CXとは商材の購入・利用によって顧客の心を揺さぶる「体験」を提供することです。
心を揺さぶられたユーザーは商材・企業そのものに好感を持ち、ファンとしてポジティブな影響を与えてくれます。
どうすれば固定客獲得につながるCXを提供できるのか、は明確な経営理念・目標数値の設定が第1歩です。
目次
CXを高めるポイントを解説
CX(カスタマーエクスペリエンス)を高めるには顧客がどのようなアプローチに心をくすぐられるかを考えてみましょう。
様々なアプローチ方法がありますが大きく3つに分けることができます。
- 感覚に訴える
- 五感に訴える
- 興味を持っていること、関心を寄せていることに訴える
感覚に訴える方法は顧客が「楽しい」「嬉しい」と思うような商材提供のアプローチです。
例えば、スタッフの接客術そのものでファンを増やすアプローチ方法が該当します。
帝国ホテルやディズニー関連のアミューズメントパークを成功例として挙げることができるでしょう。
五感に訴える方法は顧客の視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚が快を感じるようなアプローチが該当します。
店舗の内外装レイアウト・アロマ・BGMで心地良さを感じてもらうアプローチです。
興味・関心に訴えるためには顧客のライフスタイルそのものに迫る必要があります。
設定したペルソナからニーズを分析してみましょう。
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CXの概要
CXとは顧客が商材を購入・利用することで高い価値を感じる体験そのものを提供することです。
企業にとっては単なる顧客ではないファンを増やせる可能性があります。
あくまでも顧客が感じる価値を高めることにこだわり、企業側の主観や偏見は挟まずに考えてみましょう。
CXの特徴
CXとはユーザーが顧客として体験すること、体験そのものに感じる価値です。
顧客が商材について知ってから実際に購入・利用するまでに起こるあらゆる体験がCXに該当します。
最近はどのような業界でもものが充実していて、これまでの売り方が通用せず苦戦している企業が少なくありません。
そこでCX向上を図り、競合他社との差別化を目指す企業が増えています。
商材そのものに関する価値に加え、商材を提供する側の姿勢や誠実さに価値を見出してもらう手法が注目されているのです。
CXで注意する点
CXを高める時に最も注意しないといけないのがCXの理念です。
それはカスタマーにとって最も良いエクスペリエンスを提供すること。
CX向上に失敗してしまった事例の中には、この理念が十分浸透していなかったことが理由となっている場合もあります。
つまり「うちのお客様はこれがいいと思うはず!」という企業側の思い込みを前提に取り組んでしまうことがあるのです。
CX向上を図る上で、その体験に価値があるのかを判断するのはあくまでも顧客だということを忘れてはいけません。
CXを高めるポイント
CX向上はまず明確で共感できる経営理念を従業員に浸透させることがポイントです。
具体的な数値目標の設定と合わせた取り組みでCX向上への温度感を企業全体で高めることができます。
また顧客が商材購入までに何を考えてどのように動いているのか、その流れを分析する過程も重要です。
経営理念の明確化
商材そのものよりも商材を手に入れ利用するまでの体験に価値を感じてもらうのがCXです。
その過程で顧客はどのような企業が提供する体験か、というポイントを重要視します。
商材の質や価格が良くても提供する側の理念や姿勢に共感できなければすぐに競合他社に乗り換えてしまいます。
企業がどのような哲学にもとづいて商材を提供しているのか、経営理念が重要です。
顧客が購入するまでの動向を活用
CX向上のためには顧客が求めている体験を最適なタイミングで提供することが重要です。
どのタイミングが最適なのかを知るために「購買行動プロセス」を知る必要があります。
<購買行動プロセスの一例 AIDMAの法則>
- Attention:注意をひく
- Interest:関心をひく
- Desire:欲求をかき立てる
- Memory:記憶にとどめさせる
- Action:行動を起こさせる
顧客が各段階でポジティブな印象を持つアプローチを行うこと、次の段階に移る流れをいかにスムーズにするかがポイントです。
目標を数値で設定
CXは物質ではないので定量的な目標設定が難しいマーケティング手法です。
しかし、目に見えないからこそ明確な目標設定をしなければ取り組みそのものが形骸化してしまう懸念があります。
注目したいのは下記の指標です。
- 購入率
- リピーター購入率
- 初回利用者と複数回利用者の比率
- 客単価 など
まずは定量的な数字として算出できる上記のような指標の目標設定から取り組んでみましょう。
その上で顧客の過去の購入履歴・アンケートの回答結果・SNSやWeb上の活動を追い、CX向上要因を分析します。
どのようなアプローチがCX向上につながったかを分析することで、CX向上率として定量的な数字に可視化できるでしょう。
その方向性を具体化するものとして経営理念・自社顧客の購買行動プロセス・目標数値を設定しましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
CXを高めるメリット
CXを高めるメリットとして最も大きいのが安定した経営につながる固定客・ファンの獲得です。
ファンは客離れのリスクが低く、ブランド力アップや多大な宣伝効果を期待できます。
客離れを防ぐ
CXを高めることでユーザーが自社商材から離れる機会の芽を摘むことができます。
例えば企業にWebサイトから問い合わせメールを送った時、返信が遅くて困った経験は誰でもあるのではないでしょうか?
他にも担当者と相性が悪かった、改善してほしいとお願いした点が改善されなかったなど。
低いレベルのCXによって顧客が商材を利用し続ける意欲が削がれてしまうことは良くあります。
固定客の獲得
顧客が満足できないCXで客離れのリスクがあるのならば、顧客が満足するCXは固定客の獲得につながります。
例えば、紳士服販売事業で有名なコナカではオーダースーツブランドの立ち上げにより多くの固定客を獲得しました。
テイラーによる丁寧な採寸・カウンセリング・着こなし相談・フォローメールといったサービスが好評です。
また、2回目以降の利用はアプリで簡単に注文・購入できるようになっています。
紳士服購入のプロセスで固定客を離さない仕組みづくりができているのです。
商材を購入・利用する流れの中で顧客が喜ぶ体験を提案し続ければ固定客・ファンが競合他社に乗り換える隙は生まれません。
ブランドの印象が向上
高いCXを提供することで商材を提供する側である企業名やサービス名のブランド力まで高まることがあります。
例えば、株式会社ヤクルト本社はヤクルトレディによる訪問販売が重要な販路の1つです。
その販売手法により、地域で1人暮らしをしている高齢者の安否確認や孤独死・振り込め詐欺を未然防止した事例が報告されています。
最近ではふるさと納税の返礼品としてヤクルトの見守りサービスを用意する自治体も登場し、各地域で欠かせない存在感を獲得しました。
単なる商材提供にとどまらないCXがブランド力向上につながっている事例です。
固定客による宣伝効果
高いレベルのCXにより獲得した固定客(ファン)は多大な宣伝効果をもたらしてくれます。
例えば、日常会話で「○○っていうお店で食べた○○がおいしかった」という話題は良くあるものです。
一見何気ない会話のように見えますが、お店側から見るとファンによる自主的な口コミ広告と捉えることもできます。
特にスマートフォンとSNSの存在は見逃せません。
商材利用を画像付きで投稿してくれる顧客はポジティブなレビューを発信してくれるありがたい存在なのです。
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CXに関心が寄せられる背景
CXに関心が寄せられる背景にはインターネットの登場により欲しい情報へのアクセスが容易になったことが考えられます。
また、商材のどこに価値を見出すのか判断基準も人それぞれです。
商材そのもので差別化を図るハードルが上がってしまったことも背景の1つとして注目すべきでしょう。
情報流通の多様化
顧客が自ら情報収集できるようになったことはCXに多くの企業が高い関心を寄せる理由の1つです。
インターネットの登場やパソコン・スマートフォンの普及を経て、顧客は企業が提供する以上の情報を自ら収集できるようになりました。
自分だけの判断で商材の選択が可能となり、商材そのもののスペックだけで顧客に満足してもらうのが難しくなってしまったのです。
社会的価値観の多様化
ものが十分に供給されるようになると類似商材との差もなくなってきます。
似たような商材の中から選択肢を絞るための判断基準として好感度や信頼性といった印象が決め手になってくるのです。
例えば好きなタレントがCMをしているから選ぶ、といった事例がわかりやすいでしょう。
しかし、好感度や信頼性といった印象は人によって価値観や判断基準がまったく異なります。
ライフスタイルやそれまでの人生経験といったパーソナルなことに左右されてしまうのです。
そこで、商材のコアターゲットから長期間・定期的な利益を得るためのきっかけづくりとしてCXが注目されています。
購買サイクルの複雑化
CX導入メリットに注目する人が増えている理由として、購買サイクルの複雑化も見逃せません。
顧客の購買プロセスは認知→興味・情報収集→比較→購入の流れが基本です。
しかし、特にインターネットの登場以降この流れは複雑化しています。
購入1歩手前の比較まで進んだにもかかわらず認知から再スタートとなることも少なくありません。
対して、CX向上により獲得した固定客は複雑な購買サイクルをショートカットし、即購入に進んでくれる可能性が高いです。
企業にとっては顧客への複雑なアプローチにかかるコストを軽減できるため、安定した経営に欠かせない要素となるでしょう。
CXの重要性
商材そのもので差別化する手法はかなり難易度が高くなっています。
そこで商材を利用する体験が差別化できるポイントとして注目されるようになりました。
体験によって顧客に良い印象を与え、好感度や信頼を得るCXが重要視される流れが主流になってきたのです。
CXの重要性に取り組む企業は徐々に増えていて、その広がりは業種を問わないものになっています。
CXの2つの性質
CXは長期間の効果が期待できる性質と顧客の心に対するアプローチという性質があります。
CXの長期性
CXが持つ性質の1つが顧客が感じる価値が長期間継続するという点です。
例えば、1887年(明治20年)創業の帝国ホテルは国内外問わず業界最高峰のホスピタリティで知られています。
しかし、個々のサービス内容自体は他社と同様であることも少なくありません。
それにもかかわらず選ばれ続けている背景には帝国ホテルが提供する○○というだけで信頼を寄せるファンの存在があります。
高いレベルのCXを提供し続けることで時代が変わっても続くブランド価値の構築に成功しているのです。
そのブランド力によって帝国ホテルは業界内の価格競争に巻き込まれることなく差別化に成功しています。
非物質的価値
CXの性質の中でもその他のマーケティングと最も違うのが、物質的な価値だけで勝負しない点です。
例えば、コーヒーショップが提供する価値を物質的・非物質的なものに分けると下記が挙げられます。
<物質的価値>
- 安い
- 豆の種類が豊富
- 高級ブランドを取りそろえている
- 他店よりも量が多い
<非物質的価値>
- おしゃれな店内BGM
- 椅子の座り心地
- 清潔な空間
- ホテルのラウンジのような高級感
- スタッフのホスピタリティ
- フェアトレードや環境に配慮した商材利用
「心の部分で満足を得る」「感覚的に自分に合っている」といった判断基準のターゲットに向けた取り組みが特徴です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
顧客から得られるデータは資産
CX向上を図るため、顧客が商材の購入・利用に至るまでのルートを熟知し顧客を観察することが大切です。
- 顧客がどのようなルートで商材の利用に至るのか
- そのルート上にはどのような不便があるのか
観察した結果をデータとして蓄積・数値化してみましょう。
顧客がこうだったらいいのにと思うポイントを明確な指標に基づいて改善できれば適切なCXを提供できるようになります。
Webマーケティングツールで測定できるデータも数多くあり、活用次第でCX向上メリットを存分に享受できるようになるでしょう。
商材を購入・利用する顧客が無意識に発しているシグナルを数字上で注意深く察知することが大事です。
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CX向上を目指す中で悩んだら
CX向上は有効なマーケティング手法として業種を問わず欠かせないものになっていくでしょう。
しかし、企業が取り組んでいく中で難易度が高いと感じられる点もあります。
- Webマーケティングツールによって得たデータをどのように活用すれば良いのか?
- CX向上率などの数値目標はどのように設定すれば良いのか?
- CX向上に欠かせないマインド面をどうやってスタッフに浸透させれば良いのか? など
業種や提供商材の違いによって他にも様々な悩みが出てくるでしょう。
そこで利用を検討してみてほしいのがコンサルティングサービスです。
Webマーケティングコンサルタントは上記のような悩みに対し、データに基づいた客観的なアドバイスを提案できます。
活用次第で企業経営者やマーケティング担当者にとって心強いパートナーとなる存在です。
まとめ
インターネットやSNSなどの登場により、商材そのもので差別化を図ることが難しくなっています。
CX向上は難易度が高まっている自社商材と競合との差別化を実現し、固定客やファンを獲得できるチャンスです。
まずは、自社の経営理念や数値目標を明確にして企業全体でCX向上に取り組める環境を作りましょう。