行するまでの大まかなスケジュールについても計画しておくと良いでしょう。
情報を収集・分析する
ベンチマークを行う上で、非常に重要となるのが他企業の情報を収集し分析するプロセスです。
情報を収集する対象は、同じ業界の競合他社が一般的ですが、ベンチマークの項目によっては異なる業種から選択する場合もあります。
したがって、広く自社とは異なる業界にも目を向けて競合調査を行い、自社にとって真の意味で目標とすべき企業を見出すことが重要です。
なお、目標とすべき競合他社を選択するには、自社よりも評価の高い企業から選択するのが鉄則であることを心得ておきましょう。
目標を設定する
目標とすべき競合他社に関する情報を収集・分析した結果を取りまとめたら、自社が取り組むべき目標を設定しましょう。
なお、目標を設定する際には以下の項目について確認しておくことが大切です。
- 自社で達成可能な目標か
- 予算はどの程度必要か
- 達成までにどの程度の期間が必要か
- 計画を実行するために人材は揃っているか
これらの項目の1つでも欠けていると、目標を達成することが困難となりベンチワークを設定した意味がなくなります。
また設定した目標は、関係する部署・社員に設定した意図・得られる成果をしっかりと周知してモチベーションアップに努めましょう。
計画を実行する
取り組むべき目標を設定したら、速やかに実行に移しましょう。なお、目標は経営計画などに盛り込むと効果的です。
計画を実行する際には役割分担を明確にするとともに、定期的に効果を検証し必要な改善を行うことが大切になります。
いわゆるPDCAサイクルを回すことによって、期待すべき効果を効率的かつ迅速に得ることが可能です。
また、ベンチマークは項目を変えながら継続的に行うことで、企業基盤の底上げにつながることを心得ておきましょう。
競合調査のポイント
適切なベンチマークを設定するには、比較対象となる競合他社を正しく選定することが重要になります。
比較対象となる競合他社を正しう選定するには、事前の競合調査をいかに正確かつ効果的に行うかがポイントです。
ここでは、ベンチマークを設定する上で大切にしたい競合調査のポイントについて解説します。
自社より優れた企業を調査する
競合調査を行う際には、自社よりも優れた企業を対象とすることがポイントとなります。
ベンチマークをマーケティングに活用する目的は、競合他社と比較・検証して自社の改善点などを明らかにすることです。
自社よりも評価の低い企業を調査しても、多くの改善点を見つけることはできません。
ただし、余りにも企業規模や業績に差がある企業を対象とすると、適切な目標を設定することが困難となります。
したがって、努力次第で追い越せる可能性が高い企業を選定することを心がけましょう。
調査の軸になる項目
ベンチマークを設定する上で、競合調査の軸になる項目は商品・サービスだけではありません。
経営戦略や人材開発など多岐にわたります。一般的に競合調査の軸となる項目は以下のとおりです。
- 商品・サービス
- 戦略・業務プロセス
- 組織・人材・経営基盤
したがって競合調査を行う企業は、自社が属する業界だけでなく幅広い視点で選定することが大切です。
なお、調査の項目は軸となる項目に、自社の課題に沿った項目を加えていくと良いでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ベンチマーキングの活用事例
ベンチマーキングの代表的な活用事例として知られるのが「米国ゼロックス社」です。
1950年代後半に普通紙複写機を開発し隆盛を極めた米国ゼロックス社ですが、特許が失効した1970年代から大きく失速します。
この時期に台頭してきたのが、高品質で安価な製品を生み出していた「キヤノン」など日本企業です。
そこで、米国ゼロックス社は自社の課題が「品質」「時間」「コスト」であることを見出し、ベンチマークを設定しました。
このとき米国ゼロックスは同じ業界の競合他社のみならず、アウトドアメーカーの「LLビーン」にベンチマークを設定しています。
LLビーンは効率的な注文処理のプロセスに定評があり、米国ゼロックス社は他の業界であっても応用できると考えた結果です。
その後米国ゼロックスは経営を立て直し、ベンチマーキングの責任者ロバート・C・キャンプ氏はその手法を広く普及させています。
ベンチマークの活用で困った時は?
ベンチマークはマーケティングに活用することで、大きな成果が期待できます。
しかし競合調査や軸となる項目の選定などを的確に行うことが不可欠であり、経験が浅いと困ってしまうことも少なくありません。
デジマクラスではベンチマークにおける競合調査の方法などを丁寧にレクチャーしています。
ベンチマークの活用で困ったら、迷わずデジマクラスのコンサルタントに相談しましょう。
マーケティング戦略の事例はこちら
まとめ
ベンチマークは物事を比較・検討する際の指標・基準・水準などの意味で用いられる言葉です。
ビジネスシーンではマーケティングに活かされ、企業戦略の構築などに活用されるなど重要な役割を果たしています。
ベンチマークの目的は、自社よりも優れた企業を的確に分析することで自社の改善点を見出し、実際に改善を図ることです。
したがって、適切なベンチマークを設定するには、比較対象となる競合他社を正しく選定することが重要になります。
なお、ベンチマークの軸となる項目は多岐にわたることから、比較すべき企業は必ずしも同じ業界である必要はありません。
また、自社の改善点を見出すためには、自社よりも優れた企業について競合調査を行うことが不可欠です。
デジマクラスのコンサルティングでは、ベンチマークの設定・運用について的確なコンサルティングを行っています。
ベンチマークの運用に行き詰まりを感じたら、早い段階でのコンサルティングの利用がおすすめです。