経済発達が著しい中国。そのような中国人相手にWebビジネスを始めたいと考えている人が増えています。しかしながら、どのようにWebビジネスを始めていいか分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事は、中国独自のネット環境やWebマーケティングのポイントをご紹介します。この記事を読むことで中国でのビジネスの一助となるでしょう。
目次
中国Webマーケティングソリューションの特徴
訪日中国人への販売促進・中国ECサイトでの商品販売・SNSでの情報発信・キャンペーンサイトの開設など、さまざまな形態で実施されている中国Webマーケティング。日本で、数多くのマーケティング施策を実施してきた場合でも、中国のWebは日本とは異なります。
中国Webマーケティングを成功させるためには、後述するグレート・ファイヤーウォールの理解が不可欠です。加えて、中国人のほとんどが利用している、SNSを活用することはいうまでもありません。SNSや口コミを活用し中国Webマーケティングを始めてみましょう。
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中国独自のネット環境やユーザーの動き
もともと中国では、ネットを使ったメールのやり取りというのは主流ではありませんでした。携帯端末から携帯電話番号で発信する「短信(ショートメッセージ)」が一般的に使用され、PCでは「即時通信」と呼ばれるIM(インスタントメッセンジャー)でのやり取りが主流です。
さらにモバイル端末の浸透によって、IMの利便性も飛躍的に向上し、単なるチャットのツールではなく、プラットフォームとしての役割を担うに至っています。
中国のネットの発展の中でもう一つの特筆すべき現象は博客(ボークー=ブログ)と微博(ウエイボー=マイクロ・ブログ。ミニ・ブログとも)の爆発的な普及です。
博客は2002年にサービス開始後、2004年に新浪(sina)や捜狐(sohu)といった大手ポータルサイトが参入して普及し始め、2008年にはネット人口の半数を超える1億6200万人がブログページを持つに至りました。
新浪は2010年を「微博元年」と命名し新浪の微博登録ユーザーは10月に5000万を突破し、翌11年は前半で1億3000万増加(新浪以外の微博を含む)の大ブレイクとなり、11年末で2億5000万へと急拡大しました。しかし、今年に入ってからは急激に落ち着き始めている。
Web2.0時代の代表的存在の博客から、微博へ代替わりが起きたといえるでしょう。
グレート・ファイヤーウォールの存在
グレート・ファイヤーウォールはネット検閲システムのことです。全土に敷かれておりインターネットの閲覧や通信が制限されています。これは、中国政府による自国の情報遮断・IT産業育成が主たる理由となります。
政府(特に共産党関係の政治家)に対して不利益な情報を規制する目的があるといえるでしょう。グレート・ファイヤーウォールは中国政府、特に共産党やその政治家に関する批判的な情報や、中国に不利な国際的な情報などを全て遮断します。
「万里の長城」に似ていることから「グレート・ファイヤーウォール」と呼ばれるようになりました。
有名なのは「くまのプーさん」です。ディズニーのキャラクターですね。中国共産党に反する主化という言葉から、「くまのプーさん」も規制対象に入っていて、閲覧できません。もう一つの例は、Googleを締め出したことです。他国の情報やサービスをマーケットから締め出し、IT市場を国内企業で独占するためです。
グレート・ファイヤーウォールは中国政府の将来的な情報電子化に向けて、1993年に計画された国家政策「金字工程」の一部です。導入自体は1999年から開始されましたが、基本的な検閲システムとして稼働を始めたのは2003年からとなります。
口コミが重要視されている
中国といえば、口コミを重要視する傾向があるといわれています。日本人でも、ものを買うときにはまずネット上の情報を確認してから買うという習慣がついてきていますが、中国人のそれとは比べものになりません。
外食も旅行もネット上に投稿された評判を元に行き先を決め、実際に行って気に入ったら、今度は自らが情報をシェア。お店や旅先で得た体験を発信するでしょう。
TVのニュースで中国人がスマホからSNSにアップするシーンを見かけることもあります。日本でも、口コミサイトやSNSに投稿された場所や商品が、毎日のように紹介されていますが、中国はそのような日本の数倍以上もネット上の口コミを重要視しているといわざるとえません。
他にも訪日する人の割合が多い30代中国人は、テレビ・ラジオ・新聞といったマスメディアと比べて、10倍~40倍以上も、ネットの口コミを信頼していることが明らかになっています。
そのような中国の口コミ文化から、中国口コミサイト最大手「大衆点評」が生まれたといっても過言ではありません。
キャッシュレス化
中国では偽札が大量に流通しているのが大きな問題でした。またデジタル化の進展によって、近年、キャッシュレス社会になってきました。キャッシュレスとは、紙幣・硬貨といった現金を使わずに支払い・受け取りを行う決済方法です。クレジットカードや電子マネー・口座振替を利用します。いわゆる電子決済です。
電子決済とは、「クレジットカード決済」・「デビットカード決済」・「電子マネー決済」・「スマホウォレット(QRコード)」などさまざまな種類があります。中国は電子決済の普及率が非常に高いことが知られています。現在、中国において、モバイル端末でのQRコード決済が主流となっています。
中国の電子決済のサービスとして、アリババグループの「Alipay」とテンセントの「WeChat Pay」が主力です。「Alipay」はアリババグループが運営しているサービスです。2004年に誕生して、中国最大のECプラットフォーム「淘宝(Taobao)」の決済手段として普及しました。
「WeChat Pay」は2006年に誕生して、中国版LINEといわれる「Wechat」を手掛ける大手IT企業テンセントが運営しています。両方ともアプリと中国で開設した銀行口座情報を紐づければ、銀行口座から直接、企業・個人・友人との間で金銭のやり取りができるようになります。
モバイル決済も増えています。通常のスーパー・コンビニでの買い物・オンラインショップ・公共料金のお支払いはもちろん、結婚のお祝い金や子供へのお年玉もモバイル決済でやり取りする人もいます。
ライブコマースユーザーの増加
中国では莫大な市場規模となっているライブコマースですが、ここまで流行した背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
中国においてライブコマースが流行した背景の一つとして考えられる理由は、インターネットが広く普及したことです。多くの人がインターネットを通じて情報を収集・発信できる環境が整ったことで、SNSやECの利用が拡大しました。
新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛もライブコマースの流行を後押しする要因となったと考えられます。中国においても2020年には外出自粛が広がったことで、店舗営業が難しくなる状況にありました。
消費者が外に出られないため、店舗を構える企業の売り上げも立たないという状況はライブコマースの利用者とともに新たに参入する企業が増加するきっかけとなり、流行を後押しする結果となりました。
中国のライブコマースでは、特定ジャンルに高い専門性を持つKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーの配信により圧倒的な売り上げを記録しています。
KOLは、SNSなどを通じて自分が詳しい分野の商品を宣伝する役割を担っており、ユーザーはその専門性を信頼して商品を購入します。中国のECでは粗悪品などが売られているケースが多いことから、信頼できるKOLが紹介する商品を買おうというインセンティブが働きやすくなっています。
ライブコマースの成功の鍵はまさにKOLの腕にかかっているといってもいいでしょう。ユーザーの購買意欲を掻き立てる、ライブ配信ならではの接客や商品に対する知識、そしてコメントへの対応などが相まって市場が盛り上がっています。
中国のSNS事情
中国は世界で1番人口が多く(14億4千万人)、インターネット利用者も非常に多い国です。モバイル端末類の利用者数は16億1千万人となっており、中国の人口を超えています。つまり、数億人が複数台のモバイル端末類を所持しているため、インターネットの利用者数も必然的に多くなります。
中国では、インターネット利用者が約9億4千万人おり、そのうちSNS利用者は約9億人です。前年と比べるとSNS利用者数が、1億人超の増加がみられています。
中国では使用できないSNSがある
日本ではお馴染みですが、以下に記したSNSは中国では利用できません。
コミュニケーションサービスの「LINE」
コミュニケーションサービスの「WhatsApp」
社会的つながりを作る「Facebook」
最大140字内でつぶやく「X(旧Twitter)」
画像共有サービス「Instagram」
画像共有サービス「Pinterest」
動画共有サービス「YouTube」
動画共有サービス「TikTok」
「Google関連」
(Gmail・Googleマップ・Googleドライブ・Googleフォト・Google Playストア)など
基本的に現在日本で利用されているSNSアプリを開こうとするとアクセスできず利用できません。Googleマップなど一部のアプリは開くものの、位置情報が正確でなかったりバグが起きたりなど役に立ちません。
中国で人気のSNS
中国発のSNSは友人や家族、・会社の仲間とただ単にコミュニケーションをとるものではなく、普段の生活に欠かせないニュース・商品購入時にお得な情報・旅行など趣味を楽しむためのブログなどの多くの情報が飛び交っています。
そしてフォロワーが多いアカウントでは、商品やサービスの紹介ページへ多くの人が集まり、売り上げがアップするのは日常茶飯事です。
それでは中国で人気のSNSを紹介していきます。
第1位:WeChat/微信(ウィーチャット)78%
第2位:Sina Weibo新浪微博(シンラン・ウェイボー)56%
第3位:Baidu Tieba/百度贴吧(バイドゥ・ティエバ)50%
第4位:Tencent Weibo/騰訊微博(テンセント・ウェイボー)39%
第5位:TikTok/抖音(ティックトック)36%
中国でメジャーなWeb広告
中国でネット(デジタル)広告を配信するための基礎知識を説明します。
2017年の時点で、中国の広告市場は、右肩上がりのGDP成長率と比例して拡大していて、その市場規模は日本を追い抜いて世界2位の広告市場です(※1位はアメリカ)。
その市場における広告媒体の内訳としては、すでにネット(デジタル)広告がテレビを追い抜き、ネット(デジタル)広告が37%・テレビが29%・屋外広告が17%・雑誌・新聞が6%・その他が11%となっています。
Baidu(バイドゥ)
Baidu(バイドゥ)/ 百度の基本情報
百度とは、中国最大の検索エンジンを提供する企業である百度公司が運営する検索エンジンサービス。検索シェアはGoogle・Yahoo!に次いで世界第3位。月間アクティブユーザー数は約6億人以上とされており、中国のインターネットユーザーの約70%が、百度を利用していることになります。
百度を使ってユーザーが検索した際に、検索結果画面に掲載される検索結果連動型広告が「リスティング広告」です。
WeChat(ウィーチャット)
WeChat(微信)には、「モーメンツ」と呼ばれるFacebookやX(旧Twitter)・LINEといったSNSサービスにあるタイムラインに似たフィードが存在します。
そのフィード上に、ユーザーがテキストや写真や動画などを投稿する機能があり、同じように企業も投稿したり広告を出稿が可能です。
WeChat広告には大きく分けて「朋友圈广告(モーメンツ広告)」と「公众号广告(バナー広告)」の2種類があります。
weibo(ウェイボー)
Weibo(正式名称は「新浪微博(シンラン・ウェイボー)」)は、新浪公司が運営する、中国最大ともいわれるソーシャル・メディア・プラットフォーム。
「微」はマイクロ・「博」はブログという意味を持っており、140字の字数制限もあることから「中国版X(旧Twitter)」ともいわれています。
新浪微博(シンランウェイボー)とは、登録ユーザー数6億人(2014年1月時点)、1日の投稿数1.2億件を超える中国最大のソーシャルメディアです。
先述したように、グレート・ファイヤーウォールというネット規制の背景もあり、中国では、FacebookやX(旧Twitter)へのアクセスが制限されています。したがって、中国の生活者とソーシャルメディアを活用したエンゲージメントを築く際に、この「新浪微博」を活用することの重要性が高まっているのです。
中国のインフルエンサー広告
中国の社会では、インフルエンサーたちが日本とはケタ違いの影響力を持っています。
2018年のインフルエンサーマーケティングの市場規模は、日本が219億円だったのに対し、中国では1兆7,000億円にものぼりました。その差、実に77.6倍です。彼/彼女らの影響力は、訪日インバウンドや越境ECにも活用できるでしょう。
そのような中国インフルエンサーの中には「網紅(ワンホン)」という人たちがいます。同国へ向けたマーケティングでは重要な存在なのですが、一体どのようなインフルエンサーなのか知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では網紅について、その概要や実態・影響力のほか、企業の活用方法などを解説します。
網紅とは、動画投稿やライブ配信をメインに活動するインフルエンサーのこと。「ワンホン」と読み、網はインターネット、紅は人気を意味します。中国版YouTuberといわれることもあります。
動画やライブでフォロワーに向けて商品やサービスの紹介を行い、出演料や紹介料といった報酬を受け取るのが網紅の主な収益モデルです。内容は以下のようなものがあります。
- 美容
- 旅行
- ガジェット
- 料理
- 学習
- スポーツ
- バラエティ
用いられる媒体も幅広く以下のようなものがあります。
- Youku
- Bilibili
- 抖音(TikTok)
- 快手(Kuaishou)
- 小紅書(Red)
- 淘宝直播(Taobaoライブ)
中国を対象としたWebマーケティングのポイント
中国Webマーケティングを成功させるためには、日本とは異なりグレート・ファイヤーウォールの存在を理解して対策をとる必要があります。また、SNSを活用することも重要です。まずはモール出店やSNSから中国Webマーケティングを始めてみましょう
文化の違いを理解
中国に限ったことではありませんが、日本で上手く行ったといっても中国で上手くいくとはかぎりません。生活環境・考え方・ネット環境すべてが異なります。中国でマーケティングをするには、文化の違いを理解することは大変重要です。
中国人が惹きつけられる文
キャッチコピーは物の販売にとっては重要な要素となります。中国人が好きな文を集めてみました。積極的に利用しましょう。
买买买 買う買う買う/買っちゃえ買っちゃえ買っちゃえ
重要的事情说三遍 大事なことだから3回言いました
热卖单品 売れ筋商品
好货不贵 高くないのに良い商品です
再也不担心! もう心配ありません!
店长迷上了 店長がハマっています
インフルエンサーの起用
インフルエンサーとは、影響や効果・感化を意味するInfluenceを語源とするビジネス用語で、広義ではメディアを通じて影響を及ぼす人・企業を示し、狭義ではSNSを通じて当該SNSユーザー及びそのコミュニティに影響を及ぼす人・企業を意味します。
このうち中国のインフルエンサーは、特定分野の専門性の高いKOLと動画配信をメインとする網紅(ワンホン)・網紅(ワンホン)のうち特にライブ配信を中心とするライバー・一般消費者でありながら商材の使用感を的確に伝えて消費者に影響力を及ぼすKOC・それ以外の芸能人などが入るインフルエンサーです。
新規顧客獲得ができるWebサービスは?
中国でWebマーケティングをするうえで欠かせないのは検索エンジンです。中国では政府のグレート・ファイヤーウォールによって、GoogleやYouTubeなど世界では当たり前に使われているサービスが制限されているのです。
そのため、中国でWebマーケティングを成功させるには、中国独自のインターネット事情を理解しておくことはいうまでもありません。
逆に中国のインターネット事情を理解して効果的なプロモーションを実施すれば、他の企業から一歩抜きんでて中国人顧客を獲得できます。
中国進出に効果的な媒体としては中国シェアNo.1検索エンジンの「百度(バイドゥ)」です。中国ではGoogleが政府の規制によって使えないため、「百度(バイドゥ)」という独自の検索エンジンが発達しました。
中国には、他にモバイルに特化した「神马(シェンマ)」やセキュリティに強い「360搜索(サンリューリンソウスオ)」などの検索エンジンがありますが、まずは百度を中心としたWebマーケティングをすることが重要といえます。
百度ではGoogleと同様にリスティング広告が出せます。リスティング広告の仕組みはGoogleとほぼ同じで、指定したキーワードでユーザーが検索すると検索画面に広告が表示されるという形式です。
検索エンジンからのコンバージョン率は日本と違う
中国では日本でも使われるGoogleやYahooではなく百度(Baidu)です。百度は中国での検索エンジン市場の約90%を占め、約6億人の百度ユーザーが、1日に平均で約60億回検索しています。
したがって、百度で検索したときに自社の商品やサービスのページが表示されることが重要です。そのため、検索エンジンで上位に表示されるためにはSEO(検索エンジン最適化)対策が必要になります。ここで注意しなければならないのが中国人の検索習慣は日本人と異なる点です。
例えば、「Pay Payってどういうサービスなんだろう」と考えたときに、
日本人は「Pay Pay サービス内容」
と検索するのが一般的ではないでしょうか?しかし、
中国人は「Pay Payってどういうサービスですか?」
と検索するのが一般的です。
つまり、日本人は単語に区切って検索しますが、中国人は文章で検索する傾向にあります。
DX化の事例はこちら
指名キーワードでの検索を増やそう
指名キーワードは、自社の社名やブランド・サービス名・店舗名などの固有名詞を指します。これに対して一般キーワードは、例えばサッカーや代理店のような多くの商品やサービスに当てはまるキーワードのことを指します。
「指名検索」はそれら指名キーワードをインターネット上で検索することです。一般キーワードでの検索ユーザーと比較して、購買意欲が高い傾向にあります。
わざわざ会社名やサービス名で検索するのですから、当然ともいえます。インターネット広告の中でもリスティング広告は、購買意欲の高い顕在層にアプローチできる強力な広告手法の一つです。
指名キーワードで検索していることは、すでにその商品やサービスに関心を持っていて、購入を検討しているユーザーが多いため、クリック率やコンバージョン率・益率が高くなる傾向があります。
そのため、自社に関連した指名検索をいかに取り逃がさずに誘導できるかが、非常に重要です。
中国を対象としたマーケティングを行うなら
越境ECで中国人をターゲットとしている企業の方など、集客や売り上げアップのためにWebサイトを制作したりマスメディアでの広告を打ったりと、あらゆるプロモーションをすることです。
独自のWebサイトは制作がハードな上なかなか集客に繋がらず、マスメディアでは視聴者が情報を信頼しないなどマーケティングが難しいと考えます。現在の中国ではSNSの利用者が爆発的に伸びていることから、SNSを使ったWeb・デジタルマーケティングが注目を浴びています。
しかし中国にはインターネットやSNSアプリの利用規制があるなど、独特な事情があることを理解しなければなりません。
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まとめ
月間のアクティブユーザー数が2,200万人を超え、中国人のほとんどがスマホにインストールしているのです。
グレート・ファイヤーウォールという大きな壁がありますが、SNSやインフルエンサーを利用したWebビジネスは魅力があります。
世界の人口の5分の1を有するとされる中国を相手に活躍してみませんか。