検討するべき様々なポイントを単純化・パターン化したものをフレームワークと呼びます。
それを用いることで誰もが論理的・効率的思考を実現できる、知的生産を行うためには欠かせないツールです。
マーケティングにあたってもフレームワークが重要な役割を果たすことはいうまでもありません。
今回の記事では、そんなマーケティングに必要なフレームワークについて詳しく解説します。
各種フレームワークの特徴や消費者理解につながる行動モデルに関しても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
マーケティングに必要なフレームワークを解説
マーケティングとは商品やサービスをより大量かつ効率的に売るための様々な販売戦略の総称です。
そのため市場分析・セグメンテーション・ターゲティングなどいくつかの段階に分けてアプローチされます。
思考整理や現状分析など各段階で成すべきことが違うため、フレームワークもその都度有効なものを用いねばなりません。
以下の項目ではマーケティングに必要なプロセスを5つの項目に大別し、各プロセスで有効なフレームワークを紹介します。
マーケティングでフレームワークを活用することの重要性
そもそもマーケティングでフレームワークを活用することはなぜ重要とされるのでしょうか。
上述の通りマーケティングには思考整理や市場分析など数多くのステージ・プロセスがあります。
しかも一つ一つが問題として難しくて奥深いため、すべてを一度に扱うことは到底できません。
目的や段階に応じて適切なフレームワークを用いると、煩多で複雑な事象を単純化することができます。
フレームワークが考え方の枠組みを提示してくれるお陰で、取り組むべきことが明確になって作業効率も格段にアップします。
問題が多岐にわたりがちなマーケティングという分野であればこそ、フレームワークの活用は不可欠だといえるでしょう。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
思考整理のフレームワーク
まずは販売戦略を練るそもそもの目的や商品・サービスの市場価値の見極めなど極めて基本的なことを考える必要があります。
これが思考整理の段階で、テーマにまつわる内容を網羅的かつ重複することなくピックアップするのが理想です。
ここで抜け・漏れ・見落としがあった場合、後に大幅な予定の変更が必要となる場合もあるので注意しなければなりません。
考え方の基礎として、この項目ではMECE・ロジックツリー・5W1Hの3つをご紹介します。
MECE
MECEは論理的思考の基本中の基本です。ミーシーあるいはミッシーと発音されます。
Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveのアクロニムとしてご存知の方も多いことでしょう。
「モレなく、ダブりなく」と訳される通り、MECEなスタンスは対象を網羅的にピックアップしたい時にとても有効です。
主観を排して集められ論理的に整理された物事は、客観性のある事実として扱うことが可能となるでしょう。
ロジックツリー
ロジックツリーもまた物事を網羅的にピックアップする際に有効な思考整理の手法です。
具体的には、テーマが持つ様々な要素をツリー状に分解・分類することで作り上げて行きます。
ロジックツリーを用いるメリットの1つはその一望性の高さにあるといえるでしょう。
物事の全貌を俯瞰的に捉えられるため、チームで意識を共有することや問題点の洗い出しが容易になります。
また前後の繋がりが深いツリー状であることによって、原因の特定や解決策の立案がしやすいこともポイントです。
5W1H
5W1Hを会話や文章による情報伝達の基本と考えているビジネスマンは多くいることでしょう。
- When……いつ(時間)
- Where……どこで(場所)
- Who……誰が(主体)
- What……何を(物・行為)
- Why……なぜ(理由)
- How……どのように(方法)
この5W1Hは思考整理のためにも大いに有効なのでぜひ活用してください。
ポイントは主題に対して順序よくアプローチすること。いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのようにの順番を守りましょう。
このルールに従って考えを整理することで、たとえ主題が多様でも必要な情報を過不足なくピックアップできます。
規則性を持って取り組むことさえできていれば、目的や重要度に応じて上記の順序を入れ替えてももちろん構いません。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
現状分析のフレームワーク
思考整理でマーケティング戦略のビジョンを明確化した後は、商品・サービスを販売する市場環境を分析しなければなりません。
この時に使われる代表的な手法がSWOT分析で、自社の強みと弱み、市場における機会と脅威の4つを組み合わせて分析します。
もちろん分析の手法はSWOT分析だけではなく、用いる要素や視点の違いによって別の方法が取られる場合もあります。
ここでは特に3C分析と4C分析についてご紹介しましょう。
3C
3C分析はマーケティングにおける環境分析のためのフレームワークです。
Customer(市場・顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の頭文字を取って付けられました。
外部要因(市場・競合)と内部要因(自社)の関係性を分析・把握して自社の強みや弱みを評価します。
Customerの分析対象は市場規模や顧客のニーズなど。市場を知らずして利益確保の可能性は見いだせません。
Competitorでは競合他社を分析します。主に競合が市場の変化にどう対応しているかを検証することになるでしょう。
Companyは分析の総まとめです。これまでの市場分析・競合分析に照らして自社が取り得る戦略を検討することになります。
4C
4C分析もまたマーケティングにおける環境分析のためのフレームワークですが、顧客視点であることに大きな特徴があります。
ここでいう4Cとは、顧客にとっての価値・顧客の負担・顧客にとっての利便性・コミュニケーションのことです。
企業はこの4つに関する事実の収集を通じて市場で求められている商品やサービスが何なのかを知ることになるでしょう。
顧客にとっての価値(Customer Value)では市場における顧客のニーズやその求める価値について分析します。
顧客の負担(Cost to the Customer)は顧客が負う経済的負担や心理的負担などのことです。
顧客にとっての価値(Convenience)では主に商品・サービス購入までの利便性について分析しなければなりません。
最後のCommunicationでは顧客と企業の間でどんなコミュニケーションが取られているかが主題となるでしょう。
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戦略構築や企画・提案のフレームワーク
市場環境の分析の後はマーケティング戦略の立案・実行のステージに移ります。
分析によって導き出した市場機会について、自社の強みを活かした具体的なアプローチをする段階です。
この段階で用いられるフレームワークにもいくつか種類があるので、場合に応じて適切なものを活用しましょう。
ここではSTP・PEST・4Pという3つのフレームワークをご紹介します。
STP
STPをマーケティングの基本的な戦略を定める手法の1つとしてご存知の方も多いことでしょう。
セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングという3つの観点から具体的な戦略を策定します。
セグメンテーションでは顧客を様々な要素でグループ化することによって市場を複数のセグメントに分けます。
セグメンテーションで細分化された市場はターゲティングの過程でそれぞれ参入の可否について精査されることになるでしょう。
最後のポジショニングでは、他社と比較した時の自社の魅力を顧客に対して印象付けることで地位の確立を目指します。
PEST
マーケティング戦略を策定する際、重要な要素にマクロ環境があります。これは変化を続ける世の中の動向のことに他なりません。
マクロ環境を取り扱う時には、PESTというフレームワークを用いて将来動向を分析し、戦略に反映させることになります。
PESTはPolitics・Economy・Society・Technologyの頭文字を取って名付けられました。
政治・経済・社会・技術それぞれの動向が自社のビジネスにどのような形で影響しうるかを分析・予測します。
確実な予測というものはまずできませんが、中長期的なトレンドの見極めなど得られるものは多くあるでしょう。
4P
4Pは具体的な販売戦略を決める際に使われることが多いフレームワークです。
4つのPはProduct(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販促)を意味しています。
Productで扱うのは対象製品やサービスの機能・価値・形態など。ブランドイメージの確立なども問題となるでしょう。
Priceで扱う要素は利益率や値引きの有無といった価格面の問題です。競合他社との値段の比較もここで検討します。
Placeで扱うのは販売・流通ルートのことなど。在庫の保管や管理方法に関してもここで検討することになるでしょう。
Promotionでは販促の手法などについて検討します。キャッチコピーや広告媒体についても話し合うことになります。
目標達成や実行のフレームワーク
マーケティング戦略の策定が済んだらそれを実行に移すことになります。
当然、実行後は何らかの結果が出ます。その結果を分析して戦略を改変する必要に迫られる場合もあることでしょう。
次にご紹介するのはマーケティングの目標達成のために有効なフレームワークです。PDCAとSMARTについて解説します。
PDCA
PDCAサイクルはビジネスに限らず人間活動の様々な面で有効なフレームワークとして非常によく知られています。
計画(Plan)を実行(Do)に移し、結果を評価(Check)して更なる改善(Action)に繋げるというものです。
このサイクルを繰り返し行えば正のスパイラルが生まれ続けることは誰しもがイメージできる所でしょう。
特にマーケティングでは、目標となる数値を設定し、それを上回ることができるようサイクルを回し続けることが肝心です。
SMART
SMARTは目標を設定するにあたってポイントとなる5つの要素を示しています。
その5つとはSpecific・Measurable・Achievable・Related・Time-boundのこと。
具体的であること・測定可能であること・達成可能であること・経営目標に基づいていること・期限があることを意味します。
これらの要素にもれなく合致した目標を設定することによって、成功に大きく近付くことができるでしょう。
消費者理解につながる行動モデル
より達成可能性の高い目標を設定するにあたって重要なことの1つに消費者理解があります。
その製品・サービスを消費者が購入する本質的な理由を分析し、理解する必要があるということです。
ここでは、有効な消費者理解につながる行動モデルとしてAIDMA・AISAS・SIPSの3つをご紹介しましょう。
AIDMA
AIDMAは消費者が商品・サービスを購入する際のプロセスを説明するフレームワークとして知られています。
AIDMAとはAttention・Interest・Desire・Memory・Actionの頭文字を取ったものです。
その商品・サービスについて知り、興味を抱き、欲しいと強く感じ、記憶に留め、購買行動に移る。
多くの消費者がこの流れに沿って行動することを把握しておけば、より効果的な目標設定を行うことが可能となるでしょう。
AISAS
AISASをAIDMAと同じ消費者行動のモデルの1つとしてご存知の方も多いのではないでしょうか。
株式会社電通が2005年に提唱した、ネットによる購買行動の主流化を加味したモデルとして広く知られています。
AISASはAttention・Interest・Search・Action・Shareのアクロニムです。
当該商品・サービスについて知り、興味を持った現代の消費者は、検索して購買行動を取った後に共有をする。
この共有のプロセスまで考慮するという点で、AISASはAIDMAと一線を画す重要なフレームワークだといえます。
SIPS
SIPSもまたインターネット全盛の現代に即した消費者行動モデルです。AISASと同じく電通によって提唱されました。
ソーシャルメディアの積極的な利用と消費者行動の関係性を説明するフレームワークとして知られています。
SIPSとはSympathize・Identify・Participate・Share&Sprendの頭文字を取ったもの。
消費者はまずソーシャルメディアを介して商品・サービスに共感し、情報を集めて品質などについて確認します。
確認が済んだらその商品・サービスを購入、あるいは参加し、最後に共有と拡散を行うのです。
こうした現代の消費者行動に合わせたマーケティングが今後の主流となっていくことでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
フレームワーク活用の注意点
まず何を考えるべきか考える手間を省いてくれる。その意味でもマーケティングにおいてフレームワークの活用は欠かせません。
ただ、適切なフレームワークを複数利用しなければ、偏った分析結果だけを元に行動してしまうという事態にも陥りえます。
マーケティング戦略には常に多角的な視点が必要であり、フレームワークはその視点を得るための1つの方法です。
マーケティングの各段階においてどんなフレームワークが有効かをよく理解し、最適なものを複数用いて戦略を立案しましょう。
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マーケティングに関するお悩みは?
マーケティングの難しさの1つは分析・検討するべき対象の規模が大きく、しかも多岐にわたる場合が多いという点にあります。
加えてそれら対象の多くはそれぞれ独自の広がりと奥行きを持つため、因果関係の把握や問題点の洗い出しはいよいよ困難です。
目の前の課題に対して最適なフレームワークを用いたい。しかしそれがどれなのか分からない、という時もあることでしょう。
その際はぜひ弊社にご相談ください。各種フレームワークに精通したスタッフが論理的な結論を導くお手伝いをいたします。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回の記事では、マーケティングに必要な各種フレームワークについてそれぞれの特徴やその重要性をご紹介しました。
複雑な問題を扱うマーケティングという分野においては、フレームワークを用いた効率的なアプローチが非常に有効です。
適切なフレームワークを導入することによって新しい課題や解決策が見い出せる場合もあるでしょう。
今回の記事を参考にして、ぜひプロジェクトに最適なフレームワークを見つけてみてください。