マーケティングの世界では、常に新しい手法や戦略が生まれます。そして、それらの手法や戦略を効果的に利用するためには、しっかりとした分析が欠かせません。
特に、商品やサービスを提供する企業にとって、顧客の声や反応を正確に捉えることは非常に重要です。
その中でも、「CSポートフォリオ分析」という手法が、近年多くのビジネスパーソンに注目されています。
しかし、CSポートフォリオ分析とは何なのか、どのように活用するのかを正確に理解している人はまだ少ないのが現状です。
この記事では、CSポートフォリオ分析の基本から活用法・メリット・注意点まで、わかりやすく解説します。
目次
CSポートフォリオ分析とは?
CSポートフォリオ分析は、Customer Satisfaction(CS)を基盤にした分析手法であり、顧客の満足度や不満点を効果的に可視化・分析するためのツールです。
企業が提供する商品やサービスが顧客にどのように受け止められているかを、定量的に捉えることを目的としています。
CSポートフォリオ分析の特徴は、「顧客満足度のデータ」と「そのデータがビジネス上の影響をもたらす度合い」を2軸として、散布図上にプロットしている点です。
CSポートフォリオ分析を行うことで企業はどの項目に焦点を当てるべきか、また、どの項目がすでに良好な結果をもたらしているのかを把握できるようになります。
それによって、短期的な施策の改善だけでなく、長期的なビジネス戦略の形成にも役立ちます。
ポートフォリオ分析とは?
ポートフォリオ分析は、企業が保有する複数の商品やサービスのパフォーマンスや将来性を比較・評価するための分析手法です。
「ポートフォリオ」という言葉は、多様性や組み合わせを意味しています。
そのため、ポートフォリオ分析は、企業の資産・事業領域・商品ラインナップなど多岐にわたる要素の組み合わせを総合的に管理・分析するためのフレームワークを指します。
ポートフォリオ分析の中心的な目的は、リソースの最適な配分を行いながら、最大のリターンを得るための戦略を立案することです。
それにより、高収益を上げる可能性が高い商品やサービスに注力し、低収益や将来性の低いものからは撤退するといった戦略的な判断が可能となります。
このように、ポートフォリオ分析は、経営資源の有限性を前提として、効果的なリソース配分を目指すための重要なツールとなっています。
ポートフォリオ分析の種類
ポートフォリオ分析は、その目的や評価軸に応じて様々な手法やフレームワークが存在します。ここでは、主要な3つのタイプについて詳しく見ていきましょう。
CSポートフォリオ
先に触れた「CSポートフォリオ分析」は、主に顧客満足度を中心とした評価を行う分析手法です。
CSポートフォリオ分析では、商品やサービスごとの満足度とその影響度を2軸としてプロットし、改善点や強みを明確にできます。
企業が顧客との関係を深化させるための戦略策定に非常に役立つ手法となっています。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント
「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」は、複数のプロジェクトや製品を総合的に管理・評価するフレームワークです。
PPMを分析する際には一般的には市場の成長率を縦軸、自社の市場占有率などの指標を横軸にとり、売上高を各要素の円の大きさにした散布図を描きます。
これにより、各商品やサービスの位置付けや、どのようなアクションをとるべきかが明確になります。
例えば、高い市場成長率と高い市場占有率を持つ商品は「スター」とされ、これが企業の成長を牽引する主力商品となるでしょう。
一方、低い市場成長率で市場占有率も低い商品は「負け犬」と呼ばれ、リソースの再配分や商品の見直しを検討するきっかけとなるかもしれません。
このように、PPMは新製品の開発・イノベーションの推進・投資判断など、経営層の戦略的な決定をサポートするためのツールとして使用されるツールです。
バリューポートフォリオ
「バリューポートフォリオ」は、各商品やサービスの価値提案を中心に評価する分析手法です。
顧客がどのような価値を求めているのか、またその価値提案がビジネスの成功にどれだけ寄与しているのかを中心に、商品やサービスの位置付けを行います。
バリューポートフォリオを使用することで、市場ニーズに合わせた商品開発や、価値提案の最適化を図れます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
CSポートフォリオ分析の目的
CSポートフォリオ分析、その名の通り「Customer Satisfaction(CS)」に焦点を当てた分析手法は、主に以下の5つの目的を持って導入されています。
- 顧客の声の可視化
- 改善の優先順位の設定
- 戦略的な意思決定の支援
- ロイヤリティの向上と顧客の維持
- ブランド価値の向上
まず、CSポートフォリオ分析を用いることで、企業の提供する商品やサービスに対する顧客の声や感じる価値を数値として可視化することが可能となります。
これにより、経営者や関係者は具体的な改善点や強みを明確に把握することが可能です。
また、リソースの限られたビジネスの現場でどの部分に注力すべきか、どの部分が最も効果的な改善をもたらすのかの判断材料として活用できます。こうした改善のための優先順位の設定に役立てることもCSポートフォリオの目的です。
さらに、顧客満足度を基にしたデータは、新商品の開発・マーケティング施策の策定・価格戦略の見直しといった戦略的な意思決定の際の大切な参考となります。
顧客のニーズや要望に応えることで、企業は顧客ロイヤルティを向上させ、継続的なビジネスの成長や競合他社との差別化を図れます。
そして、顧客からの高い評価は、ブランドの価値そのものを向上させる要因ともなるでしょう。
このように、CSポートフォリオ分析は顧客との関係を深化させ、企業の競争力を高めるための方向性や戦略を見出すための非常に価値あるツールといえるでしょう。
CSポートフォリオ分析の4象限
CSポートフォリオ分析は、製品の成分や品質などの各要素に対する顧客満足度と各要素の重要度の2軸で区分します。
上述の2軸を用いて、以下の4つの象限に各要素を分類します。
- 重要維持項目
- 維持項目
- 改善項目
- 重点改善項目
この各4つの象限に各要素を分類することで、視覚的に商品・サービスの改善アクションを考えられるのがCSポートフォリオ分析の特徴です。
重要維持項目
重要維持項目とは、顧客からの満足度も高く、その重要度も高いと評価されている項目です。これらの項目は、企業の強みとして維持すべきものであり、この領域の項目を維持・強化することによって顧客のロイヤルティを保つことが期待されます。
維持項目
維持項目は、満足度は高いものの、その重要度はそれほど高くない項目です。
これらの項目は継続的に提供することで顧客の基本的な期待を満たし続けることができますが、積極的なリソースの投入は必要とされない場合が多いです。
改善項目
改善項目は、満足度も重要度も低いと評価されている項目です。
この項目は満足度が低いという点では改善が必要とされます。しかし、その一方で重要度も低いため、改善しても顧客の満足度の向上には繋がりにくい項目といえます。
そのため、改善の優先順位としては低い項目です。
重点改善項目
重点改善項目は、顧客からの満足度はそれほど高くないものの、その重要度は高いと評価されている項目です。
顧客にとっての重要性が高いにもかかわらず、満足度が高くない項目であるため、この項目によって商品・サービスへの顧客満足度が大きく低下してしまっている可能性があります。
そのため、企業は優先的にリソースを配分し、取り組むべき課題として位置づけるべき項目といえます。
メリット
CSポートフォリオ分析には、多くのメリットがあります。ここでは、その中でも特に重要な3つのメリットに焦点を当てて詳しく説明いたします。
商品・サービスの現状を把握できる
CSポートフォリオ分析を行うことで、企業が提供する商品やサービスに対する顧客の真の感じる価値や不満点を詳細に知ることが可能です。
CSポートフォリオ分析では、一般的な顧客満足度調査とは異なり、具体的な項目ごとの評価とその重要度をバランスよく分析を行います。
この情報は、製品の改善や新たなサービスの開発の方向性を決める上で非常に価値があるでしょう。
改善の優先順位を視覚化できる
顧客からのフィードバックをもとに改善点をリストアップすることはできても、どの問題を優先的に解決すべきかの判断が難しい場合があります。
CSポートフォリオ分析では、問題点や要望を視覚的に4つの象限にマッピングすることで、改善の優先順位を明確に示せる点が大きなメリットです。
マーケティング施策の判断材料になる
顧客からの評価や要望を具体的に知ることで、マーケティング施策・広告の内容・ターゲットの絞り込みなど、様々な戦略の策定に役立てることが可能です。
例えば特定の商品の評価が高い場合、その商品をフィーチャーしたプロモーションを行うことで、効果的な結果を期待できるでしょう。
注意点
CSポートフォリオ分析は、多くの企業やマーケターにとって有効なツールとして認識されていますが、正しく活用するためにはいくつかの注意点が存在します。
ここでは、分析を正しく行うための主な注意点を詳細に説明します。
大まかな結果しかわからない
CSポートフォリオ分析は大まかな結果しかわからない点には注意が必要です。
CSポートフォリオ分析は、あくまで商品やサービスの大枠の評価を得るためのものであり、細かな部分や特定の要因を直接知るための手法ではありません。
例えば、具体的な顧客の不満点や特定のサービスの問題点など詳細な情報を取得したい場合は、他のアプローチや補完的な手法を併用する必要があります。
相関関数が必要
CSポートフォリオ分析の結果を適切に解釈するためには、各項目間の関連性や影響度を示す相関関数の理解と適切な利用が必要です。
単純にデータを収集・分析するだけでなく、その背後にある関連性を正しく読み取るための統計的な知識や技術が求められます。
アンケート結果に偏りが出る場合がある
CSポートフォリオ分析はアンケート結果を基にしたものであるため、アンケートの設計や収集方法によっては結果に偏りが生じる可能性があります。
例えば、アンケートの対象者選定・質問の設計・回答の収集方法など、多くの要因が結果に影響を及ぼします。
そのため、常にその偏りやバイアスを意識しながら分析を行うことが重要です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
CSポートフォリオ分析の手順
CSポートフォリオ分析を行う際には、以下のステップを踏みます。
- アンケート調査の実施
- 項目の満足度を集計
- 相関係数を算出する
- 結果を散布図にする
ここでは、これらの4つの各ステップについて詳しく解説します。
アンケート調査を実施
まず初めにやるべきことは、対象となる商品やサービスに関するアンケート調査です。
この際、具体的な項目や評価の観点を明確に設定し、顧客の意見や感じたことを明確に把握できる質問を心掛けることが重要です。
項目の満足度を集計
アンケートの回答をもとに、各項目の満足度を集計します。
これにより、どの項目が顧客から高評価を受けているのか、逆にどの項目が改善が求められているのかの大まかな傾向を把握できます。
相関係数を算出する
次に行うことは各項目間の関連性を示す相関係数を算出することです。
これにより、ある項目の改善が別の項目の評価にどれほど影響を与えるのか、またその影響の大きさや方向性を数値として把握できます。
結果を散布図にする
最後の仕上げとして行うのが、集計した満足度や算出した相関係数の結果を散布図にまとめることです。
これにより、各項目の位置関係・改善の優先度などを視覚的な情報として捉えられるようになります。
視覚的な情報として捉えられることにより、分析の結果の解釈や次のアクションへの判断材料として活用しやすくなります。
活用できるシーン
CSポートフォリオ分析は、多様なビジネスシーンでの活用が可能です。以下では、特にその効果を最大限に引き出せるシーンを3つ取り上げ、詳しく解説します。
顧客満足度を知りたいとき
CSポートフォリオ分析を実施することで、顧客満足度の情報を具体的かつ詳細に把握できます。
ビジネスにおいて、顧客満足度は極めて重要な指標の一つです。顧客満足度を高めることで、継続的な購入を促せ、長期的な売上や利益に繋がります。
CSポートフォリオ分析では、商品やサービスが顧客のニーズや期待に応えているのか、逆にどの部分が不満点として挙げられるのかを把握できます。
こうした、顧客満足度についての理解を深めることは、企業の方針や戦略を見直す上で非常に有益です。
サービス改善したいとき
サービスを改善したいときにも、CSポートフォリオ分析は役立ちます。
商品のスペックのような数値に表しやすい情報とは異なり、サービスは定量化が難しいため、どの部分をどのように改善すれば良いのか一筋縄ではいかない場合が多いです。
しかしながら、CSポートフォリオ分析を用いることで顧客の評価や要望を明確にし、それを基にした具体的なアクションプランを立てることが可能になります。
また、その結果として、顧客ロイヤルティの向上や新規顧客の獲得にも繋がるでしょう。
広告施策を改善したいとき
広告施策を改善したいときにも、CSポートフォリオ分析は有効です。
広告はマーケティングの中心となる存在ですが、どのような広告が効果的なのかは必ずしも明確ではありません。
広告施策を行う際には、どの商品やサービスを前面に押し出すかやどのようなメッセージで訴求するかなど、戦略的な判断が求められます。
しかしながら、CSポートフォリオ分析によって顧客の評価やニーズを正確に把握することで、より効果的な広告施策を計画・実行できるでしょう。
ノウハウがある外注先を探しているときは
ビジネスの進行において、専門的なノウハウやリソースが不足してしまうことは少なくありません。
特にCSポートフォリオ分析のような専門的な分析を実施する際には、その道のプロフェッショナルのサポートが必要となることもあります。
そんなときに頼りになるのが、外部の専門家やサービスを提供する企業です。
しかし、多くの専門家が存在する中で、どこに依頼すれば良いのか迷ってしまうこともあるでしょう。
そんな方々におすすめしたいのが、「デジマクラス」です。
デジマクラスでは、多くの専門家が集結し、それぞれの分野での高いノウハウを持っています。
CSポートフォリオ分析に関する知識だけでなく、他の多岐にわたる領域でもサポートが受けられます。
外部の専門家と連携することで、自社の課題解決や新たなチャレンジへの一歩を、より確実かつ効果的に進められるでしょう。
まとめ
ビジネスの発展において、適切な戦略の策定と施策の実施は欠かせません。
その中でも、CSポートフォリオ分析は、顧客満足度と商品・サービスの現状を総合的に把握し、それをもとにした改善策を考えるための有効な手段です。
本記事では、CSポートフォリオ分析の基本的な概念から具体的な手法・活用シーン・外注先の選び方までを深く解説してきました。
分析におけるメリットを最大限に活かすためにも、これらの知識を活用し、経営やマーケティング活動に役立ててください。
最後に、マーケティングのノウハウやリソースが不足している場合には、外部の専門家やサービス提供者との連携を検討することも大切です。
特に「デジマクラス」のようなプロフェッショナルなサービスを利用することで、分析の精度を一段と高めることが可能です。
ビジネスの成功のために、正しい分析と戦略の策定は不可欠。CSポートフォリオ分析を活用して、より質の高いサービス提供を目指しましょう。