細分化されたアカウント設計の発想を転換し、集約化することで広告実績を改善するHagakureをご存じですか。
HagakureはGoogleが推奨するリスティング広告のアカウント構造です。表示回数を集約し広告運用の頻度を上げることができます。
この記事では、その特徴とメリット・デメリット、さらに設計方法や注意点を解説。
アドテクノロジーの進展に伴った広告媒体のロジックが今どのような傾向にあるのかを理解しアカウント設計を考えてきましょう。
目次
Hagakureの特徴
Hagakureは2000年にGoogleが始めたインターネット広告AdWordsの登場に伴って推奨されるようになったアカウント構造です。
広告のクリック率に加えて表示回数が広告の品質の重要な指標となったため、その品質を高める効果的な設計になっています。
具体的にどのような構造なのでしょうか。まずその構造について詳しく見ていきましょう。
Google広告のアカウント構造
AdWordsはGoogleが展開する広告出稿サービスの整理統合に伴い、2018年に「Google広告」という新しい名称になりました。
Google広告では、広告グループを単位として表示回数を評価し、広告品質をランク付けしています。
この方法だと「広告グループごとにキーワードは1つ」という従来の設計ではグループの表示回数が減少し正しく評価されません。
そこでアカウント構造をシンプルにして広告の表示機会を集約し、広告を正しく評価しやすくする設計へシフトするようになりました。
このGoogleのプロジェクトはHagakureと呼ばれ、それまでの設計の概念を覆すことになったのです。
シンプルな構造
GoogleがHagakure構造を推奨したのには、次の2つの目的がありました。
- 表示回数を集約して評価されやすくすること
- 広告運用の頻度をあげること
それでは、それぞれの目的は具体的にどのような方法で達成されるでしょうか。
まず(1)ですが、1つのリンク先URLに対する広告グループは1つを目安としてアカウント設計を行います。
次に(2)ですが、キーワードを1つの広告グループにまとめて登録し、それらに関連付けて広告文を作り分けましょう。
このようにHagakureはアカウント構造をシンプルにして機械学習をしやすくし効果的な自動入札を可能にするのです。
また、コンバージョン数が1つのキャンペーンや広告グループに集約されるので、目標とする指標が見極めやすくなります。
Hagakureが推奨されている理由には、このようなメリットがあることを理解しておきましょう。
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Hagakure登場前のアカウント構造
Hagakureが推奨される前のリスティング広告はどのような構造だったのでしょうか。
HagakureはGoogle広告のロジック上は優位ですが、未だに以前の設計方法で運用されている広告が少なくありません。
Hagakureをよく知るための比較対象として、以前のアカウント設計について学んでおきましょう。
「1広告グループ1キーワード」が主流
Hagakureが推奨される前は、キーワードと広告文の関連性が重視され、「1つの広告グループに1つのキーワード」が主流でした。
キーワードから得たい情報は検索する人それぞれで違うので、キーワードに合わせた広告文すれば成果が上がると考えたのです。
そこでキーワードごとにグループを細かく分ける設計が提唱されました。
そうすればグループ単位で入札を管理できる上、数値で比較し傾向を把握できます。
つまり、グループを細分化することによって、きめ細かな運用を行うことができることがメリットです。
グループ細分化による弊害
Hagakure以前は広告グループの細分化はメリットがあったのですが、Hagakure以後はデメリットが指摘されるようになりました。
細かくグループ分けをすると、広告の表示回数が上がらなくなるだけでなく減少してしまう場合があるからです。
キーワードのマッチング精度を上げてクリック率がいくら良くなっても、表示回数が上がらない広告は評価が落ちてしまいます。
さらに、検索時に広告の掲載順位を決めるオークションでは、自分のアカウント内でランク付けが最も高いものだけが表示されます。
そのため細分化しすぎると表示機会が分散してしまい表示されなかった広告の品質は正しく評価されません。
Hagakureはこの悪循環を解消します。構造がシンプルなので広告表示の機会が分散せず、キーワードも評価されやすくなります。
GoogleがHagakureを推奨している理由
GoogleがHagakureを推奨している理由には主に次の3つがあります。
- 広告が正しく評価されるようになる
- 機械学習が機能するようになる
- 運用の手間数が減りPDCAが回しやすくなる
Hagakureのアカウント構造は単純化されていて表示回数データは集約されているので、広告が正しく評価されやすくなります。
広告が正しく評価されれば、効率よく日々の広告運用が可能になりPDCAが回しやすくなるわけです。
広告の評価指標やコンバージョン数の実績データはキャンペーンや広告グループに集約され機械学習が活用しやすくなります。
工数がかかる入札調整を機械学習に任せ、キーワードの追加・除外や検索クエリに合わせた広告文の作成に注力することが可能です。
このようにGoogleがHagakureを推奨する理由を踏まえながら、Hagakure構造のメリットとデメリットを理解していきましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
Hagakureのメリット
Hagakureは集約型の設計であることを解説してきました。この構造は機械学習との相性が抜群です。
これはリスティング広告の運用においてどのようなメリットを意味するのでしょうか。
ここでは特に「自動入札」「PDCAサイクル」「品質スコア」の観点からHagakureのメリットを考えていきましょう。
自動入札が効率的に行える
アカウント構造を単純化して表示回数を集約するHagakureの構造は、広告の品質を評価しやすくします。
Googleの広告評価指標であるクリック数と表示回数がキャンペーンや広告グループに集約され把握しやすくなるからです。
つまり、Googleの広告評価に機械学習を活用すれば効率的に入札を調整することができ、高い精度で成果が上げられます。
PDCAを回しやすい
いくら入札を自動化しても、PDCAの頻度が上がらなければ広告の効果は上がりません。
Hagakure構造は広告を的確に評価しやすくしますので、運用におけるPDCAサイクルも回しやすくなります。
またHagakure構造により運用の負荷が軽減されるのでPDCAに工数をかけられるようになることもプラスです。
品質スコアの改善につながる
Hagakure構造を使い1つの広告グループにキーワードを集約すると、自動機能を利用して効果的にPDCAを回しやすくなります。
PDCAの実施においては検索クエリの動きに注意を払いましょう。追加・除外すべきキーワードが把握できるからです。
そのキーワードの傾向に従って広告文を差し替えるようにし、コンバージョンにうまくつなげていきましょう。
この作業を繰り返していくことでキーワードの品質スコアが改善していきます。
Hagakureのデメリット
Googleが推奨している設計でありながらHagakureにはデメリットもあります。
ここでは特に以下の2点について詳しく考えてみましょう。
- 1つのグループに複数のマッチアップタイプが登録され、入札の調整が難しい
- 1つのグループに複数のキーワードが登録され、キーワードごとのレポート作成の手間がかかる
これらのデメリットをよく考慮し、Hagakure構造を採用するかしないかを熟考してください。
キーワードごとの入札調整ができない
キーワードには4つのマッチアップタイプが存在します。
- 部分一致
- フレーズ一致
- 完全一致
- 除外キーワード
ユーザーの検索クエリと広告を一致させる厳密度を指定するものですが、「部分一致」タイプはHagakureと相性が良くありません。
グループに部分一致キーワードが含まれていると、表示回数やクリックが多いものに予算が偏ってしまうのです。
個別の入札であれば手動で単価調整できますが、自動入札設定だと個別の入札調整ができません。
対応策として部分一致キーワードは使用せずに2トーキン以上のフレーズ一致を使用するようにしましょう。
レポート作成に手間がかかる
Hagakure構造では1つの広告グループにキーワードがまとまっているので、キーワード群ごとの分析はしづらいことが難点です。
また、キーワードの数も多いのでクライアントと確認すべきキーワード群を絞り込んでおくことをおすすめします。
さらに、高い売上単価が見込まれるキーワードをキャンペーンに設定し、コンバージョン数と広告費の費用対効果を検証しましょう。
レポート作成には手間がかかりますが、広告の目標を達成するためのデータ確認、分類、分析のためにかかせません。
機械学習を利用して負担が軽くなった分、レポート作成には時間をかけて取り組んでください。
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Hagakureの設計方法
Hagakure構造を設計する方法を考えていきましょう。大まかな流れは以下になります。
- キャンペーン・広告グループを一括管理するアカウントを設定
- サービスや商品の種類ごとにキャンペーンを組み、広告予算・配信設定・地域設定・入札ルール・配信期間を設定
- キャンペーンのターゲット・キーワードの属性ごとにグループを組み、入札単価の設定・キーワードや広告文を集約
- グループ1つに対して1つのリンク先URLを割り当てる
- データが蓄積されたら機械学習を利用して効果的な自動入札を行う
Hagakureの設計時のキーワードに関してはいくつか重要な注意点があるので後に詳述します。
Hagakureの構造例
それでは、Hagakureを適用したアカウント構造をもう少し掘り下げてみましょう。ここでは2つの実用例を見ていきます。
Hagakureのシンプルな構造が表示回数の増加・品質スコアの改善・PDCAサイクルを回しやすくすることに注目してください。
例① マスクの販売サイト
キャンペーン(マスク)
広告グループ(マスク関連)
キーワード
(不織布 価格)
(不織布 購入)
(不織布 デザイン)
→広告文(不織布)
キーワード
(ウレタン製 価格)
(ウレタン製 購入)
(ウレタン製 デザイン)
→広告文(ウレタン製)
例② コーヒーの販売サイト
キャンペーン(コーヒー)
広告グループ(コーヒー関連)
キーワード
(エスプレッソ 価格)
(エスプレッソ 産地)
(エスプレッソ アレンジ)
→広告文(エスプレッソ)
キーワード
(アメリカン 価格)
(アメリカン 産地)
(アメリカン アレンジ)
→広告文(アメリカン)
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
Hagakure設計時の注意点
Hagakureを採用した設計では、キーワードのマッチアップタイプを活かす工夫が必要です。
マッチアップを区別せずキーワードを同じグループに登録し、データを集約するように注意しましょう。
似たキーワードがキャンペーンやグループに分散している、またはマッチアップ別にグループを分けていると逆効果です。
しかし、キーワードをまとめて登録してしまうため、重複や広告文との親和性が担保できない問題が発生することがあります。
キーワードと広告文の親和性
ユーザーが興味を抱いてキーワードをクリックしても、行き着いたランディングページの広告文に違和感があれば離脱してしまいます。
つまり、ここでコンバージョンを生み出すにはクリックしたキーワードと広告文に親和性を持たせることが大切です。
クリックしたキーワードが広告文にも使われていれば、離脱を防いでクリック率を伸ばすことができる可能性があります。
キーワードと広告文をセットで考え、どちらも十分に精査して成果を出しましょう。
キーワードの重複を避ける
広告グループにキーワードを登録する際は、その部分一致も登録しておくことで拾うことができるので類義語の登録は必要ありません。
登録するキーワードのマッチアップ違いの登録については運用しながら検討しましょう。
Hagakure構造の導入で悩んだら
Googleが推奨するHagakureを導入すれば、あなたもリスティング広告の成果を上げられるようになります。
キャンペーン・広告グループ・キーワードを細分化するのではなく集約化することで自動入札による負荷の軽減は魅力的です。
しかし導入後に膨大なキーワードの量に圧倒されまとめ方に悩んでしまう、あるいはレポーティングで疲弊してしまうことがあります。
そのような問題が発生しないように、それぞれの層を構築する段階から対策を練っておきましょう。
あなたの目指すリスティング広告にあったHagakure構造の導入方法については、知識と経験が豊富な専門家にまずご相談ください。
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まとめ
Googleが推奨するHagakure構造について詳しく解説してきました。メリット・デメリットの両面からご理解いただけたと思います。
リスティング広告のアカウント構造は、めまぐるしいデジタルマーケティングの技術革新に伴い常に変化しています。
今までのやり方にこだわりすぎず、柔軟に新しい手法を取り入れて時代の波を乗り切ってください。
またHagakure構造を導入した方はご存知のように、導入後の運用の仕方によって成果が大きく左右されます。
Hagakureのメリットである機械学習による工数の削減の効果を広告成果に結びつけるのは機械ではなく人間です。
Hagkureの効果を最適化しながら、よい広告文を作り出し、PDCAを回してリスティング広告の成果を最大化していきましょう。