事業ドメインをご存知でしょうか。企業の経営基盤を確立するうえで、事業ドメインの設定は非常に重要です。
企業が自社の経営基盤を確立するには、限りある資本や人材資源といったリソースを適切に投入・配分しなければなりません。
また、自社の活動領域を定めターゲットとなる市場・属性を明らかにすることも重要です。
事業ドメインはこれらの要素を踏まえ、自社の活動領域を定め目指すべき姿をわかりやすく示したものだといえます。
それだけに適切な事業ドメインを設定するためのは、いくつかの設定方法や注意点を踏まえておくことが大切です。
この記事では事業ドメイン設定の成功事例に加え、適切な事業ドメインの設定方法や注意点を紹介します。
目次
事業ドメインの概要
事業ドメインとは「誰に」「何を」「どのように」アプローチしていくのかを定める経営戦略上のフレームワークです。
事業規模が大きくなり組織が複雑になると、事業全体にまとまりがなくなる恐れがあります。
その結果、資本や人材が多方面に分散されてしまうと、企業の経営基盤は瞬く間に崩れてしまうことも考えられるでしょう。
企業の経営基盤を確固たるものにするには、事業全体に統一感を持たせ同じ方向に進めていくことが大切です。
そこで企業経営に求められるのが、事業の活動領域であり、これをわかりやすくまとめたものが事業ドメインとなります。
事業ドメインと混同しやすい言葉
事業ドメインには混同しやすい言葉がいくつかあります。混同したままにしておくと的外れな事業ドメインにもなりかねません。
言い換えれば混同しやすい言葉との相違点を明確にしておくことで、より適切な事業ドメインの設定につながるでしょう。
ここでは、事業ドメインを正しく活用するために知っておきたい、混同しやすい言葉について紹介します。
市場セグメンテーション
市場セグメンテーションとは、ターゲットとなる顧客の属性や趣味趣向を分析し、市場を細分化することです。
市場セグメンテーションによって市場を細分化することで、効率的なマーケティングを行うことを目的としています。
事業ドメインはあくまでも活動領域を明確にすることであり、市場の細分化とは異なることを理解しておきましょう。
企業ドメイン
企業ドメインとは、自社における活動領域や競争範囲のことを示す経営戦略上のフレームワークです。
事業ドメインと非常に似通っていますが、事業ドメインはあくまでも事業の活動領域・競争範囲を明確にするフレームワークになります。
これに対して企業ドメインは企業全体の活動領域・競争範囲を示すことを理解しておきましょう。
したがって、企業ドメインを基本として事業ドメインが設定されるのが一般的であり、両者には整合性があることが不可欠です。
なお、両者の違いを明確に理解している企業は適切な企業ドメイン・事業ドメインを設定している企業だといえます。
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事業ドメインを設定する意味
事業ドメインを設定することで、資本や人的資源を適切に配分・投入することが可能です。
事業を継続的に発展させるには、適切なリソースの選択と集中が不可欠であり、そのためには事業の方向性を明確にすることが大切になります。
少子高齢化に歯止めが効かない状況において、とりわけ人的資源の適切な投入は多くの企業における課題です。
したがって企業基盤を盤石なものとし、競合他社との競争に打ち勝つためには、事業ドメインの設定が極めて重要な意味を持つといえます。
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事業ドメインを設定するメリット
適切な事業ドメインを設定するには、そのメリットを理解することから始めましょう。
事業ドメインのメリットを理解することで、「どういった方向性で設定すべきか」が明確になるのがその理由です。
ここでは事業ドメインを設定するにあたって、事前に理解しておきたいメリットについて詳しく紹介します。
ビジネスの方向性がブレない
事業ドメインを設定するメリットの1つに、ビジネスの方向性がブレないことがあげられます。
事業ドメインを設定する際には事業の活動領域を明確にすることから、自ずとビジネスの方向性が定まります。
ビジネスの方向性が定まれば資本や人的資源といったリソースを適切に選択することが可能となり、無駄な分散を回避できるでしょう。
ビジネスの方向性を明確にし、大切なリソースを適切に導入できる点は事業ドメインの大きなメリットです。
競合相手の明確化につながる
適切な事業ドメインを設定する際には以下の「軸」について、それぞれ分析することが求められます。
- 機能軸
- 顧客軸
- 技術軸
これらの「軸」を分析することで、競合相手との比較を簡単に行うことが可能となり自社の強み・弱みを客観的に把握できます。
また、競合相手の強み・弱みを把握することにもつながり、競合相手に「勝てる」経営戦略を策定することができるでしょう。
商品価格を上げられる
事業ドメインを適切に設定することで、自社商品の価格を引き上げることにもつながります。
事業ドメインではターゲットとなる顧客・属性も明確になることから、適切かつ効率的なアプローチが可能です。
ターゲットとなる顧客・属性は自社商品に対して「価値がある」と感じていますから、必ずしも安価である必要はありません。
大切なのは顧客が「いくらであれば購入するのか」「いくらであれば価値を見出せるのか」を正しく分析することです。
事業ドメインではターゲットとなる市場における、自社商品の価値を明確にできることから、商品価格を引き上げることも可能になります。
事業ドメイン設定の成功事例をチェック
事業ドメインを適切に設定するには概要やメリットを理解することに加え、成功事例に触れておくことが有効です。
特に自社と同じ業界の成功事例は大いに参考となるでしょう。ここでは事業ドメインの成功事例について紹介します。
「セブンイレブン」の成功事例
事業ドメインの成功事例として頻繁に取り上げられるのが「セブンイレブン」です。
セブンイレブンの事業ドメインは「近くて便利」であり、社内だけでなくユーザーにも浸透している点が素晴らしいといえます。
- 誰に:地域の人々
- 何を:日常生活で便利だと感じるもの
- どのように:街中の店舗で提供する
セブンイレブンは「モノを販売する」ではなく「便利を提供する」ことを活動領域とし、競合他社との差別化を図っています。
「ヤナセ」の成功事例
メルセデス・ベンツなど外車・輸入車の正規ディーラーである「ヤナセ」の事業ドメインは「車のある人生を創る」です。
ヤナセは高級車を取り扱っているディーラーであり、自社で車を製造していないといった特徴があります。
- 誰に:富裕層
- 何を:クルマのある人生を
- どのように:お客さまのライフスタイルにマッチした高級車を提案する
ヤナセはクルマを単なる道具と考えていません。豊かなライフスタイルを創るための愛車を提供することを活動領域として競合他社との差別化を図っています。
「タニタ」の成功事例
計測機器メーカー「タニタ」は新規事業への参入にあたり、事業ドメインを「健康をはかる」から「健康をつくる」に変更して成功しました。
計測機器メーカーとして一定の地位を確立していたタニタでしたが、その名を一気に有名にしたのが社員食堂である「タニタ食堂」です。
- 誰に:健康を考える人々に
- 何を:健康を
- どのように:計測機器をはじめとする商品を届ける
タニタはタニタ食堂が注目を集めたことで、計測機器に加え外食産業などの新規事業に参入しました。
このとき事業ドメインを変更しなければ、タニタのブランディングは散漫なものとなった可能性もあります。
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事業ドメイン設定にはCTM分析を活用
実際に事業ドメインを設定する際には、CTM分析を活用しましょう。
CTM分析とは「Customer (顧客)」「Technology (技術)」「Function(機能)」の3つの軸から分析するフレームワークです。
ここでは事業ドメインを設定する際に活用したい、CTM分析の3つの軸について、詳しく解説します。
顧客
顧客軸ではターゲットとする顧客の年齢や性別・地域・嗜好性などの属性を明らかにします。
具体的に「誰に向けて商品・サービスを提供するのか」を絞り込むことで、効率的にマーケティング戦略を展開することが可能です。
技術
技術軸では自社商品やサービスにおける強み・技術力などを明らかにします。
具体的に「どういった強み・技術をもって商品・サービスを提供するのか」を絞り込むことで、競合他社との差別化が可能です。
このとき大切なのが「コア・コンピタンス」「ケイパビリティ」の2つの要素となります。
ビジネスを展開する上で核となる圧倒的な技術が「コア・コンピタンス」、企業が持つ組織力が「ケイパビリティ」です。
これらを明らかにすることで自社の強みや技術力を再確認することにつながります。
機能
機能軸では自社の商品・サービスがターゲットとする顧客にもたらす価値を明らかにします。
具体的に「どういった価値や機能を提供するのか」を絞り込むことで、企業の目指すべき方向性を定めることが可能です。
機能軸を追求することで自社商品・サービスの品質向上にもつながり、優良顧客の獲得や競合相手との競争に打ち勝つことも実現できます。
事業ドメインの設定方法
事業ドメインはCTM分析の結果を基に設定を行います。このとき、将来展望などいくつかのポイントを踏まえておくとスムーズです。
ここでは、事業の将来展望を踏まえた適切な事業ドメインとするための設定方法について解説します。
事業ポジションを明確にする
事業ドメインを設定する際には自社の事業ポジションを明確にしましょう。ここでの事業ポジションは業界内での自社の立ち位置も含みます。
事業ポジションの明確化は、業界内での立ち位置やCTM分析による技術軸、自社の強みやオリジナリティを再構築することが目的です。
方向性を決める
事業ポジションを明確に定めたら、事業ドメインの方向性を決めましょう。
事業ポジションを加味しながら、「これまでの方向性を継続するのか」「新規事業を進めるのか」などを定めます。
このとき注意したいのが欲張り過ぎないことです。あれもこれも加えようとすると、統一感が失われることを心得ておきましょう。
現在と将来の整合性を確認
事業ドメインは現時点の事業ポジションを見極めながら、将来の事業展開を見据えて設定することが重要です。
あまりにも高い目標を掲げた事業ドメインだと現実的ではありませんし、すぐに達成できるものも好ましくありません。
したがって事業ドメイン案を作成したら、事業の将来展望との整合性をしっかりと確認しておきましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
事業ドメイン設定の注意点
事業ドメインは企業の総意のうえに成り立つものです。したがって、事業ドメイン案が完成したら取締役の了承が必要となります。
ここで注意したいのが、いかに取締役に事務方の「想い」を的確かつわかりやすく伝えるかです。
いくら事務方の想いが強くとも、取締役の心を動かせなければ事業ドメイン案は採用されないことを心得ておきましょう。
また、事業ドメインは市場や事業の環境の変化に伴って見直しが必要です。固執し過ぎると変化に対応できません。
前項で紹介した「タニタ」は市場の変化に伴い、事業ドメインを変更することで大きな成功を得ています。
常に市場や事業を取り巻く環境を見極め、必要に応じて事業ドメインの見直し・再構築を行う柔軟性を持つことを心得ておきましょう。
事業ドメイン設定に関する悩みの対処法
事業ドメインは企業の将来を担う重要なものであることから、経験が浅いと設定に悩むことも少なくありません。
しかし、いくら1人で悩んだところで解決の糸口を見つけることは難しいといえるでしょう。
事業ドメインの設定に悩む人におすすめしたいのが「デジマクラス」のコンサルティングです。
デジマクラスでは経験豊富なコンサルタントが、事業ドメインの設定に関する 悩みの対処法を丁寧にレクチャーしてくれます。
効率的かつ的確に事業ドメインを設定するなら、デジマクラスのコンサルティングを検討してみましょう。
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まとめ
事業ドメインは「顧客」「技術」「機能」の面から企業の強みやターゲットなどを分析し、適切な事業領域を定めるものです。
その結果、次の3つのメリット・効果を得ることができます。
企業の方向性が明確になり統一感がもたらされる/競合相手が明確になる/自社商品・サービスの価値を上げることにつながる
したがって、企業経営を維持・拡大するためには、将来の事業展開を見据えた事業ドメインの設定が不可欠だといえるでしょう。
また、事業ドメインは市場や事業を取り巻く環境の変化に伴い、柔軟に再設定を行う必要があることも忘れてはなりません。
なお、適切な事業ドメインを効率的かつ効果的に設定したいなら、デジマクラスのコンサルを活用しましょう。
デジマクラスでは経験豊かなコンサルタントが的確なレクチャーを行い、事業ドメインの設定をサポートします。