SWOT分析とはStrength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の頭文字を取ったものです。
これらのフレームワークを利用して経営環境の分析を行い、自社の環境に適した戦略が立案できます。
ビジネス環境は時間とともに変わっていきます。
SWOT分析を適宜利用することで方向性や改善点も見つけ出せるのです。
今回は、SWOT分析の目的や戦略の立て方を紹介します。
目次
SWOT分析の事例を解説
SWOT分析を利用する目的は市場機会や事業課題を見つけ改善していくことです。
企業は自社の置かれている環境を多角的に分析することが必要になります。
SWOT分析の4つのフレームワークには2つの要因があります。
- 内部環境
- 外部環境
内部環境とはStrength(強み)・Weakness(弱み)であり、自社で環境をコントロールすることが可能です。
商品開発力・ブランド力・価格・品質などが該当します。
外部環境とはOpportunity(機会)・Threat(脅威)であり、自社だけでは変えることが不可能なものです。
市場規模・社会動向・トレンド・ユーザーの嗜好の変化・法律・政治などが該当します。
内部環境と外部環境を検証することで、客観的に自社を取り巻く環境を捉えられるのです。
SWOT分析では相反する「強み」と「弱み」、「機会」と「脅威」を正しく分析することが重要なのです。
弱みによって機会を逃さないような強気の戦略を立てることができます。
トヨタ自動車①:大手自動車メーカー
日本と代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車のSWOT分析を見てみましょう。
世界でも有名なブランド、トヨタ自動車はハイブリッドをはじめ高い技術力と開発力が世界でも圧倒的なシェアを誇ります。
しかし、大きすぎるがゆえの悩みを抱えていました。
車種が多すぎて消費者にはよくわからない、そのため販売量も伸び悩む時期がありました。
そこでSWOT分析を利用して車種を絞り込み、世界市場を意識したカラーバリエーションを展開するようになったのです。
外部環境の分析
トヨタ自動車の外部環境を見てみましょう。
「機会」は以下の通りです。
- 新興市場国での需要が強い
- 環境意識の向上で低燃費車の需要が急拡大している
「脅威」は以下の通りです。
- 新興市場国では低価格な小型車の販売が伸びて競争も激化
- 競合他社の主力商品が新興市場を中心に広がっている
内部環境の分析
トヨタ自動車の内部環境を見てみましょう。
「強み」は以下の通りです。
- トヨタ自動車の強みは、生産数が世界トップであること
- 生産効率・品質の高さ
- 財務体質が優れている
- 経営者のリーダーシップ
- 研究開発費が膨大である
- 世界市場での高いブランド力
「弱み」は以下の通りです。
- 国内販売の伸び悩み
- 海外販売の依存度が高いため為替変動の影響を受けやすい
- 車種が多すぎて選びにくい
- 国によっては大型車を好む傾向がある
- AIやIoTの遅れ
ここにあげた環境要因は一部ですが、トヨタ自動車の内部環境・外部環境が多岐にわたることがおわかりでしょう。
客観的にそれぞれの要因を書き出してみれば、SWOT分析の進め方が見えてきます。
SWOT分析では、社会の動向を把握して、自社にどのような影響を与えるのか考えて仮説を立ててみることをおすすめします。
クロス分析
SWOT分析をする上で重要なのは、内部環境と外部環境を個別に分析して終わらせるのではなく、掛け合わせることです。
例えば、強みと機会を活かせば最大の利益を最大化させることが可能になります。
強みと脅威では、どのようにして脅威を切り抜けるか、といった分析が可能になります。
こうしたクロス分析の結果から具体的な経営戦略を立案することが重要です。
ただし、掛け合わせる要因によっては不向きな場合もあるので臨機応変に対応してください。
UX・CXの事例はこちら
日本マクドナルド②:飲食店
飲食店の事例でとして最大手日本マクドナルドのSWOT分析を見ていきましょう。
この事例は日本マクドナルドが宅配に参入するきっかけになったSWOT分析例です。
外部環境の分析
日本マクドナルドの外部環境を見ていきましょう。
「機会」は以下の通りです。
- 景気の回復
- 高付加価値の商品の売れ行きが伸びている
「脅威」は以下のようになります。
- 家食のブーム
- 他業種からの参入
- 販売方法の多様化
内部環境の分析
日本マクドナルドの内部環境を分析しましょう。
「強み」は以下の通りです。
- 圧倒的な販売力
- 商品開発力
- ファミリー需要が高い
「弱み」は以下のようになります。
- 低価格というブランドイメージ
- 低価格商品は利幅が限られる
これらの要因分析から、日本マクドナルドは今では定着した宅配販売に参入したのです。
ターゲットはランチタイムに利用が期待できるビジネスパーソンになります。
また、子供や女性にも人気のあるスイーツメニューの開発にも力を入れました。
子連れの主婦層にもこれが功を奏し売上拡大に貢献したのです。
クロス分析
日本マクドナルドが行ったクロス分析では、ボリューム感があるハンバーガーで付加価値の高い商品が開発できないかということでした。
これは定期的なキャンペーンを利用して商品投入を図り、売上拡大に繋がりました。
家食の対応として宅配にも力を入れたのです。
販売チャンネルを増やすことでビジネスチャンスを逃すこともなくなりました。
また、集客が悪い店舗の撤退や販売が伸び悩む商品の廃止も行いました。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
三越伊勢丹ホールディングス③:百貨店
三越伊勢丹ホールディングスのSWOT分析を見ていきましょう。
こちらの事例はインバウンドが注目されていた頃のものです。
インバウンドに偏りすぎた収益構造を見直し今後の戦略立案を目指します。
外部環境の分析
三越伊勢丹ホールディングスの外部環境を分析しましょう。
「機会」は以下の通りです。
- 百貨店を利用するアジア系外国人観光客が増加している
- オンラインショッピング市場の拡大
- アジア経済の拡大
「脅威」は以下の通りです。
- 景気低迷で個人消費の落ち込み悪化
- 贈答需要が減少
- 他業種・他業態との競争激化
- インターネットショッピング市場の急拡大
- 高齢化が進む日本市場
内部環境の分析
三越伊勢丹ホールディングスの内部環境を分析しましょう。
「強み」は以下の通りです。
- 百貨店最大手である
- 高いブランド力
- マーチャンダイジングに強い優位性
- 中高年の富裕層を中心とした優良顧客が多い
「弱み」は以下の通りです。
- 三越の顧客が高齢化している
- 三越の収益が伸びない
- 収益が低い店舗がある
- 伊勢丹新宿店の収益に依存しすぎる
クロス分析
三越伊勢丹ホールディングスのクロス分析では、不採算の事業からの撤退・縮小を進めることにしました。
競合他社の脅威を排除するためには、新製品の開発と新規市場の開拓が必要です。
競合商品がある場合、性能を比較してターゲット価格を設定することも重要になります。
高くて品質の良い商品が売れる時代は終わりました。
顧客のニーズを知り、どれくらいの価値ある商品ならいくら出せるか分析し、価格を設定することがポイントです。
SWOT分析のコツ
SWOT分析はビジネスにおいて最適な手法ですが思ったような成果が出ないという声を聞きます。
分析の目的を理解してSWOT分析のコツを掴みましょう。
SWOT分析のタイミングは戦略を作る時に有効な手法であるといわれています。
戦略を練る時顧客のニーズを理解し自社が持つ強みをどう活かせばそのニーズに応えられるかを考えなければなりません。
そこで活躍するのがSWOT分析なのです。
戦略を考えてからその戦略を評価するために利用するのがSWOT分析になります。
SWOT分析には大きく2つのポイントがあります。
ここでそのポイントを紹介します。
強みを活かす方法を考える
戦略を作る時に最も有効な方として注目されるSWOT分析でが、4つのフレームワークを出しただけでは戦略は導き出せません。
分析で重要なのは強みを活かすことです。
顧客のニーズとトレンドをよく知ることから始めましょう。
自社の強みをどうやって顧客のニーズに結びつけるか戦略を立てるのです。
弱みを強みに変えることも必要ですが、まずは強みを活かすことから始めれば効果を早く実感できます。
効果が実感できれば弱点を意識しながら、どんどん効果的な戦略を打ち出せばいいのです。
最適なタイミングで行う
強みを活かすのがSWOT分析の基本的な考え方です。
例えば、競合他社のキャンペーン期間を分析し、自社の商品の販売期間を設定するなど最適なタイミングを狙うのもいいでしょう。
SWOT分析をすれば事業戦略やマーケティング戦略立案のタイミングも見えてきます。
それがビジネスチャンスなのです。
UX・CXの事例はこちら
SWOT分析の注意点
SWOT分析はある意味シンプルな手法ですが、間違った運用をしてしまう可能性もはらんでいるのです。
SWOT分析の注意点についてここで紹介しておきましょう。
自社で活用する際の参考にしてください。
客観的に分析する
SWOT分析のフレームワークが全て自社に当てはまるとは限りません。
あくまで策定する際の手段であり、事業内容が新規参入か成熟した状態かによっても異なります。
また、業種によっても違ってくるでしょう。
SWOT分析は客観的でなければ意味がありません。
自社の分析結果が期待値と乖離しても、それを持って分析そのものがおかしいとは言えないのです。
また、内部環境の強みと弱みが明確に区別できないといったことも起こるのです。
SWOT分析が万能の分析方法ではないことは理解しておいてください。
重要な項目を明確にする
SWOT分析をする場合、目的と目標をあらかじめ明確にしておきましょう。
マーケティング分析して課題を洗い出し、戦略を立案するためには目的や目標が曖昧では分析結果が活かせないからです。
分析するだけが目的になってしまっては思った効果は期待できません。
チーム内でよく話し合い、目的・目標を明確にしてからSWOT分析をしましょう。
多くのアイデアを出す
SWOT分析において一つの事柄をどのフレームワークに入れるか判断が難しいこともあります。
そのため、できるだけ多くのアイデアを出すことが重要になります。
一つの事実だけではその解釈や組み合わせ方で分析結果にも影響を及ぼすからです。
いくつものアイデアに基づいて戦略を立てることが自社にとって最適なものになるのです。
戦略作りに活用する目的
SWOT分析を企業が戦略作りに活用する目的は、商品開発や販売などマーケティングに欠かせない要素を含んでいるからです。
外部環境や内部環境を列挙して自社の状況や立ち位置が明確になります。
そして分析結果を自社の戦略に落とし込むことで社内の意識統一・商品開発・販売・製造・アフターケアにも役立つのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
SWOT分析を用いた戦略の立て方
自社の内部環境である強みと弱み、外部環境である機会と脅威を分析しビジネス戦略に活かすSWOT分析は最終的には売り上げ向上に役立ちます。
分析をすることでどのような経営戦略を策定すべきか見えてきます。
そしてクロス分析を利用して最善の戦略を策定するのです。
自社がとるべき戦略が具体化できれば、集客方法や人員配置方法なども考えていけばいいのです。
明確な目標を持って分析することで戦略に役立つフレームワークを策定して効果を引き出しましょう。
そのためには戦略を立てていく重要なポイントをしっかり押さえておく必要があります。
UX・CXの事例はこちら
SWOT分析に悩んだら?
SWOT分析で悩ましいのは内部環境と外部環境の仕分けがわかにくい点です。
企業によっては強みと弱み、機会と脅威が曖昧なこともあります。
しかし、きちんと列挙ができないと正しい分析結果が出ません。
SWOT分析のメリットが活かせないのです。
SWOT分析には時間と労力がかかります。
コツを理解するのも容易ではありません。
自社の商品やサービスでどうやってビジネス戦略を策定すればいいのかわからない場合は、経験豊富なデジマクラスやコンサルタントに相談しましょう。
会社に合わせた的確なSWOT分析・戦略立案・実行までサポートします。
まとめ
SWOT分析について分析のコツや事例をあげて立て方や注意点を解説しました。
SWOT分析は幅広いデータをもとに内部環境、外部環境を分析してクロス分析を通して戦略の方向性を決め手法です。
この手法を使えばこれまで見落としていた課題も見えてくることもあります。
改善点を修正しながら売り上げに繋げることが最終的な目標です。
そのためには明確な目標を持って分析する姿勢が大切になります。
ただ、フレームワーク作りに悩むのも事実です。
SWOT分析のノウハウと豊富な経験があるコンサルタントに相談して、自社に最適な戦略を立案しませんか。